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プレイバック・ラヴニカ その2

若月 繭子

 こんにちは、若月です。

 皆さん、先週末のプレリリースには参加されましたでしょうか? 『ラヴニカのギルド』発売を控え、今回は2012~2013年に展開されました『ラヴニカへの回帰』ブロックの物語を解説します。

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 まず『ラヴニカへの回帰』開始時点でのラヴニカ次元はどのような状態だったのでしょうか?

 それ以前、『ラヴニカ:ギルドの都』ブロックと最も異なっていたのは、各ギルド間の争いを防ぐ不戦協定魔法「ギルドパクト」が崩壊していたということです。十のギルドはどれもラヴニカの維持と繁栄に不可欠な組織ですが、それらの間には友好関係も敵対関係も存在します。ギルドパクトは一万年前、アゾリウス評議会創設者である最高判事アゾール一世によって制定されました。その目的は、ギルド間の戦争とそれに伴う都市秩序の崩壊を防ぐため。そして長きに渡ってラヴニカ世界の平和と繁栄は維持されてきましたが、成立一万年目にしてギルドパクトは崩壊してしまいました。

 その騒動そのものによって勢力を削がれたギルド、指導者を失ったギルドもあり、しばしの間各ギルド内外に混乱が起こります。そして各ギルド間のパワーバランスの崩壊や対立の表面化はこれまでになかった争いをもたらしました。例えばゴルガリ団のプレインズウォーカー、ヴラスカがアゾリウス評議会へと強い遺恨を抱いているのはそのためです。

 ですが一万年という、多元宇宙を見渡しても稀な長さに渡って存在していたギルドとその構造はやはりラヴニカ世界にとって不可欠な存在でした。多少の姿を変え、指導者や内部構造の変化を経ても、十のギルドがこの広大な都市世界を動かしているという状況は変わることはありませんでした。

 さらにはプレインズウォーカーの存在があります。ドミナリア次元での「大修復」を経て、それまで多元宇宙の中に孤立していたラヴニカ次元は開かれました。『ラヴニカへの回帰』ブロックの主人公、ジェイス・ベレレンも少年時代にプレインズウォーカーとして覚醒してラヴニカ次元を訪れ、以来この世界を故郷のように思ってきました。

 

ラヴニカへの回帰

 無限連合とテゼレット、リリアナ・ヴェス、ニコル・ボーラス。ゼンディカー次元のウギンの目。ジェイスは数年間の騒動から離れてしばし放浪した後、ラヴニカへと帰ってきました。大都会の喧騒に埋もれ、誰でもない者として過ごすことは心地良く感じました。ですがジェイス生来の好奇心そのものが彼を放っておきませんでした。いつ頃からか、ラヴニカの中心街である第十地区の各所に幾つもの神秘的な模様が出現しており、ジェイスはその謎解きに夢中になりました。古くからの友人であるイマーラは寝食を忘れて調査に没頭する彼を心配しますが、ジェイスは聞き流すだけでした。

 イゼット団もまたその謎に興味を抱いていると知り、ある日ジェイスは調査隊を追跡します。その時の彼は知るよしもありませんでしたが、その中にはラル・ザレックの姿がありました。ですが尾行に集中していたため相手の思考を深く読むことができず、プレインズウォーカーだとは気づきませんでした。彼らはイゼット団の本拠地へ戻る途中であり、ジェイスが驚いたことに、ギルド門ではニヴ=ミゼットが待っていました。そのドラゴンの精神を探れば、この謎が解けるかもしれない。とてつもなく危険だとはわかっていましたが、ジェイスは好奇心に負けました。彼はニヴ=ミゼットの精神に入り込み、求める謎の答えを得ましたが、門が閉じる寸前にニヴ=ミゼットが自分を見つめていることに気付きました。

 イゼット団はその謎を「暗黙の迷路」と呼んでおり、その経路までも解明していました。ジェイスもそれを知りましたが、ニヴ=ミゼットに察知されたことは危険すぎるとも判っており、調査記録と自らの記憶の破棄を決めました。グルール一族のルーリク・サーへと調査記録と住居の破壊を依頼し、その合図を送ると同時に自らの記憶を消す……ですが瓦礫の中で目覚め、記憶の欠落に戸惑いながら、ジェイスは不穏な知らせを受け取りました。イマーラがラクドス教団にさらわれたというのです。

 その騒動を聞きつけて訪れたアゾリウス評議会の拘引者ラヴィニアから逃れると、ジェイスは部屋に落ちていたコインを手がかりにラクドスのナイトクラブへ向かいました。そして血魔女イクサヴァの精神を探り、イマーラはゴルガリ団の支配区域へと連れて行かれたことを把握しました。

