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Play Design -プレイ・デザイン-
スタンダードのマナ基盤の考察
2018年4月6日
こんにちは、そして「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今週はスタンダードのマナ基盤と、その背後にあるわたしたちの理念についてお話しします。 どうしてそれを今話すのかって? 『ドミナリア』プレビューは現在進行中で、今日は皆さんにこれから2年間多くのスタンダードのデッキの基盤を形作ることになる5枚の2色土地をお見せするからです。以下の敵対色バディランドです。
強力な2色土地があることはスタンダードにとって重要です。優れたマナ基盤はデッキの多様性を増大させ、プレイヤーに選択肢を与えます。それらがなければ、プレイヤーは単色デッキをプレイするように促され、引きの噛み合わなさを減らすために他の色に手を出すことをしなくなります。そうなるとスタンダードは全体的につまらなくなります。
単色デッキは「完璧な」マナ基盤を持っているという点で独特な性質を持っています。赤単デッキは基本の《山》さえあれば回るので、色の噛み合わない土地を引いたり、タップ状態で戦場に出る土地が多すぎたり、呪文が唱えられないといったことに悩まされることがありません。
しかしながら、1色だけしかプレイしないことには代償も伴います――カラー・パイの一片しか使えないのです。赤だけをプレイしている場合、大型クリーチャーやエンチャントに対処しようとするには苦労するでしょう。緑単デッキの場合、無条件の除去呪文を使えません。各色にはそれぞれ強みと弱みがあり、デッキの色を増やせば増やすほど、使える手段が増えていきます。これがマジックに2色土地がある理由の1つです。複数の色が出る土地があれば、デッキははるかに多用途なものになります。ですが、デッキに複数の色を入れることにも代償は伴います。
マナ基盤が《森》が12枚と《山》が12枚の赤緑デッキの場合、適正なタイミングで適正な土地がない状況に陥るでしょう。《山》を4枚《隠れた茂み》に替え、《森》を4枚《根縛りの岩山》に替えた場合、その状況に陥る頻度はとても少なくなります。しかしながら、これらの基本でない土地は欠点を抱えています。時には4枚目の土地がほしいときに《隠れた茂み》を引き、タップ状態でそれを出して大きく不利になることもあるでしょう。もしくは《根縛りの岩山》を全部引いてしまって立ち上がりがとても遅くなることもあります。この欠点は、これらの土地があなたのデッキを赤単や緑単よりも多くのカードを使おうとするならま最低限受け入れないといけないものです。
スタンダードでは、それぞれの色のペアで2種類の2色土地の選択肢があるのが理想的です。『ドミナリア』で、わたしたちは20枚の2色土地による完成されたマナ基盤を揃えました――敵対色バディランド、敵対色ファストランド、友好色バディランド、友好色サイクリングランドです。
それぞれの色のペアに2種類の土地があることで、プレイヤーには幅広い選択肢が与えられます。プレイヤーは8枚の2色土地で2色デッキをプレイすることや、もしくは3色以上に手を広げてデッキの速度に応じて好きな2色土地を使うことができます。
プレイ・デザイン・チームは、どの種類の2色土地がスタンダード環境にどのタイミングで組み込まれるかを意識しています。フォーマット中にどんな2色土地が存在するかがどんなタイプのデッキが存在するかを決定します。
例えば、『ドミナリア』には《ラノワールのエルフ》がいて、これは1ターン目に唱えるととても強力なクリーチャーです。しかしながら赤緑デッキをプレイしている場合、これを達成するのは苦労するでしょう。どちらの赤緑2色土地も1ターン目にはタップ状態で戦場に出るので、1ターン目にエルフを唱えられるのは基本の《森》だけということになります。
黒緑や青緑をプレイしている場合、《ラノワールのエルフ》デッキはより強力なマナを持っています。《花盛りの湿地》と《植物の聖域》は1ターン目にアンタップ状態で出てくるので、1ターン目のエルフがより安定します。わたしは敵対色のエルフ・デッキが友好色のエルフ・デッキよりも高いレベルで活躍するほうに喜んで賭けようと思います。
タップ状態とアンタップ状態で出てくる土地が混ざっていることは、プレイヤーにプレイ可能な速度の選択肢をもたらします。3色に手を広げると、マナ基盤により多くの選択肢が生まれます。
