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Making Magic -マジック開発秘話-
宇宙を作る その1
2022年9月20日
『Unfinity』カード・プレビュー第1週にようこそ。これを書けてとても気持ちがいい。今日は、デザイン・チーム全員の紹介をして、我々が主なメカニズム2つをどのようにデザインしたかを説明し、それから何枚かのカード・プレビューをお見せしよう。それでは、シートベルトをご着用ください。いよいよ『Unfinity』の話を始めよう。
『Unfinity』の事前予約に興味のある諸君は、お近くのゲーム店を調べるか、Amazonなどのオンラインショップで予約してくれたまえ。
宇宙探検家
『Unfinity』がスケジュールに載り、まだそのためのチームが組まれていない時期に、私は上司のアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheと話し合い、少し普通でないことができるかどうか尋ねた。通常、私はセットの先行デザインと展望デザインをリードするが、セットデザインをリードしたことはなかった。デザインの一番始まりから一番最後まで、セットの全工程にわたって私がリードすることは可能だろうか。
アーロンは、プレイデザイン(私の苦手分野)が得意な誰かをチームに入れてその意見を注意深く聞く必要があるが、そうすれば可能だと言った。つまり、私は『Unfinity』のデザイン・チームすべてをリードするので、今日は彼らの紹介をさせてもらおう。『Unfinity』は平均的なデザインよりも少しばかり時間がかかっており、通常のセットよりも入れ替わりが多いので、デザイン・チーム全体として通常より大きくなっている。
クリックして『Unfinity』のデザイナーを表示
ステッカー・ショック
『Unfinity』のデザインを始める2年ほど前、我々は将来のメカニズムの可能性についてのハッカソンを行なった。(ハッカソンとは、多くの開発部員が新しいアイデアを掘り下げるために1週間休むイベントである。)私のチームは、パンチアウト・カードを使ったり統治者などのゲーム上の品物を作ったりデッキ以外のものを使うデザインについて考えた。
そこで浮かんだアイデアの1つが、ステッカーだった。ステッカーは以前のハッカソンで、あるチームがレガシー版のマジックを作るものはどのようなものかを掘り下げたときにも浮かんでいた。(レガシー・ゲームとは、ゲームの部品が時とともに永続的に変わり続けるゲームのことである。)我々はD&D製品でステッカーを作ったので、我々の製造チームには作る能力があるということがわかっていた。そして、それらはクールなことをできる潤沢な道具に見えたのだ。ハッカソン・チームは、それで何ができるか、1時間ほどのブレインストーミングをした。興味深いアイデアが充分出たので、私はステッカーをいつか試したいものとしてファイルしたのだった。
『Unfinity』にゴーサインが出て、私は、ハッカソンでステッカーのブレインストーミングをした時間を思い出した。銀枠セットは新しいデザイン空間を広げるもので、ステッカーには『Unfinity』にまさにふさわしいと思える、心躍らせる性質があったのだ。
『Unfinity』の最初の先行デザインの会議は、ステッカーで何ができるかについて新しいブレインストーミングのセッションに費やされた。しかしながら、ここで1つ但し書きがある。私はステッカーを永続的なものにはしたくなかったのだ。目的は、手持ちのカードを永遠に変えてしまうことではなく、そのゲーム内で一時的に変えることだった。製造チームに、ステッカーに弱い糊を使って、下地のカードを傷つけることなく剥がし、何度も貼ることができるようにできるかについて話し合った。そして、試さないとわからないが、おそらく可能だと言われたのだ。
我々の初期のステッカーのブレインストーミングでは、限界が大きく広がった。ステッカーを使って複数のカードを貼り合わせるのはどうか。ステッカーを他のプレイヤーに貼れるのはどうか。ステッカーを動かない物体に貼れるのはどうか。(この最後のものは〈Animate Oblect〉でセットに入ることになった。)
しかし結局のところ、ステッカーの最も実際的な使い方は、カードに貼ることだった。我々が常に立ち戻ったアイデアは、その後でカードのアート部分に貼れるような品物のステッカーを作るのがどれだけ楽しいかだった。しばらくの間、すべてのステッカーが絵で、アートに何かを加えることだけがその機能だとしていた。メカニズム的に意味を持たせるために、我々は、ステッカーが貼られたら強化されるカードやステッカーの貼られているカードを強化するカードを作った。また、アートに意味を持たせるアイデアも扱った。
