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Making Magic -マジック開発秘話-
宇宙を作る その2
2022年9月26日
『Unfinity』プレビュー第2週にようこそ。先週、このセットの主なメカニズム2つの創造について語った。今週は、それ以外のすべて、このセットの大きなメカニズム的テーマ全般について語ろう。そしてプレビュー・カードを数枚お見せすることになる。それでは、シートベルトをご着用ください。『Unfinity』のデザインの話を続けよう。
『Unfinity』の事前予約に興味のある諸君は、お近くのゲームショップを調べるか、Amazonなどのオンラインショップで予約してくれたまえ。
アート関連
アン・セットでは、私は、他のマジックのセットでは扱えないメカニズム空間を軸にするのが好きだ。それらの範囲の1つが、アート関連である。エターナル・カードではアートにメカニズム的に参照できない理由が大きく2つある。1つ目、英語名が同じカードは版を問わずメカニズム的に同一でなければならない。カードの版によって異なることがあるもの(アート、アーティスト、エキスパンション・シンボル、レアリティ、透かしなど)は、ゲームがメカニズム的に参照することができないのだ。アン・セットはカードの情報を参照するときの扱いについては、「アン・黄金律」と呼ばれるものがあり、プレイしているそのカードを見ることになっている。2つ目、後は非常に主観的であり、エターナル・マジック・ルールは曖昧さを嫌う。何かが、ある状態であるか、ないか、どちらかでなければならないのだ。アートが何なのかという判断は、曖昧であることがある。
とはいえ、マジックのカジュアルなゲームをしているなら、試す価値がある楽しいテーマになりうるのだ。『Unfinity』にはステッカー・テーマがあり、アート・ステッカーはとにかく楽しいので採用したかった。そうなると、アート・ステッカーが時折メカニズム的な意味を持つようにするのは当然である。
我々はまずマジックのアートに時折登場している物品すべての膨大なリストを作り、それらの物品にメカニズム的に参照するカードを作った。プレイテストの結果、すぐに、アート関連カードというものは我々が考えていた以上に主観的だということがわかった。あるゲームで、私の対戦相手が「青の物品」がアートに描かれていることを参照するカードを使っていた。そして、アートに描かれているものが青かどうかで意見が割れたのだ。(私は紫だと思った。)色というものは思ったよりも定義が明瞭ではないということがわかった。ある人が青だと思って入れたものが、他のプレイヤーには紫になりうるのだ。我々それぞれが考える色のしきい値は、ひとりひとり違うのである。
そこで、我々はリストを確認し、あまりにも主観的だと考えうるものを削り、短いリストにした。実際、プレイテストでプレイヤーがほぼ合意できているとわかった品物は1つしかなかった。帽子である。すでに、『Unstable』の《Goblin Haberdasher》でこの空間は扱ったことがあった。
我々は色の組1つにアート関連テーマを持たせたかったので、その焦点を帽子にすることにした。つまり、『Unfinity』の白黒のアーキタイプは、「帽子関連」である。セットデザイン中、リード・デザイナーはアートがメカニズムと整合するようにするため、アート・ディレクターにいくつか変更してもらうことができる。そして私はこのアートの「権利」を白のクリーチャーに帽子を加えるために使った。(黒は大丈夫だった。)
コモンでも、アート関連をカード個別単位でいくらか扱った。自軍のクリーチャーがどれぐらい背が高いかを参照するカードがある。アート・ステッカーがどれぐらい重そうかを参照するカードがある。しかし、帽子関連カード以外のそれらの個別のアート関連カードは、レアリティが高い。特定の物品を基柱にしたデッキを組む必要がある伝説のクリーチャーさえいるのだ。
サイコロを振ること
マジックにおいてサイコロを振ることは最初のアン・セット『Unglued』で初登場した。『Unstable』で再登場した後、『フォーゴトン・レルム探訪』でエターナル・マジックに初登場した。『Unfinity』のデザインは『フォーゴトン・レルム探訪』より前に始まっていたので、サイコロがアンだけのものでなくなると知る前にこのセットはサイコロでいっぱいだったのだ。実際、このセットの半分以上をエターナルで使えるようにするという決定を招いたのはサイコロを振ることそのものだった。
アンとエターナル・カードとにおけるサイコロ振りの大きな違いは、アン・セットは分散に寄せておりサイコロの出目による振れ幅が大きくなるようにしていることである。また、サイコロをメカニズム的にどう使えるかの実験もしている。
