READING
お知らせ
MTGアリーナ:フォーマット更新情報
2023年9月11日
マジック:ザ・ギャザリング アリーナの5周年が近づく今、ここでMTGアリーナにおける構築フォーマットの現状を確認し、それぞれのフォーマットへの取り組み方についてお話ししたいと思います。
私たちがMTGアリーナをリリースした当時、構築フォーマットはただ1つ、スタンダードのみでした。それから5年を経た現在は6つのフォーマットをサポートしています。毎年1つずつフォーマットが追加されている計算になりますね。この5年で、非常に多くのマジック・プレイヤーの皆さんにこのゲームを楽しんでいただけるようになりました。その中には、何十年とマジックをプレイしている方もいれば、始めたばかりだという方もいます。デッキを常に調整、変更してメタゲームに乗り続ける方もいれば、1つのデッキを何年も使い続ける方もいます。MTGアリーナの幅広いプレイヤー層はこのゲームの美点であり、それこそ私たちがこのゲームをプレイする理由なのです。
私たちの目標は、環境の健全さを保ち幅広いマッチングを実現しながらも、できる限り多くの方にプレイを楽しんでもらえるようサポートすることです。これこそが、フォーマットに対する私たちの理念を動かす原動力です。しかしそこには、ある種の緊張が内在します。より多くのプレイヤーにそれぞれが求めるプレイモードを用意するなら、新たなフォーマットを作ることになるでしょう。ですがそれはマッチングを細分化することにもなり、それぞれのフォーマットのプレイヤー数が減ってマッチング時間が長くなり、(ランクの違うプレイヤーが当たる頻度が上がるなど)悪いマッチングにつながっていきます。
これを解決するために、フォーマット全体の数はマッチングが早く正確にできるだけの数に留めながらも、できるだけ多くのプレイヤーのモチベーションをカバーできるよう、バランスの取れたフォーマットを幅広く展開するよう心がけているのです。
テーブルトップとデジタル、ローテーションありとなし
私たちは、主なフォーマットを2つの軸でグループ分けしています。1つは「テーブルトップ/デジタル」、もう1つは「ローテーションあり/ローテーションなし」です。
(ブロールはこの評価軸に当てはまりません。それについては後段でお話しします。)
テーブルトップのフォーマットについては、テーブルトップのマジックでプレイされているものと同じプレイ体験が得られることを優先しています。多くのプレイヤーの皆さんがそれを望んでいることは知っています。スタンダードは完全に一致しており、パイオニアを元にしたエクスプローラーについては、少なくともよく使われるカードをすべて実装できるよう取り組んでいます。これらのフォーマットでは、必要に迫られたときには禁止カードの指定でバランスを維持します。禁止カードの決定はテーブルトップに準拠します。これらのフォーマットは、テーブルトップとMTGアリーナを両方ともプレイしている方や、テーブルトップのマジックを始めたばかりで、デジタルでも同じフォーマットを続けたいという方に最適です。
デジタル・フォーマットの方は、MTGアリーナのデジタルならではの要素を強調し、デジタルでしか実現できないようなことも活用します。デジタルでのゲーム体験はテーブルトップの体験とは異なります。特にプレイ頻度の高さや知識の共有しやすさが顕著で、つまりメタゲームがより早く解明されやすいと言えます。多くのデジタルゲームが、この問題を解決する方法を開発してきました。そしてそれらは、MTGアリーナのデジタル・フォーマットにおいても有効です。
MTGアリーナのデジタル・フォーマット、すなわちアルケミーとヒストリックにおいては、再調整のようなデジタルならではの方法やコンテンツの配信頻度を上げることで、メタゲームの健全性や流動性、多様性を維持できるのです。この方法が目標の達成に役立ち、これらのフォーマットがデジタル重視のプレイヤーにとって魅力的で健全なものになっていることは、データが示しています。
私たちは今後も、テーブルトップ・フォーマットのサポートを続けていきます。それらの信頼性とテーブルトップと同じ体験を楽しめることに、多くのプレイヤーの皆さんが価値を置いていることは知っています。そしてデジタルでこそ実現できるフォーマットを好む方がいることも知っていますので、今後もデータやデジタルならではの方法を活用し、健全で進化を続けるフォーマットをサポートし続けます。