我々が直面した最大の問題は、アートの多くは主観的だということだった。「青の品物」というのが何なのかさえ議論の余地がある。最終的に、我々は「アート関連」を高いレアリティにいくらか入れるのは面白いと判断したが、コモンやアンコモンですることについては非常に慎重にならざるを得なかった。もっとも異論が少ないと思われる品物は帽子だったので、低いレアリティでも「アート関連」テーマを作ることに決めたのだ。(「帽子関連」テーマについては来週。)
ステッカーを試していると、うまく作用する範囲がいくつかあることが明らかになった。能力、パワー/タフネスはプレイヤーがステッカーで操作したい部分だと思われる。名前の性質について扱うことは銀枠セットでしかできないので、「名前関連」は常に浮かぶ話だった。
ある会議で、我々はあらゆるアイデアについて話し合い、ステッカーにするものを4つに絞った。名前、アート、能力、パワー/タフネスである。しかし、1つちょっとした問題があった。アートと名前は、それ自体では何の意味も持たないのだ。もちろんそれを参照するカードを作ることはできるが、ほとんどの場合、機能というよりは装飾に重点を置くことになる。(それももちろん楽しい。)対照的に、能力やパワー/タフネスのステッカーは常に意味を持つ。変更に意味を持たせるために他のカードを使う必要がないのだ。このため、初期のプレイテストでは誰も名前ステッカーやアート・ステッカーを貼らず、能力やパワー/タフネスのステッカーしか使われないということがよくあった。
この問題の解決策は、どのステッカーを使えるかをカードで指定することだった。アート・ステッカーだけを貼るカードでは、それを使うことになる。これによって、能力やパワー/タフネスのステッカーを貼るカードのコストを高めることができるようになった。
このことから、新たな問題に繋がった。ステッカーのシート3枚を手に入れ、ステッカー・シートには楽しいものがあっても、特定タイプのステッカーを使うカードだけしかなかった場合、一部のステッカーは使われることがないままステッカー・シートに溜まることになる。これはよろしくない。ステッカーの楽しいところは、貼りたいものを貼ることにある。加えて、能力やパワー/タフネスのステッカーはどれも同じコストになっていたので、同等のパワーレベルに保たねばならず、できることが大幅に制限されていたのだ。これらすべてから、我々は、能力とパワー/タフネスの問題に違う方法で取り組まなければならなかった。
次の試みは、マナを使うことだった。名前やアートのステッカーはコストなしだが、能力やパワー/タフネスを貼るには追加のマナがかかるのだ。この実装の問題は、貼るカードのほとんどには、唱えるか起動するかにそもそもマナが必要だった。その結果、能力やパワー/タフネスのステッカーは長期戦にならなければ使われなくなり、インパクトが大きく低下したのだ。加えて、追加のマナは面倒で、ステッカーを使うことにさらなる複雑さを加えるので、使う楽しみが減ってしまった。
次に、我々は、他のリソースを使うことを掘り下げることにした。その頃、アトラクションでは、チケットという別のリソースを用いていた。(アトラクションについてはこの後。)
チケットは、エネルギーと同じような、プレイヤーが持つカウンターであった。新しいリソースのシステムを2つ作るのは奇妙に思えたので、ステッカーでチケットを使い始めた。このシステムは非常にストレートなもので、ステッカーを貼るカードは同時にチケットも得るようになっており、時間をかけて貯めれば能力やパワー/タフネスのステッカーが使えるのだ。結局、我々はチケット・コストの下限を2にして、序盤からプレイヤーに使えるものがあるようにして、上限を6にすることでプレイヤーが目指すべき大きな効果もあるようにした。
チケットはステッカーにふさわしいリソースだと証明されたが、アトラクションとの組み合わせでは多くの問題が生じた。2つの別々の生態系でリソースが機能するようにするのは難しいので、プレイデザイン上の懸念があった。されに、セットが少しばかりチケット中心になりすぎ、ステッカーとアトラクションの雰囲気が似すぎてしまった。そこで我々はアトラクションからチケットを取り除いた。(他にアトラクション側の問題もあった。これについては後述。)
最初から、ステッカー・シートはダイカットのサイズから48枚になることは決まっていた。ステッカーを作る場合、それをステッカー・シートに置き、それから1枚ずつはがせるように印刷時に切り抜く巨大スタンプを使うのだ。そのスタンプの大きさは固定で、マジックのカードで6×8枚分である。