例えばスゥルタイ(黒緑青)をやりたいプレイヤーは、よりアグレッシブに行きたいのであれば《花盛りの湿地》と《植物の聖域》をプレイすることができます。これらの2色土地は序盤に軽い呪文を唱えることができますが、後半はタップ状態で出てきます。
もし、そのスゥルタイのプレイヤーがもっとコントロール寄りに行きたい場合は、《森林の墓地》、《内陸の湾港》、そして《異臭の池》をプレイできます。これらの土地は序盤はタップ状態で出てきますが、後半はアンタップ状態で出てくる選択肢が増えます。
結論としては、3色をプレイする場合、より幅広いカラー・パイを使うことができ、マナ基盤で何らかの代価を支払うことになるということです。
もし3色よりも多い色をプレイしたい場合はどうなるでしょうか? もっと大変になるはずですが、それでも可能です。《手付かずの領土》、《霊気拠点》、《産業の塔》のようなどの色でも出せる土地がありますが、その欠点はデッキを特定の方法、通常はそのセットのテーマに沿ってデッキを組まなくてはいけないことです。
『ドミナリア』でバディランドが揃ったことにより、プレイヤーはデッキの色を多くするさらなる選択肢を手に入れました。部族デッキは強力なマナ基盤を持たず、《手付かずの領土》に大きく依存していました。これはつまり非クリーチャー呪文を最速で唱えることに頼れないので、呪文よりもその部族のクリーチャーを多くプレイしなければならないということです。バディランドはこれらのデッキにより多くの選択肢を与えます。マーフォーク・デッキは安定して《呪文貫き》を唱えられるようになり、吸血鬼デッキはもっと除去呪文を唱えられるようになります。
ファストランドはサイクリングランドよりも強力なので、バディランドが来ることを知っているわたしたちは、友好色と敵対色のマナ基盤の差を埋めるために『アモンケット』のサイクリングランドに基本土地タイプを追加しました。このフォーマットにバディランド10枚が全て揃ったことにより『アモンケット』のサイクリングランドは強化されました。各サイクリングランドは3色デッキで3種類のバディランドをアンタップで出せるようにします。1ターン目の《灌漑農地》は《内陸の湾港》、《氷河の城砦》、《陽花弁の木立ち》をアンタップで出せるようにします。
この強化されたマナ基盤は《副陽の接近》のようなデッキにいくつかの革新を可能にしました。例えば、これはMagic OnlineユーザーのCoteca83がリーグで5-0した「バント・副陽の接近」デッキです。
1 《森》 2 《平地》 2 《島》 4 《まばらな木立ち》 3 《陽花弁の木立ち》 2 《植物の聖域》 2 《灌漑農地》 1 《ハシェプのオアシス》 1 《シェフェトの砂丘》 4 《イプヌの細流》 2 《屍肉あさりの地》 1 《オラーズカの拱門》 1 《廃墟の地》 -土地(26)- 3 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(3)- |
4 《検閲》 2 《アズカンタの探索》 3 《楽園の贈り物》 4 《排斥》 2 《残骸の漂着》 4 《燻蒸》 4 《約束の刻》 4 《副陽の接近》 3 《開拓 // 精神》 1 《明日からの引き寄せ》 -呪文(31)- |
3 《若葉のドライアド》 3 《領事の権限》 1 《沈黙の墓石》 3 《否認》 1 《不可解な終焉》 1 《ジェイスの敗北》 1 《帰化》 1 《イクサランの束縛》 1 《残骸の漂着》 -サイドボード(15)- |
このデッキのマナは良好ですが、《約束の刻》と《楽園の贈り物》に大きく依存しています。《内陸の湾港》がスタンダードに入ったことで、このデッキはランプ要素を減らし、2ターン目の《アズカンタの探索》をより安定してプレイできる、コントロール寄りの進化をすることができます。私はプレイヤーが強化されたマナにアクセスできるようになった今、そのやり込みの成果を見るのを楽しみにしています。
次に私がお話ししたいのは今週の頭にStarCityGames.comでプレビューされたカード(リンク先は英語)についてです。これはプレイヤーに、そのためのマナ基盤の計画を求める、色の違う起動型能力を持っています。そこでわたしは、これがそのデザインを深く掘り下げるのに向いていると考えました。では《豊潤の声、シャライ》をよく見てみましょう!
