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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

白黒天使:マスターピース、到来(スタンダード)

岩SHOW

 『ニューカペナの街角』の物語の中心にいるのはジアーダだ。

 一見、人間の少女のように見える彼女は、触れたものを光素に変換する力を持つ。これは天使の肉体より得られる液体であり、傷を癒す作用がある。

 ニューカペナの各一家はそれぞれにこの光素を所持しているが、その量には限りがある。ただひとつ、舞台座一家だけはジアーダを匿い、彼女の能力で無限の光素を得ていた……というお話。

 ジアーダをカード化した《希望の源、ジアーダ》は天使デッキにとっての、まさにマスターピースと言ってよい、最後に欲するものだった。

 デッキリストを実際に見ながらこの新たな天使について考察を深めよう。

Clay0301 - 「オルゾフ天使」
MMA Ma Melee Arena MAI#1 STANDARD 3勝0敗 / スタンダード (2022年5月1日)[MO] [ARENA]
6 《平地
3 《
4 《砕かれた聖域
4 《陽光昇りの小道
1 《フロスト・ドラゴンの洞窟
3 《目玉の暴君の住処
1 《皇国の地、永岩城
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼

-土地(23)-

4 《希望の源、ジアーダ
4 《若年の戦乙女
4 《鼓舞する監視者
4 《正義の戦乙女
1 《軍団の天使
2 《忘れられた大天使、リーサ

-クリーチャー(19)-
4 《消失の詩句
1 《ハグラの噛み殺し
1 《シュタルンハイムの解放
3 《ファーヤの報復
3 《エメリアの呼び声
2 《冥途灯りの行進
1 《不憫な悲哀の行進
3 《放浪皇

-呪文(18)-
2 《傑士の神、レーデイン
3 《軍団の天使
3 《強迫
1 《侮辱
2 《真っ白
2 《食肉鉤虐殺事件
2 《勢団の銀行破り

-サイドボード(15)-
MTGMelee より)

 

 天使のメインカラーである白とサブカラーとも言える黒を組み合わせた、スタンダードの「オルゾフ(白黒)天使」デッキだ。

 天使は多元宇宙のあらゆる次元に生息しており、それぞれに性質は多少異なるが、飛行を持つクリーチャーであるという共通点を持つ。

 『カルドハイム』にはこのタイプを参照するカードがあり、中でも《正義の戦乙女》は天使がライフをもたらし、最終的にはクリーチャー強化にもつながる強力な1枚。天使デッキと言えばこれのポテンシャルを最大限発揮させるものと認識しても間違いではない。

 後続の天使により強化される《若年の戦乙女》、天使が除去になり二段攻撃持ちにもなる《ファーヤの報復》と、デッキを組みたくなるカードは揃っている。

 実際に前環境までのスタンダードにおいて天使デッキを愛用するプレイヤーは存在したし、デッキリストも時折目にすることがあった。しかし大事なことは、その数は多くなかったということ。なぜか?

 さまざまなセットで天使カードが収録されていたものの、それを主役とした部族デッキを組むには……必要マナが軽い天使が欠けていたのだ。

 2マナ以下の軽い天使が少ないのであれば、3マナ以上の面々でも戦えるようにデッキを工夫するという手もある。これが緑や赤といった色ならクリーチャーや宝物からマナを得るという手法を用いることができるが……天使の色は白と黒、マナ加速は得意としていない。

 そこに舞い降りたのが《希望の源、ジアーダ》だ。まさしく彼女こそが天使デッキの希望である。まず軽い。ジャスト2マナだ。その軽さにして2/2で飛行と警戒を持つ、伝説であることを加味しても素晴らしいスペックである。

 そしてマナ問題の解決。彼女は天使を唱えるためにのみ使える{W}を加える、マナクリーチャーでもあるのだ。純粋な白単色でここまでストレートなマナを加えるクリーチャーというのは非常に稀有で、たとえその用途が絞られているとしても価値のある能力なのである。

 これらに加えて、彼女に続いて戦場に出てくる天使には、自軍の天使1体につき1個の+1/+1カウンターが置かれる。こ、この上、打点にまで貢献するだとォォッ!? すごいカードが出てきたものだ。

 天使デッキを組むのであれば絶対に外せない、伝説であっても4枚投入するリスクを背負うだけの価値はある。ジアーダによって滞りなく滑らかに展開され、しかもサイズも強化される《軍団の天使》を想像してみてほしい。いやはや、心底遭遇したくない光景だよ。

 ジアーダ以外にも新天使の中から《鼓舞する監視者》が名を連ねていることにも要注目だ。

 3マナ2/1と、飛行持ちとはいえサイズは同コストのクリーチャーの中でも低スペックな方ではあるが……そこはジアーダで強化してやることでどうとでもなろうというもの。サイズの問題をカバーできるのであれば、1点回復と1枚ドローのもたらす恩恵がどれほど大きいことか。たかが1点、《正義の戦乙女》がいればされどの1点。手札を減らさずに天使絡みのシナジーの恩恵を受けられる、贅沢な話だよまったく。

 ここにきて空席を埋める待望の1枚、《希望の源、ジアーダ》が到来。《消失の詩句》《ファーヤの報復》など元々除去が強く、クリーチャーデッキ相手にハマった時には手の付けられない強さを発揮するデッキだった白黒の天使。その安定性が軽い「マナ天使」を得たことで向上したら……どれだけの天使がスタンダードの空を覆うだろうか?

 ニューカペナにてまさかの躍進を遂げそうな、期待と希望に満ちたアーキタイプだね。

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