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プレイ・デザイン物語:プロツアー『イクサラン』編
プレイ・デザイン物語:プロツアー『イクサラン』編
Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2017年11月10日
こんにちは、そして「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今週は今回のプロツアーに影響を与えたカードと、それらをどのようにしてデザインしたかについてお話しします。
先日行われたプロツアー『イクサラン』は、通常の発売2週間後ではなく数年ぶりに5週間後での開催となりました。これにより、プレイヤーにはより多くのテストする時間とプレミア・イベントから分析するためのデータが与えられました。
わたしたちが見たデッキにどのような影響があったかを伝えるのは困難です。プレイヤーにはより創造的になりテストを重ねる時間がありましたが、一部のプレイヤーはすでに確立されたメタゲームの探求を行う必要性を感じなかったかもしれません。
わたしたちは今回のプロツアーで、多くのアーキタイプと『イクサラン』からのいくつかの革新を目にしました。ではカードを見ていきましょう!
《アズカンタの探索》
《アズカンタの探索》はコントロール・デッキや《王神の贈り物》デッキで見かけられました。わたしたちはこのカードをコントロール・デッキ向けのユーティリティー・カードにすることを目指していましたが、墓地シナジーのあるデッキでも有用であることを知っていました。
《アズカンタの探索》はインスタントではありませんが、《奔流の機械巨人》デッキをより強力にします。元々のバージョンのこのカードは変身するために10枚のカードが必要でしたが、変身させるのが難しすぎることが判明し、そして大抵ゲームはこのカードが変身する前に決まりました。わたしたちはこれをより確実に変身できるように7枚に変更を行いました。
また、わたしたちはこのカードが勝ち手段を見つけるのではなく、追いつき追い越すカードとして機能することが重要だと感じました。これが土地でないカードを何でも見つけられる場合、柔軟性が高くなりすぎ、そしてコントロール・デッキが《奔流の機械巨人》から離れて(《副陽の接近》のような)クリーチャーでない勝ち手段に向かう場合、ボーナスになります。
プレイテストでわかったことの1つが「3ターン目に《アズカンタの探索》が変身する」ことです。わたしたちは青が《不屈の自然》を使えても構わないのかどうか自問しなければいけませんでした。1ターン目に《査問長官》を出し、2ターン目に《アズカンタの探索》を出して3ターン目には変身が可能です。わたしたちはそれをクールな叶えるべき夢だと考え、そしてパスカル・メイナード/Pascal Maynardはこのプロツアーのトップ8の中で、実際にそうする選択肢を持っていました。
7 《島》 6 《平地》 3 《灌漑農地》 4 《氷河の城砦》 2 《イプヌの細流》 -土地(22)- 4 《査問長官》 4 《聖なる猫》 4 《機知の勇者》 4 《発明の天使》 -クリーチャー(16)- |
2 《選択》 4 《航路の作成》 4 《巧みな軍略》 2 《アズカンタの探索》 4 《復元》 2 《排斥》 4 《王神の贈り物》 -呪文(22)- |
1 《敵意ある砂漠》 1 《領事の権限》 2 《ジェイスの敗北》 2 《否認》 4 《博覧会場の警備員》 3 《賞罰の天使》 1 《燻蒸》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード(15)- |
《暴れ回るフェロキドン》
「ラムナプ・レッド」のプレイヤーの多くは横並べ戦略と戦うための手段として《暴れ回るフェロキドン》へと向かっていきました。わたしたちは実際にこのカードを《守護フェリダー》コンボへの対策としてデザインしました。
開発部はセットをデザインするときに未来の仕事をしていて、そしてわたしたちが『イクサラン』のプレイテストをしている時点で《守護フェリダー》コンボはスタンダードのトップメタでした。わたしたちはこのコンボが強すぎると感じましたが、《守護フェリダー》を禁止する前に他の選択肢を探したいと考えました。
