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企画記事
あなたの街のティーチングマイスター 第3回:MUGEN TABLE GAMES(熊本県) 藤吉学さん
「ティーチングマイスター」とは、初心者にマジックを教える認定資格を持つ人のこと。ティーチングマイスターが教えるマジック体験会「多元宇宙への招待状」の開催を記念し、全国各地にいるティーチングマイスターの紹介インタビューをシリーズで掲載していきます。
第3回は、「マジックをストリートカルチャーに」をテーマに、熊本から灯をともしているこの方です。
こちらのお店は、「日本選手権2022 –Tabletop Returns-」で優勝した、亀崎頌選手のホームでもあります。オリジナルのアパレルを販売中で、これは「SHO KAMEZAKIモデル」とのこと。
マジックとの出会いから店を開くまで
――まずは、マジックとの出会いを教えてください。
藤吉:出会いは小4くらいで、『テンペスト』とか『ウルザス・サーガ』の時代です。熊本の町なかにある、ホビーとかも扱う古本屋で。友達に「おもしろいゲームがあるよ」って連れられて行ったら、重ねた段ボールをテーブル代わりに、大学生の兄ちゃん的な存在が子供たちに教えてくれてましたね。
――牧歌的ですね。その後は?
藤吉:そこからはまったくやってなくて。2014年に復帰するんです。僕は24歳のとき、シネコンとかの入ってるテナント施設の中で、たい焼き屋を出したんです。その一角にゲームセンターがあって、そこにカードゲームをやりに集まってる大人たちがけっこういたんですよ。それを見て、「そういえば小さいときにマジックやってたな」と思い出して、調べたら「まだある!」と。それで復帰しました。
――なるほど。マジックのどういうところが好きなんですか?
藤吉:イラストと世界観ですね。それにゲーム性も、運と実力のバランスがもっともとれているゲームだと思います。
――特に好きなカードイラストは?
藤吉:その時々で変わるんですけど、最近だと『イニストラード』の《ヴェールのリリアナ》が好きですね。
――マジックにはいろんな魅力がある中で、アートも大きいですよね。
マジックのことを思い出してから、どうやってこのお店を作るまでになるんでしょうか。
藤吉:いろんな人とマジックをやるうち、自分の周りにコミュニティが広がっていったんですけど、2018年ごろ、熊本でマジックをメインに扱う店がほぼなくなる時期があったんです。たい焼き屋はずっと続けてたんですが、ターゲットが幅広い飲食業でなくターゲットが絞られるマジックみたいな商売をしてみたいなとも思ってたし、自分が没頭できることを仕事にしたいという気持ちもあった。熊本にお店がないなら、自分が作ろうと。だから2019年は、店を作るための勉強に費やした1年でした。
――たい焼き屋でやっていくこともできたけど、マジックを遊べる場がないなら、そこに賭けたい! と。すごい思い切りですね。
藤吉:2020年の4月に店がオープンしたんですけど、ちょうどコロナにかぶってしまって、最悪な時期でした。もちろんずっと前から準備は進めていたわけで、2019年末に「なんだか様子がおかしいけど、まだ遠い話だし」と思っていたら、急にとんでもないことになって。でもオープンすることは決まってるし……という感じでした。
――そうですよね……。では、最初のうちは細々とやるしかなかった?
藤吉:まあでも、ある意味いい期間ではあったというか。熊本のプレイヤーに少しずつ認知を広げていって、最初はほかのカードゲームもやってたんですけどほぼマジック1本に絞った店にしていくことができた、長い準備期間という面もありました。
――お店に人があまり来られないなら、代わりに通販でといった考えはなかったですか?
藤吉:それも準備はしていて、プラットフォームも完成はしてるんですが、稼働してないんです。通販をやるとなると大手と勝負しないといけないし、それよりは地元ファーストで、地域の人たちにまずは新弾のカードを買ってもらいたいと思っているので、今は準備中という段階です。
――まずは地元を大事に、ですね。コロナの時期を抜けてからはどうですか?
藤吉:ようやく本格的にやっていくぞってなったタイミングが、2022年の日本選手権ですね。各店舗で予選をやっていたとき、今までずっとくすぶっていた火が一気に燃え上がった感じで、熊本のコミュニティが、九州のあらゆる予選に遠征してたんです。10人以上であちこち行って、権利を獲得したみんなで日本選手権に行ったんです。
藤吉:ただ自分の役目としては、最初に火をつけて、あとは一歩引いたところから応援するって感じですね。コミュニティが形成されて、リーダー的な人が育つのを見ているという。
――後ろで腕組みして応援する感じですね。とはいえ、コロナの中でイチからコミュニティを作り上げていくというのは大変そうです。
藤吉:めちゃめちゃ大変でした。ただマジックのすごいところって、歴史が長いから触れたことのある人が多いし、何しろゲームがおもしろいので、「カードゲームをつきつめていくとその先にマジックがある」という感じなんですよね。だから、コミュニティが自然にできていきやすいと思います。
ティーチングについて
――藤吉さんがティーチングマイスターの資格をとったのはいつですか?
藤吉:2022年7月です。やっぱりマジックのお店をやるなら持っておかないと、という感じですね。
――取ってからこの1年の間に、ティーチングをする機会はどれくらいありましたか?
藤吉:新しい方がいらっしゃるのは、正直月1、2回くらいですね。本当は毎週とかにしていきたいですけど、9月からはティーチングのキャンペーンがあるそうなので、機会が増えるかなと楽しみです。
――どういう人がティーチングを受けに来るんでしょう。
藤吉:言い方はアレですけど、変わった人が多いですね(笑)。一般的にカードゲームっていったら、流行のアニメきっかけとかで始めるのが普通じゃないですか。あえてマジックの門をたたく人というのは、ちょっと人とは違う感性があると思います。入り口はバラバラなんですけど、「指輪物語」や「ストリートファイター」とのコラボがきっかけで来た人もいました。あとは友達に連れて来られた人ですね。
――コラボ先から来た方は、「カードゲームとは?」のような、ゼロからスタートだったりするんですか?
