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コラム

企画記事

『エルドレインの王権』物語ダイジェスト:第1回 その舞台と人物

原著:Kate Elliott
作:若月 繭子

※本連載はカードの情報および「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」(amazon電子書籍版)の一部の抜粋や私訳をもとに、著者とウィザーズ・オブ・ザ・コースト日本支社との間で確認して作成した記事であり、一部固有名詞等の翻訳が正式なものと異なる可能性がございます。ご了承ください。

 

 新たな世界、エルドレインへようこそ! 全8回予定のこの連載では、『エルドレインの王権』のメインストーリー、ローアン・ケンリスとウィル・ケンリスの双子が父王を探す冒険譚を紹介していきます。ですがまずは、その舞台となる世界とキャラクターから入りましょう。

物語の舞台

寓話の小道

 エルドレイン、それは高潔なる騎士と魅惑のおとぎ話の世界です。煌びやかな城に住まうお姫様と王子様、美徳を掲げて人々を守る騎士。美味しいお菓子の家や魔法の馬車とガラスの靴。いたずら者の妖精はどこにでも入り込んで悪さをしますし、深い森の中には永遠の若さを求める邪な魔女が住んでいます。一方で秘密と引き換えに真実を教えてくれる鏡や、永遠の命が手に入るという秘宝が伝説にうたわれ、大人も子供も同じく惹きつけられてやみません。魅力と危険、どちらもこの世界を作り上げる要素なのです。

5つの王国

 エルドレインの世界は大きく2つの領域に分けられます。1つは人が住まう秩序の領域、そこには5つの「王国」が存在します。そして各王国の宮廷がそれぞれの「美徳」を掲げ、騎士や魔術師たちが生涯を捧げて追求しています。この5つの美徳によって、平和と秩序が保たれていると人々は信じています。

銀炎の儀式

 白の宮廷アーデンベイルは「忠誠」。秩序と規律を尊ぶ騎士と堅牢な守りを誇りとしています。探索する獣に選ばれ、課された試練を通過して5つの王国全ての上に立つ崇王ケンリスが、この宮廷から平和と庇護の手を伸ばしています。

魔法の鏡

 青の宮廷ヴァントレスは「知識」。水と滝に守られたこの城の地下深くには、あらゆる質問に真実の返答を与えるという魔法の鏡インドレロンが鎮座しています。

華やかな葬送

 黒の宮廷ロークスワインは「執念」。永遠を生きるエルフの女王アヤーラがこの宮廷を統べています。王国の秘宝である「永遠の大釜」を失って以来、ロークスワインの城は文字通り空に浮いています。この秘宝の発見を誓うも、探索のさなかで命を落とす騎士は後を絶ちません。

馬上槍試合

 赤の宮廷エンバレスは「勇気」。世界に名高いその闘技場には、自らの強さと価値を示すべく各地から多くの闘士が集います。

グレートヘンジ

 緑の宮廷ギャレンブリグは「強さ」。優しき巨人の王ヨルヴォが統べるこの地の騎士は熊に騎乗し、鷹を相棒として戦います。この王国は僻境の奥へと至る魔法の門、グレートヘンジを擁しています。

 遠い昔、王国を統べていたのはエルフたちでした。伝わるところによれば、彼らは高慢で尊大、虚栄心が強く残酷な存在でした。さらに悪いことに、彼らはあらゆる不道徳な魔法を野放図に使用していました。自分の身を守れないほど弱い者は膝をついて庇護を求めるべき、それが彼らの言い分でした。今では多くのエルフが僻境に退き、ロークスワインだけがエルフの国としてその美徳を掲げ、人の側に存在しています。一方で僻境のエルフたちは今も人へと敵意を持ち、足を踏み入れた者には容赦しないと言われています。

僻境

 人が住まう平和と秩序の王国に対し、危険な野性と魔の領域が「僻境」です。そこは住人だけでなく、物理法則までも王国とは異なります。ある日に川にかかっていた橋が、次の日には消え失せて全く別の場所に現れるというようなこともあります。「僻境」とは言いますが、そのすべてが彼方の地にあるというわけではありません。例えばアーデンベイルの王城からさほど遠くない平穏な村、その程近くには鬱蒼と茂る森に包まれた丘陵が広がっています。王国の騎士たちは長い年月をかけてその闇と戦ってきましたが、一掃するには至っていません。そこもまた僻境、足を踏み入れた者を惑わし、悪意のレッドキャップが刃を構えているのです。

探索する獣
探索する獣

 伝説にうたわれる三つ首の獣、それが探索する獣です。5つの王国全ての上に立つ崇王の座に相応しい人物を選定し、探索行を課します。二世代の空位期間の後、アーデンベイルのアルジェナス・ケンリスが5つの宮廷で騎士の称号を得て崇王の座に就きました。獣に選ばれた証である祝福の剣が今もアーデンベイル城の玉座の背後に掲げられ、揺るぎない偉業を示しています。