分散は楽しいが高レベルの競技プレイでは問題になるので、私はいつも銀枠セットにはマジックのセットの中で最大の分散を持たせようとしている。そのため、48枚のステッカーはそれぞれ別々のものにしたかったのだ。つまり、どの部品も繰り返したくないということである。最終的に、繰り返さざるを得なかったのは、そもそもパターンが多くない、パワー/タフネスの組み合わせだけだった。
初期プレイテストで、我々はステッカー・シートをドラフトしていたが、各ステッカー・シートには多くのものが入っているので、それは判断することが多くなりすぎるとわかった。この問題は、2つの変更で解決することができた。
1つ目に、プレイヤーはステッカー・シートをドラフトしない。ドラフトでは、自分が開封したシートを使うのだ。(それがこのセットの本来の使い方なので、『Unfinity』のリミテッドはドラフトしてプレイすることを強くお勧めする。ただし、シールドをしたい場合、開封したステッカー・シート6枚のうち3枚を選ぶこと。構築では、少なくとも10種類のステッカー・シートを選び、ゲーム開始前にその中から3枚を無作為に選ぶ。)2つ目に、各シートに含まれる能力やパワー/タフネスのステッカーの枚数を3から2に減らした。(場所の問題もあったので、一石二鳥だ。)
ステッカーへの最後の大きな変更は、工程の後半、セットをエターナルとどんぐりマーク付きカードに分け、前者はエターナル・フォーマット(統率者、レガシー、ヴィンテージ、パウパー)で使えるようにすると決めたときのことである。ステッカー・シートがルールの範囲で作用するようにするため、1つ妥協が必要になった。このときまで、カードがどの領域に行こうと、ステッカーはゲーム終了までついたままになっていた。(MTGアリーナのアルケミーの「永久に」とほぼ同じように働くが、これはそのメカニズムが作られる前から存在していた。)ルールは非公開領域での継続的変更を扱えないので、カードがライブラリーや手札に行ったらステッカーは剥がれてステッカー・シートに戻るようになった。
この変更は実際にはほんの一部のデザインにしか影響せず、ほとんどについては追放や墓地から唱えるなどを使い、もとの意図を尊重してデザインし直すことができたので、ステッカー・カードの大多数はエターナル・フォーマットに導入できた。また、ステッカーを他のカードに貼るため、意図して今貼ってあるカードを非公開領域に送ってステッカーを回収するという新しい戦術が生まれた。
最後に、ステッカーの使われ方を解説しておこう。カードがあなたにステッカーをカードに貼らせる場合、自分がオーナーであり土地でない任意のカードに貼ることができる。もともとは土地にも貼ることができていたが、土地は除去がかなり難しいので、ステッカーの一部にプレイデザイン上の問題が生じることになった。そのため我々は土地に貼れることよりも強力なステッカーを作れることを優先したのだ。
自分がオーナーであるカードにしか貼れないのは最初からで、これは望まないプレイヤーのカードにステッカーを貼るようなことができないようにするためである。(自分がオーナーでないカードに貼れないことはルール上の前提であり、カードにそう書かれていなかったとしてもそうである。)望むなら、ステッカーの代わりに紙と鉛筆を使うことも認められていることは指摘しておきたい。ステッカーの大きさを参照する一部のどんぐりカードを除いては、紙で作ったステッカーがどのような大きさでも関係ない。
パワー/タフネスだけは置換型ステッカーである。つまり、パワー/タフネスは1組しか持てず、最新のステッカーを採用する。名前、アート、能力のステッカーは追加型であり、そのステッカーを貼ることでそのカードから失われるものはない。どんぐりゲームでは、名前は名前のどこにでも貼ることができる。例えば、《Grizzly Bears》がいて、「Dark」の名前ステッカーがあったら、Dark Grizzly Bearsや、Grizzly Dark Bearや、Grizzly Bear Darkにできるのだ。エターナル・ゲームでは、ルールが扱うのはステッカーが貼ってあるかどうかだけなので、どこに貼るかは関係しない。能力やパワー/タフネスのステッカーを貼る場合、チケット・コストを支払う必要がある。チケットを最初に手に入れるので、チケットを生成したステッカー効果にそれを使うことができる。
アトラクションの話に入る前に、新しいステッカー・シートを何枚かお見せしよう。繰り返すが、全部で48枚あり、そのうち重複はパワー/タフネスの組み合わせだけである。
アトラクションとは?