 ジェイスは地底街へ足を踏み入れ、立ちはだかったトロールのヴァロルズを対処し、イマーラと再会します。彼女は無事のようでしたが、そこにディミーア家の吸血鬼、ミルコ・ヴォスクが現れて二人に襲いかかりました。

ギルド門侵犯

 ディミーア家もイゼット団とジェイスの活動を察し、「暗黙の迷路」の背後にあると思われるものを狙っていたのでした。ミルコはジェイスの記憶を探るも、そこに手がかりは何もありませんでした。困惑と共に彼は撤退し、難を逃れたジェイスはイマーラをセレズニア議事会のヴィトゥ=ガジーへと送って行きました。イマーラの誘拐によってセレズニア内に他ギルドへの敵愾心が沸き起こっていることがわかりましたが、ジェイスにできる事はありませんでした。

 とはいえ彼は旧友のイマーラが危険にさらされているという懸念を拭いきれませんでした。自分達が襲われた理由は暗黙の迷路を巡ってのこと、とはいえ今のジェイスにその記憶はありません。仕方なく彼は記憶を消した当時の自分に関わった人物と接触します。まずはラヴィニアに頼るも彼女の態度は冷たく、次にルーリク・サーのもとへ向かいました。自宅を破壊する際にテレパスで接触していたことで、何らかの記憶が向こうに残されているかもしれないと彼は考えたのです。

 ですが記憶を覗かせてもらうためには、魔法を用いない直接戦闘で彼(ら)を打ち負かすことが求められました。ジェイスは苦闘しますが、自分達の戦いを見守るグルール氏族員の思考を読んで立ち回り、ルーリク・サーを打倒することに成功しました。力を示してみせたとしてルーリク・サーは思考を探る許可を与え、ジェイスは探していた知識の断片を発見しました。

 一方、暗黙の迷路とは何なのか。イゼット団ではニヴ=ミゼットとラル・ザレックがその答えに辿り着こうとしていました。ラルが発見した暗号によると、設置したのはギルドパクトの製作者アゾール。そして迷路はギルドパクト消失後に現れた……つまり暗黙の迷路とは、ギルドパクトが消えた時に起動する安全装置なのだと。そして迷路をはただ正確な経路を辿るだけでなく、製作者が、アゾリウス評議会が価値を見出す方法で解かなければならないというのです。そしてニヴ=ミゼットは、ギルド間の大規模暴動が起こりつつあるという知らせを聞き、動きだしました。

 街ではラクドス教団員を率いてイクサヴァが暴動を起こそうとしていました。グルールの戦士達が彼らとジェイスの間に入りますが、さらに悪いことにラクドス教団への敵意を募らせたセレズニア議事会の兵団までもが出撃してきました。ですが複数ギルド間の暴動が起ころうとしたまさにその時、ニヴ=ミゼットの幻影が空に現れ、戦いを止めるよう告げました。誰もが畏怖とともに空を見上げる中、ニヴ=ミゼットは暗黙の迷路についての全てを明かしました。この都市を貫いて流れる古の迷路、その終点には大いなる力が隠されている。だがそれを解き明かすには全ギルドが手を携えねばならないと。そして各ギルドへと一人ずつ走者を選ぶよう告げ、迷路競争の開催を宣言したのでした。

 ジェイスもまたその声明を聞きますが、直後に彼はセレズニア議事会の戦士に変装したラザーヴに拘束され、地底街の隠れ処へと拉致されてしまいました。

 迷路について知っている内容を明かせとラザーヴは要求しますが、ジェイスにその気はありませんでした。ならば、とミルコ・ヴォスクが現れ、ジェイスの血と思考を吸おうとします。他に手段はなく、ジェイスはその牢獄からプレインズウォークで脱出しました。

ドラゴンの迷路

 灰色の空、石だらけの川岸にジェイスは横たわっていました。ここはゼンディカー、都市世界ラヴニかとは正反対の次元。その非現実的なほどの静寂に、しばしジェイスは何もかもを捨ててラヴニカから離れることを考えました。イマーラのことも、全てのしがらみを放り出して。恐らくプレインズウォーカーはずっとそうして生きていたのでしょうから。ですが彼は生物の思考をかすかに感じ取り、意識を広げてその源を追いました。どこか地下の深くにて、コーの女性が家族へと語りかけながら、鋼の剣を鍛えていました。

 エルドラージの災害の中、その母親は子供達へと希望を持ち続けるよう伝えていましたが、子供達が絶望に飲まれてしまうことを怖れてもいました。ジェイスは自らの思考を広げ、コーの母親と子供達全員の意識へと同時に触れ、さらには自らを橋のように用いて彼女らの思考を繋げようとしました。ですがそれを試みた時、彼は精神が引き裂かれるような苦痛を感じました。それでもジェイスはその中に、自分が一瞬だけ「橋」となったのを感じました。ジェイスの精神を導管として、母親の希望が子供達へと届いたのでした。

