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企画記事

あなたの街のティーチングマイスター 第19回:元野木書店/モトノキノウエ(福岡県) 元野木正比古さん
「ティーチングマイスター」とは、初心者にマジックを教える認定資格を持つ人のこと。「あなたの街のティーチングマイスター」では、『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がリリースとなったこのタイミングに、全国各地にいる彼らの紹介インタビューをシリーズで掲載していきます。
今回は福岡県の歴史ある書店から、親子でマジックを楽しみつつ盛り上げているこの方です。
ティーチング第一号は息子さん
──本日はよろしくお願いいたします。本屋さんの2階がカードショップになっているんですね。
元野木:元々窓際の一部だけがコミュニティスペースになっていて、あとは物置だったんです。常連さんから「ここでマジックも扱ってもらえないか」「ここで大会ができるんじゃないか」とご提案頂いたのがきっかけで、じゃあやってみるかと取り扱いを始めました。『テーロス還魂記』『イコリア:巨獣の棲処』くらいのタイミングですね。
──それ以前からマジックの経験がおありだったのですか?
元野木:いえ、中学校の同級生が遊んでいたかどうかくらいで僕自身は全くの未経験でしたね。折角取り扱うなら、とまずはルールを一から勉強するところから始めました。趣味を一つ増やすような気持ちでしたし、結果的にそんな形になったかなと。今では上の息子と一緒に遊んでいます。
──息子さんと!それは素敵です。なにかきっかけはおありだったのでしょうか。
元野木:それこそティーチングマイスターの取得を考え始めたことがきっかけでしたね。面白そうだから資格を取ろうと思ったのですが、それまで誰かにルールを教えた経験がなかったんです。まずは練習しないと、と妻と息子にティーチングしてみたんですよ。
二人とも全く経験がなかったのもあって、返ってくるリアクションの一つ一つが新鮮で。「これがティーチングか」と実感しましたね。このティーチング練習の後、息子が「マジックやりたい!」と言いだしたんです。それからは仕事の後に対戦したりするようになりました。
──ティーチング練習で早くも一人、マジックへと引き込むことに成功されたわけですね。せっかくなのでお二人のお気に入りのデッキとカードを聞かせてもらえませんか。
元野木くん(兄):アリーナでは自分で作ったマルドゥのデッキ、紙の方では「赤単アグロ」です。《勝利の楽士》とか《僧院の速槍》がお気に入り。
──おお、アグレッシブ。元野木さんはいかがでしょうか。
元野木:青黒の毒性デッキや黒緑のリアニメイトデッキが好きですね。カードだと《本のワーム》でしょうか。「本の虫」に引っ掛けた名前が面白いですし、うちは本屋ですから(笑)。
──親子でアグロvs.コントロールが成立している。
元野木:親子のコミュニケーションが増えて嬉しい限りです。ご来店いただく皆さんとも交流するようになって、今では大会に参加したりしています。私自身もここでしか出会えなかっただろう人達と繋がりができましたし、マジックはコミュニケーションツールでもあるんだということを実感していますね。
あとは頭を使う要素が多いゲームなのもポイントかもしれません。テキストにもいっぱい触れているからでしょうか、知らない間に「黄昏」のような難しい漢字を読めるようになっていて驚きました。
元野木くん(兄):「百足」とかね。
──漢字テストには出なくても、マジックでは頻出の漢字もありますしね。
楽しさを受け継いでいくこと
──では続いて、お店の道のりについてお聞きしたいです。カードショップとしての展開にあたって、どのような想いがあったのでしょうか。
元野木:先程お伝えしたようにお客様からご要望があった、というのが一つ。それから、ちょうどこの店の新しい可能性を模索していたというのも理由の一つです。
この元野木書店は私で7代目になります。継ぐか継がないか、という選択は結構重たいものがありましたし、一度は手に職をつけようとこの街を離れ、臨床心理士の資格を取ったりもしました。でも最終的にはもう少し頑張ってみようと決めたんです。
決め手になったのは「伸びしろ」があったことでした。経営状態を色々と見直してみるとまだやりつくしていない部分が見つかったので、そこに賭けてみようと考えたんです。
──その成果の一つがマジックを含むカードショップ事業、というわけですね。
元野木:本屋が本だけを取り扱っていても厳しいというのが実情で、ワクワクするような可能性を探していたタイミングでした。ゲームを通じてコミュニティも出来ていくということで、凄くいいなと思ってチャレンジしたのを覚えていますね。
書店業界全体が時代の流れとともに変わりつつある中、どうしてもどこかネガティブになってしまいがちな空気があります。そこに対して「こうやってみたらどうだろう?」と新しい考え方を提案できないかなと。同じことは商店街にも言えます。空き店舗が増えたことを寂しがって終わらせずに、そのスペースで何かできないか考えてみたり、といったことですね。
この「モトノキノウエ」も、元はただの倉庫で人が入れるような状態ではありませんでした。そこを片づけて机と椅子を置くところから始めたお店に、今は多くの常連さんが足を運んでくださっている。逆転の発想、ポジティブな発想があれば変わってくるものもあると信じています。
──発想の転換が重要なのですね。
元野木:なにもしないとしぼんでいってしまいますから。だったら逆手にとって、ダメになるまで暴れてしまおう!と(笑)。
──溢れるエネルギーを感じます。今後もチャレンジの範囲は広がっていくのでしょうか。
元野木:面白そうなことにはどんどん手を出していますし、今後も続けていきたいですね。現在は本屋とカードショップに加えて、街づくり会社「スキマニヤモリ」の代表として商店街のタウンマネージャーを務めています。
あとは本屋と図書館で連携していく取り組みに関わっていたりとか、書店を24時間営業にしてみたりとか、移動図書館をやってみたりとか……
──す、すごい広範囲。それだけ多くの取り組みをされているとなると、考えることもどんどん増えて大変なのではないでしょうか……?