『Unfinity』のもう1つの大きなメカニズムが、アトラクションである。『Unfinity』はトップダウン・セットとしてデザインされていて、我々が再現しようと考えた重要なものの1つがクールなライドやゲームや売店といった、祭りやアミューズメント・パークで見られるものである。最初から、これを別デッキにすることは決まっていたが、『Unstable』のからくりとは違う方向性にしようと考えていた。
このメカニズムの最初のバージョンでは、専用のカード・タイプとして「アトラクション」があり、「ライド」「ゲーム」「売店」と3種のサブタイプがあった。ライドはもともと自軍のクリーチャーに何らかの影響を及ぼすものであり、ゲームはサブゲームをプレイするもの、売店はリソースを手に入れられるものだった。もともとのアトラクションは戦場に出て、どちらのプレイヤーもマナ・コストを支払って訪れることができるというものだった。マナ・コストが必要だったのは、パワーレベルを均一にしなくてよければデザイン空間はずっと広くなるので、異なるパワーレベルに合わせて調整する方法が必要だったからである。もともとは、それらはすべてが会場という場所に置かれることになっていた。(それが戦場なのかどうかは定かではない。)
ここから、アトラクションの最初の問題が生じた。アトラクションを開く(アトラクション・カードを引き、それを戦場に出すことを意味する表記)カードをプレイするためにマナを支払うと、そこを訪れる分のマナが足りなくなる。つまり、対戦相手が先に使うことが多くなることになる。これはよろしくない。戦場に出すためのリソースすべてを支払ったのに、対戦相手が先に利益を得ることになってしまうのだ。次のバージョンでは、アトラクションを訪れるための起動コストを、自分がコントロールしていると軽くなるようにした。こうすることで自分が先に使えることは多くなったが、それでも「対戦相手が先に使った」問題を防ぐことはできなかった。
そこで、チケットを使うというアイデアが思いついたのだ。マナ・コストだけではなく、アトラクションにはマナの代わりに使うチケット・コストもあるのだ。ここで、アトラクションを開いたとき、1回訪れる分の枚数のチケットを手に入れられるようになっていた。こうすることで、アトラクションが戦場に出たら、まず出したプレイヤーが先に訪れることができるようになったのだ。また、他の方法でもチケットを得られるようにすることで、さらに多くのアトラクションを訪れることができるようになった。
次に我々は、対戦相手が訪れたときにチケットを得るというバージョンを試した。相手が使えば使うほど、こちらはただで使えるようになるのだ。このころ、チケットをもう1つのリソースのシステムとして確立させようとして、両方に使おうとしていたのだ。チケットは最終的に、(いくつもの理由があるが、最大のものは、アトラクションに組み込まれた代替マナ・コストである)アトラクションよりもステッカーでうまく働いた。我々はチケットを入場だけの意味で使おうと考えたが、そうなるとアトラクションが少しばかり孤立的になりすぎることになった。
先述の通り、チケットで2つの異なる生態系を回すとなるとチケットのバランスを取るのが非常に困難だとわかり、またチケットを広く使うと全てがあまりにも似通ったものに感じられるようになった。ここから、アトラクションは開いた当人はただで訪れることができるというアイデアが生まれ、開いた直後に訪れることができるようになった。
これはアトラクションを成立させる直前だったが、そこにもっと大きな問題があることに気がついた。どうやってバランスを取ろうが、プレイテスターは対戦相手を助けるものにリソースを支払いたくはないのだ。我々は問題解消のための変更を重ねたが、アトラクションがプレイされる頻度はどんどん減っていった。そこで我々はもう一度やり直すことにした。
我々は、アトラクションの何が好きなのかという自問自答から始めた。
トップダウンのフレイバーが好きだ。
