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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『Unfinity』ガントレット その1

Mark Rosewater
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2022年10月3日

 

 今週と来週は、『Unfinity』のカード個別のデザインの話をしよう。これらの記事のクールなところは、『Unfinity』が久しぶりに私がデザインの最初から最後まで関わったセットであり、最初から最後までのすべての話を知っているということだ。1本目の記事として、セット内の多くの伝説のカードの話をしたい。そのすべてにモダン・スタイルのブースター・ファン版が存在している。

Ambassador Blorpityblorpboop
//

 今日最初に取り上げるのは、カードのデザインではなく名付けの話である。『Unfinity』には名前とフレイバー・テキストを担当した一流のコメディ執筆チームがいた。(チームのメンバーは、カスリーン・デ・ヴィアー/Kathleen De Vere、キャメロン・ローダー/Cameron Lauder、LoadingReadyRunのグラハム・スターク/Graham Stark、シーンベイビー、オースティン・ブリッジ/Austin Bridges、私、そしてリードはアリ・ツィルルニク/Ari Zirulnikだった。)

 その工程においては、まず、毎週カードを受け取り、そのカードに必要なのが名前かフレイバー・テキストかその両方かを伝えられる。(名前が必要ないのは、デザイン中の名前を残したいと考えた場合である。)各メンバーがそれぞれのスロットごとに最低3つの提案を提出することになっていたが、思いついたらそれ以上提出することもできた。

 デザインの最初から私が持っていたアイデアの1つが、カード1枚に馬鹿げた異常に長い名前をつけるのは面白いだろうというものだった。それをどのカードにするかは決めていなかったが、注目はしていたのだ。なぜ大使がふさわしいと思ったかはわからない。彼は、このセット専用に作られたエイリアンの種族、ブローブ星人だった。(レックス・ネビュラ艦長が事故でブローブ星を轢き潰してしまったので、マイラは彼らにこのパークの生涯パスを発行した。)彼はまさにちょうどいいカードに見えたのだ。そして最終的に、彼の名前はルール文中で2回引用されることになり、さらに可笑しくなった。私が最初に考えた名前が、Ambassador Blorpityblorpboopだった。これがどこから来たのかは自分でもわからないが、この形で思いついたのだ。私はすぐに気に入った。

 激しく興奮した私は、これをデザイン・チームに共有した。彼らの反応は芳しくなかった。もっと短くできないかと言われた。私が拒否すると、彼らは音の繰り返しを減らせないかと言ってきた。bやp、そしてoが多すぎるというのだ。私は、それが面白いのだと答えた。私は、アリにそれを判断する権限があるとわかっていた。私は執筆チームの一員で、間違いなく提供はするが、権限はアリにあるのだ。私がどれほど気に入っていようと、アリが気に入らなければ採用はされない。そして、こんなやり取りにつながった。

:わかった、アリ、我々のユーモアのセンスがどれぐらい近いかを確かめる必要がある。カードの名前を伝えるから、それが可笑しいかどうか言ってくれ。
アリ:ええ、どうぞ。
:Ambassador Blorpityblorpboop。
アリ:とても可笑しいですね。変更はすべきではありません。
:これは美しい友情の始まりになるだろう。

Comet, Stellar Pup
//

 『Unsunctioned』は、15枚の新カード・デザインがあるアン・テーマのボックス製品だった。それらのカードのうち1枚はプレインズウォーカーのスロットだったので、私は当時プレインズウォーカーを監督していたチームにアンのプレインズウォーカー用のアイデアを書いたリストを持って行ったのだ。

 それらのアイデアの1つが、犬だった。犬型人間でも喋る賢い犬でもなく、ごく普通のうろつく犬だ。イニストラードで骨を掘り出し、それをゼンディカーに埋めるのだ。犬のプレインズウォーカーというアイデアは何年もの間私がブログやソーシャルメディアで書いてきたもので、どうしても作りたいと思っていた。

 アン・セットはまさにふさわしいと思ったのだ。興味深いことに、私が犬のアイデアを売り込むとき、私は「うーん、黒枠でやれるかもしれない」と言われたので、代わりにビーブルの集団を使うことにしたのだった。(これが《B.O.B.》になった。) そして数年が経ち、私は『Unfinity』を手掛けていた。(少なくともマジックのセットでの)プレインズウォーカーを監督するチームは変わっていたので、私は再び犬のプレインズウォーカーの提案を持ち込んだ。今度の答えは、「もちろん。ぜひやろう。」というものだった。

