READING
お知らせ
ロンドン・マリガン
2019年6月3日
『基本セット2020』の発売とともに、すべての競技マジック・フォーマットで新型マリガンを導入します。この新型マリガンはミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019やMagic Onlineで試験されたもので、以下のようになります。
103.4. 各プレイヤーはそれぞれ自分の初期手札枚数に等しい枚数のカードを引く。初期手札枚数は通常7枚である。(ただし効果によって初期手札枚数が変わることがある。)最初の手札が満足できるものでなかったプレイヤーは、マリガンを行ってもよい。まず、開始プレイヤーがマリガンを行うかどうかを宣言する。その後、ターン順に各プレイヤーが同様に行う。各プレイヤーが宣言を終えた後、マリガンを行うことを選んだすべてのプレイヤーは同時にマリガンを行う。「マリガンを行う」とは、手札にあるカードをライブラリーに戻して切り直し、自分の初期手札枚数に等しい枚数のカードを引き、その後それらのカードのうちそのプレイヤーがマリガンを行った回数に等しい枚数のカードを自分のライブラリーの一番下に望む順番で置くことである。あるプレイヤーがマリガンを行わないことを選んだなら、残ったカードがそのプレイヤーのゲーム開始時の手札になり、そのプレイヤーはそれ以上マリガンを行うことはできない。その後、マリガンを行うプレイヤーがいなくなるまで、この手順を繰り返す。プレイヤーは、開始時の手札が0枚になるまでマリガンを行うことができる。
基本的には、マリガンをするたびに7枚まで引いて、それからそのゲームでマリガンをした回数に等しい枚数のカードを手札から自分のライブラリーの一番下に任意の順番で置くことになります。マリガンをするたびに初期手札が1枚ずつ減っていくのは変わりませんが、その初期手札は常に7枚の中から選べるようになるのです。現在の(「バンクーバー」)マリガンと違い、初期手札を決定した後で占術は行ないません。
このルールは、『基本セット2020』のルール更新と同時に有効になります。この新ルールがいつテーブルトップ、Magic Online、MTGアリーナに導入されるのかについては脚注をご確認ください。
この新型「ロンドン」マリガンの目的は、プレイヤーがマリガンをしたゲーム、特にその回数が不均衡であった場合のゲームを競技的なものにすることです。初期手札の選択肢が広くなれば、土地と呪文がいい比率で手札になかったためにデッキが回らない、「ゲームにならない」ゲームの数を減らすことになります。
この変更の一面については、他のルール変更と同様、議論を呼ぶものであることは理解しています。マジックをこれほど素晴らしいゲームにしている大部分は、常に進化・改善し続けていることです。私たちデザイナーは、単に新しいカードを供給するだけでなく、可能な限り楽しく競技的な経験をもたらせるようにマジックのルールやシステムを更新し続けています。なぜこの変更をするのか、そしてその結果をどう予想しているかについての見解をお話ししたいと思います。
なぜ変更するのか?