藤吉:そうです。こういうお店なので、教えるときは大勢集めて一律に説明するとかじゃなくてほぼ個別対応になるので、人によってかなり内容は変えてます。まずどれくらい時間があるか聞いて、それに合わせて。
たとえばカードゲームを何もやったことがない人だったら、まずは公式のルール説明動画を見てもらいます。これすごくよくできてて、わかりやすいんです。
ルールがもうわかってる人だったら、ざっと説明したら手札をオープンにして対戦してみて、次は最近のカードも使って実戦してみましょうとか、そんな感じです。
――地域密着型ならではの、個人に合わせた対応なんですね。動画を使うのも今っぽい。
藤吉:動画の最後が、「マジックは世界中のプレイヤーとつながることができるゲームです! さあ、多元宇宙への旅に出ましょう」ってナレーションで終わるので、そのまま「多元宇宙へようこそ。あなたはプレインズウォーカーです!」って言って説明を始めます。
――動画によって、イメージが広がりやすくていいですね。それでは、ティーチングマイスターをやってよかったことは?
藤吉:やっぱり、資格があるから信頼して来ていただけることですね。運転免許みたいもので、あるのとないのとでは全然違うかなと。なので、公式でこういうのを整備してくれてよかったです。
――公式な資格だから、安心感があると。
藤吉:はい。どんなゲームも、新しい人が増えないと先細りしてしまうので、新しいプレイヤーをたくさん増やすにはどうしたらいいかをいつも考えています。
今、うちには日本一になったりプロツアー出場したりというプレイヤーも来てくれてますけど、彼らにも「新しい人を大事にしようね」と。そうしないと自分たちも強くなれないし、ゲームとしても先細りしちゃうから、と伝えるようにしています。
――自分たちは強い競技的なグループだからって閉じないで、新しい人を迎え入れようと。
藤吉:ですね。なので新しい人を受け入れる企画は常に考えてて、今だったら『指輪物語:中つ国の伝承』のみの構築をやってみませんかという提案をしてます。それなら、プレリリースパックのデッキそのままでも遊べるので、入りやすいですよね。
――新しい人でも、すぐに出られるイベントがあるのはいいですね。
それでは、ティーチングに行ってみたいと思っている人へのメッセージをお願いします。
藤吉:最初は勇気がいると思うんですけど、飛び込んでみてほしいですね。絶対後悔させないようにしますので。
――ティーチングを受けたかったら、どうすればいいですか?
藤吉:決まったこの日に来てくださいというのはなくて、受けたい人の都合を聞いて、それに合わせてやってます。実質的にお店が開いてるときはいつでも、という感じなんですが、ただ大きなイベントとかで場所が埋まっちゃってる場合もあるので、前もって電話とかXのアカウント(旧Twitter)でDMとかいただけると確実です。いきなりでも、基本的には大丈夫なんですけど。
――今までにもティーチングを受けに来て、そこからマジックファンになってくれた人がいるわけですよね。
藤吉:もちろん。でも体感としては、がっつりハマってくれる人は10人中3、4人くらいですかね。
――それは多いほうだと思いますよ。
藤吉:手ごたえは感じてます。ただそれは公式のイベントのおかげもあって、今だったら「夏のスタンダード感謝祭」、ちょっと前だったら「プレマゲット!」のじゃんけんとかに助けられてるというのはあります。やっぱり公式の施策の効果はありますね。
さらに大きな店を目指して
――ここは地域密着型のお店でありつつ、強いプレイヤーも輩出しているのが特徴的だなと思うんですが、お客さんたちはどうやって強くなったんでしょうか?
藤吉:それはですね……自分が昔やってたコミュニティだと、5人で一緒の車に乗ってプロツアー予選のために遠征するぞってとき、その大会で当たるかもしれないから、使うデッキはお互い秘密にしてたんですよ。でも今ここにできているコミュニティは、「このデッキだったらサイドボードはどうしたらいいか」とか、情報公開して5人で意見交換してるんです。そこが違います。
――ああ、1人の知見が、5人いれば5倍になると。
藤吉:その効果で、一気に上に行きましたね。
――そんなふうに濃いコミュニティを作れるのも、お店に通うメリットです。
藤吉:僕はマジックって、すごい楽しいし、仲間も作れるし、何よりめちゃくちゃカッコいいものだと思ってるんです。アメリカに行ったとき、すごいタトゥーでガタイのいい人たちがバチバチでやってるのを見て、すごくカッコいいなと思いましたし。
なので、「マジックをストリートカルチャーに」というのをテーマにしていろいろやってます。お店ももっと大きくして、駅近に移転して、さらにきれいでかっこいい店を目指してます。ここで終わるつもりは全然ないです。
――その熱意をもってすれば、次に取材に来るときにはきっとそうなっていると思います。がんばってください!
妻と二人三脚で経営。お店の紹介動画のほか、新セットごとにかっこいい動画を作ったりしているYoutubeチャンネル(https://www.youtube.com/@mugennocommon)を見れば、「マジックをストリートカルチャーに」というテーマがよくわかります。
MUGEN TABLE GAMES
住所:熊本県熊本市中央区琴平1-12-7 グランシティ琴平 102
電話番号:096-245-6295
公式Xアカウント:@mugenmtg
お店は駅前から少し離れた大通り沿いにあります。若くてお金のない選手がプロツアー遠征するに際し、新たな芽を世界へ羽ばたかせるべくスポンサーとして支援したりもしています。
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