わたしたちは大規模なテストを行い、この環境に対策カードを追加しました(《キンジャーリの陽光翼》も《守護フェリダー》コンボのために追加されたカードです)。わたしたちはそれでも《守護フェリダー》の禁止が今後の健全なスタンダードのために不可欠であるという結論に至りましたが、《暴れ回るフェロキドン》は強力なライフ獲得やトークン・デッキに対する安全装置としてそのまま残されました。
《アダントの先兵》
《アダントの先兵》は、どちらもプロツアーで優秀な成績を残した「白単吸血鬼」や「白緑アグロ」で見かけられました。《アダントの先兵》は白いアグロの主な弱点である《神の怒り》効果や単体除去に対する耐性を持った強力でアグレッシブな2マナ域としてデザインされました。わたしたちは吸血鬼部族デッキが成立するようにこれを吸血鬼にしましたが、部族をプレイすることを強制されないようにするためより幅広く使えるようになりました。
《アダントの先兵》はまさしくアグロのカードです。防御では大したことはありませんが(ダメージを通すことができるなら、4点のライフを払うでしょうか?)、攻撃では対処がとても困難です。
これに行われた変更の1つは、攻撃しているかぎり+2/+0されるようになったことです。 もともとこれは破壊不能を得る起動型能力を持った3/1でしたが、わたしたちはこれが《キランの真意号》に搭乗できる追加の2マナ域となり、機体デッキを強化しすぎることを発見しました。当時の機体デッキは現実世界最強のデッキであり、わたしたちはそれに追加の道具を与えるのは危険だと感じました。攻撃しているかぎり+2/+0される1/1にすることで、機体デッキに余分なパワーアップをさせずにその機能を維持しました。
以下のリストは《アダントの先兵》をフィーチャーし、このプロツアーで現れた最もクールなデッキの1つ(もちろん私個人の感想)です。
7 《平地》 5 《森》 1 《まばらな木立ち》 4 《陽花弁の木立ち》 3 《シェフェトの砂丘》 3 《ハシェプのオアシス》 -土地(23)- 3 《聖なる猫》 2 《造命の賢者、オビア・パースリー》 4 《アダントの先兵》 4 《典雅な襲撃者》 4 《マーフォークの枝渡り》 4 《立て直しのケンラ》 2 《キンジャーリの陽光翼》 1 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《信義の神オケチラ》 -クリーチャー(26)- |
3 《顕在的防御》 2 《軍団の上陸》 4 《旗幟 // 鮮明》 2 《霊気圏の収集艇》 -呪文(11)- |
2 《陽光鞭の勇者》 3 《英雄的介入》 1 《空鯨捕りの一撃》 2 《排斥》 3 《燻蒸》 2 《啓示の刻》 2 《試練に臨むギデオン》 -サイドボード(15)- |
《スカラベの神》
『破滅の刻』の3柱の神々では、わたしたちがこれまでしたことのなかった神の解釈をしました。開発部はテーロスの15柱の神々とアモンケットの5柱の神々に続く神について悩んでいて、そしてプレイヤーが神同士の類似点を好きなのか嫌いなのかがはっきりしていませんでした。
全ての神は破壊不能で特定の条件を満たさないと攻撃やブロックできないという共通したデザインを持っていました。『破滅の刻』チームは不死性を現す他の方法を探し求め、そして神を少なくとも一時的には戦闘や除去によって対処しやすくするために、「死んだら手札」を試すことにしました。この終了ステップ開始時に手札に戻る遅延型誘発能力は、即座に手札に戻るのでは不満がたまり楽しくないことが判明したことから、対戦相手にもっと永久的な対策を見つける余裕を与えるためにつけられました。
あなたはどちらがより楽しい神だと思いますか?
Which MTG God design is more fun?
Indestructible, can attack/block if condition is met (THS/AKH)
Returns to hand upon death (HOU)#wotcstaff -- Melissa DeTora (@MelissaDeTora) November 7, 2017
どちらの「神」のデザインがより楽しいと思いますか?
