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2024年5月13日のパウパーの禁止についての説明

Gavin Verhey
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2024年5月13日

 

 やあみんな! マジックの主任デザイナーにしてパウパー・フォーマット委員会の一員である、ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyだ。パウパー・フォーマット委員会は、パウパー環境と禁止カードのリストを監視するグループだ。世界中から任命された6人で構成される私たちは、常にパウパーに関するデータを精査し、環境について議論し、このフォーマットに変更を加えるかどうか決定している。

 早速今回の変更を伝え、その理由に切り込んでいこう。《きらきらするすべて》はパウパーで禁止される。この変更はただちにテーブルトップで適用され、まだMagic Onlineに適用されていない場合は、本日中に適用される。


 なぜこのカードなのか? なぜこのカードだけなのか? すべてお答えしよう。

 まずは前回の改訂を振り返ってみよう。12月の改訂で、私たちは赤のデッキを後退させるため《僧院の速槍》を禁止した。赤の速度を下げる施策は『ダブルマスターズ2022』の頃から1年をかけてじっくり取り組んできており、その結果強すぎることはなくなったものの、極端な展開が多すぎた。私たちはその状況を少し抑えるために《僧院の速槍》を禁止したのだ。そのとき私たちは、《きらきらするすべて》について以下のように言及した。

 「親和は非常に長い間パウパーでプレイされてきた。《エイトグ》のような禁止にも生き残り、その過程で新しいおもちゃを手に入れた。最近では《きらきらするすべて》が、《羽ばたき飛行機械》や《ジンジャーブルート》につけていきなり強打を叩き込むことができる青白バージョンでデッキに新たな風を吹き込んだ。」

 「(中略)さらに、アーティファクトと戦う手段や、《きらきらするすべて》がついているクリーチャーを殺すだけの手段に関しても、多くのサイドボードの選択肢がある。赤が少し弱体化すれば、親和対策にサイドボードの枠がいくつか空くはずだ。クリーチャー除去呪文を4枚増やすだけでも、この構築に対抗するための大きな助けになる。」

 「最終的に、私たちは今のところ親和を維持し、赤単へのこの変更でどうなるかを見て、これがどうなるかによって将来のアップデートを検討することにした。」

 そう、「将来のアップデート」がやってきたんだ。

 前回禁止改訂が行われて以来、《きらきらするすべて》は「白青親和」だけでなく「青赤白親和」といった他の構築にも見受けられるようになっている。さらに「親和」の枠を飛び越えて「赤白シンセサイザー」デッキにも採用されている。《きらめく鷹》に《きらきらするすべて》をつけていきなり8点、というのもかなりの威力だし、ゲームが長引いたときは《きらきらするすべて》を2枚続けてつけて一気に勝負を決めることもできる。さらに《ひよっこ捜査員》が環境に加わったことで「検査官」8枚体制を築けるようになり、序盤からアーティファクトの数を稼ぐのが非常に簡単になっている。

 《きらきらするすべて》は、相手にすると決してタップアウトしたくなくなるカードだ。早く回答を用意しないとたやすくやられてしまい、ゲーム後半になっても心配が尽きることはない。そのプレイパターンはあまり楽しめるものではないだろう。《きらきらするすべて》は、私たちが押し戻そうとしていたパウパー環境の速度を加速させ、また極端なゲーム展開を生み出しているのだ。

 このカードを使うデッキの調子はどうか? 大成功を収めている。「Pauper Challenge」での上位入賞も多く、リーグでも常に多くのプレイヤーが使用しており、勝率も高い。《きらきらするすべて》入りの「赤白シンセサイザー」は「赤単」、「テラー」、「親和」のパウパー3大勢力に対して優位な勝率を記録している。「黒緑ガーデン」のような除去が満載でより多くのアドバンテージを取ることができるデッキに対しては苦戦しているものの、極端な展開やいきなり勝負を決められる力は健在だ。

 また《きらきらするすべて》は、実際の対戦外でもパウパーに大きな影響を与えるたぐいのカードでもある。環境の有力デッキとなるには、《きらきらするすべて》のような振れ幅の大きなカードに対抗できるだけの力を備えていなければならず、そのことはこのフォーマットにおける選択肢を大きく狭めることにつながり得るのだ。

 私たちは代替案も検討した。幾度となく最有力候補として挙がっているのは、アーティファクト土地だ。現状、アーティファクト土地を維持するために多くのカードが禁止リストに置かれている。ここ数年の間に、《エイトグ》や《大霊堂の信奉者》、《滞留者の相棒》が代償を支払っているのだ。