登場人物

ローアン・ケンリス&ウィル・ケンリス
王家の跡継ぎ

 ローアンとウィルは、アーデンベイル城のケンリス王の長子です。ローアンは稲妻の魔法を専門とし、大胆で熱烈な戦いを好みます。時に慎重すぎるウィルを率先して動かすのが彼女です。対してウィルは氷の魔法を専門とし、冷静かつ広範に状況を判断してその場に対処します。しばしば興奮して先走るローアンを止めるのは彼の役目です。時には小さな対立もありますが、何よりも互いを信頼する仲の良い間柄です。

 双子として、2人はずっと離れることなく生きてきました。そして王の長子という恵まれた出生ながら、世界へと自分たちの力や価値を示すには至っていないと自覚しています。そのため王国のあらゆる血気盛んな若者と同じく、1日でも早く探索の旅に赴くことを願ってやみません。

 ローアンは両親の偉業に心酔しており、特に名高いエンバレスの闘技場で力を試したいと熱望しています。ウィルは世界の謎に惹かれ、知識を掲げるヴァントレスの宮廷で騎士の称号を得たいと願っています。

帰還した王、ケンリス

 2人の両親が、アルジェナス・ケンリスとリンデン・ケンリスです。アルジェナス王は常に朗らかな笑みを絶やさず、人々の尊敬と信頼を一身に集めています。時に人の名前を忘れる、また遅刻癖がありますが非常に高潔で礼儀正しく、勇敢な人物として知られています。リンデン女王は物事を深遠に熟考し、力強い責任感をもって夫を支え、王国をひとつにまとめています。とても仲睦まじい夫婦であり、王は女王の意見に否を唱えることはありません……特に子供たちの教育においては。

 王も女王も、元は庶民の生まれでした。それが探索する獣に選ばれ、崇王の座を目指す者に相応しいとされたのです。アルジェナスはいくつもの試練を経て5つの宮廷で騎士の称号を得て、崇王の座に就きました。リンデンは4つの称号を得るも、恐ろしい事件によって探索行を中断したと言われています。ですが今はかつてその座を競った夫を深く愛し、無私に支えています。王と女王との間には、双子の下に子供がもう2人います。11歳の女の子ヘイゼルと、4歳の男の子エリックです。

不動の女王、リンデン

 ローアンとウィルにとっては、リンデン女王は継母にあたります。双子の実母は僻境にて非業の死を遂げたと伝わっており、リンデンが幼い2人を連れ帰り、自身の子として育てました。双子は女王が実の母ではないことを知っていますが、その事実に何ら反発や気後れは抱いていません。母の愛が本物であること、家族全員が固い絆で結ばれていることを心の奥底から知っているのです。

オーコ
王冠泥棒、オーコ

 オーコはフェイ、妖精的な種族のプレインズウォーカーです。エルドレイン次元の出身ではありませんが、エルフによく似ているため種族について疑いを持たれることはありません。自分の華やかな魅力とその有用性をよく心得ており、巧妙な弁舌をもって他者を意のままに翻弄します。会話においては相手の感情を巧みに読み取り、その心の内にある欲求をくすぐり、抑えつけられていた不満を揺さぶります。答えたくない質問をはぐらかすのは大得意です。優れたシェイプシフターであり、自らだけでなく、他者の姿も自在に変化させることができます。精神魔法にも通じており、心を操る、忘却させるといった技を巧みに用います。

オーコの歓待

 オーコはフェイの次元に生まれますが、そこでは昔ながらのフェイの天性である自由奔放さは好ましくないものとされていました。類稀な変身能力を持って生まれた彼にとっては、世界そのものが自分のすべてを抑えつけ、否定するように感じました。オーコは世界のすべてを偽善と感じ、それを映し出す鏡になろうとしますが、支配者階級はそれを疎んじました。オーコは捕えられて魔法的にその変身能力を抑制させられそうになり、その時、彼の「プレインズウォーカーの灯」が点火したのでした。これは酷い経験であり、以来オーコは他者をほとんど信用しようとしません、特に支配者階級の者については。

 オーコは「偽善」と感じるものを見つけては、残酷な悪ふざけを仕掛けます。エルドレインの世界を成す5つの王国、それが掲げる美徳も例外ではありません。彼が王国と僻境の不安定なバランスを知ったなら、一体どのような行動に出るのでしょうか?

