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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ジャンド・ゴブリン(モダン)
マジックほど歴史の長いコンテンツとなれば、セルフオマージュや遊び心にあふれたリメイクなどが最新のカードには見られるものだ。
通常のセットでは露骨なパロディーカードはあまり収録しにくいものではるが、スタンダードと無関係のセットであれば問題なし。統率者系のセットか、あるいはモダンホライゾン系がその典型例だね。これらのセットには元ネタとなるカードがある、知る人が見ればニヤリとしそうなカードがいくつも収録されている。
『モダンホライゾン2』において、最も目立つオマージュやパロディと言えるカードは……《下賤の教主》だな。
これの元ネタは《貴族の教主》。
初出は『コンフラックス』で、アラーラ次元がまだ5つの断片に分かれていた頃、バントという白青緑3色のマナのみが存在する断片に属する人間をカード化したものだ。バントの聖なる木立を護っている彼女は、バントを構成する3色を生み出すとともに、単騎で攻撃するクリーチャーを英雄として讃える賛美という能力でバックアップする。バントらしさを体現したこのカードは非常に強力な1マナのマナ加速担当クリーチャーであり、リリースから長い年月を経ても多くのデッキを今なお支えている。
で、これを下敷きにしたのが《下賤の教主》。貴族に対して真逆と言える下賤! そして人間の女性ではなくゴブリンの男性で、イラストは杖の構えが左右逆になっている。さらにその背後の風景は穏やかな木立である貴族に対してこちらは原生林と火山という荒々しいテイスト。能力は生み出すマナがバントではなくジャンドのものとなっており、より攻撃的なカラーリング。そして賛美能力を持っている……弱肉強食のジャンドにおいて他者を賛美する文化はなさそうだが、アラーラの断片が併合されてその文化がジャンドにも流入したと捉えると良いだろうか。フレイバーテキストも聖なる木立に対して臭い沼を護っているときたもんだから、徹底して真逆を走っている。なのにイラストを手掛けたアーティストは《貴族の教主》と同じマーク・ザグ/Mark Zug氏というのが完成度高いよね。
強力な《貴族の教主》が生み出すマナの色が異なるものになったとあって、この《下賤の教主》もモダンなどの環境で多くのマナ加速を必要とするクリーチャーデッキの助けとなるだろう。その典型的な例を紹介したいなと探していたところ……おあつらえ向きなデッキがあるじゃないか。
ということで、今日はモダンの「ジャンド・ゴブリン」を見ていただこう!
2 《山》 1 《沼》 2 《血の墓所》 2 《踏み鳴らされる地》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《樹木茂る山麓》 4 《婆のあばら家》 4 《魂の洞窟》 -土地(21)- 4 《下賤の教主》 2 《スカークの探鉱者》 4 《人目を引く詮索者》 2 《モグの戦争司令官》 2 《飛び道具の達人》 4 《ボガートの先触れ》 4 《ゴブリンの女看守》 1 《ゴブリンの酋長》 1 《ゴブリンの戦長》 1 《パシャリク・モンス》 3 《ゴブリンの首謀者》 2 《投石攻撃の副官》 2 《鏡割りのキキジキ》 -クリーチャー(32)- |
4 《霊気の薬瓶》 3 《英雄たちの送り火》 -呪文(7)- |
2 《ゴブリンのクレーター掘り》 2 《激情》 3 《大祖始の遺産》 1 《戦慄掘り》 3 《血染めの月》 4 《虚空の杯》 -サイドボード(15)- |
《下賤の教主》がゴブリンであることを活かして、ゴブリンデッキの1マナ域になってもらおうという、至極当然といえば当然なコンセプトで組まれたリストだ。
ゴブリンという種族は赤がメインカラーだが、黒や緑にもちらほらとその姿が見られる。モダンであれば多色土地が豊富なので、緑の1マナクリーチャーをゴブリンデッキに足すのは無茶な話ではない。《魂の洞窟》という5色土地もあるからね。
で、わざわざ緑を足してまでゴブリンデッキにマナ加速を採用する意味があるのかというと、これが大アリ。同種間で形成されるシナジーを重視したゴブリンデッキはマナをよく食うもので、マナなくしてその爆発力は発揮できない。《霊気の薬瓶》で展開をバックアップするものだが、これ4枚だけでは心もとない。《スカークの探鉱者》というマナ加速もあるが、使い捨てであるため気軽に2ターン目に3マナのゴブリンを出すということは狙いにくい。
使い減りしない教主の登場は、ゴブリンがまさしく望んでいたもの。薬瓶&教主の8枚体制で、1ターン目がかなり安定するようになったというわけだ。
ゴブリンをワラワラ並べて《ゴブリンの酋長》で強化して殴るという、アグレッシブな展開も狙えるものではあるが、この手のゴブリンデッキはどちらかというとそのような勝ち方ではなくシナジーをより重視し、トドメはコンボで刺すというのが得意だ。
具体的に説明すると、カード2枚で瞬殺コンボが完成する。《人目を引く詮索者》と《ボガートの先触れ》だ。
詮索者がすでに戦場にいる状況で先触れを出し、その能力でライブラリーの一番上に《鏡割りのキキジキ》を置く。
詮索者はライブラリーの一番上を公開し、そこにあるゴブリンを唱えることが可能というアドバンテージ源。そして同時に、そのゴブリンの起動型能力を持つこともできる。キキジキの能力を得て、コピーであるトークンを生成可能になるので、この能力で自分自身のコピーを生み出す。詮索者コピーは速攻を持っており、これでまた自身のコピーを、と好きなだけ詮索者のコピーを生みだしてから、最後に先触れをコピーする。
これの能力で《投石攻撃の副官》を置いたら、あとは大量のコピーを生け贄に捧げまくって対戦相手のライフを0にする。
対戦相手のライフがどれだけあろうとも2枚で勝てるという、非常に優秀なコンボ。これを教主のマナで1ターンでも早く決めようと言えば、マナ加速のありがたみは分かってもらえるよね。
《ゴブリンの首謀者》で手札を補充することで長期戦にも強く、《ゴブリンの女看守》で状況に合致したゴブリンを持ってくることで臨機応変に戦えるのもゴブリンデッキの強み。
《飛び道具の達人》で相手に干渉もでき、《モグの戦争司令官》や《パシャリク・モンス》でトークンを用意して耐えるという戦い方も可能なので、対クリーチャーデッキでも結構強いぞ。
サイドボードには《激情》が入ったことで、横並びをまとめて焼き払うなんてプレイも飛び出しそうだ。
『モダンホライゾン』で大きく部族としてプッシュされ、『モダンホライゾン2』では《下賤の教主》という待望の1枚を手に入れたゴブリン。モダンやレガシーで、また暴れ出しそうな予感だ。
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