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企画記事
プレイバック・ラヴニカ その1
こんにちは&お久しぶりです、若月です。
まもなく発売される『ラヴニカのギルド』。ラヴニカ次元には5年ぶりの再訪となります。私達が初めてラヴニカ次元を訪れたのは2005年、『ラヴニカ:ギルドの都』でした。賑やかで華やかな都市世界、そこで鎬を削る十のギルド。その世界観やカードはすぐさま多くのプレイヤーの心をとらえ、今もラヴニカは非常に人気の高い次元であり続けています。
そしてラヴニカ次元ではこれまでにも多くの物語が繰り広げられてきました。そこで今回の記事では最新作発売とMagic Storyの再開を控え、『ラヴニカ:ギルドの都』『ラヴニカへの回帰』両ブロックの物語を二回に分けておさらいします。しばしお付き合い下さい。
ラヴニカとは
次元の全てが都市に覆われた世界ラヴニカ。この次元を特徴づけるのは二色のマナを体現する十のギルドであり、それぞれがインフラの管理、食料生産、医療、治安維持など広大な都市世界を動かすにあたって独自かつ不可欠の役割を担っています。
ギルドはどれも強烈な個性に満ちており、自らが最高のギルドであると信じて疑いません。それでも彼らは持ちつ持たれつ、時に友好的に、時に小競り合いをしながら長きに渡ってラヴニカ世界の繁栄を担ってきました。それを可能としてきたのが一万年前、各ギルドのパルン(創設者)らによって調印された不戦協定魔法ギルドパクトでした。『ラヴニカ:ギルドの都』ではそのギルドパクトとギルド間の均衡が脅かされる所から物語が始まります。
ラヴニカ:ギルドの都
ギルドパクト成立一万年を祝す万年紀祭を控え、各ギルド内外で不穏な事件が相次いでいました。ゴルガリ団では女司祭サヴラが石の死の姉妹を失脚させてギルドマスターの地位を奪い、セレズニア議事会ではロクソドンの聖者が暗殺されました。引退を控えていたボロス軍の老警官アグルス・コスは、若き相棒を殺されたことから最後の任務として事件の調査に立ち上がりました。
事態を重く見た同僚の天使フェザー、セレズニア議事会の狼乗りフォン、ゴルガリ団からサヴラの弟ジャラドがコスに協力します。やがて彼らは、一連の事件の背後にいるのはディミーア家の創設者、ザデックであることを突き止めました。その吸血鬼はサヴラを通じてゴルガリ団を掌握しており、ボロス軍もまた工作員によって何人もの士官らがすげ替えられていました。次なる目標はセレズニア議事会、ザデックはサヴラを合唱者に加えることでそのギルドを手に入れようとしていました。
コス達が思った以上に事態は差し迫っていました。セレズニア議事会の本拠地ヴィトゥ=ガジーへ向かうと、サヴラは議事会に迎え入れられようとしていました。ですがそこにザデックが現れると、忠実なサヴラを始末してしまいました。彼の真の目的はギルドパクトの破壊と全ラヴニカの支配であり、セレズニア議事会のマット・セレズニアを殺害することでそれを成し遂げようとしていました。一万年の間、ディミーア家及びザデックはその存在によってギルドパクトをより強固なものとする「敵」として隠され、彼はその怨恨を晴らそうとしていたのです。ザデックはマット・セレズニアを樹の内から引きずり出すとその身体に牙を突き立てました。ですがジャラドが無数の蟲を操ってザデックを襲わせ、続けてフォンがマット・セレズニアの水晶を用いると、その光と衝撃波に図らずもその場の全員が吹き飛びました。誰もが呆然とする中でコスだけが颯爽と立ち、警官の徽章を正すと複数件の殺人容疑でザデックを逮捕したのでした。
ギルドパクトを揺るがした事件は収束し、再びラヴニカに平穏な日々が戻ってきました。ジャラドは姉の後継としてゴルガリ団のギルドマスターとなり、コスは英雄として称えられるのを好まずボロス軍を引退しました。
ギルドパクト
それから十二年後のことです。オルゾフ組の名家であるカルロフ家の御曹子にして敏腕弁護士のテイサは、資産として相続したウトヴァラ復興地区へと向かっていました。同行するのは忠実な従者メリスクと、幽霊議員オブゼダートへの加入を待つ伯父のカルロフ。とはいえウトヴァラ地区には大きな問題がありました。かつてこの地には奇妙な疫病がはびこり、今も大気を浄化するセレズニアの大樹から離れては生活できないのでした。
