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コラム

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あなたの街のティーチングマイスター 第23回:アノアデザインのMTG(大阪府)水鳥あひるさん

原田 武


 「ティーチングマイスター」とは、初心者にマジックを教える認定資格を持つ人のこと。「あなたの街のティーチングマイスター」では、『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がリリースされたこのタイミングに、全国各地にいる彼らの紹介インタビューをシリーズで掲載していきます。

 再びの最終回となる今回は、「マンガで分かる!Magic Story」公式4コマ漫画でもおなじみのこの方です。コンビを組んでいる堀川雄一さんのインタビューはこちらから。

 

ファンタジーの世界へと

──本日はよろしくお願いいたします。はじめに、マジックとの出会いについて聞かせてください。

水鳥:店長(堀川さん)がきっかけでしたね。家電量販店でアルバイトしていたとき、ダークファンタジーなアクションゲームの宣伝ムービーが店頭でよく流れていたんです。「好きそうなゲーム出てたよ」と教えてあげたら一緒に遊ぶことになって。

 と言っても私は見学だったんですけれど、隣で見ているときに「似たような世界観のカードゲームがある」という話になりました。それが店長が子供の頃に遊んでいたマジックだったんです。

 話を聞いたら面白そうだったので流れで店長や友人たちとグランプリ神戸に参加して、そのままティーチングを受けて遊びはじめました。

──なるほど、世界観つながりでマジックに。ファンタジーはそれ以前からお好きだったんですか?

水鳥:実ははじめは少し苦手で、あまり触れてこなかったんですよね。受け付けないとかではなくて、カタカナの人名とか勢力の名前が覚えられなかったんです。世界史も苦手でしたし、本を一冊読むにしても何度も同じページを見て名前を確認してしまうタイプで(笑)。

──ちょっと意外です。背景ストーリー漫画も描かれていますし、てっきりお得意なのかと。

水鳥:自分で絵に起こせば大丈夫なんですよ。なので漫画を担当させていただくようになって、だいぶ覚えられるようになりましたね。

──そうだったんですね。その後、どのような遊び方でマジックを楽しまれてきたのでしょうか?

水鳥:ゲーム自体は得意ではないのですが、好きなキャラクター中心のデッキを組んで愛してあげるのが面白くてのめり込みましたね。

 始めた当初はなかなか勝てなかったので、早々にコンバット(戦闘)での駆け引きを諦めてしまって。気に入った《欺瞞の神、フィナックス》中心のデッキでひたすらライブラリーを削っていた時期がありました。

 少し後になると上手いプレイヤーさんに教わった「白青英雄的」を使うようになって、コンバットも少し楽しくなりましたね。一つのクリーチャーをどんどん強化していくデッキで、好きなキャラを活躍させたい気持ちに合っていたような気がします。

──「好きなキャラを愛してあげる」、素敵なプレイスタイルだと思います。好きになるきっかけはストーリーでしょうか?それとも遊んでいく中で?

水鳥:どちらもですね。でも残念ながら、ストーリーで好きになっても能力的には活躍させてあげにくいパターンも多いと言うか……誰だったかな、イニストラードのひげのおじさん。いっぱい能力がついてて……

堀川:オドリック?

 

水鳥:そう、オドリック!好きだったんですけど、デッキを組もうとするとなかなかうまくいかなくて。

水鳥:逆に使っているうちにストーリーを知って愛着が湧くパターンもありますね。あのジェイスが実はブロッコリーが苦手だったりとか。

──ゲーム体験とストーリーがしっかり繋がっているのですね。

水鳥:私の中ではそんな感じですね。だから、店長に「こっちのカードの方が強いよ」って言われても「イヤだ!」って断ることもあったり(笑)。そっちの方が好きだから。勝つことよりも、自分なりの楽しさを大事にしているところがあるかもしれません。

好きなことを好きなように

──ではここからは、ティーチングマイスターの活動について聞かせてください。まずは取得の経緯をお伺いしたいのですが。

 

水鳥:マイスター制度が始まったころが、ちょうど店長が他の仕事で忙しい時期だったんです。その分私がお店にいる時間が長かったので、それならと取得したかたちですね。フラッとティーチングを受けに来られる方も結構いらっしゃったので、活動する機会も相応にありました。

──マジックをはじめたときにティーチングを受けた、というお話もありましたが、その時の経験が活きたような体験はありましたか。

水鳥:特にこれ、ということはないんですが、ティーチング全体への考え方の部分で影響を受けた部分はあるかもしれません。

 私がティーチングを受けた時はカードゲーム自体がほぼ初体験でした。そんなこともあって、まわりの皆さんのカード捌きと講師の方の堂々としたふるまいに衝撃を受けたんですよ。すごい!レベル高い!みたいな。説明の分かりやすさとは別に、その迫力に圧倒されていました。

 でも店長は他のプレイヤーさんと対等に渡り合っている様子だったんです。だから遊んでいくうちに慣れるのかなと思えましたし、あまりハードルを感じることはなかったですね。