 最初に解決すべき問題は、犬のプレインズウォーカーらしさをどう再現するかだった。熟考の末、我々が見出した答えは、プレイヤーの指示を聞かないというものだった。犬が、ほとんどの場合にプレイヤーが喜ぶクールなことをするが、プレイヤーがしてほしいことではなく自身がしたいことをするというのはどうだろうか。アン・セットなので、6面体サイコロを使うのがその無作為性を生み出す最高の方法だろう。(これは『フォーゴトン・レルム探訪』がサイコロを導入する前のことである。)

 我々はすべての行動を、犬らしいもので、かつほとんどの場合プレイヤーに有益なものにしようと考えた。そこで、まず、思いつくかぎりの犬の行動を書き出していった。(リスを追いかける、骨を掘り出す、など。)そしてそれらを、一般的に有益な能力に変換した。

 それに加えて、忠誠度を変更することに意味を持たせる必要があった。コメットが飽きていなくなるという流れが必要だったのだ。我々は効果によって忠誠度を得たり失ったりさせることでこれを達成した。コメットのデザイン名は、初めて宇宙に出た犬、ライカだった。我々はこの犬のプレインズウォーカーが赤白であるべきだと考え、メカニズムをそのカラー・パイに合わせた。最初のデザインはこうだった。

〈ライカ〉
{1}{R}{W}
伝説のプレインズウォーカー ― ライカ
あなたのメイン・フェイズの開始時に、1個の6面体サイコロを振り、その出目の処理を行う。
1や2―リスを追う―あなたの出目に等しい点数の忠誠度を得、その後、緑の1/1のリス・クリーチャー・トークン2体を生成する。ターン終了時まで、それらは速攻を得る。
3―掘り出す―1点の忠誠度を失い、その後、あなたの墓地にあるアーティファクト1つをあなたの手札に戻す。
4や5―攻撃する―1つを対象とする。2点の忠誠度を失い、これはそれに自身の忠誠度に等しい点数のダメージを与える。
6―イタズラする―1点の忠誠度を得、その後、2個の6面体サイコロで振り直す。

 1つ目は、「リスを追う」である。これでリスが手に入る。出目が1や2なので、セット内で使っていて出目によって得られる量が変わる効果を使った。今回の場合、得られる忠誠度の量であるフレイバーのため、そしてセット内のトークンと合わせるため、リスは緑にしたが1/1トークンを生成する第1色は白である。

 2つ目が、「掘り出す」である。骨を掘り出すのに一番近いのはアーティファクトだろう。これは明白に白だ。

 3つ目は「攻撃する」。ここまでの2つの能力はどちらも白だったので、赤の能力が必要だった。直接ダメージがよさそうだ。無作為性を加えるため、このダメージを忠誠度に関連付けることにした。理由あって、最初のバージョンでは忠誠度を失うほうが先だった。

 4つ目は、さらなる興奮を加えたいと考えた要素である。コメットが2つ以上のことをする可能性があるのだ。

 1つ目の能力で忠誠度を得て4つ目の能力で失うので、均衡を取るため、2つ目の能力で忠誠度を失い、4つ目の能力で忠誠度を得るようにした。この最初の工程で、得る忠誠度より失う忠誠度のほうが少し多くして、コメットが永遠に残り続けることがないようにしたのだ。

 基本構造は成立したが、いくらかの調整が必要だった。まず、最低1つは忠誠度能力を持たせなければならないので、サイコロを振ることを0能力にした。(これによってコメットは、1つしか忠誠度能力を持たない初のプレインズウォーカーになった。)残念ながら、フレイバー・テキストを入れる余裕はなかった。

 そして、忠誠度アイコンを忠誠度の増減を表すために使った。スペースを抑えるため、「リスを追う」能力で得られる忠誠度を+2に固定した。「掘り出す」能力は多くのデッキで有効にするため、アーティファクトから軽い呪文に変更した。強くするため、「攻撃する」能力で修整度を失うのは小ダメージの後にした。「イタズラする」能力は基本的にそのままだ。

 この話の最後に、これをどんぐりシンボルにするかエターナル・カードにするかを決定するためのレビューのことを話そう。これが作られた以降に、エターナルのマジックにサイコロを振ることが導入されたので、エターナルで使用可能にできるという判断が下った。我々の犬のプレインズウォーカーは、アンでないデッキで使われることになったのだ。いい子だ、コメット。

Devil K. Nevil
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 《Devil K. Nevil》のアイデアは、世界構築のかなり初期に生まれた。無謀であることは扱いたい素材の1つなので、このセットに無謀な人を入れたいと考えていたが、これはマジックなので無謀な人(daredevil)は実際にデビルでなければならないだろう。《Devil K. Nevil》のデザインで扱いたい素材は、ものを飛び越えることだった。それをメカニズム的に表す方法はあるだろうか。