マジックのマリガン方法は歴史の中で何度も変更されてきました。初期の「ノーランド/オールランド」マリガンから「パリ」マリガン、そして最近の「バンクーバー」マリガンへと、これらの変更の目的は、どちらのプレイヤーにも勝機があるような競技的ゲームに繋がる妥当な初期手札をプレイヤーたちが手するチャンスを高めることでした。
プレイされるマジックのゲームの数が増え、近年ではテーブルトップとデジタルの両方でプレイされるようになり、現在のバンクーバー・マリガンであっても両プレイヤーに競技的な開始点を与えるという点で充分な役割を果たしているとは言えないというデータが集まってきました。7枚でキープした対戦相手に対して1回マリガンをしたプレイヤーは、一般論として、私たちが満足できるよりもひどいディスアドバンテージを受けていたのです。対戦相手よりも2回以上多くマリガンをしているプレイヤーにとって状況はさらにひどいものでした。また、それらのゲームの中には、ただ最初の手札を見ただけで、ゲームが始まる前に事実上終わっているのが明らかであるという面白くないものがあることも問題です。
昨年を通して、開発部はゲームの始め方を改善する方法を議論・試験してきました。私たちは内部で6か月以上新型のロンドン・マリガンを試し、マリガンしたプレイヤーとしなかった対戦相手の差を縮めている度合いとプレイヤーのデッキや戦略が単純に全く作用しないようなゲームの数を大きく減らしたことに満足しました。この観点から、ロンドン・マリガンはバンクーバー・マリガンに比べてプレイヤーの利益という意味で「より良い」マリガンであると考えています。
マリガンの試験
もちろん、マリガンを強化する中で、やりすぎというものはありえます。良すぎる、そしてプレイヤーの初期手札にあまりにも働きかけすぎるマリガンは、ゲームの展開を同じものに寄せてしまう可能性があります。コンボデッキが非常に強力なマリガンを悪用してゲームの序盤に確実にコンボを組み上げてしまう危険性もあります。アグロ・デッキが常に最善のドローを得たり、コントロール・デッキが常に適切な対策を得たりすれば、メタゲームのバランスが大きく崩れてしまうかもしれません。さらに、マリガンが強力になればなるほど、プレイヤーがマリガンすることを選ぶようになり、ゲームを始められるようになる前の切り直しと決定の時間がかかるようになります。
これは、ロンドン・マリガンを内部と公開の両方で試験をしている間に確認しなければならないことがわかっていた危険性です。ゲームにならないゲームの数を減らすことができる程度にバンクーバー・マリガンよりも充分強く、ゲームプレイ全体に悪影響を及ぼすほどは強くないようにするのが狙いでした。マリガンが必要なときの不利益を少し減らしたいとは考えていましたが、プレイヤーが妥当な手札を持っているときにはマリガンをしたくないままにしたいと考えていました。
スタンダードやリミテッドでのロンドン・マリガンのプレイされ方には非常に満足していますが、カードプールが広く、ゲームが全般に高速で、コンボ・デッキの最善のドローが強力な、ローテーションのないフォーマットには大きなリスクがあることはわかっていました。それが、モダン構築ラウンドとデッキリスト公開ポリシーのあるミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019を競技的試験場として選んだ理由です。新型マリガンが強すぎれば、問題が見つかるに違いない環境なのです。
得られた知見
全般的に、私たちはロンドン・マリガンの長所のほうが欠点や危険性よりも上回ったと見ました。ミシックチャンピオンシップ・ロンドン2019は、プレイヤーが使ったデッキと結果を示したデッキの両観点で多様性があって健全なモダンのメタゲームを示しました。マリガンの頻度が増えるなど上述の危険性のいくつかの要素は実際にもいくらか見られましたが、全体として、メタゲームやゲームプレイにおいて大きなシステム上の問題だと感じられるものはありませんでした。コンボが少し頻繁に成立していたことは、サイドボード・カードがより頻繁に登場するようになったことで相殺され、メタゲームが自己修正できるということを示しています。
つまり、このロンドン・マリガンの導入により、メタゲームがいくらか変化することは間違いありません。ゲーム・システムに新型マリガン・ルールのような変化が導入されれば、デッキによっては何らかの影響を受けることになります。問題は、メタゲームがその変化に適応し、新しく健全な平衡に到るのかです。現時点では、モダンも含め、すべての兆候がそうであると示しています。
ロンドン・マリガンは、スタンダードとリミテッドにおいてほとんど全面的に向上すると考えています。それらのフォーマットでは初期手札を1枚減らすというのは充分な懲罰であり、現在のバンクーバー・マリガンに比べてプレイヤーたちが大きく積極的にマリガンをするようになるとは思いません。マリガンする必要がある時にも、ゲームが楽しめるようになるだけでしょう。