その一例として、今日の1枚目のプレビュー・カードのアトラクションを見てもらおう。
食物を求めて〈Concession Stand〉を訪れるのだ。これはもう、文字通りどんぴしゃのフレイバーだ。4種類のバージョンがあることがわかるだろう。どれも同じだが、点灯している数字とフレイバー・テキストだけが異なる。この数字の意味はこの後説明しよう。
別デッキから出すことを楽しんでいた。
自分のデッキから唱えるアーティファクト/エンチャントは、銀枠セットには特別感が足りない。また他のカードには必要な相互作用的フレイバーは許されない。
いくらかの分散を組み込みたい。
無作為化したデッキから引くことも助けにはなるが、可能なら分散を高める何かをできないかと考えていた。銀枠セットの代表的特徴は、マジックのセットの中で最大の分散を持つことである。分散はとても楽しいが、ゲームの安定を失わせる。楽しい時間を過ごすことが中心なら問題ないが、そのセットを大規模イベントで使う場合にはそうは言えない。
この3つのことを出発点にして、我々は何ができるのか自問自答した。もとのバージョンのアトラクションを作った時、我々は可能な限り、からくりと違うような選択を意図的に選んでいた。からくりもアトラクションも別デッキのメカニズムで、それらの雰囲気を分けたかったのだ。アトラクションの再検討にあたり、我々は、からくりでやったことでもいいゲームプレイにつながるならしてもよいことにした。
最初の大きな決断は、自分だけが自分のアトラクションを使えるようにしたことである。我々は「誰でも訪れられる]モデルのために尽力してきたが、そのバランスの問題を解決したとしても(戦術的に使うのが正解になるようにしても)、対戦相手がそこから利益を得たときの嫌な印象を乗り越える方法はわからなかったのだ。
次の決断は、分散の要素を増やしたことである。(先述の通り。)この理由は、からくりと違う戦術的方向性の別デッキにしたかったからである。別デッキと両面カードを比較してみよう。それらはメカニズム的道具であり、マジックのデザイナーがさまざまなデザインの方向に進むことができる多くの柔軟性がある。実際、変身する両面カード(TDFC)とモードを持つ両面カード(MDFC)は多くの共通点があるが、戦術的にプレイする上でその機能は大きく異なる。
からくりは別デッキを使ってスプロケット機構を作り、将来の計画が立てられるようになっていた。からくりでの判断は、先のターンに起こることを決める能力を与えていたのだ。これによって、何ターンも前から考え、長期的戦術のもとでプレイできるようになっていた。アトラクションには、これとは別の方向性を取り入れなければならない。アトラクションが逆のことをすればどうだろうか。結果がわからないので、先に計画するのではなく起こったことに対応するようにしたら。これも技量的だが、方向性は全く異なる。そのために、我々はある種の予測不能な分散を加える必要があった。しかし、『Unfinity』にはすでに無作為発生装置、サイコロが組み込まれている。
サイコロは『Unglued』でマジックに導入され、『Unstable』で再登場した。後に、『フォーゴトン・レルム探訪』でスタンダードに持ち込まれたが、それはまだ未来の話になる。(このセットにサイコロを導入したことについては来週詳しく語ろう。)サイコロは、この問題を解決するための簡単な手段に見えた。
サイコロを使ったアトラクションの最初のバージョンはこうだった。アトラクションは、効果を使うためには必ずタップが必要だが、通常通りのアンタップはしない。タップ状態のアトラクションを1つ以上コントロールしているなら、アップキープ中に6面体サイコロを1個振り、その番号が点灯しているアトラクションをアンタップする。その次に、アトラクションがタップせず、ターンの開始時に振ったサイコロの出目が光っているアトラクションを訪れることができるというバージョンを試した。最後に、サイコロを振るのを第1メイン・フェイズの開始時(英雄譚が進むのと同じタイミング)にして、その出目の番号が点灯しているすべてのアトラクションを訪れるというシンプルなもの(どの順番で訪れるかを自分で決めるよう)にした。