 最初の質問:《Devil K. Nevil》は何を飛び越えるのか。戦場にあるものを飛び越させたかったので、土地かクリーチャーかになる。フレイバー的に、土地を飛び越すのはクリーチャーを飛び越すのに比べて面白くなかったので、クリーチャーを飛び越すことにした。さて、それではクリーチャーを飛び越すとはどういうことだろう。アン・セットなので、我々が最初に考えたのは文字通りクリーチャーを飛び越させることだった。その手段は何か。

 クリーチャーを揃えて並べ、彼に飛び越させるさまざまな方法を試した。トスしたり、滑らせたり、投げたり、さまざまな選択肢を試したのだ。一番良かったのは、クリーチャーの並びの前から物理的に宙を舞い、その並びの向こうで着地させるというものだった。我々が求めていたフレイバーをその処理が一番よく再現していた。

 最終的に我々は、私が子供時代のキャンプで遊んでいたゲームの技術を使った。まず、折った紙切れをテーブルから半分はみ出るように置き、それを弾き上げて宙に舞わせる。マジックのカードにはこの行動をできるだけの重さがあり、デビル・K・ネビルを飛び越えようとするクリーチャーの列に並べることができた。我々は《Devil K. Nevil》が自分のコントローラーと相談の上で飛び越えたいクリーチャーの数を決められる(上限は戦場にいるクリーチャーの数による)というアイデアを採用したので、このカードには「運試しの挑戦」要素が含まれることになった。これにより、《Devil K. Nevil》には飛び越したクリーチャーの数を反映した拡大効果を持たせることができた。最終的に、速攻のおまけ付きの+1/+1カウンターが完璧な答えだった。

 我々は簡単にこれを決めて、プレイされ方にも満足していた。1つだけ、小さな問題があった。ルール文で、このカードがどう作用するかをどう書けばいいのだろうか。その問題への我々の回答は、こうだった。

速攻
これが戦場に出たとき、戦場にある任意の数のクリーチャーを、カードの縦1枚分だけテーブルの端から離れたところから始めて水平方向に隙間なく並べる。これを、テーブルの端から三分の一はみ出てそれらのクリーチャーと並べて縦向きに置く。上向きの行動1つで、これを空中に打ち上げる。これが一番遠いクリーチャーを飛び越えて着地したなら、これの上にこれが飛び越したクリーチャー1体につき1個の+1/+1カウンターを置く。

 我々がこの文をこのセットのエディターのマット・タバック/Matt Tabakに見せたところ、彼は「この文章はずっと長くなりますよ」と答えた。実際、彼にはカードに収まり切るかどうかわからなかったのだ。記述しなければならない内容が多く、マジックのルール文には単語数が増えることになる厳密さがあるのだ。それに加えて、彼はメイン・キャラクターの1人なので、このカードにはフレイバー・テキストを入れたかった。

 デザイン・チームは苛立っていた。これがすることを見せることができたら、すぐに理解できるだろうに。これは非常にトップダウンなメカニズムで、やって見せれば何が起こるかは理解できるものだ。ルール文上で「見せる」のが難しいだけなのだ。

 そのとき、我々は気がついた。これは(物理的器用さなので)どんぐりカードなので、通常のエターナル・カードではできない選択肢が取れる。実際、セットを成立させるための方法として技術を使っている。(《Mobile Clone》や《Photo Op》など。)このカードでは、どう使うのかを見せたらどうだろうか。『Unstable』には《Urza, Academy Headmaster》があり、何をするかを見るためにインターネットにアクセスしていた。《Devil K. Nevil》では、ルール文の文章ではなく動画を見るようにしたらどうか。最初の注釈文は、「(これは複雑だ。[ウェブサイト]に行って確認すること。)」と書かれていた。

 そのリンク先がこれで、(LoadingReadyRunの私の友人たちが作った)動画はこれである。

D00-DL, Caricaturist
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 奈落(マジック開発部員の多くがいる場所)で、我々の周りには多くの無地のカードがある。プレイテストでは、まだ印刷状態になっていないトークンを使うことが多い。プレイテスターがマーカーを取り出してトークンを手作りすることもある。これがこのカードの発想のもとになった。プレイヤーに描かせるトークンを生成するカードはどうだろうか。アン・カード、特にどんぐりカードのデザインのいい種は、楽しい活動を思いつき、そこから楽しめるゲームプレイにつながる何かを見出すことにある。それでは、プレイヤーが描くことが意味を持つようにしたらどうだろうか。カードを描くことが能力に影響を及ぼすとしたら。楽しそうだ。

