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シングルカードストラテジー:《荒廃鋼の巨像》
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シングルカードストラテジー
By 八十岡 翔太
大きい=強い
マジックをやっている人が1度は通ると思うこの図式。
自分も昔は《根切りワーム》や《サイの暴走》を使っていた事がありました。
皆さんは大きいクリーチャーといって何を思い浮かべますか? 《甲鱗のワーム》でしょうか?それとも《ニコル・ボーラス》でしょうか? 大きいクリーチャーと言ってもたくさんいますので、それぞれ違うものを思い浮かべると思います。
自分が真っ先に思い浮かべたのは《サルディアの巨像》です。
《サルディアの巨像》はマジックで最初に登場した巨像になり、独特なイラストからいまだにファンも多いクリーチャーでもあります。このイラストはかなり威圧感があり、今でもすぐイメージする事ができます。
残念ながら構築では活躍の場がほとんどありませんでしたが、それでも《チャネル》から出して《賦活》をつけたり、《動く死体》で釣って《麻痺》で起こしたりと、カジュアルではがんばって使われていた記憶があります。
茶単の時代
そこから5年の時を経てウルザズ・サーガに次の巨像が現れました。それが「コロ助」の愛称でも知られる、《ファイレクシアの巨像》です。
《ファイレクシアの巨像》は《サルディアの巨像》と比べて一回り小さいですが、コストが{7}と比較的安く、「3体以上にしかブロックされない」という実質ブロックされないような能力を持っています。
代わりに、アンタップする為のコストがマナからライフ8点というかなりのデメリットに変わっていますが、このウルザ・ブロックといえば《修繕》や《通電式キー》などの《ファイレクシアの巨像》をサポートするカードがあり、大量のマナを出せるアーティファクトや土地があったため茶単というデッキが存在し、活躍する事になりました。
12 《山》 7 《島》 4 《トレイリアのアカデミー》 -土地(23)- 3 《なだれ乗り》 1 《火口の乱暴者》 3 《ゴブリンの溶接工》 1 《銀のゴーレム、カーン》 1 《ワタリガラスの使い魔》 1 《チクタク・ノーム》 1 《ヴィーアシーノの異端者》 2 《ファイレクシアの巨像》 1 《ガラクタの壁》 -クリーチャー(14)- |
1 《大あわての捜索》 4 《修繕》 3 《弧状の稲妻》 4 《ギックスのかぎ爪》 4 《通電式キー》 4 《厳かなモノリス》 1 《ファイレクシアの処理装置》 1 《シタヌールのフルート》 1 《命綱》 -呪文(23)- |
1 《ゴブリンの溶接工》 2 《ヴィーアシーノの異端者》 1 《火口の乱暴者》 1 《弧状の稲妻》 1 《荒残》 1 《蒸気の突風》 2 《秘儀の研究室》 1 《押収》 1 《研磨石》 1 《エネルギー・フィールド》 1 《冬眠》 1 《ファイレクシアの処理装置》 -サイドボード(15)- |
13 《山》 6 《島》 4 《トレイリアのアカデミー》 1 《離れ島》 1 《薄煙の火口》 -土地(25)- 2 《ファイレクシアの巨像》 1 《火口の乱暴者》 -クリーチャー(3)- |
4 《修繕》 1 《天才のひらめき》 3 《弧状の稲妻》 4 《燎原の火》 4 《厳かなモノリス》 1 《ミシュラのらせん》 1 《ファイレクシアの処理装置》 2 《ギックスの指輪》 3 《束の間の開口》 4 《通電式キー》 3 《摩滅したパワーストーン》 2 《押収》 -呪文(32)- |
3 《ウェザーシード・フェアリー》 1 《シヴのヘルカイト》 1 《変異種》 4 《荒残》 2 《溶融》 2 《冬眠》 2 《押収》 -サイドボード(15)- |
1999年にあったプロツアー・ニューヨークでは、トップ8のうち5人が《修繕》デッキでした。《ファイレクシアの巨像》も大活躍だったに違いないでしょう。
歯と爪とダークスティールと
それから5年後、今までの巨像の常識を覆すものが出てきました。
それが《ダークスティールの巨像》です。
今までの2体とは違い、デメリットなんて持っていませんでした。それどころか、ダークスティール製なので破壊されないというメリットがつきました。もちろんのこと、トランプルも健在です。
これが出たときは自分も少し驚いた覚えがあります。{11}マナと今までと比べても更に重いとはいえ、破壊ではない除去があまりないスタンダードでは「出てしまったら勝ち」といっても過言じゃありませんでした。
そして《ダークスティールの巨像》を得た事で強くなったデッキがありました。そう、《歯と爪》デッキです。
15 《森》 1 《山》 4 《樹木茂る山麓》 -土地(20)- 4 《極楽鳥》 4 《ぶどう棚》 4 《ワイアウッドの共生虫》 4 《ウッド・エルフ》 4 《ヴィリジアンのシャーマン》 2 《ワイアウッドの伝令》 1 《ダークスティールの巨像》 3 《トリスケリオン》 2 《映し身人形》 1 《クローサの拳カマール》 -クリーチャー(29)- |
4 《頭蓋骨絞め》 4 《花盛りの春》 3 《歯と爪》 -呪文(11)- |
2 《隔離するタイタン》 1 《トリスケリオン》 2 《忘れられた古霊》 4 《酸化》 2 《帰化》 4 《紅蓮地獄》 -サイドボード(15)- |
これは「エルフ&ネイル」というダークスティールが出てから成立したデッキで、当時のアメリカ選手権で優勝しています。