 そこで私たちは、『モダンホライゾン2』の「橋」に再び目を向けた。ところが実際にデッキを組んで試してみると、私たちが予想していたほどの効果が得られないことに気づいた。議題に挙がっている「白青親和」は、主に『ミラディン』のアンタップ状態で戦場に出るアーティファクト土地を後ろ盾にして繁栄してきた。3色の「親和」デッキは「橋」を使っているものの、まだ追加できる余地はあり、実際のアーティファクト土地の数はそれほど減らないと思われた。「赤白シンセサイザー」も《錆付谷の橋》を使用しているが、《古えの居住地》と《大焼炉》もそれぞれ3~4枚採用しているため、わずかに影響を受けるものの、「橋」を禁止するという大きな出来事に対して想像するような大きなことは起きないのだ。確かにマナ基盤は少し弱くなるし、《古えの遺恨》のようなアーティファクト除去が強くなるためそれらのデッキの回復力は落とせるだろう。しかしそれでも、アーティファクト土地の量は依然として高いままなのだ。

 そしてもちろん、「橋」ではなく『ミラディン』のアーティファクト土地をこのフォーマットから取り除くことや、両方とも取り除くことも議論した。しかしながら、これらの土地について議論するたびに、このフォーマットの定番カードとしてそれらを楽しんでいるパウパー・プレイヤーの姿が思い浮かぶのだ。アーティファクト土地がいなくなったら、多くのプレイヤーが離れるだろう。私たちは、この点についてのフィードバックを心から求めている。どうか聞かせてくれ。

 さて以上の理由から、《きらきらするすべて》の禁止は決まった。ここからは、他に禁止すべき(あるいは解禁すべき)ものがないが見ていくときだ。

 検討対象として有力なのは、「赤単」だった。(異常値ではないものの)依然として高い勝率を誇り、極端な展開を生み出す「赤単」は、このフォーマットの定番デッキであり続けている。《僧院の速槍》を失って弱体化し、大多数が《無謀なる衝動》や《レンの決意》4枚積みのリストから離れたものの、「赤単」は『イクサラン:失われし洞窟』の《ゴブリンの墓荒らし》や『サンダー・ジャンクションの無法者』の《無謀なる従僕》という、強力な代替戦力を迎え入れた。

 もし赤に禁止を出すなら、何になるだろうか? 《カルドーサの再誕》や《ゴブリンの奇襲隊》は、手札の組み合わせ次第で猛烈な速度を生み出し、1ターンの間に3マナで8点もの攻撃を繰り出せる。

 より直接的な手段をとるなら、《感電破》という線もある。これを禁止すれば、「シンセサイザー」や「赤単」、それから「親和」の一部にも影響が出るだろう。

 現環境は両極端なものになっており、「赤単」には効果的だが《きらきらするすべて》を使うデッキには効果的でないというカードやその逆のカードが増えた。どちらも同じ攻撃的なデッキであるにも関わらずだ。単体除去は《きらきらするすべて》による死を防ぐ助けになるが、「赤単」が繰り出すトークンの群れには効果が薄く、そちらには《電謀》のような全体除去が欲しくなる。ライフを得る効果は「赤単」に対して時間を稼ぐ助けになるが、8/8の《きらめく鷹》が襲いかかるときには意味を成さないだろう。《きらきらするすべて》が退場することで、この状況が改善すれば幸いだ。

 「赤単」と《きらきらするすべて》を使うデッキの他には、私たちが行動を起こす必要を感じるほど変化したアーキタイプはない。これら2つの他にも「ファミリア」や「カウゲート」、「黒緑ガーデン」などのデッキが存在し、それらも強く、活躍を見せている。《トレイリアの恐怖》デッキについては人気が高く禁止を求める声もあるが、勝率は良いものではないため、現時点でこのデッキを叩く意味はないと判断した。

 それから、カードの禁止解除についても多くの議論を重ねた。

 主な議題に挙がったのは、《予言のプリズム》だ。《予言のプリズム》が禁止されて以来、パウパーは多くの変化を迎えているため、私たちはこれまでもこのカードの禁止解除については揺れ動いていた。《予言のプリズム》が禁止された当時は「トロン」がトップメタの一角であり、現在とはまったく異なる世界だったのだ。「トロン」はその後《エネルギー屈折体》を手にしたが、まったく問題になっていない。

 だがしかし、私たちは2つの理由で解禁を行わないことにした。1つは、《予言のプリズム》が以前から「親和」や「赤白」系のデッキで採用されるのが見受けられたからだ。その2デッキは今回の禁止改訂で力を弱めようとしているデッキであり、実際にそれらのデッキが《予言のプリズム》を採用するかはわからないものの、不要なリスクであるように見えたのだ。もう1つは、《きらきらするすべて》を禁止することで環境の速度が低下し、「トロン」のようなデッキが再び浮上する可能性が開けたため、他のツールを与える前に何が起きるか見ておきたかったからだ。そういうわけで今回は保留とさせていただくが、近いうちに《予言のプリズム》が姿を現す可能性は十分にあるだろう。