 これはつまり、描ける物理的なものでクリーチャーのさまざまな常盤木能力を示すものを考え出さなければならないということである。(無色のアーティファクトにしたのは、必要なキーワードすべてを扱えるようにするためである。)翼と飛行はすぐに思い当たった。他に、能力を示す体のパーツはあるだろうか。骨をトランプルに、牙を接死に、爪を威迫に使うことができた。

 その後、クリーチャーが持つもので他の能力を示すものがないかを考えた。すぐに思い当たったのは、剣と先制攻撃だった。さらに、盾を警戒に、弓を到達に、鎧を呪禁に、靴を速攻にあてた。このトークンは、このカードの最初のバージョンから4/4だった。フレイバーのために、このクリーチャーを謝肉祭の素材としてリストアップされていた風刺画家にした。カードパワーの観点から、1/1にした。このカードはアーティファクトなので、ロボットにした。セット内に3枚ある道化師でないロボットで、唯一の伝説のロボットになった。また、一番最初から、トークンを描くための時間は15秒に決めていた。何かを描くには充分だが、すべてを描くには足りない時間である。(能力を大量に入れたかった理由の1つがこれである。プレイヤーは選択しなければならないのだ。)

 プレイテストの結果、これはプレイしてとても楽しいことがわかったが、いくつかの問題があった。まず、我々が選んだものの中にはすぐには描けないものもあった。このカードに関して我々は、プレイヤーが最善を尽くしてその描いたものを説明することができると思っていたが、鎧は簡単に描ける象徴的なものがなかった。スケッチしたトークンを他のプレイヤーにただ見せても、そのプレイヤーに鎧を描いたとわかってもらえないのだ。(描いたのが才能ある画家でなければ。)加えて、呪禁は楽しいとは言えない能力なので、そもそも除くのがいいと思われた。

 そして、プレイヤーが欲しがるであろう能力である絆魂を忘れていたことに気がついた。そこで、我々は絆魂は何であるべきかと頭を捻った。何も思いつかなかったが、絆魂と吸血鬼の関連に気がついた。牙が絆魂を表すとしたらどうだろうか。しかし牙はすでに接死で使っている。接死を爪にしてもいいが、そうすると今度は威迫を示すものがない。我々は接死よりも威迫を示すものを考えるほうが簡単だと思ったので、爪を接死に回した。さて、何なら威迫になるだろうか。

 一方で、メカニズム的に意味があるものを描くのに忙しく、誰もクリーチャーに顔を描いていないことに気がついた。目に意味をもたせる方法はあるだろうか。目を威迫にできないか。なぜ目は威迫なのか。凄い目をしているというのはどうだろうか。そこで我々は大笑いして、「それでいこう」と言ったのだ。たった1回のプレイテストで、凄い目というのが素晴らしい追加だとわかった。

 ルール文への最後の変更は、すべての能力が使われているかと考えたときに行なわれた。9つ中8つは使われていた。使われていなかったのは到達である。ほとんどの場合、クリーチャーに飛行を与えるので、到達は無意味になっていた。最終的に到達を省いたが、これによってカードに収まるようになったのでよかった。

 最後の調整は伝説にしたことである。伝説のクリーチャーのスロットは30個あり、ドラフトや物語上で必要なすべてを入れてもまだいくらかのスロットが残っていた。無色のどんぐりの統率者が必要で、このカードはプレイしてとても楽しいことが示されていたので、我々はこれを伝説のクリーチャーにしたのだった。

 私は《D00-DL, Caricaturist》の出来に満足している。諸君が自分のクリーチャー・トークンを描く機会に恵まれれば幸いである。

Grand Marshal Macie
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 何年も前、私は一時的効果が終わらないようにする白のエンチャントを作った。例えば、《巨大化》したクリーチャーが、ターン終了時までではなくそのゲームの間ずっと+3/+3の修整を受けるのだ。私はそれをセットに入れた。ルール・マネージャーがそれを取り除いた。実績ある戦略に基づき、私は新しいルール・マネージャーの就任を待って別のセットにそれを入れた。再び、ルール・マネージャーがそれを取り除いた。これが3回繰り返されて、私はそれを『Unhinged』に入れることにした。アン・セットは、プレイヤーが理解できるが、実際上ではなく奇妙なコーナーケースにおいてルール上問題があるカードを入れるのにまさにうってつけだ。

 《Staying Power》が世に出て、プレイヤー、少なくともこれについて私に話してきたプレイヤーは、称賛するか、アン・セットに入れるべきではなかったと不満を言うかのどちらかだった。『Unfinity』のデザインを探していたとき、《Staying Power》がしたことを全体効果ではなく起動してできるクリーチャーというアイデアが浮かんだ。最初のデザインはこうだった。