元野木:あまり難しさを感じたことはないかもしれません。「自分たちもお客様も楽しめるもの」を目指して仕事をしていますから。
元野木:私達が重点を置いているのが、次の世代にどうパスするかということ。自分たちが楽しめないものを託すのは嫌ですから。どうしたら自分たちが楽しめて、かつお客様にも満足していただけるか、色々と模索しているところです。
今は商店街同士の繋がりを活かして、マジックの出張イベントのようなことが出来ないか検討していたりします。実際に移動図書館にティーチングキットを積んでいったこともありますし……持っている手段を組み合わせて面白いことが出来ないかな、というのはいつも考えているかもしれません。
──元野木さんの中では、全ての取り組みが繋がっているんですね。
元野木:そうですね。色んな角度から関係人口を増やしていくことで、どんどんこの楽しさを広げていけるんじゃないかと思っています。
新たな友達
──各地で大盛況の『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』。既に多種多様なイベントも始まっていますが、改めてこのコラボへの意気込みをお聞かせください。
元野木:ちょうど今日も「『FINAL FANTASY』限定構築戦」が盛り上がっていますね。自分もⅤ~Ⅶがドンピシャの世代ですので、思い出はたくさんあります。当時ガラフやシドのことをおじさんだと思っていたんですが、いつの間にかそっちに近い年齢になってしまいました(笑)。
世界観もそのままに感じられますし、能力的にも楽しそうなものがいっぱいあります。FFコラボから始めたいとお店に来てくれた方ももういらっしゃいますので、このまま交流を広げていければ嬉しいですね。
──お店でのリアルな交流も、カードゲームの醍醐味の一つですよね。
元野木:大分や熊本など遠方から来てくださる方もいらっしゃいますし。昔のマジック仲間がこのお店で再会、なんて場面に立ち会ったこともありました。マジックが色んな縁を集めてくれているな、と感じます。
これはカードショップ事業を始めてから知ったのですが、以前ここ飯塚市にマジックを扱っていた本屋さんがあったそうなんです。そこが無くなってしまって、遊びたい人たちが宙ぶらりんになってしまっていたみたいで……。
その方達は北九州市や福岡市まで出向いてプレイを続けていたそうなんですが、「こんなお店を始めました」とお伝えしたら有難いことにお店に足を運んでいただけるようになったんです。お陰様で今では80人を超える規模のつながりが出来ています。
やっぱり地元にお店がないとやめざるを得なくなってしまうお客様も多いようですので、そういった方々の力になれたらという思いもありますね。
──では最後に、未来のマジック仲間に向けてひとことお願いします。
元野木くん(兄):自分でデッキを作ってみたり、誰かのデッキを見て「そんなカードもあるんだ」ってなったり、いろいろ考えて遊ぶのが楽しい!
元野木:ルールさえ覚えていただければゼロからでもしっかり楽しめるのがマジックのいい所だと思います。デッキや遊び方の選択肢も非常に多いですから、是非是非遊びに来ていただいて、一緒に交流できると嬉しいなと思います。
うちはドラフトを遊ばれる方が多くて、金曜日はほぼ毎週ドラフトのイベントを開催しています。遊んでいるうちにカードも増えていくので、初心者の方にもオススメかなと。
ルールはしっかりお教えしますので、マジックを通して友達になりましょう!もちろん親子連れでの起こしも大歓迎です。息子は小学生のマジック仲間を探しているみたいなので、是非。
──最後までありがとうございました。
元野木書店/モトノキノウエ
住所:〒820-0041 福岡県飯塚市飯塚18−3
電話番号: 0948-22-0048
公式SNS:https://x.com/booksmotonoki
「モトノキノウエ」は明治10年から続く由緒ある書店・元野木書店の2階に位置するカードショップです。プレイスペースには温かみのある木目のテーブルが並び、カードゲームやボードゲームが楽しめます。くつろげる空間にしたいという思いから、なんと冬場は焼き立ての焼き芋も販売しているそうですよ。
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