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佐藤レイの「一歩踏み込む!」リミテッドの極意
第13回:もっと勝てる!『ファイレクシア:完全なる統一』シールド
皆さんお久しぶりです、佐藤レイです。
リミテッド・フォーマットではありませんが、先日の「プレイヤーズコンベンション横浜2023」にて行われた「チャンピオンズカップファイナル サイクル2」で優勝することができました!
タイトルを獲るというのはなかなかマジック人生でもそう多くないことであり、それが日韓から集められた最高峰のプレイヤーたちが集う大会だとすると、嬉しさも格別です。
5月に行われる「プロツアー2」、そして9月に行われる世界選手権の権利を獲得することができました。そちらもいい成績が出せるよう日々研鑽していければと思いますので、応援よろしくお願いします!
ということで本日は『ファイレクシア:完全なる統一』リミテッド、その中でもシールド・フォーマットについて解説していきます。
ドラフトに関しては、行弘さんの「行弘賢のよくわかる!リミテッド講座 第52回:『ファイレクシア:完全なる統一』ドラフト攻略」と、市川さんの「市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー・ファイレクシア 後編」をぜひ読んでみてください。
今回は2月のMTGアリーナにおける予選ウィークエンドのフォーマットが両日ともにシールドだったので、それに向けて練習した際に感じた雑感の共有、それから同大会で上位入賞したデッキを見ていきます。
皆さんが「もっと勝てる」ように「一歩踏み込んでいく」ので、ぜひお付き合いください!
『ファイレクシア:完全なる統一』シールド雑感
どんな環境か
『ファイレクシア:完全なる統一』シールドは、ドラフト環境よりも若干の低速化はしているものの、基本はかなり高速な環境となります。
《這い回る合唱者》、《信念堅い決闘者》、《腐り腹のネズミ》、《枝枯らしの忍び寄り》などの毒性を持つクリーチャーたちに序盤から対応する必要があり、ルースにプレイしていく(序盤を犠牲にした上で中盤以降に巻き返す)ことが難しいため、環境が重いカードに頼ったコントロールデッキの存在を許してくれません。
2マナ域の数が重要で(後手2ターン目の時に特にパスしたくない)、少なくとも5枚以上、できれば6枚以上欲しいところです。逆に序盤に対するガードがある程度高ければ、ミッドレンジのデッキの構築も可能です。
毒勝ちについて。毒は寄せろ
毒カウンター10個の蓄積による勝利は強力な戦略で、MTGアリーナのBO1シールドにおいては特によく使用しました。7勝した色の組み合わせは白黒が一番多かったです。
なので、この環境のシールドにおいてはデッキを構築する段階でまず毒勝ちできるプールかを確認することをおすすめします。
具体的には白と黒の1・2マナ域のクリーチャーを見ていきましょう。毒性を持った優秀なクリーチャーたちがそれなりにいるのなら、積極的に狙っていきましょう。逆にそこまでなら諦めることも大切です。
毒カウンターを上手く利用したデッキの構築に関して上手く構築するコツは、「なんとなく狙わない」ことです。毒による勝利をメインにするのなら、かなり気合を入れた(毒をメインに寄せた)構築にする必要があります。色の組み合わせとしては白黒か緑白になることが多いでしょう。毒性を持たないクリーチャーの採用は本当に優秀なカードだけにしたいです。
また寄せた毒デッキは圧倒的な爆発力がありますが、非常にもろい側面もあります。タフネス1のクリーチャーが多く、《燃えがら斬りの荒廃者》や《危険な爆風》などが厳しく、対策もされやすいです。
なので、それなりに強力な毒デッキが組めたとしても、プールが許すのであればそれ以外にもデッキを組んでおくことをおすすめします。先手番のときだけ使用する、などという使い方も良いでしょう。
毒性を持つカードと持たないカードは用途が明確に異なっているので、この環境では意外にデッキを複数個用意することが難しくありません。全く意識していなかったという方はぜひ試してみてください。