〈調整する魔術師〉(バージョン #1)
{W}{U}
クリーチャー ― 人間・ウィザード・従業員
2/2
{1}:「ターン終了時まで」や「このターン」の効果1つを対象とする。これが戦場にあるかぎり、それは終わらない。

 このクリーチャーは最初、白青のクリーチャーだったのだ。この能力を多色のクリーチャーに持たせたいと考え、白青がふさわしいと感じたのである。また、理由あって、このカードは最初伝説のクリーチャーではなかったが、これはおそらくこれを統率者にしたいかどうかについてまだ考えていなかったからだろう。

〈調整する魔術師〉(バージョン #2)
{W}{U}
クリーチャー ― 人間・ウィザード・従業員
2/2
{W}:「ターン終了時まで」や「このターン」の効果1つを対象とする。これが戦場にあるかぎり、それは終わらない。
{U}, {T}:パーマネントや呪文にある数1つを対象とする。それを1増やすか減らす。この効果は永続的である。

 クリーチャーが持つ起動型能力にしたい効果を持つ昔のアン・カードがもう1枚あることに気がついた。『Unstable』の《More or Less》である。(数字を1増やしたり減らしたりできるカードである。)

 この2つの能力はどちらも呪文や効果の機能を書き換えるものであり、関係しているように思えたので、このカードに両方の能力を持たせた。《Staying Power》の能力のほうが白く感じたので、起動コストを白にし、《More or Less》は青く感じたので起動コストを青にした。白の能力にタップを必要とさせなかったのは、バージョン#1からの持ち越しだからだろう。どちらの能力もかなり協力になったところでバージョン#3になる。

〈調整する魔術師〉(バージョン #3)
{W}{U}
伝説のクリーチャー ― 人間・ウィザード・従業員
2/2
あなたのアンタップ・ステップにこれをアンタップしないことを選んでもよい。
{W}, {T}:「ターン終了時まで」や「このターン」の効果1つを対象とする。これがタップ状態であるかぎり、それは終わらない。
{2}{U}, {T}:パーマネントや呪文にある数1つを対象とする。それを1増やすか減らす。これがタップ状態であるかぎり、この効果は続く。

 白の《Staying Power》の能力はタップを必要とするようになり、青の《More or Less》の能力のコストは増えた。これで問題なしだろう。そんなことはない。どちらの能力も、狂気の産物だった。この時点で、デザイン・チームはこの2つの能力はそれぞれのカードを作れるほどにクールだという結論に達した。また、この時点で、どの能力がどの色かという問題も浮上してきたのだ。

 レアや神話レアの伝説のクリーチャーのスロットは3つあり、白青、青黒、白黒それぞれ別々の効果を入れることになっていた。1つが《Staying Power》効果、1つが《More or Less》効果、1つは戦場以外でトークン・クリーチャーが消えないようにする効果である。《Staying Power》効果は白、《More or Less》効果は青がふさわしいと考えられた。トークン保持能力は白黒だったが、これは白単や黒単でも成立して白黒である必要はないと気がついたのでスロット3つのどこにでも入れられた。

 マーシーが白黒になったのは次のバージョンであった。能力の使用にはコストが必要で、最もシンプルな追加コストはライフであり、それはどの色よりも黒らしかったのだ。

〈パレードのリーダー、マーシー〉(バージョン #4)
{1}{W}{B}
伝説のクリーチャー ― 人間・パフォーマー
2/2
{1}, 1点のライフを支払う:「ターン終了時まで」または「このターン」の効果1つを選ぶ。その効果は次のターンの終了時まで終了しない。

 この時点で、プレイデザインからの意見を受け、この能力があまりにも強すぎたので、効果の持続時間を伸ばすためにクリーチャーをタップし続ける必要があるバージョンを試した。それでも強すぎたので、ライフの支払いを毎ターン1点ではなくターン毎に増えるようにした。効果を長い間維持することは、それだけの痛みを伴うのだ。この変更で充分だとわかった。

 《More or Less》効果は青黒に移って《Truss, Chief Engineer》になり、トークン保持効果は白青に移って《Claire D'Loon, Joy Sculptor》になったのだった。

パン!

 本日はここまで。これらの話を楽しんでもらえたなら幸いである。今日の記事や私の話したカード、『Unfinity』そのものに関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、さらなる『Unfinity』のカード個別のデザインの話を続ける日にお会いしよう。

 その日まで、『Unfinity』のプレイがあなたに語るべき物語をもたらしますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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