正解：b.《ジェイラム秘本》

　リチャード/Richard Garfieldが『アルファ版』を作った時、何枚かのカードを友人の名前にちなんで名付けた。そういったカードの１枚が、《ジェイムデー秘本》で、これはJ.M.D.の秘本だったのだ。J.M.D.はジェームズ・マイケル・デイビス/James Michael Davisだ。マイク・デイビスは、リチャードが『Roborally』をウィザーズ・オブ・ザ・コーストに売り込もうとした初めての会議に同席した人物である。ウィザーズのCEOだったピーター・アドキッソン/Peter Adkisonは、そのゲームには部品が多すぎてウィザーズでは生産できないが、アートの入ったカードなら印刷できると答えたのだ。この話はめでたしめでたしとなった。

　秘本の名前をデザイナーのイニシャルから取るというのはその後も続いた。《ジェイラム秘本》はJ.L.M.の秘本で、名前の元になったのはジョエル・Ｌ・ミック/Joel L. Mick、『アンティキティー』のデザイナーの１人である。ジョエルは後にマジックの初代主席デザイナーとなる。（継いだのがビル・ローズ/Bill Roseで、その後が私だ。）

　《エメシーの秘本》ことM.S.E.の秘本は、マイク・スコット・エリオット/Mike Scott Elliott、『テンペスト』のデザイナーだ。マイクは後にマジックのデザイナーとして非常に多くの作品を手掛け、私の次に多くのセットのデザインをリードすることになる。

　《マンガラの秘本》は、デザイナーの名前に由来しない唯一の秘本だ。マンガラ、Mangaraは「アナグラム/anagram」のアナグラムである。名付けたデザイナー（当時は、デザイナーが自分のセットのカードのほとんどを名付けていた）は、当時カード名にアナグラムを多用していたことをいじるのが面白いと思ったのだ。（アナグラムは大量に出てくるので、今日はこういう感じになる。）

正解：c.《銀のゴーレム、カーン》

　カーンは、「cairn」（石塚）という語から名付けられた。「記念碑や目印として積み重ねられた石」という意味である。カーンは様々な重要なアーティファクトであるレガシーを保つゴーレムなので、石で作られた史跡にちなんだ名前が格好いいと考えたのだ。興味深いことに、この名前は彼の材料が何かを決めるより前につけられたものである。

正解：c.《オニュレット》

　《オニュレット》はもともとは複数形のOnuletsで、これは同じくクリーチャーが死亡したときにライフを得る『アルファ版』のカード《魂の網》（Soul Net）のアナグラムだった。アートが届いた時、１体しかクリーチャーが描かれていなかったのでカード名を変えることになった。新しい名前をつけることも検討したが、オニュレットという名前が気に入っていたので、単数形にしてアナグラムを崩すことになったのだった。

正解：d.《テリムトー》

　『ミラージュ』のデザイン・チームはリチャードがブリッジ・クラブで出会い『アルファ版』のプレイテスターを務めた６人（ビル・ローズ、チャーリー・カティノ/Charlie Catino、ｌ・フェリス/Don Felice、エリオット・シーガル/Elliott Segal、ハワード・カーレンバーグ/Howard Kahlenberg、ジョエル・ミック）だった。このグループは『ミラージュ』と『ビジョンズ』をデザインした。このグループがプレイテストをしていたある日、エリオットはシカゴ・ベアーズの選手であるウィリアム・ペリーが「冷蔵庫」というあだ名なのをクールだと思った。彼はデザイン・チームのメンバーそれぞれにあだ名があるとクールだろうと提案し、それに答えてビル・ローズは「そうだな、Mr. Toilet（お手洗い君）」と答えたのだ。テリムトー（Telim'Tor）は「Mr. Toilet」のアナグラムである。

正解：d.《Spark Fiend》

　《Spark Fiend》のメカニズムは、ダイスゲームのクラップス（Craps）をもとにしている。SparkはKrapsの逆綴りである。実際、最初はSparc Elementalだったのだが、データベースに綴り間違いの指摘があっただけだったのでSparkに変更したのだ。