『Unfinity』でしているさまざまなことを紹介しよう。
振り直し
サイコロを振るとき、出目が悪いことがあるので、よりよい出目を得られるようにするために振り直しができる効果が存在する。
追加のサイコロ
サイコロを振るときに追加で1個以上を振り、好きなものを選べるという効果が存在する。
サイコロの調整
サイコロの出目を1増やしたり減らしたりする効果が存在する。その結果、出目を0や7にすることもできる。
サイコロ誘発
あなたが特定の出目を出したときに誘発する誘発型能力が存在する。
効果が起こるかを見るためにサイコロを振る
特定の結果を出さないかぎり発生しない効果が存在する。この分類の最大の例がアトラクションであり、ターンに1甲斐観覧するかどうかを見るために6面体サイコロ1個を振る。さて、今日の最初のプレビュー・カードは、アトラクションである。
〈Bumper Cars〉はコモンのアトラクションなので、バージョンは6つある。バージョン間の差異は、どの数字が点灯しているかだけである。6は常に点灯していて、1は常に消灯している。また、各バージョンでフレイバー・テキストも異なっている。
サイコロの保存
これは、あなたがサイコロを振った後で、その振ったサイコロを出目がわかるようにカードの上に置く効果である。そのパーマネントがどのような影響を受けるかを示すこともあれば、他の効果がいつどのように発生するかを示すことも、それらの出目を他の目的で使えることもある。
サイコロ閾値
1ターンの間に特定の個数のサイコロを振ったときに誘発する効果が存在する。大抵は3個。
異なる結果
サイコロの出目によって、数値的な変化だけでなく何が起こるかそのものが変わることがある。
特定の出目でだけ効果が発生する
『Unfinity』で我々が見つけた新しいデザインの鉱脈である。サイコロの出目を元にして表や係数を用いるのではなく、サイコロを振って特定の数が出たときにだけメカニズム的なものが得られるのだ。これによって我々が効果の拡大幅を調整したり、プレイヤーが空振り(それがいいことである場合も悪いことである場合もある)したりすることができるようになった。この効果は通例、その呪文の基本の効果に追加されている。
追加の結果
サイコロを振った結果、サイコロを振ることが必要な効果を起こす追加のことを起こすものがある。
『Unfinity』とこれまでのサイコロの一番の違いは、これまでは、大きな出目を出すことのほうが基本的には有利だった。『Unfinity』ではさまざまな種類のサイコロを振る効果があるので、どのような出目が有利かは定まってはいない。6を振ることで有利になるカードは多いが、6以外の出目を必要とするカードも大量に存在しているのだ。
環境の影響
アン・セットでは、さまざまな種類の分散を扱うことが多い。これまでにも、今の時刻や、外が暗いかどうかを参照するカードがあった。
『Unfinity』では、自分の座席から見える特定の物品が何個あるかを参照するカードのサイクルを作り、少しばかり異なる空間を扱っている。つまられい、物理的にどこでプレイしているかによってそのカードの使われ方が変わるのだ。地元のゲームショップでは素晴らしい働きをするけれども台所のテーブルではそうでもない、とか、その逆とかがありうる。
名前関連
ステッカーが作用するもう1つの範囲で、通常のエターナル・マジックではメカニズム的に触れられないものが、名前である。(特定のカードが特定の名前であるかどうかを見る場合を除く。)これは多くのアン・セットで精査してきた、枯れたデザイン空間である。
課題になるのは、名前を扱うかどうかではなく名前をどう扱うかなので、そのための新しい方法を掘り下げるために時間を費やすことになった。
最終的に参照した方法は以下の通り。
特定の文字から始まる
名前の最初の文字が何であるかに基づいてカードと相互作用するカードが存在する。これは、どんぐりゲームにおいては、名前ステッカーをカードの先頭に貼って最初の文字を変えられるのでステッカーと相性が良い。最初の文字2文字以上を参照する変種も存在する。
アルファストライク
これは(2枚に存在する)キーワード能力で、戦闘で対峙するクリーチャーよりも辞書順で先に名前が来るなら先制攻撃を得るというものである。理論上、これはひとつ前の分類の一部だが、キーワード化されていて2つの名前を比較するのでこうして別扱いになっている。
頭韻
最初の文字を参照する系に、単一の名前の中に含まれる複数の単語が同じ文字から始まるかどうかを参照するものがある。
他のカードとの先頭文字一致
もう1つ先頭文字系のものが、戦場にある複数のパーマネントが同じ文字から始まっているかどうかを参照するものである。この重複を増やすため、ステッカーを使うことができる。
特定の文字を含むこと
これらの効果は、その文字がどこにあるかは問わず、あるかないかだけを見る。名前全体を見るものもあれば、名前の最初の単語だけを見るものもある。