7 《森》 1 《沼》 6 《平地》 2 《広漠なる変幻地》 1 《美麗聖堂》 -土地(17)- 1 《進化する適応体》 1 《信念堅い決闘者》 1 《顎骨の決闘者》 1 《耐え忍ぶカー、ケンバ》 1 《硬化した屑鉄喰らい》 1 《砂丘動かし》 1 《肉剥ぎの猛禽》 1 《胆液吐きのバジリスク》 1 《教化案内人》 1 《聖堂の導き手》 2 《非道なティラナックス》 -クリーチャー(12)- |
1 《黒の太陽の黄昏》 1 《タイヴァーの抵抗》 1 《骨化》 1 《次元の撹乱》 2 《苦痛ある選定》 1 《伝染する一噛み》 1 《無情な捕食》 1 《迷宮の外套》 1 《病毒の繁殖》 1 《肋骨艇》 -呪文(11)- |
-サイドボード(0)- |
ぼくが2月の予選ウィークエンドで初日に使用して7-0することができた毒デッキです。《進化する適応体》《耐え忍ぶカー、ケンバ》《硬化した屑鉄喰らい》といった本当に優秀なクリーチャー以外は毒性を持つクリーチャーで構成されています。
毒勝利がメインだと、2マナ域以下の毒性持ちクリーチャー4・5枚、トータルでの毒性持ち生物が10枚以上は欲しい印象です。このデッキだと少し足りていませんが、その分をタッチ黒の除去の強さでカバーしています。
8 《平地》 7 《沼》 1 《ドロス窟》 -土地(16)- 1 《離反ダニ、スクレルヴ》 1 《切歯の滑空機》 3 《腐り腹のネズミ》 2 《マイアの改宗者》 1 《別館の歩哨》 2 《肉剥ぎの猛禽》 1 《骨拾いのスカージ》 1 《教化案内人》 2 《磁器の盲信者》 1 《ドロスの魔神》 1 《聖堂の導き手》 1 《生体解剖の福音者》 -クリーチャー(17)- |
1 《ドロスの頭蓋爆弾》 1 《注入用義腕》 1 《盲信者の確信》 1 《聖堂の頭蓋爆弾》 1 《骨化》 1 《不死性の提供》 1 《ダニの突撃》 -呪文(7)- |
-サイドボード(0)- |
こちらは井川選手がウィークエンド予選の2日目で4勝した白黒の毒デッキです。7勝こそできなかったものの、優秀なクリーチャーたちに支えられた強力なデッキに仕上がっています。
《離反ダニ、スクレルヴ》《磁器の盲信者》《生体解剖の福音者》などの強力な専用カードたちで、スペルはそこまでなくともこじ開けられる構成になっています。
デッキを変える
シールドはあらゆるフォーマットで唯一メインデッキよりもサイドボードの方が枚数が多いフォーマットです。カードプール全てを駆使して戦っていきましょう。
時にはカードを1・2枚入れ替えるのではなく、デッキごと替えるということも有力な選択肢になります。この環境は毒勝ちという違うコンセプトがあることが要因で、少しだけいつもの環境よりもデッキを2個以上作るのが好ましい環境のように感じています。
デッキを変えることが有効なアプローチであるのは、
A:先手、後手でゲーム感が大きく異なる
B:特定のカードに対して、特定のカードが有効である
といった状況です。
先手だけ白黒、赤白などの押し切るアーキタイプにする。逆に先ほど挙げた《燃えがら斬りの荒廃者》《危険な爆風》などで対策されることが予測される、あるいはされていたために白黒毒から他のデッキに変える(相手のサイドボーディングを無駄にさせたい)などもありますね。
それからこの環境ですと、エンチャント、アーティファクト関連も多いです。相手のデッキに《アージェンタムのマスティコア》や《鉱炉と前線の剣》、《ウラブラスクの溶鉱炉》があったため、複数の《爆片投げ》や《赤の太陽の黄昏》などのある赤に色変えをするなどということもあるでしょう。
大切なのは「あらかじめ考えておくこと」です。実践におけるサイドボードの時間はそこまで多くなく、状況に出くわしてから対応するのでは遅すぎます。
毒デッキを組んでいるときに「相手のデッキに全体1点火力が豊富にあったらどう対応するか」、プールにアーティファクト破壊があったときに「《アージェンタムのマスティコア》や《鉱炉と前線の剣》出されたらこの形にするか」と考えておくのです。
8 《島》 6 《平地》 1 《広漠なる変幻地》 1 《美麗聖堂》 -土地(16)- 1 《離反ダニ、スクレルヴ》 1 《大顎の大司法官》 2 《別館の歩哨》 1 《正典の執行者》 1 《胆液の合成者》 1 《大気の外科医》 2 《ギタクシア派の猛禽》 1 《金属のうろつくもの》 -クリーチャー(10)- |
1 《聖堂の頭蓋爆弾》 1 《有貌体の向上》 1 《次元の撹乱》 1 《万難を排して》 1 《呪い金の浮遊翼》 2 《ミラディンのバルディッシュ》 1 《共同魂の刃》 1 《マルカトールの眼》 2 《眩惑の妙薬》 1 《不完全を拒絶せよ》 1 《タミヨウの固定器》 1 《実験的占い》 -呪文(14)- |