 あわせて、次の禁止検討と本日の禁止措置がどのように関係するのかについても話しておきたい。もう来月には、『モダンホライゾン3』がやってくる。これまでの「モダンホライゾン」セットではパウパーにも多くのカードが追加されており、今回も例外ではないと私は予測している。

 《きらきらするすべて》を取り除いておきたかったのは、このカードはどのように切り取っても環境を極端なものにし、速度を理想よりも早くするためだった。《予言のプリズム》の解禁と同様に、赤のデッキに関する議論は依然として白熱している。だが私たちは『モダンホライゾン3』が登場してパウパー環境が大きく変化する前にさらなる変化を起こすよりも、私たちが必要性を感じているものに対処して、『モダンホライゾン3』の発売直後の状況をチェックしたいと考えたのだ。

 ここでは率直に話し、普段は行わない注意喚起をしておきたい。これは『モダンホライゾン3』のコモンに目を通すことができる立場にある私、ガヴィンの言葉だ(他のパウパー・フォーマット委員会のメンバーは、新セットの内容をあらかじめ見ていない)。『モダンホライゾン3』には、パウパーで禁止にする必要性が高い、私たちが過去に禁止したカードに似たコモンが1枚ある。そのこと自体に問題はまったくないし、これまで通りマジックのセットはパウパーを中心に回るべきではない。各セットのリードが、そのセットのために正しい決定を下すべきであり、パウパーはそれに対応していく。

 だが結果として、次の禁止検討は『モダンホライゾン3』発売後「すぐ」になり、必要な調整を行うものと思われる。実際に見てみる価値はあるものの、発生する問題には短期間で対応できるようにしておきたい。私たちは、《騒鳴の嵐》が最後の最後まで禁止を免れたあの時のような、いつまでも壊れた環境でみんなにプレイしてほしくないのだ。そしてそのときに、他にも必要ならば先述したような対応がとられる可能性もある。「モダンホライゾン」には、パウパーにも大きな影響を与えてきた歴史がある。そのため、そのときまではこれ以上の変更は控えるつもりだ。

 最後にもう1つ、話しておきたい。他のフォーマットの禁止改訂で知っているかもしれないが、ステッカーやアトラクションを用いるカードは競技の舞台から去ることになった。私たちはこれを、同じ理由でパウパーにも適用する。パウパーにおいて主に関連するのは、《________ Goblin》だろう。パウパーは大部分がMagic Onlineでプレイされており、そこではステッカー・カードが《________ Goblin》しかない。それからアトラクションについては、パウパーのデッキで使えるほどコモンのカードが存在しない。したがって、ほとんどのパウパー・プレイヤーにとっては《________ Goblin》がこのフォーマットから去るということになるだろう。

 この変更についてプレイ・デザイン・チームが私にパウパー視点での感想を尋ねたとき、私は強く賛同した。Magic Onlineチームの努力には称賛を惜しまないが、ステッカーはテーブルトップとオンラインで同一のものでないという小さな亀裂をこのフォーマットにもたらした。これまでも言及してきた通り、《________ Goblin》はテーブルトップとデジタルで同じように機能させるのが難しく、加速するマナの量がランダムに決まる「儀式」が加わるのは、パウパーの健全性に寄与するものではないのだ。

 この変更は、「ステッカー・ストンピィ」のようなテーブルトップ限定のデッキにも影響が出るだろう。それらのデッキのファンは悲しむかもしれないが、パウパーの健全性のためには、デジタルとテーブルトップの間のギャップがなくなることがありがたい。

 オーケー、本日はこれで以上だ。次は『モダンホライゾン3』発売後の数週間以内にまたお話することになると思う。そこで必要な調整を行うか、あるいは実際に見たら問題なかったということなら、私たちの考えを伝えることにしよう。その日まで、どうかみんなの考えもパウパー・フォーマット委員会に知らせてほしい。特にアーティファクト土地について多くの議論が行われているため、ぜひ君の意見が聞きたい。

 パウパー・フォーマット委員会を代表して、ガヴィンよりお伝えさせていただいた。それではまた。

Alex Ullman – @nerdtothecore
Alexandre Weber – @Webermtg
Emma Partlow – @Emmadpartlow
Gavin Verhey – @GavinVerhey
Mirco Ciavatta – @Heisen011
Paige Smith – @TheMaverickGal
Ryuji Saito – @Saito_o3

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