他のカードとの部分一致
これらの効果は、戦場にある複数のパーマネントが同じ1文字を共有しているかどうかを参照するが、先頭文字である必要はない。
母音の種類数参照
名前を見て、そこに含まれる母音の種類数を参照する。(Yも数に入れる。)例えば、〈Animate Object〉は4種類の母音を含む。(A、E、I、O)各母音は1回しか数えず、ある母音が複数あったとしても関係ない。このセットには、カード上の名前ステッカーに含まれる母音の種類数を数える「空白を埋める」カードのサイクルが存在する。
名前に含まれる単語数の参照
これらの効果は名前に含まれる単語の数を見て、それを閾値(ある値以上ある場合にボーナスを得る)として使ったりその数による拡大効果を生成したりする。名前ステッカーで名前を伸ばせるので、この能力と相性がいい。
ここでは、メカニズム的に参照されている名前の性質だけを取り上げている。カードごとに、どのように参照しているかは異なっている。先頭文字に基づいて破壊するカードもあれば、特定の文字から始まるカードへのプロテクションを与えるカードもある。
ゲーム外の人
新しい種類の分散を見つけるため、『Unstable』では「ゲーム外の人」と呼んでいる、名前のない新しいメカニズムを導入した。
ゲーム外の人では、そのゲームに現在参加していない人に、カードに何らかのメカニズム的影響を与えさせるのだ。『Unstable』では、あなたが何か質問するか、何か単一の作業をしてもらっていたが、『Unfinity』では、ゲーム外の人とできることの範囲を広げることにした。
その使い方には以下のようなものがある。
ゲーム外の人に主観的判断を委ねる
『Unstable』ではプレイヤーにゲームの判断をさせたが、これをもう一歩進めたいと考えた。ただゲームの判断をさせるのではなく、ゲームの何らかの面について主観的選択をしてもらうのだ。その好例が〈Rock Star〉で、ゲーム外の人にそのカード名がロックバンドらしく聞こえるかを決めてもらうのだ。これらの質問は、その人がマジックのことを何も知らなくても答えられるようなものになっている。
ゲーム外の人に何かを点数で評価してもらう
自由回答型の質問ではなく、何かを1から5の点数で評価してもらう。
ゲーム外の人とゲームする
アトラクションに関するものなどで、ゲーム外の人を相棒としてゲームをするミニゲームが存在する。通例、与えられた任務に基づいて何かを推測してもらうものである。
ゲーム外の人にサインしてもらう
可能なかぎり多くの人にサインをしてもらうことが必要なカード1枚が存在する。
やり取りしないゲーム外の人を選ぶ
史上初めて、『Unfinity』ではゲーム外の人に、当人に気づかれもしないまま、協力してもらうものが存在する。
『Unstable』で学んだ最大のものの1つが、ゲーム外の人を絡めるのはとてもおもしろいということだった。そこで『Unfinity』ではそのための新しい方法を探すのに尽力した。これで楽しいやり取りやクールな話が生まれれば幸いである。
物理的器用さ関連
アン・セットで可能なクールなことの1つが、エターナル・マジックでは不可能なある種のカードを扱うことである。この種の分類の1つが、マジックに物理的要素を加える物理的器用さである。
『Unfinity』でのこのデザイン空間の使い方には以下のものがある。
カードを投げたり落としたりする
カードを使って、通例戦場にある他のカードにぶつけて、そのぶつけたカードに何らかの効果を及ぼす効果が存在する。カードを落として、他のカードではなくテーブルにどう当たるかを参照するものもある。
カードに触れる
カードに触れたりカードを触れさせたりして効果を生成したり維持したりする効果が存在する。
バランスを取る
これらの効果では、何枚かのカードを落とさずにバランスを取る。その中の1枚が今日のプレビュー・カードである。
クリックして〈Form of the Approach of the Second Sun〉を表示
このカードは初期展望デザイン中にジョージ・ファン/George Fanがデザインし、印刷に至るまでファイルに残った。これまで、カードを引くことでゲームに勝利することはなかった。
このセットにある器用さのカードはそう多くないが、そういう効果のファン諸君のために楽しいゲームプレイを加えている。
技術をプレイする
『Unfinity』が扱うもう1つのデザイン空間が、メカニズム的に、プレイヤーが使える技術を参照するものである。いくつか例を示そう。
電話を使う
セット内の数枚のカードは、電話を使ってゲームに影響を及ぼす。
インターネットにアクセスする
インターネットにアクセスする必要がある起動型能力を持つカード1枚と、カードの使い方を映像で説明するカード1枚がある。前者のカードは、今日のプレビュー・カードの1枚である。