-サイドボード(0)- |
7 《森》 7 《島》 2 《山》 1 《広漠なる変幻地》 -土地(17)- 1 《大気の外科医》 1 《胆液の合成者》 1 《腐れ花》 1 《銅の足長虫》 2 《ギタクシア派の猛禽》 1 《人喰い梢》 1 《胆液吐きのバジリスク》 1 《迷宮壊し、ミグロズ》 1 《格子刃のカマキリ》 1 《猛毒の非道者》 2 《油喰らいのトロール》 1 《空鎌の飲み込むもの》 1 《燃えがら斬りの荒廃者》 2 《血清核のキマイラ》 -クリーチャー(17)- |
1 《焼炉の頭蓋爆弾》 1 《実験的占い》 2 《眩惑の妙薬》 1 《タミヨウの固定器》 1 《緑の太陽の黄昏》 -呪文(6)- |
-サイドボード(0)- |
7 《山》 6 《平地》 1 《美麗聖堂》 1 《自律焼炉》 1 《広漠なる変幻地》 -土地(16)- 1 《離反ダニ、スクレルヴ》 1 《舞い降りる見張り》 1 《大顎の大司法官》 2 《別館の歩哨》 1 《正典の執行者》 1 《騒音の悪獣》 1 《鋸刃の餓鬼》 1 《アクシオムの彫版師》 2 《爆片投げ》 3 《刃継ぎの有貌体》 1 《レジスタンスの空番》 1 《焼炉の徘徊者》 -クリーチャー(16)- |
2 《聖堂の頭蓋爆弾》 1 《次元の撹乱》 1 《万難を排して》 1 《呪い金の浮遊翼》 2 《ミラディンのバルディッシュ》 1 《呪い金の矛槍》 -呪文(8)- |
-サイドボード(0)- |
シールドの名手、世界で最もシールドの強いプレイヤーとして、多くのプロから名前を挙げられる石村信太朗 a.k.a rizer選手は、1つの大会、1つのプールでデッキを3つ作り上げています。
メインは青白をプレイしつつも、2戦目以降後手のときに相手によって青緑タッチ赤に変えていたとのことです。実際は使わなかったけれども、相手が青いデッキだったら使う赤白もあらかじめ構築されていたとのことです。恐ろしいほどの想像力と構築力ですね。
皆さんも参考にして、プール全体でどういう風に戦っていくのかということを意識して、デッキ構築をしてみてください。
予選ウィークエンド7勝デッキ紹介
ここからは先月に行われたMTGアリーナの予選ウィークエンドにおいて、見事2日目に7勝したデッキ、プレイヤーを紹介します。
7 《山》 8 《島》 1 《外科区画》 -土地(16)- 1 《ぎらつく予見者》 1 《爆片投げ》 1 《金属のうろつくもの》 1 《ギタクシア派の猛禽》 2 《煙突の扇動者》 1 《擾乱のドミヌス、ソルフィム》 1 《焼炉の徘徊者》 -クリーチャー(8)- |
2 《外科の頭蓋爆弾》 2 《呪い金の斬撃》 1 《実験的占い》 1 《血清の罠》 2 《呪い金の矛槍》 1 《青の太陽の黄昏》 1 《歪められた好奇心》 2 《眩惑の妙薬》 1 《完成化した精神、ジェイス》 1 《生体解剖医の見識》 1 《溶鉄の咎め》 1 《自律焼炉》 -呪文(16)- |
-サイドボード(0)- |
6 《山》 6 《島》 3 《平地》 1 《外科区画》 -土地(16)- 1 《ぎらつく予見者》 1 《ギタクシア派の猛禽》 2 《煙突の扇動者》 1 《擾乱のドミヌス、ソルフィム》 1 《焼炉の徘徊者》 -クリーチャー(6)- |
2 《外科の頭蓋爆弾》 2 《呪い金の斬撃》 1 《実験的占い》 2 《呪い金の矛槍》 2 《骨化》 1 《青の太陽の黄昏》 1 《次元の撹乱》 1 《歪められた好奇心》 2 《眩惑の妙薬》 1 《完成化した精神、ジェイス》 1 《生体解剖医の見識》 1 《予言のプリズム》 1 《自律焼炉》 -呪文(18)- |
-サイドボード(0)- |
1人目は現世界王者のネイサン・ストイア/Nathan Steuer選手。
《青の太陽の黄昏》《完成化した精神、ジェイス》といったボムレアを活かした青赤のミッドレンジデッキです。《呪い金の斬撃》などの軽い除去で序盤を捌きつつ、《歪められた好奇心》《生体解剖医の見識》といったカードでアドバンテージをとっていく綺麗なデッキになっています。
相手によって(おそらく緑の重いクリーチャーやプレインズウォーカーが使用されているデッキでしょう)2枚の《骨化》と《次元の撹乱》を入れたタッチ白のバージョンに変えていたとのことです。