一方ボロス軍を引退したコスは、ウトヴァラ地区にてオルゾフ組の友人が経営する宿の警備員として働いていました。ある夜遅く、テイサの一行が彼らのもとを訪れました。彼女らは伯父カルロフの死体を運んでおり、グルール一族の略奪団の襲撃によって殺されてしまったのだと説明しました。テイサは宿の一室を仮の執務室とすると、この地を統治する準備を始めました。同時に彼女は、現地のシミック連合の医師から疫病の特効薬を全て買い取りました。高額ではありましたが、自分の領地で今後も他ギルドに頼り続けることは彼女の好みではなかったのです。
一方で奇妙なのは、伯父カルロフが――死して幽霊議員に加わった伯父カルロフが――全くもって自らの殺害を気にしておらず、グルール一族を恨んですらいないということでした。いつしか違和感を抱いたテイサは説明を要求し、そして判明した真実に彼女は激しい怒りと失望を抱きました。オルゾフ組において自殺は違法であり、その場合は幽霊議員に加わることができません。そのため死を望む伯父カルロフはテイサを操って自らを殺害させ、更にその記憶をメリスクに消させていたのでした。それだけでなく、幽霊議員らはこの地のイゼット団と結託して危険な計画を進めていたことも明らかになりました。操り人形となることは我慢ならず、テイサは伯父への従属を拒否しました。
そしてそのイゼット団の計画とは。ウトヴァラ地区にて彼らが運営するエネルギー工場、その工場長ゾマジ・ホークは長く休眠状態にあるドラゴンの卵三つを孵化させ、それらを従えて世界を支配することを企んでいたのです。
ラヴニカのドラゴンは数が少なく、成長したならニヴ=ミゼットをも凌駕する力を得られるとホークは確信していました。一方で彼のドラゴン達はウトヴァラの疫病に蝕まれた大気中でしか呼吸ができないのでした。テイサが疫病を治癒し、大樹が大気を浄化し続けたならその野望は挫かれてしまいます。テイサはコスや現地のグルール勢力と共に工場へと赴きましたが、既に卵は孵化を始めていました。ホークは一体のドラゴンに乗って飛び立ち、大樹を燃やすよう命じました。弁護士として多数の言語に精通するテイサはドラゴン語をも操り、一体に騎乗して追撃を命じました。激しい戦いの末に彼女らはドラゴンとホークを止めることに成功するも、コスもまた致命傷を負ってしまいました。彼の葬儀には友人らが参列し、かつてラヴニカを危機から救った英雄に別れを告げました。
ディセンション
そうしてコスは死んだ筈でしたが、安息は与えられませんでした。気が付くと彼はアゾリウス評議会の本拠地プラーフにて、霊術師の身体に憑依して存在していました。隣にはテイサとフェザーの姿もありました。幽霊となった彼を呼び戻したのはアゾリウス評議会のギルドマスター、アウグスティン四世大判事。何故? 大判事はコスへと一つの任務を与えました。ギルドパクトは崩壊した、ザデックを確保すべし、と。
コスはかつてザデックを逮捕しましたが、それはギルドパクトを破壊するためにザデックが仕組んだ計画だったのです。ディミーア家はその存在によってギルドパクトを強固なものとする敵として、長く意図的に秘匿されてきました。ギルドパクトの敵でありながらギルドパクトの一部であるそれを排除し、更に公衆の面前にさらす。その行為そのものがギルドパクトを破壊したというのです。そしてザデックはいかにしてか逃亡し、フェザーが追跡していたことによれば、幽霊街アギレムにて力を蓄えているとの事でした。
ボロス軍の天使らが空中戦艦パルヘリオンと共にその対処に向かっていましたが、ザデックと彼が率いる幽霊によってほとんどが殺害されてしまいました。その中にはボロス軍のギルドマスターのラジアすら含まれていました。
この街を脅かす危機に立ち向かう。改めてコスは考えましたが、状況こそ奇妙でありながら自らに与えられた任務は生前と何ら変わりなく、彼は了承しました。ですがその時、プラーフを轟音と衝撃が襲いました。パルヘリオンが墜落してきたのです。フェザーはテイサを伴ってパルヘリオンの内部へ、コスはザデックが共謀しているというシミック連合の本拠地ノヴィジェンへと向かいました。
街へ出たコスは、動き出していたのはザデックだけではないことを知ります。ラクドス教団がゴルガリ団からジャラドの息子を誘拐し、儀式に用いようとしていました。狂信者が満ちる死の寺院へと、ジャラド率いる戦士らが救出に向かっていました。ウトヴァラ地区での事件が示すように、ギルドパクトの崩壊は野心を持つギルドにとって動き出す機会だったのです。