AskUrza.comにアクセスすると、「Download」リンクがある。(ゲーム中にインターネットにアクセスしない人のためにこのページを印刷することもできる。)
ソーシャルメディアとのやりとり
ソーシャルメディアに発信し、そのリプライをメカニズム的に参照するカードがある。
マジックの進化の中には時代に合わせるということが含まれるので、技術に触れたカードを数枚入れるのは楽しいといえる。
ロボット関連
ほとんどのセットで、我々はクリーチャー・タイプのテーマを使うことが多い。『Unfinity』では、ロボットという新規のクリーチャー・タイプが導入されている。ロボットの大半は道化師・ロボットだが、道化師でないロボットは3枚、ロボットでない道化師が1枚存在する。ロボット・テーマは赤白のアーキタイプ(ロボットは白と赤と無色のアーティファクトである)で、ロボット軍団で攻撃する助けと成るさまざまな道具がある。
ステッカー関連
ステッカーにメカニズム的な意味を持たせられなければ意味がないので、チームは意味を持たせるためのさまざまな方法を掘り下げた。
能力やパワー/タフネス関連
これについては、何もする必要はなかった。これらは最初からメカニズム的に意味を持っている。
アート関連
上述の通り、帽子などステッカーに登場していてゲームが参照するものが存在する。つまり、アート・ステッカーをカードに貼ることでメカニズム的機能が変わることがある。
名前関連
これも上述の通り、多くのカードが名前の性質を参照しているので、名前ステッカーをカードに貼ることがメカニズム的に意味を持つことは多い。また、名前ステッカーの性質(何種類の母音が含まれるかなど)を参照するカードも存在する。
ステッカーのしきい値
ステッカーが貼ってあることでメカニズム的なボーナスを得るカードが存在する。
ステッカーが貼ってあるカードを対象にする
ステッカーが貼ってあるカードだけを対象にできる効果が存在し、中には特定種類のステッカーだけを対象にできるものもある。
ステッカー誘発
ステッカーを自分がコントロールしていて土地でないパーマネントに貼ったときに誘発するカードがあり、特定のステッカーの場合にボーナスを得るものもある。
ステッカーから能力を得る
他のカードに貼られている能力ステッカーから能力を得るカードが数枚存在する。
ステッカーの枚数関連
ステッカーが貼ってある枚数を参照し、新しくステッカーを貼るたびに強化されるカードが存在する。
自身にステッカーを貼るカード
そのカードにステッカーを貼ったり、生成するトークンにステッカーを貼ったりするカードが存在する。
ステッカーの大きさ関連
ステッカーに何が描かれているかではなく物理的な大きさを参照するカードが存在する。
アート・ステッカーの主観的性質
アート・ステッカーに描かれている物品の性質が、メカニズム的に意味を持つことがある。
ステッカー判断
アート・ステッカーのが貼ったアートにどれだけうまく追加されたかを参照するカードもある。
見ての通り、『Unfinity』ではステッカーがカードに影響を与える方法が色々とあり、何をどう貼るかを選ぶときに多くの選択肢があるのだ。
あなたの衣類
もう1つ、何枚かのカードで参照している小さなテーマが、着ているものである。我々がデザインしたものには以下の3つがある。
帽子
自分のクリーチャーが帽子を持っているかどうかを参照するカード同様、プレイヤーが帽子を被っているかどうかを参照するカードも存在する。
着ている服の色
何色を(上半身に)着ているかを参照するカード1枚が存在する。理想的なのは、マジックの主な色である5色すべてを身にまとうのが望ましい。
マジックの衣類
マジックの衣類を身に着けていることで有利になるカード1枚が存在する。
気分を高めたい諸君は、これらのカードは『Unfinity』をプレイする際の服装に影響することになるだろう。
アン・た本気で言ってるの?
『Unfinity』の大きなテーマの概要は以上となる。(これまで述べていないデザイン空間を使った個別のカードは大量に存在している。)私と同様、諸君もこのセットに興奮してくれていたなら幸いである。今日の記事や私の話した内容、『Unfinity』そのものに関する意見を、メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『Unfinity』のカード個別のデザインの話する日にお会いしよう。
その日まで、あなたがあなたにとって一番楽しい方法でマジックをプレイできますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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