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企画記事
『タルキール覇王譚』 特別カードプレビュー:戦いし僧侶
『タルキール覇王譚』 特別カードプレビュー:戦いし僧侶
by 金子 真実(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト 日本コミュニティ担当)
『タルキール覇王譚』プレビューウィークも開始から一週間、カードも大分出揃ってきた。さまざまなWebページやTwitterで新しいカードが日々公開されているし、日本公式サイト内でも既にこちらの記事にてカードプレビューを実施している。
そして、この記事で新しく紹介するのは『タルキール覇王譚』の色の組み合わせの1つ、「アブザン」固有の能力を持ったカードだ。早速見ていただこう。
ちょっとこの僧侶、ヤル気満々過ぎませんかね。ぱっとみ狂戦士なのではというイラスト。
それはともかく、4マナ3/2。それ単体では正直微妙なスペックだが、この《アブザンの戦僧侶》には有用な能力が2つ付いている。それぞれの能力は以下の通りだ。
長久
クリーチャーを毎ターン強くしていくことのできる能力。残念ながらソーサリーとしてのみ行う能力のため、「ブロックしてから強化」といった行動には使えない。一時的には相手の攻撃に身を晒す必要があり、「忍耐力」の氏族「アブザン」らしい能力といえる。
あなたがコントロールする+1/+1カウンターが置かれている各クリーチャーは絆魂を持つ。
この能力により、このカードは攻防一体の強力カードとなっている。「長久」を起動する隙、相手のクリーチャーに攻撃されて減るライフをリカバーしてくれる。また、「+1/+1カウンター」さえ置いてあれば、その能力の範囲はこの《アブザンの戦僧侶》だけにとどまらない。結果、このカードには多くの相性の良いカードが存在する。
せっかくなので、このカードの強さを「リミテッド」「スタンダード」の2つの視点から見ていこう。
リミテッドにおける《アブザンの戦僧侶》
時間さえあれば継続的にクリーチャーを強化していける「長久」という能力は、それだけでも十分に強力だ。しかしそれ以上に、クリーチャー同士での戦闘がメインとなるリミテッドにおいて、「絆魂」という能力は強力だ。それが自軍のクリーチャー全てに与えられるとしたら?
限定的ではあるが、このカードはそれに近い効果を発揮することもある強力なカードだ。今回の「アブザン」のカードには、「長久」をはじめとした「+1/+1カウンター」が置かれるカードが複数ある。それらがデッキに多数入っていれば、このカードはさながら自軍のクリーチャー全てに絆魂を与える能力を持つかのように機能するのだ。
また、他の同種のカードとの組み合わせも見逃せない。既に《アイノクの盟族》というカードが発表されているし、「長久&+1/+1カウンターが置かれている各クリーチャーに何らかの能力を付与」というシリーズが他にも存在することが期待できる。突然クリーチャーが全て「絆魂+先制攻撃」を持ったりしたらたまったものではないだろう。
他にもレアや神話レアまで見渡せば《アブザンの隆盛》《先頭に立つもの、アナフェンザ》といったとても相性が良い「+1/+1カウンター」を置くカードが見つかる。『タルキール覇王譚』には他にもきっと+1/+1カウンターを置くようなカードが数多くあるだろう。
また、「アブザン」にこだわらず他の氏族に目を向けても、《ラクシャーサの大臣》《戦名を望む者》といった+1/+1カウンターを置くことができるカードが存在する。これらのカードもまた、このカードと相性が良いといえるだろう。
こういった多くの+1/+1カウンターを置くカードのことを考えると、《アブザンの戦僧侶》はきっとリミテッドでは大活躍するに違いない。突然多くのクリーチャーが「絆魂」を得て、ダメージの計算が狂った、という光景が目に浮かぶようだ。