幽霊のコスがノヴィジェンに侵入すると、ギルドマスターのモミール・ヴィグがその傑作であるクラージ実験体を解き放とうとしていました。その隣に立っているのはサヴラの死骸、それに憑依しているのはゴルガリ団の創設者スヴォグサーでした。一か八かコスは無理矢理サヴラに憑依し、モミール・ヴィグを殺害して止めようとするもクラージ実験体は起動されてしまいました。実験体は街を蹂躙しますが、そこに遂に目覚めたラクドス教団のギルドマスター、悪魔ラクドスが立ちはだかりました。二体は凄まじい戦いを始めました。
結局ノヴィジェンにザデックの姿はありませんでした。コスは破壊されたプラーフへ戻り、状況を説明しました。何もかもを把握しているかのような大判事の態度は怪しく、コスが問い質すと彼は喜んで明かしました。ギルドパクトが崩れ去り、街には混乱と暴力が吹き荒れている。今こそアゾリウスの新たな法のもとにラヴニカの全てが従うのです。ザデックはとうの昔に殺害されており、アウグスティンはその幽霊を隷属させてボロスの天使を始末させていたのでした。ザデックの幽霊は今もパルヘリオンの中にいる。そしてそこにはテイサとフェザーが向かった筈でした。コスは友を追いかけて中へ突入し、エンジンが爆発するよう細工を施し、指令室にて単身ザデックに対峙するとボロス軍警官の霊捕獲器を用いて相手を捕えました。テイサとフェザーを連れて彼は脱出し、そしてアウグスティンへとその捕獲器を投げつけました。ザデックの高笑いとアウグスティンの悲鳴が響く中、コス達はパルヘリオンの爆発から逃れるべく駆けました。
悪魔ラクドスはクラージ実験体を倒し、再びリックス・マーディの溶岩孔で眠りにつきました。ジャラドは血魔女に殺されたものの自らの死体に憑依して蘇り、ギルドマスターの地位を維持し続けました。コスは幽霊街アギレムにて、再びボロス軍司令官の地位を与えられました。ザデックの幽霊がこの街のどこかに潜んでいるというのです。生前のそれとよく似た街で、まだやるべき事がある。彼はそれを実感していました。
その後のラヴニカ
ギルドパクト崩壊後
結局、ギルドパクトは崩壊したままでした。ギルド間の平和と均衡を保っていたその魔法が消失したことにより、しばしラヴニカに混乱が起こります。とはいえ一万年に渡ってこの次元を動かしてきた十組織の存在は大きくそして根強く、完全に消えてしまうことなどありませんでした。ゆっくりと、多少の変化こそあれギルド構造は元に戻っていきました。
「大修復」の余波
ラヴニカの誰もが(もしくは、ほとんどが)与り知らぬ事でしたが、ドミナリア次元にて形成されていた時の裂け目とその修復は遠くこの地にも幾つもの影響を及ぼしていました。
ラヴニカ次元は時の裂け目によって多元宇宙の中において孤立しており、長い間に渡ってプレインズウォーカーの出入りが不可能となっていました。今から約60年前に起こった「大修復」によってこの孤立が解消され、今やラヴニカ次元は多くのプレインズウォーカーにとって開かれた場所となっています。
また同じ理由からラヴニカには死者の魂が滞留していたために、この次元では幽霊がありふれた存在となっていました。大修復によってこれもまた解消され、そして幽霊街はラヴニカから切り離されたとされています。その位置や現状はわかっていません。
無限連合
ニコル・ボーラス率いる多次元間犯罪組織「無限連合」は、このギルドパクト消失期間のラヴニカに支部を置いていました。ラヴニカ支部長のプレインズウォーカー・テゼレットはある時、この次元に居住する精神魔術師の青年に目をつけ、仲間に引き込みました。
彼、ジェイスはテゼレットの指導のもとで自らの才能を開花させますが、次第にその横暴さと連合の行いに反発を覚えるようになります。やがて親友を失ったことから連合の壊滅とテゼレットの打倒を決意し、テゼレットと直接対決してその精神を刻み、半死のまま置き去りにしました。自らを巡る策謀に疲れ果てたジェイスはしばし旅立ちますが、やはり彼にとってラヴニカは故郷に等しい地でした……そして『ラヴニカへの回帰』の物語へと続きます。
(次回へ続く)
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