──確かに、初めて見た時のインパクトは大きいかもしれません。

水鳥:なので、初心者の方がちょっと混乱してしまう気持ちもすごくよく分かるんです。雰囲気のはすぐに慣れますし、ルールも用語も知ってしまえば簡単なんですが、やっぱり最初は情報量に押されてしまうときもあるかなと。

 そこでまずは「用語を翻訳する」ことから始めるようにしています。「クリーチャー」を「モンスター」、「インスタント」を「魔法」と言い換えるような形で、用語をお客様の知っている単語に戻していくんです。

──まずは言葉での混乱を解いてあげるんですね。用語が覚えられないという点だと、先程仰っていたファンタジーの難しさに近いものも感じます。

水鳥:そうですね、感覚としては似ていると思います。なので解決の方法も自然と似たものになっているのかな。

 例えばファンタジーの中でも、学園ファンタジーって特に広く受け入れられているじゃないですか。あれは誰もが通ったことのある「学校」という世界がベースだから理解しやすいんだと思うんです。

 なるべくその人が体験したことのある世界観に引き寄せて説明してあげる、そのための方法が言葉を戻すことなんじゃないかと考えています。

──ではそうしてマイスターとして活動するなかで、印象的な出来事はありましたか。

 

水鳥:マジック25周年の時、新宿で記念イベントがあったんですが、話の流れでそこでティーチングを担当させていただくことになったんです。それ自体は本当に急遽決まったんですが(笑)、それが本当にいい経験になったんですよ。

 新宿の土地柄もあってか色んな方がティーチングを受けに来てくださったんですが、その中に何度も足を運んでくださるおばあさんがいらっしゃって。ティーチング自体は質問もなくスムーズに進むんですが、いざ体験となると必ず白のデッキを選ばれるんですよ。そして、遊び終わったら土地だけを全て返してお帰りになるんですね。

──それだけお伺いすると謎めいていますね。

水鳥:私も不思議に思ったので、直接か間接かは忘れてしまったんですけど、理由を聞いてみたんですよ。そうしたら「天使の絵が綺麗だからたくさん欲しい」と。それが本当に心に残っていて。

 「絵が好き」とか「なんとなく気になる」とか、理由はなんでもいいんです。そのくらいの軽さでマジックに飛び込んできて欲しいし、ティーチングにもそんな気軽さで来ていただいて大丈夫なんだと改めて感じることが出来た瞬間でしたね。

──きっかけはどんなことでもいいんだ、と。

水鳥:自分の中で「マイスターとしてティーチングをする」ことに少し身構えていた部分もあったんですが、それを機にそんなハードルも感じなくなったように思います。どんな理由でもいいから、好きなことを趣味として楽しむ。そんな初心を思い出させてくれた出来事でした。

はじめの一歩は「ゆるく」

──では最後に、これからマジックをはじめてみようかな?という方に向けてメッセージをお願いします。

 

水鳥:ゆるく遊ぶのもいいよ、ということですね。競技としてのマジック、勝つためのマジックも凄く魅力的ではあるんですが、それしか選択肢がないわけでは決してなくて。キャラクターが好きとかストーリーが好きとか絵が好きとか、「マジック好き」の形は色々あると思うんです。

 私の場合は「使いたいカードを使いたい」ということだったんですけれど、そういったその人その人の遊び方を大事にしてほしい。そんな「好き」のあり方を肯定してあげたい、というのは一つ自分の中で決まったことかもしれませんね。

──マジックの楽しみ方は自由なんですね。

水鳥:自由ですし、他の楽しみ方を知るともっと面白くなると思います。考えの違いやギャップをお互いに知ることが遊び方の幅を広げてくれるんじゃないかなと。

 これは漫画づくりの話ですが、普段キャラクターに親しんでいない人にも刺さるなにかがあったらいいなとか、逆にストーリー重視の人たちにもゲームとしての面白さを拾って貰えたらいいなとか、そんなことを考えながら描いています。

──なるほど。他の楽しみ方を知る切り口があの漫画なんですね。

水鳥:イラストやストーリーもマジックの魅力ですが、絵の下の文章の意味が分かるともっと楽しくなるかもしれません。折角カード持ってるし、くらいの軽い気持ちでティーチングに来てもらえると嬉しいです。

──最後までありがとうございました。


 

アノアデザインのMTG
住所:〒594-0071 大阪府和泉市府中町1-9-1 2F
公式サイト:http://mtg.anoad.com/

「アノアデザインのMTG」は大阪府和泉市のお店。店主・堀川さんの好きなものがもりだくさんの、楽しい雰囲気のお店です。訪問すると看板犬のウルザくんがお出迎え。接客上手で、ウルザくんとのコミュニケーションで犬嫌いを克服したお客様もいらっしゃるそうです。


過去の「あなたの街のティーチングマイスター」連載記事はこちらから

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