 ジェイスはラヴニカへと戻り、アゾールの公会広場を訪れました。暗黙の迷路の終点であるそこは、普段は全ギルドに開かれた中立地帯です。彼はこの場に強大な力を感じ、広場中央の演壇にて迷路の魔法的管理人と対面しました。管理人はジェイスの問いに答え、ギルドが試練を完了したならば新たなギルドパクトが最も相応しい者によって新たなギルドパクトが実現し、そうでなければ「アゾールの至高の評決」が下されるのだと告げました。

 そして迷路競争の開催当日、ギルド渡りの遊歩道に全走者が集合しました。司会者として登壇したラル・ザレックが各々へと名乗りを上げさせますが、イゼット団の奇魔メーレクの番が来た瞬間、ラルはその背後から不意打ちをしかけてメーレクを殺害し、自らが走者であると宣言しました。

 ジェイスは遅れて現れたイマーラに合流すると、彼女を導くように迷路を駆け出しました。幾つものギルド門を経てイゼットの門へ辿り着いたところで、ラル・ザレックが待っていました。ジェイスは改めてそのイゼット走者の思考を探り、二人は互いがプレインズウォーカーだと知ります。ですがイマーラの姿を見てラルは悪意を漂わせ、自分とジェイスはプレインズウォーカー、他と違う存在であることを告げました。イマーラにとって、少年時代から知っているジェイスがそのような大きな秘密を隠していたことは驚きであり裏切りでした。失望と怒りを抱くイマーラをラルは先に行かせますが、ジェイスを通す気はありませんでした。ラルは全力をもってジェイスを打倒しようとしますが、ジェイスは幻影を用いてラルの目を欺き、ギルド門を抜けました。

 そしてジェイスがアゾールの公会広場に到着すると、迷路走者全員が乱戦を繰り広げていました。さらにそこにラザーヴが加わり、敵愾心を煽ります。迷路の管理人が現れ、その状況を見て判決を下しました。アゾールの至高の評決、それを行使する力を走者全員へと与えたのです。誰もが自分以外のギルドを敵とみなし、評決を用いて排除しようとしている。ジェイスはそれを止めるべく、走者全員の思考を把握すると、ゼンディカーで行ったように自らを導管として全員を繋げ、互いの魂の奥底を見せました。その瞬間、走者全員の精神が希望と信念の輪となりました。

 そうして至高の評決は防がれました。その行いに、迷路の管理人はジェイスを新たなギルドパクトとして命じました。走者全員の心を繋ぎ、全ギルドの視点を理解する調停者としての資格をジェイスは認められたのです。自分はこの次元の者ではない、と彼は抵抗しますが、管理人は意に介しませんでした。アゾールもまたそうだったと。

 管理人は姿を消し、ジェイスが我に返るとニヴ=ミゼットが自分を見下ろしていました。ギルドパクトは修復された、ドラゴンのその言葉にジェイスはゆっくりと頷きました。

 しばしの月日が経ち、ギルドパクト庁舎の建設が進む中、ジェイスはイマーラの訪問を受けました。彼女は、他の世界やプレインズウォーカーの知識を消して欲しいと願いました。セレズニア議事会では秘密を持つことは許されず、とはいえその知識をギルドと共有することはできません。後悔に苛まれながらも、ジェイスはその願いを叶えました。

その後

 そうして「ギルドパクトの体現者」となったジェイスは、ある程度不承不承ではありながらも自らの役割を受け入れます。以来、厳しくも有能な副官のラヴィニアに支えられながら、賢明にギルド間の調停業務に勤しんできました。

 とはいえ、プレインズウォーカーとしての力と運命はジェイスを放っておきませんでした。彼はゼンディカー次元にて他のプレインズウォーカー達と出会い、共にエルドラージと戦うだけでなく「ゲートウォッチ」の一員としてラヴニカのみならず多元宇宙の繁栄に尽力することを誓いました。

 ゲートウォッチはウラモグとコジレックを退治し、イニストラードでは空民のプレインズウォーカー・タミヨウの力を借りてエムラクールを銀の月に封じました。

 その後ジェイスはしばしの間ラヴニカにてギルドパクトの業務に専念していましたが、カラデシュ次元で起きた領事府と改革派の紛争に仇敵テゼレットが関わっていると知り、即座に向かいます。そしてその背後には「多元宇宙の巨悪」ボーラスが……。ジェイスはラヴニカへ戻る間もなくアモンケット次元へ向かい、敗北の末にイクサラン次元へ飛ばされるも、その地で思いもよらない冒険を経てドミナリアへ……結構な月日が経過しました。

 ギルドパクトの長い不在の間に、ラヴニカ次元はどうなったのでしょうか? それはこの先、『ラヴニカのギルド』『ラヴニカの献身』の物語にて明らかになることでしょう。

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(終)

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