レガシーやヴィンテージといったエターナル・フォーマットに関して懸念しているプレイヤーがいることは承知しています。その懸念は理解しますし、それらのフォーマットのデータを集めることがMagic Onlineでこのマリガンを試験していた理由の一部です。私たちが見た限り、メタゲームは予想以上にうまく順応できていました。レガシーの特徴の1つが、ほとんどの脅威に対して1対1の非常に効率的な対策があることで、これによってカードの質が重要になっています。つまり、積極的にマリガンをして特定のカードやコンボを求めることが大きなコストになるので、この戦略が大成功を収めていることは確認できませんでした。ヴィンテージはサンプルが少なかったのでデータを集めるのは困難でしたが、注意すべき不均衡は目撃されませんでした。例えば、「ドレッジ」デッキでは、《Bazaar of Baghdad》を初期手札に入れられる機会が増えているにもかかわらず、勝率はそれほど変わっていませんでした。これは、他のデッキがサイドボード・カードを手に入れられる可能性が高まっていることによって相殺されていることによるものである可能性もあります。
すべてのフォーマットに関して、私たちはプレイヤーやメタゲームが順応できるようにし、禁止制限リストの変更を検討する前にデータや反響を集めるという手法を取ります。変更に伴って予見するというのは、私たちにとって、またコミュニティにとって、良い手法ではありません。明確にしておきますが、私たちは、今後変更の必要性が出てくることはありえるにせよ、現時点で特定のカードやデッキを禁止制限リストの変更の対象にしなければならないとは考えていません。
コミュニティの中には、ロンドン・マリガンはフォーマットごとに導入することを提案した人もいますが、デザイナーとして、私たちはあらゆるマジックで同じマリガン・ルールを使うことが正しい方向性だと確信しています。マジックのプレイヤーの多くは生涯のうちにさまざまなフォーマットを試すもので、フォーマットごとに統一性のないマリガン・ルールは複雑さを大きく増やすことになってしまいます。戦術的観点からは、テーブルトップの総合ルールとデジタルのルール・エンジンの両方にとって、さまざまなフォーマットに含まれるバラバラのルールではなく、それらの下位ルールの「上位に」統一したマリガン・ルールが位置することも一貫性による利益になります。
いつ使えるんですか?
テーブルトップとデジタルのすべてにおいて、『基本セット2020』の発売とともにロンドン・マリガンが有効になります。7月5日に行われるテーブルトップの『基本セット2020』のプレリリースから、すべてのゲームに新型マリガンが使われます。7月12日の『基本セット2020』ルール更新で、総合ルールにも公式に反映されます。
MTGアリーナでは、6月7日に始まる特別イベントでロンドン・マリガンの機能テストが行われ、7月2日に『基本セット2020』のカードが使用可能になる時点ですべてのプレイ・フォーマットに適用されます。
Magic Onlineは7月2日、定例ダウンタイムが終わった時点でロンドン・マリガンを使い始めます。
私たちが内部的に感じたのと同じように、皆さんがこの新型マリガンでのプレイを楽しんでくれることを願っています。この変更は、特にマジックに熱心なコミュニティには飲み込みにくいものかもしれないとわかっています。ですが、最終的に、この変更の目的はマジックをもっと楽しいものにすることですし、そうなることを私たちは確信しています!
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
RANKING ランキング
NEWEST 最新の読み物
-
2024.12.13戦略記事
今週のCool Deck:海賊デッキ&兎デッキ、プレイされた国にも注目!(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.12.12戦略記事
とことん!スタンダー道!アルカニス降臨、3枚ドローはこうして狙え!(スタンダード)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.12.12読み物
プレインズウォーカーのための『霊気走破』案内 その2|翻訳記事その他
-
2024.12.11戦略記事
全知森林コンボ:彼を知り己を知れば百戦殆からず(モダン)|岩SHOWの「デイリー・デッキ」
-
2024.12.11読み物
プレインズウォーカーのための『霊気走破』案内 その1|翻訳記事その他
-
2024.12.11お知らせ
『霊気走破』ファーストルックまとめ|お知らせ
CATEGORY 読み物カテゴリー
戦略記事
コラム
読み物
BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
- プレインズウォーカーレビュー
- メカニズムレビュー
- その他記事