大量のエルフと《頭蓋骨絞め》でデッキを掘り進めて《歯と爪》でフィニッシュ、という流れがメインで、このころはまだ《頭蓋骨絞め》の強さが目立ち、《歯と爪》や《ダークスティールの巨像》などはおまけ程度でした。
しかし、基本セットが第8版から第9版になり、ウルザランドが再録された事により単純に《歯と爪》を撃つデッキが出てきました。
4 《森》 1 《島》 4 《ウルザの魔力炉》 4 《ウルザの鉱山》 4 《ウルザの塔》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《先祖の院、翁神社》 1 《すべてを護るもの、母聖樹》 -土地(23)- 4 《桜族の長老》 2 《永遠の証人》 1 《ヴィリジアンのシャーマン》 1 《ダークスティールの巨像》 1 《隔離するタイタン》 1 《トリスケリオン》 1 《鏡割りのキキジキ》 -クリーチャー(11)- |
4 《師範の占い独楽》 3 《団結のタリスマン》 4 《森の占術》 4 《刈り取りと種まき》 4 《歯と爪》 3 《卑下》 2 《忘却石》 2 《精神隷属器》 -呪文(26)- |
2 《落葉の道三》 1 《映し身人形》 1 《真髄の針》 3 《赤の防御円》 2 《帰化》 1 《テル=ジラードの正義》 1 《防御の光網》 2 《変容する境界》 1 《精神隷属器》 1 《平地》 -サイドボード(15)- |
日本選手権で優勝した諸藤さんのデッキ『レイザートロン』です。
最速で4ターン目に出てくる《ダークスティールの巨像》&《鏡割りのキキジキ》のペアには《神の怒り》すら通用せず、次のターンには対戦相手を殴り倒してくれます。
ヴィンテージでも《修繕》から1ターン目に持ってきたりとスタンダードだけではなくいろんな環境をまたいで活躍した1枚でした。
一撃粉砕の新顔
そして更に8年の時を経て、アーティファクト界に新たな巨像が加わる事になりました。
それが《荒廃鋼の巨像》です。
11/11・トランプル・「破壊されない」の部分は同じですが、{12}マナと《ダークスティールの巨像》より1マナ重い代わりに、感染を得ました。
感染を得たということがどれくらい強いかというと、早い話が、
「1回殴ったら対戦相手が毒死してしまいます」
という事です。
今まで1回殴った(攻撃した)だけで対戦相手を倒せるクリーチャーなんて、ほとんど存在しませんでした。強いて挙げるなら《触れられざる者フェイジ》、《縫合グール》や《セラのアバター》ぐらいでしょうか。しかしフェイジは重いコストを踏み倒せませんし、グールは墓地にいろいろ落としてから出さなければならず、アバターに関してはライフが減っているだけで倒せませんでした。あの《引き裂かれし永劫、エムラクール》でさえ、殴った返しに負ける事もあるぐらいです。
それだけ、一撃で対戦相手を倒せるというのは魅力的な事なのです。{11}マナが{12}マナになったデメリットはあってないようなもので、それに対して得たものはかなりのものだと思います。もし《ダークスティールの巨像》が相手を守っていたとしても、《荒廃鋼の巨像》なら感染の力をもって一撃で倒してくれます。
これからはレガシーで《騙し討ち》デッキのお供や、ヴィンテージでの《修繕》からの持ってくるカードとしても使われる事になると思いますが、とりあえずスタンダードでデッキを1つ紹介しようと思います。
4 《島》 4 《平地》 4 《氷河の城砦》 4 《天界の列柱》 4 《金属海の沿岸》 2 《地盤の際》 4 《墨蛾の生息地》 -土地(26)- 1 《荒廃鋼の巨像》 -クリーチャー(1)- |
4 《新たな造形》 3 《糾弾》 3 《未達への旅》 3 《広がりゆく海》 4 《マナ漏出》 2 《否認》 2 《主の呼び声》 3 《審判の日》 2 《ジェイス・ベレレン》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 2 《エルズペス・ティレル》 2 《ギデオン・ジュラ》 -呪文(33)- |
3 《呪文貫き》 1 《糾弾》 2 《瞬間凍結》 1 《否認》 1 《未達への旅》 3 《存在の破棄》 3 《精神壊しの罠》 1 《審判の日》 -サイドボード(15)- |
スタンダード版《変身》といったところでしょうか。基本的には青白の動きをしつつ、隙をみて《新たな造形》を《墨蛾の生息地》に打ち、《荒廃鋼の巨像》を出すデッキです。
ひとたび《荒廃鋼の巨像》が出てしまえば、除去できるのは《未達への旅》《糾弾》と《精神を刻む者、ジェイス》ぐらいです。
このデッキのいい所は、今一番強いと言われている《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》とスピード勝負もできるということです。
《荒廃鋼の巨像》を先に着地させてしまえば、返しに《原始のタイタン》を出された所で何も怖くはありません。《精神を刻む者、ジェイス》でも《審判の日》でも決まりですし、むしろ何もなくてもこちらが有利だと思います。
今まではいくら感染クリーチャーが存在するとはいえ、対戦相手を毒殺する機会は滅多にありませんでした。
しかし、《荒廃鋼の巨像》が現れたことにより、これからは毒殺する事やされる事が増えるかもしれません。
もしかしたらレガシー環境では「無限ライフしたのに毒殺された」なんて事が起きるかもしれませんね。
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