私の記事をよく読んでくださる方なら、プレイ・デザイン・チームの目的の1つが特定の問題を解決するカードを作ることだとご存知だと思います。シャライは白いデッキ向けの強力なミッドレンジ・カード、もしくはアグレッシブな白いデッキのマナ・カーブの頂点となることを意図されていました。
赤単アグロはメタゲームの大きな部分を占めていて、そしてこのカードはそれに立ち向かう優れた手段です。これは《稲妻の一撃》や《削剥》に耐え、その高いタフネスによりブロッカーとして優秀で、他のあらゆるものを火力や《地揺すりのケンラ》などの効果から守ります。何より、あなたは火力の対象になって焼かれることがありません。
これは、セット・デザイン中は3/3で飛行と「あなたがコントロールしている他のクリーチャーは呪禁を持つ」だけを持っていました。タフネスが低くほとんどの除去で死んでしまうので、これは赤に対する効果的な対策とはいえませんでした。4点目のタフネスはこのフォーマットのクリーチャーや除去呪文に対して強くするために追加されました。
加えて、このカードはミッドレンジの脅威としての仕事をしていませんでした。大したことはしていませんでしたし、頭上に大きな目標がいました。このカードに他のミッドレンジデッキを上回る能力を見つける必要があったので、この緑の起動型能力が生まれました。
ではシャライでできることは何でしょうか? 最も分かりやすい答えは彼女と《黎明をもたらす者ライラ》を並べることです。どちらも単体で強力ですが、一緒に並んだときの彼女たちは合計で絆魂つきの9点のパワーになります。これでもくらえ、赤単!
プレイ・デザイン・チームがカードをデザインするときに考えているもう1つのことは、あまり愛されていないカードをどのように強化するかということです。シャライの起動型能力は素晴らしいマナの使いみちであり、横に並べていればゲームに勝つこともできます。とはいえ6マナは大変な量で、毎ターン起動している場合大抵は勝ちすぎになるだけです。
しかしながら、《イトリモクの成長儀式》の入った白緑トークン・デッキをプレイしている場合、爆発的なターンを得ることができます。《イトリモクの成長儀式》の欠点の1つは変身するのが自分の終了ステップであり、対戦相手のターンにマナの使いみちがないことがよくあることです。シャライがいれば、そのマナの使いみちができます。
緑白アグロ・デッキは大人気ではありませんが、メタゲームの中に少数存在します。これはMagic OnlineユーザーのPepeisraが最近リーグで5-0したリストです。
6 《平地》 2 《森》 4 《まばらな木立ち》 4 《陽花弁の木立ち》 4 《シェフェトの砂丘》 4 《ハシェプのオアシス》 -土地(24)- 4 《空渡りの野心家》 1 《聖なる猫》 4 《典雅な襲撃者》 4 《立て直しのケンラ》 4 《ジャングル生まれの開拓者》 -クリーチャー(17)- |
4 《軍団の上陸》 4 《霊気装置の展示》 3 《征服者の誇り》 4 《スラムの巧技》 4 《旗幟 // 鮮明》 -呪文(19)- |
4 《不可解な終焉》 2 《帰化》 4 《霊気圏の収集艇》 3 《厳粛》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード(15)- |
《豊潤の声、シャライ》が加わり、わたしたちはこのデッキがもっとクリーチャーの数を増やし、多くのマナを出すために《イトリモクの成長儀式》を有効活用するミッドレンジ・デッキに進化するところを見るかもしれません。
プレイ・デザイン・チームからの『ドミナリア』プレビューは以上です。皆さんがこのセットを楽しんでくれれば幸いです。来週は、プレイ・デザインからの『ドミナリア』のさらなる洞察をお送りし、その後すぐMファイル『ドミナリア』編を予定しています。
ではまた次回。
メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)
(Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru)
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