正解：d. 《中略》

　マジックのカードの名付けにおける大問題の一つが、打ち消し呪文のために新しいクールな単語を見つけることである。どのセットにも複数あるので、すぐに思いつく名前は遠い昔に使い尽くしていたのだ。Syncopateは「音楽で、強拍を弱拍に、弱拍を強拍にするように拍や強弱をずらす」ことを意味する音楽用語なので、何かの作用しかたをいじる打ち消し呪文のクールな名前だった。

　しかし、さらにクールな部分は、（{X}マナを）払わせることと打ち消されたカードを追放することの組み合わせのデザインだということである。対戦相手にコストを払わせて支払えなかったらその呪文を打ち消す最初の呪文は、『アルファ版』の《魔力消沈》（Power Sink）である。打ち消した呪文を追放する最初の打ち消し呪文は、『ミラージュ』の《雲散霧消》（Dissipate）である。そもそもこのカードがデザインされたのは、《魔力消沈》の「Sink」と《雲散霧消》の「pate」を組み合わせてSyncopateという単語が作れると気づいたからなのだ。全体が非常にすばらしかったので、『オデッセイ』のデザイン初期に作られ、そのまま印刷に到ったのだった。

正解：d.《夜のスピリット》

　このカードのもとの名前は「Spirit of the Nightstalker」だったが、入らなかったので削られた。

正解：c.《Mijae Djinn》

　《アーナム・ジン》はリチャードの義兄弟のハーマン/Hermanが元になっている。ErhnamはHermanのアナグラムである。《Ifh-Biff Efreet》は、リチャードの姉妹エリザベス/Elizabethが元になっている。リチャードは子供の頃「エリザベス」と言えなかったので彼女のことを「Ifh-Biff」と呼んでいて、それがあだ名として定着した。

　《Phelddagrif》は、「Garfield Ph.D.」のアナグラムである。この名前は、インタビューの際にいつも彼が「Ph.D.Garfield」（ガーフィールド博士）と呼ばれていたことをネタにした開発部内のジョークだった。

　《Mijae Djinn》はリチャードの友人で『アラビアン・ナイト』のころに同じく友人のウェンディ/Wendyと結婚したジェイミー/Jamieの名前を元にしている。リチャードはその結婚の付添人だった。MijaeはJamieのアナグラムである。《Ydwen Efreet》のYdwenはWendyのアナグラムだ。ジェイミーはリチャードの家族ではない。

正解：b.《Alchor's Tomb》

　ピーターはアルコー/Alchorという強力なウィザードをプレイしていた。彼を記念して、『レジェンド』デザイン・チームはウィザード向けのアーティファクトのAlchor's Tome（アルコーの秘本）というカードを作ったのだ。残念なことにアーティストが注文を聞き違え、秘本（tome）でなく墓（tomb）を描いた。スケジュールが厳しくて新しいアートを作ることが出来なかったので、カード名が変更になった。ピーターは「私のキャラクターを敬意を持って殺したってことだね」と冗談めかして応えたのだった。

正解：d.《The Most Dangerous Gamer》

　新しいスリルを求める裕福なハンターに狙われていることに気づいた人物。この筋書きは、多くの映画やテレビ番組で使われてきた。これは、リチャード・コネル/Richard Connelの短編小説「The Most Dangerous Game」が最初なのだ。

正解：b.《不気味な人形》

　「Creepy Doll」はジョナサン・クルトン/Jonathan Coultonの歌である。私は彼のファンで、《不気味な人形》はゴシックホラーに加えるのにうってつけだと感じたのだ。

正解：d.《永遠の造り手、ラシュミ》

　ラシュミは、物語上で重要な役割を果たす次元橋の発明者である。彼女の名前は、マジックにおける発明者として知られるミシュラ（Mishra）のアナグラムになっている。

正解：d.《手品》

　《だまし》（Bamboozle）は「馬鹿にする、ズルをする」の意味。《召し上げ》（Expropriate）は「（行政などが）所有者から財物を取り上げる」の意味。《ごまかし》（Hoodwink）は「欺く、引っ掛ける」の意味である。