7 《島》 8 《森》 1 《山》 -土地(16)- 2 《ぎらつく予見者》 2 《進化する適応体》 1 《錆蔦の培養者》 1 《渇き根》 1 《大気の外科医》 1 《胆液の合成者》 1 《かき鳴らし鳥》 1 《砂丘動かし》 1 《伝染病のヴォラック》 1 《胆液吐きのバジリスク》 1 《汚れた観察者》 1 《疫病の看護者》 1 《血清核のキマイラ》 1 《沈黙を破る者、スラーン》 -クリーチャー(16)- |
2 《呪い金の斬撃》 1 《金線の酒杯》 1 《青の太陽の黄昏》 1 《ファイレクシアの大地図》 2 《生体解剖医の見識》 1 《向上した精霊信者、ニッサ》 -呪文(8)- |
-サイドボード(0)- |
2人目がセス・マンフィールド/Seth Manfield選手。元マジック・プロリーグ(MPL)所属選手かつプロツアー王者のこちらも、ネイサン選手同様にアメリカを代表する超強豪プレイヤーです。
《向上した精霊信者、ニッサ》《沈黙を破る者、スラーン》《青の太陽の黄昏》といった超強力なカードがもちろん目につきますが、それ以外にも《進化する適応体》2枚からなる増殖を上手く使ったデッキとなっています。
このデッキの《金線の酒杯》は10点をよく飛ばしたのだろうなと想像がつきます。
ネイサン選手のデッキ同様、2枚の《呪い金の斬撃》や《ぎらつく予見者》、《生体解剖医の見識》といったパーツから、このデッキも毒を超えてきたミッドレンジなのだなという印象を受けました。
4 《沼》 4 《山》 4 《平地》 3 《自律焼炉》 1 《広漠なる変幻地》 1 《記念ファサード》 -土地(17)- 2 《大顎の大司法官》 1 《爆片投げ》 1 《歩行型建造物》 1 《刃継ぎの有貌体》 1 《カルドーサの哄笑者》 2 《炭鍛冶》 2 《煙突の扇動者》 2 《焼炉の徘徊者》 -クリーチャー(12)- |
2 《滅殺の眼差し》 1 《逆巻く貯蔵器》 1 《骨化》 1 《胆液まみれ》 1 《逆棘の叩拳》 1 《予言のプリズム》 1 《完成化のタブレット》 1 《刃砦の戦鞭》 1 《呪い金の浮遊翼》 1 《溶鉄の咎め》 -呪文(11)- |
-サイドボード(0)- |
そして3人目がyami選手。日本人の方でオンラインの大会で多くの実績を挙げており、予選ウィークエンドも複数通過している強豪プレイヤーです。
先ほどの2人と比べるとデッキ内に強力なレアもなく、ただただこのデッキで通過したということに驚嘆するばかりです。限られたプールでの素晴らしい構築、そしてプレイだったのでしょう、デッキリストから本当にやり尽くしたという意思を感じます。
勝ち進んだデッキリスト3つ全てから「序盤に強く、かつアドバンテージを取れる構成になっている」ということが見受けられます。
まず高マナの少なさが目立ちます。どのリストも6マナ以上のカード採用はされておらず(《向上した精霊信者、ニッサ》は5マナでプレイできる)、5マナ域も3・4程度枚となっており、これは従来のシールド環境に比べるとかなり軽量化されている構成になっています。シールドだからといってもっさりさせすぎないことが重要だということがよくわかります。
それから《呪い金の斬撃》などの軽い除去があり低マナ域のカードも充実しつつも、それで押し切るというよりは、そこから《生体解剖医の見識》や《炭鍛冶》などのアドバンテージカードにつなげる構成になっているという構成になっています。
この構成が毒デッキなどを倒してきたポイントなのだろうと推察できます。皆さんもこの環境のシールドを組むときに参考にしてみてください。
個人的には強力なプールからしっかりと強力なデッキを組み上げ勝利したネイサン選手、セス選手はもちろんですが、あのプールで権利をつかみ取ったyami選手のすさまじさが非常に印象的だった大会です。改めておめでとうございます!
今回は『ファイレクシア:完全なる統一』シールドについて解説させていただきました! 皆さんの参考になるところがあれば嬉しいです!
もしよければ、Twitter(@r_0310)などでご意見やご感想をお聞かせください!
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
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