破壊不能、条件を満たせば攻撃/ブロックが可能(『テーロス』『アモンケット』)
死んだら手札に戻る(『破滅の刻』)
- 破壊不能
- 死んだら手札
- 結果を見たい
《秘宝探究者、ヴラスカ》
ヴラスカをデザインしているとき、ヴラスカらしさと海賊らしさの両方を感じさせるのは難しいだろうということは分かっていました。わたしたちはどんなミッドレンジやコントロールにも入り、実際にデッキの軸にしなくてもいいような、より汎用性のあるデザインで行くことにしました。
もともと、ヴラスカが破壊できたのはクリーチャーだけでしたが、クリーチャーかアーティファクトかエンチャントを破壊できる能力を持っていることがわたしたちにとって重要でした。アーティファクト、特に機体は現実世界で多くプレイされていて、わたしたちは6マナのプレインズウォーカーが《キランの真意号》や《霊気圏の収集艇》に対処できないようにはしたくありませんでした。さらに、『イクサラン』の両面カードの多くはエンチャントなので、わたしたちの想定よりもそれらが強かった場合のための安全装置があることは良いことでした。
我々はヴラスカを純粋に防御的なものにしたくなかったので、威迫を持つ海賊を作る能力は重要でした。序盤はそのトークンで身を守ることができ、コントロールを確立すればそれらで勝つことができます。これらは特に、プロツアー『イクサラン』の「アブザン・トークン」デッキで《選定された行進》を出して海賊を倍出すのは、見ていて楽しい動きです。
『破滅の刻』のレア永遠サイクル:こぼれ話
黒のものを除いて、内部では「勇者」と呼ばれていたこれら全てのレアの永遠サイクルはこのプロツアーに影響を与えました。以下は『破滅の刻』のデベロップ・リードのイアン・デューク/Ian Dukeからあなたへのこのサイクルのこぼれ話です!
- 《典雅な襲撃者》はファイルにあった初期は人間でしたが、わたしたちが現実世界での人間デッキの強さを目の当たりにした後変更されました。《集合した中隊》入りバント人間はトップメタのデッキであり、強化の必要がありませんでした。わたしたちは『アモンケット』と『破滅の刻』の2枚の猫ロードと組み合わせてマイナーな猫部族を可能にするために、新しいクリーチャー・タイプとして猫を選びました。それに、猫が嫌いな人なんていますか?
- 《夢盗人》は一時期戦場に出たときにそのパワーに等しい枚数のカードを各プレイヤーが捨てるという異なるデザインでしたが、あまり楽しくありませんでした。《狂気の種父》を墓地から唱えられるところを想像してみてください!
- 開発部は発売時にプレイヤーが《機知の勇者》にあまり興奮しなかったことに驚きました――わたしたちはこのセットの中で強力なカードの1枚だと考えていました。
- 《地揺すりのケンラ》は一時期、自身よりパワーの低いクリーチャー全てを《気絶》させて(そして今とは違うマナ・コストを持って)いました。これは《墓後家蜘蛛、イシュカナ》のトークンに対抗するためでした。これは不快すぎたので、クリーチャー1体に(しかし同じパワーのものにも当たるように)変更されました。
- 《立て直しのケンラ》はデベロップの一時期今よりも少し強力でした。開発部でこのカードと《ハシェプのオアシス》や《旗幟 // 鮮明》のようなパンプアップ効果を二段攻撃や《静電気式打撃体》に使うデッキが、パワー・レベルの一線を少し超えていることが判明しました。
わたしたちはこのレアのサイクルの永遠コストが全て6マナ・7マナになってしまうのを望まなかったので、マナ以外のコストを試してみました。「カードを1枚捨てる」は試してみたものの1つですが、それはアンコモンのデザインのほうに向いていることが分かりました。
今週はここまでです。この記事が面白かったなら、TwitterやRedditで教えてくだされば、また今後のプロツアーでこのような記事を書こうと思います。
ではまた次回。
メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)
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