フォーマットごとの注釈
以下に、MTGアリーナの主なフォーマットについて、直近1か月におけるプレイ分布を掲載します。このデータはイベント以外のプレイのみ参照したものであり、つまりBO1とBO3を含めたランク戦と「プレイ」モードの合算となります。
データは健全な分布であることを示していますが、皆さん自身がプレイしてるときや友人と話しているとき、あるいはオンラインで記事などを読んでいるときの感覚とは少し違うかもしれませんね。それは皆さんそれぞれに好みがあり、コミュニティそれぞれに傾向があるからです。皆さんの好みはどれも正しく、私たちのMTGアリーナでの仕事はできる限り多くのプレイヤーに最高の体験をご提供することです。それだけは忘れないでください。私たちは、プレイヤー全体を見てバランスを取っています。つまり、より多くのプレイヤーに影響を与える部分により多くの時間とリソースを割くことになるでしょう。私たちは、マジックの遊び方の多彩さが大好きです。できる限り幅広い遊び方をサポートしたいと考えてはいますが、一度にすべて取り組むことはできませんので、ご理解ください。
スタンダード
MTGアリーナにおける枠組み:テーブルトップ準拠のフォーマット。3年ごとにセットがローテーションし、緩やかにメタゲームが変化します。
スタンダードはMTGアリーナで最も人気のフォーマットであり、さまざまなプレイモード(ランク戦や「プレイ」など)で最も多くプレイされています。上記のグラフはローテーション前のものですが、スタンダードのシェアがわずかに下がっている一方、ヒストリックや他のモードが少し上昇しているのが見受けられます。そのようなパターンはあるものの、スタンダードは依然として明確なリーダーです。
今年からスタンダードのローテーション間隔が伸び、各セットが3年間使えるようになりました。この変更により、スタンダードにより面白いアーキタイプの組み合わせが生まれ、活気と安定感がもたらされると私たちは見ています。(詳しくは「スタンダードに再び活気を」記事をご覧ください。)
MTGアリーナにおけるスタンダードは、ルールやカードプール、禁止リストなど、あらゆる面でテーブルトップと同一です。テーブルトップと同じであることに価値を置くプレイヤーの皆さんや、メタゲームの変化は望むもののゆっくり進み、同じようなデッキを長い期間楽しめる環境を求める方におすすめのフォーマットになっています。全体的に見て、スタンダードはあらゆるプレイヤーにおすすめできます。
エクスプローラー
MTGアリーナにおける枠組み:パイオニアを元にしたテーブルトップ準拠のフォーマット。パイオニアと同一の体験に着々と近づいています。
エクスプローラーはパイオニアを元にしたフォーマットであり、カードプールに足りない部分があるものの、ルールや禁止リストなどの変更はパイオニアに追従して行われます。私たちは今後も競技環境でのメタゲームにおける主要なカードを中心にカードプールの拡張を続けますが、ファン人気の高いカードも散りばめていく予定です。
昨年エクスプローラーを導入したとき、パイオニアの競技環境と同じにするには数年かかるとお伝えした通り、私たちはまだ道の途中にいます。『パイオニア・マスターズ』のリリースを含め、2024年の後半から2025年の前半には目標を達成できる見込みです。エクスプローラーのプレイヤーの皆さんにとって長い待ち時間になることは理解していますが、上記のグラフが示すように、プレイヤーの皆さんはさまざまなフォーマットに幅広く分布しています。私たちは、そのすべてのバランスを取る必要があるのです。
現在のエクスプローラーはパイオニアのアーキタイプを幅広くサポートしており、いくつかカードを入れ替えればプレイできるアーキタイプも多々あります。今年リリース予定の『タルキール覇王譚』でも、《宝船の巡航》や《時を越えた探索》、それから「探査」を持つクリーチャーなどがもたらされ、このフォーマットをさらに広げてくれるでしょう。
アルケミー
MTGアリーナにおける枠組み:デジタル・フォーマット。2年ごとにセットがローテーションし、メタゲームがより早く変化します。