スタンダードにおける《アブザンの戦僧侶》
クリーチャーによる戦闘がメインであり「絆魂」がほぼ常に強力な能力であるリミテッド戦とは違い、構築戦においては常に有用とは限らず、残念ながら少し魅力が薄れるのは事実だ。
しかし、対戦相手のデッキがライフを狙うビートダウンデッキならば、このカードの能力は一転して超強力な効果を発揮する。突如として自軍全てに与えられる「絆魂」。ライフを狙うデッキの心を折るには十分な威力だろう。
そして、構築戦ならばこの条件である「+1/+1カウンター」は、リミテッドよりもさらに強力な手段で乗せることが可能だ。ここでは、『テーロス』ブロックおよび『基本セット2015』より、相性の良い能力やカードをピックアップしていこう。
怪物化
『テーロス』ブロックに存在した能力「怪物化」も、+1/+1カウンターを置く能力だ。先日のプロツアー『マジック2015』やプロツアー『ニクスへの旅』でも、《羊毛鬣のライオン》や《嵐の息吹のドラゴン》といった「怪物化」を持ったクリーチャーが活躍したのは記憶に新しい。『ラヴニカへの回帰』と『基本セット2014』がローテーションした後のスタンダードでも、これらのカードは大活躍することが予想される。そして、これらの「怪物化」したクリーチャーが突如、全て「絆魂」を持って攻撃してくるかもしれないのだ。
英雄的
『テーロス』ブロックの能力「英雄的」もまた、相性の良い能力の1つだ。プロツアー『ニクスへの旅』でスタニスラフ・ツィフカ選手がトップ8に入った際に使用した「赤白英雄的」デッキを見ていこう。
6 《山》 6 《平地》 4 《マナの合流点》 4 《凱旋の神殿》 -土地(20)- 4 《アクロスの十字軍》 4 《恩寵の重装歩兵》 4 《サテュロスの重装歩兵》 4 《密集軍の指揮者》 3 《モーギスの軍用犬》 1 《イロアスの英雄》 -クリーチャー(20)- |
4 《統率の取れた突撃》 4 《ドラゴンのマントル》 4 《神々の思し召し》 4 《船団の出航》 4 《パーフォロスの試練》 -呪文(20)- |
4 《ラゴンナ団の先駆者》 1 《モーギスの軍用犬》 2 《オレスコスの王、ブリマーズ》 2 《岩への繋ぎ止め》 4 《ヘリオッドの試練》 2 《槌の一撃》 -サイドボード(15)- |
《恩寵の重装歩兵》、《サテュロスの重装歩兵》、《密集軍の指揮者》......。どれも「英雄的」によって+1/+1カウンターを置く能力を持つクリーチャーだ。特に《密集軍の指揮者》は凄い。自軍のクリーチャー全てに+1/+1カウンターを置くことができるのだ。こうして強化された自軍が、全て「絆魂」を持って攻めこむ。きっととんでもない量のライフが得られるだろう。
《不動のアジャニ》
一挙に自分のクリーチャーに+1/+1カウンターを置くといえば、このカードほどの適任はないだろう。クリーチャーの数を並べるタイプのビートダウンでは十分に採用の可能性のあるこのカードもまた、《アブザンの戦僧侶》とは相性ぴったりのカードだ。《アブザンの戦僧侶》を出したうえで全体強化。あまりの軍勢と全てのクリーチャーが得る「絆魂」に、対戦相手はきっとたじたじだ。多分。
終わりに
いかがだっただろうか? リミテッドにおいて強力なことは疑いようがなく、構築戦においても可能性を感じさせる《アブザンの戦僧侶》。実際にスタンダードで活躍するかどうかは発売してみるまでわからないところはあるが、なにはともあれ期待したい1枚だ。
もう間もなく、9/20(土)~21(日)はプレリリース、そして9/26(金)には発売となる『タルキール覇王譚』。そしてその全貌がもうすぐ明かされる。今が1番わくわくする期間だ。プレビューカードと共に、未来のマジックに思いを馳せよう。
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