 普段、オーコはプレインズウォーカーである自らの正体を明かすことは避けています。彼にとって、次元を渡る力はすべてが利益というわけではありません。関わり合いになりたくないことからいつでも逃げ出せる一方で、オーコはどこか孤独を感じているのです。

ガラク・ワイルドスピーカーとその物語

野生語りのガラク》より

 ガラクは優れた狩人であり捕食者です。2メートル半近い巨体に似合わず、一切の物音や気配を消して獲物に近づいては類稀なる力で巨大な斧を振るいます。プレインズウォーカーとして彼は次の獲物を、とにかく巨大で手強い獲物を探して次元を渡り歩いてきました。

 また、ガラクは動物の心を深く理解することができ、それらを召喚して狩りの相棒として用います。一方で彼は都会の「洗練さ」、その人々が持つ欺瞞や見せかけや回りくどさを嫌い、可能な限り自然の中にいることを好みます。大地は嘘をつかないのです。トレードマークのような兜はガラクの顔半分を覆っていますが、顔を隠すことにこだわっているわけではありません。また寒冷な次元ではそれなりに文明的な服を着ることもあります。

ガラクの少年時代

 自然とともにある生き方をガラクに教えたのは父親でした。10歳の誕生日、ガラクは自然と繋がる最初の呪文を父に教わります。筋の良さを褒められて喜ぶも、その日はまもなく暗転しました。地域を統べる保安官がガラクを徴兵しにやって来たのです。ガラクは父親によって森へと逃がされ、その後何日にも渡って逃亡を続けました。その間、父から渡された魔法のアーティファクトを通じてその教えを聞き、心に刻み続けました。自然こそが最高の仲間。森と、それが差し出すものを信じること。そして何よりも、言葉を話す者は嘘をつく……。幼いガラクは巨大なベイロスと心を通わせ、やがて時が過ぎていきました。

 7年が過ぎ、大きく成長したガラクは何体もの獣を伴い、父を奪った相手を探し求めに向かいました。そしてかつての家に程近い街で、件の保安官に対峙します。父親は地下牢にいる、と言われ、疑いながらもそこへ連れて行かれると、そこには剣の刺さった死骸がありました。ガラクは閉じ込められますが、巨大なワームを呼び出して牢を破壊し、保安官を食わせて父の復讐を遂げたのでした。

リリアナ・ヴェスとの因縁

 その後、ガラクがいつどのようにプレインズウォーカーとして覚醒したのかはわかっていません。ですがシャンダラー次元にて、その後の彼に大きな影響を及ぼす不幸な遭遇がありました。屍術師リリアナ・ヴェスが契約悪魔コソフェッドからの任務に赴いていた際、ガラクが使役する獣の一体を殺害したのです。リリアナにとっては通りすがりの厄介事に過ぎませんでしたが、ガラクにとっては違いました。彼は怒り狂ってリリアナを追いかけ、とある古代遺跡へとたどり着きました。リリアナはいったん逃走するも、その遺跡で手に入れたばかりの古代のアーティファクト、鎖のヴェールの力を用いてガラクと戦いました。ヴェールの力はガラクを圧倒し、黒マナによる呪いを与えて身体を蝕みました。リリアナはガラクをそのままに逃走しますが、彼は執拗な追跡を始めました。多元宇宙のあらゆる場所へも。リリアナに呪いを解かせるか、それができないなら殺すために。

ヴェールの呪いのガラク》より

 そしてリリアナが契約悪魔グリセルブランドを倒すべくイニストラードへ向かうと、程なくしてガラクも到着しました。執拗な追跡が開始され、リリアナは追い付かれる度にゾンビを用いてガラクを足止めしました。相手をしている余裕などなかったのです。最終的にリリアナは悪魔を倒すという願いを果たしてイニストラードを去りますが、ガラクは呪いに蝕まれたままでした。次第に衰弱し、このまま死を待つものと思われました。

 ですが長く姿を消していた守護天使アヴァシンが世界に帰還するとともに、狼男の呪いを抑える魔法を世界へ向けて放ちました。その神々しい光はガラクにも影響を及ぼしました。完全に解けないまでも鎖のヴェールの呪いは一時的に抑え込まれ、彼は死を免れました。ガラクは迷います、完治の手がかりを求めてあの光を目指すか、再びリリアナを追うか……彼は後者を選びました。

頂点捕食者ガラク
ガラクの目覚め》より

 ですがその後、ヴェールの呪いは再び悪化していきました。ガラクの理性と人間性は次第に失われ、狩りへの欲求だけが際限なく高まっていきました。その獰猛な姿と振る舞いは次第に人間からかけ離れ、やがて彼は多元宇宙でも最強の獲物、プレインズウォーカーを狩る「頂点捕食者」と化してしまいました。

 一方、何人ものプレインズウォーカーが殺害されていると気付いた者がいました。ソリン・マルコフ、そしてジェイス・ベレレンです。彼らの依頼に応じて何人ものプレインズウォーカーがガラクを追跡し、また呪いを対処する手段を探し求めました。そしてジェイスが提示した解決法は、ゼンディカー次元に捕われた悪魔オブ・ニクシリスを探し出し、その身体に埋め込まれた面晶体の欠片を取り出してガラクへ移植するというものでした。

 世界薙ぎの悪魔へと変質する寸前だったガラクでしたが、それを止めたいと願う者たちの奮闘もあって、面晶体を埋め込まれて呪いを抑え込まれ、最悪の事態はまぬがれました。とはいえ、ヴェールの呪いは完治したわけではありません。そしてプレインズウォーカーを狩るという衝動もまた……。

呪われた狩人、ガラク

 次週より、いよいよ物語の紹介となります。お楽しみに!

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