マジックのデザイン・チームとの協働のもと、MTGアリーナの初期におけるフォーマットの管理に取り組む中で、明確になったことがありました。それは、MTGアリーナのプレイヤーとテーブルトップのプレイヤーで、ローテーションするフォーマットに求めるものが異なるということです。私たちは、テーブルトップのプレイヤーからは安定性を求められ、一方でデジタルのプレイヤーからはより早い変化を求められました。これがアルケミー創設の大きなきっかけになりました。デジタルならではの早さで変化し、デジタルならではの方法で公平性や流動性、そして楽しさを維持できるフォーマットを作る原動力となったのです。
また、アルケミーはMTGアリーナのエンジニアたちにマジックのデザイナーと協働する機会をもたらしました。そのおかげで私たちは、新しくもMTGアリーナに実装しやすいカードの挙動を把握できました。そしてそれらのカードはMTGアリーナ限定であるため、マジックのデザイナーとともにカードの文言を微調整でき、アルケミーは他のフォーマットより新たなカードを追加しやすくなりました。印刷済みで変更できないカードに挙動を合わせなければならないテーブルトップの過去のセットよりずっと簡単なのです。
私たちは、アルケミーのここまでの発展を嬉しく思っています。メタゲームは多様性に富み、毎週のように変化しています。そのことがアルケミーを興味深く魅力的なフォーマットたらしめているのだと私たちは感じており、データにもそれを裏付けるように、新規プレイヤーとベテランともにこのフォーマットへの移行が見受けられます。
『エルドレインの森』のリリースをもって、アルケミーにまた1つスタンダードとの差別化が行われました。スタンダードのローテーション間隔が3年になったのに対し、アルケミーは2年のままとなります。(詳細は「MTGアリーナ:2023年におけるスタンダード・ローテーションのお知らせ」記事をご覧ください。)この差別化により、それぞれのフォーマットのプレイヤーはさらに多様化し、アルケミーは今後も変化が早く多様性にあふれ、そしてバランスの取れたメタゲームが展開されるでしょう。デジタル重視の新規プレイヤーにもプレイ頻度の多いベテランにも魅力的なフォーマットとなり、テーブルトップ準拠のスタンダードと両立するでしょう。
ヒストリック
MTGアリーナにおける枠組み:ローテーションなしのデジタル・フォーマット。厳選されたカードにより、バランスと多様性、そして楽しさが保証されています。
ヒストリックは、「MTGアリーナに実装済みのすべてのカードが使える場所」として数年前に始まりました。厳選されたカードを追加していくことで、他では味わえないプレイ感覚やデッキ、メタゲームが楽しめるユニークなデジタル・フォーマットとして計画されたものです。ヒストリックが楽しく多様性にあふれたフォーマットとして育まれ、パイオニアとモダンの間くらいのパワーレベルに落ち着いたことに、私たちは満足しています。
特に嬉しいのは、このフォーマットの多彩さです。「祭殿」デッキや「スリヴァー」デッキ、それからユニバースビヨンドのストーリーに沿ったテーマのデッキなどがアーキタイプの上位へ躍り出る姿は、本当に好きです。プレイ回数も非常に多く、2番目に人気のこのフォーマットはさらなる成長を続けています。このフォーマットを楽しいと感じているプレイヤーが多くいることが示されているのです。
ヒストリックは初期の頃にいくつか大きな変化を迎えました。『ストリクスヘイヴン:魔法学院』の「ミスティカルアーカイブ」や『Jumpstart』、その他テーブルトップの革新的なセットが追加され、既存のメタゲームがひっくり返されたのです。今後は、ヒストリックに導入するものについてもう少し慎重に取り組んでいくつもりです。ヒストリックは現時点で良い位置におり、劇的な変化は必要ないと私たちは考えています。
確かに、『モダンホライゾン3』のようなセットの追加はヒストリックに強力な新規カードを多くもたらし、このフォーマットに多大な影響を与えるでしょう。私たちはヒストリックが持つ基本的なパワーレベルを気に入っていますが、あまりに大きな飛躍は望んでいません。私たちは引き続き、おとぎ話カードにおける禁止指定など、このフォーマットに入るカードを管理してく予定です。ヒストリックが、さまざまなタイプのプレイヤーの皆さんが楽しめる、多様性に富みバランスの取れたフォーマットであり続けることを第一に考えていきます。
ヒストリック・ブロールとブロール
MTGアリーナにおける枠組み:統率者を中心に組んだシングルトンのデッキで遊べる、楽しくカジュアルなフォーマット。