正解：d.《ヴァティ・イル＝ダル》

　ヴァティ（Vhati）は『テンペスト』のコードネーム「Bogavhati」の短縮形である。Bogavhatiは、（当時は気づかなかったが）ヒンドゥー神話のナーガの国の名前Bhogavatiの綴り間違いである。デザイン中、『テンペスト』には毒という濃いテーマがあったことを示している。なお、今はコードネームとそのセットにはメカニズム的繋がりがないようにしている。

正解：a.《アーデンベイル城》（Castle Ardenvale）

　アーデンベイルは、エルドレイン次元の名前としてクリエイティブ・チームが最初に提案したものであるが、（セット名の一部なので）すべての名前が通過しなければならない議論を通過することは出来なかった。次元の名前はエルドレインに変更されたが、クリエイティブ・チームはアーデンベイルという名前が本当に気に入っていたので、それを白の宮廷名にした。

正解：a.《死者の王、ドラルヌ》

　ドラルヌの初登場は『プレーンシフト』のフレイバー・テキストだった。当時はドラルヌ卿となっていた。他の３人（『フォールン・エンパイア』のエンドレク、『アイスエイジ』の半心臓のイッブとヤヤ・バラード）はフレイバー・テキストで初登場したときの称号を使っている。ヤヤ・バラードのラストネームは、グレーター・シアトル地域の都市名から名付けられている。

正解：d.《幽体オオヤマネコ》

　その顛末はこうである。『アポカリプス』が完成間近になって、クリエイティブ・チームの最後の１人が離職した。（当時、クリエイティブ・チームはずっと小さかったのだ。）ビル・ローズが私のところに来て、クリエイティブ・チームの人員を補充するまで名前とフレイバー・テキストの担当をする気はあるかと聞いてきた。『Unglued』で名前やフレイバー・テキストの監督をしていた（し、執筆も大量にしていた）ので、開発部でその経験があるのは私だけだったのだ。その職分での最初の仕事が、『アポカリプス』を印刷する前にカードの名前を確認することだった。１つだけ、問題があると思われた名前があった。

　《幽体オオヤマネコ》の当時の名前は「Spirit Lynx」だったのだ。『未来予知』の発売前で、絆魂というキーワードはまだ導入されていなかった。当時は、その能力を有名にした『レジェンド』のカード《魂の絆》（Spirit Link）の能力と呼ばれていたのだ。（一応言っておくと、《魂の絆》の能力は絆魂とまったく同じではない。）プレイヤーが「Spirit Link」と呼ぶ能力を持っていないクリーチャーを「Spirit Lynx」にするわけにはいかないので変える必要があると判断した。工程のあまりにも終盤だったので、コレクター番号も決まっており、《義務と道理の盾》（Shield of Duty and Reason）と《軍旗の旗手》（Standard Bearer）の間で変えなければならなかった。最適解が、《幽体オオヤマネコ》（Spectral Lynx）だったのだ。

正解：b.《エルキンの壷》

　アートで描かれている壺は、クラインの壺（Klein bottle）である。クラインの壺とは、位相幾何学（数学の一部門）で研究されている方向づけ不可能な面である。その名前は、考案した数学者フェリックス・クライン/Felix Kleinに由来する。方向づけ不可能な別の物体であるメビウスの輪は、『ウェザーライト』の《ブージーアムの輪》（Bosium Strip）で同じように扱われている。

正解：a.《ペミンのオーラ》

　《ペミンのオーラ》（Pemmin's Aura）は、「I am Superman」のアナグラムである。これは、スーパーマンと呼ばれていた『ウルザズ・サーガ』の《変異種》のことを指している。このエンチャントは、エンチャントしたクリーチャーに《変異種》の能力を与えるものである。

正解：d.《Yule Ooze》

　《Gifts Given》は、『神河物語』の《けちな贈り物》（Gifts Ungiven）を元にしている。《Snow Mercy》は、『ウルザズ・レガシー』の《無慈悲》（No Mercy）を元にしている。《Stocking Tiger》は、『ミラージュ』の《忍び寄る虎》（Stalking Tiger）を元にしている。《Yule Ooze）は、「あなたの負け（You lose）」の発音から名前を取っている。