前回フォーマットについて語ったときは、MTGアリーナの主要なフォーマット4つを取り挙げました。その4つ以外のプレイヤーは、お気に入りのフォーマットであるブロールがどこに当てはまるのか、不思議に思ったことでしょう。直近の12か月ほどでブロールは特筆すべき成長を遂げ、いまやプレイ回数の大きな部分を占めています。私たちが特に注目しているのは、普段遊ぶ「メイン」のフォーマットの「付け合せ」ではなく、ブロールのプレイに集中しているプレイヤーが増えている点です。上記グラフのデータは通常のブロールとヒストリック・ブロールを合わせた数字ですが、プレイ回数の大部分はヒストリック・ブロールの方です。
ブロールについては、基本的にさまざまなプレイスタイルをサポートしたいと考えています。プレイヤーの皆さんがさまざまな統率者やパワーレベルのデッキを幅広く楽しんでいることを、私たちは知っています。他の統率者よりはるかに強力な統率者がいることは早い段階で確認していましたので、ブロールでは使用する統率者に応じたマッチングを採用しています。これにより、プレイヤーの皆さんが使いたい統率者を自由に使っても公平で楽しい対戦が実現できます。このようにマッチングのバランスを崩しているため、私たちはブロールをランク戦ではなくカジュアルなプレイを楽しめるフォーマットにできるよう注力しています。
これからの展望
私たちが5年前にMTGアリーナのオープンベータテストを実施したとき、構築フォーマットはただ1つ、スタンダードのみでした。それが今や5種類に分類されるまでになりました。この発展ぶりは間違いなく歴史的なものですが、今後も同じペースで拡大を続けることはないでしょう。現状、フォーマットの広がりはプレイヤーの皆さんのモチベーションをカバーしつつ健全さを保持できるだけの、良いバランスになっていると私たちは考えています。特に「GenCon」での『モダンホライゾン3』に関する発表の後に、プレイヤーの皆さんがMTGアリーナへのモダン実装に興味を持っていることは把握していますが、現時点では私たちの計画にありません。単純にコンテンツ量の差が大きすぎて、すぐには埋められないのです。
とはいえ、今後変化がないという意味ではありません。例えばスタンダードとアルケミーは、新たなローテーション間隔の影響を感じられるようになってから、それぞれの役割を少しずつ変化させていくでしょう。その中で、調整が必要な部分が見えてくるかもしれません。それから、ヒストリックにおいて強力すぎるカードや問題を起こすカードがいくらか溜まり始めており、それらについても検討中です。そしてブロールのプレイヤーが数を増していることを受けて、彼らを楽しませ、サポートするために私たちに何ができるかについても、積極的に話し合っています。
MTGアリーナのフォーマットは、これからもプレイヤーの皆さんのプレイスタイルが変化し続けるのに合わせて適応し、成長を続けるでしょう。私たちの目標は、これからも変わりません。それは、できる限り多くのプレイヤーに健全で活発なプレイ環境をお届けすることなのです。
RANKING ランキング
NEWEST 最新の読み物
-
2024.10.9戦略記事
力線型赤単果敢:力線、超スゲェ(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.10.9開発秘話
こぼれ話2024 その1|Making Magic -マジック開発秘話-
-
2024.10.8戦略記事
ドメインデッキの進化系、兆候が見えた時にはもう……(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.10.7戦略記事
アゾリウス違和感:とにかくなんでもエンチャント(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.10.4戦略記事
今週のCool Deck:海蛇と蟹、自分だけのデッキのフォーム(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.10.3戦略記事
とことん!スタンダー道!ゴルガリ昂揚、欄干ワームから逃れられない……(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
CATEGORY 読み物カテゴリー
戦略記事
コラム
読み物
BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事