点灯している番号のいいところは、能力のパワーレベルを制限することができることである。例えば、パワーレベルが低い効果はアンタップの数字を4つ持ち、強力なものは2つしか持たない。アンタップの数字が1つや5つも試したが、1つはあまりにも起こりにくく、5つはほぼいつも起こるようになってしまった。サイコロを降るときに興奮できるようにするため、1は必ず外れ、6は必ず当たりにした。こうすることで、サイコロを振るときには必ず期待と不運がありえるようになり、サイコロを振るたびに緊張が走るのだ。また、このころ、アトラクションを新しいカード・タイプではなくアーティファクトにしたと記憶している。こうすることで、対処が簡単になったのだ。
サイコロを使うことが決まると、私は、印刷シート上に同じアトラクションが複数個あることの利点を活かし、さまざまな数字が点灯している同じアトラクションがあるようにすことを主張した。光の組み合わせが何通りあるかとレアリティで作れる枚数が決まるので、枚数はそれに基づいていた。
〈Concession Stand〉を例に取ろう。アンタップする数字は2つ。どちらも1ではないし、1つは必ず6である。そのため、2-6、3-6、4-6、5-6の4パターンになる。(Concession Stand〉はアンコモンで、アンコモンのシートには最低4枚あるので、可能な変種すべてが取れる。4種類だ。それぞれの変種に独自のフレイバー・テキストを持たせたのは、アトラクションのフレイバー・テキストを書くのがとても楽しいからである。別のバージョンで作られた、異なる変種がある(3枚)。そこからの次のプレビュー・カードを紹介しよう。
アトラクションを作っていた初期に、賞品を得られる可能性があるサブゲームをプレイするゲームというものがあったという話をした。最初期のバージョンでは、対戦相手と対戦して賞品をもらうものだったのだ。これも、リソースを費やして対戦相手に賞品を取らせるのは面白くなかった。そこから、対戦相手は賞品を得られないがこちらが勝つのを防ごうとするバージョンが生まれた。最終的に、最も楽しいゲームは1人用か、誰かと協力するものだとわかったので、外部の人(来週詳しく取り上げるまた別のテーマ)を加えたのだ。勝ったときに賞品を得て、その後、それを生け贄に捧げて他のアトラクションと入れ替える。勝ってもゲームがなくならない時期もあったが、特定のゲームが得意なプレイヤーが毎ターン賞品を得るだけだとわかった。次のプレビュー・カードは、ゲーム外の人を取り込むゲームであるアトラクションの例である。
ゲーム3種、合わせて6つのバージョンがそれぞれ異なる性質を持ち、ゲームの結果もそれぞれに異なってくる。〈The Superlatorium〉は外部のプレイヤーがどのカードを最も____なカードだと判断するかを予想させるものである。各カードそれぞれに選択肢が3つある。6種類あるのは、点灯している数字が3つだからである。(2-3-6、2-4-6、2-5-6、3-4-6、3-5-6、4-5-6)
もう1枚お見せしたいアトラクションがある。〈Concession Stand〉は売店で、〈Superlatorium〉はゲームなので、あとはライドの紹介だ。
これは、レアのアトラクションでできる大きな効果の例である。2種類しかないのは、レアのシートの枚数による。点灯している数字が2つなので選択肢は4つあるが、レアのアトラクションのシートには各レア2枚だけなので、2バージョンしか作れなかったのだ。すべての変種は存在しないレアの中で、2から5までが均等になるようにしている。(つまり、2から5までのうちどの数が有利ということはない。)
今日は特に文章量が多くなっているが、『Unfinity』については語るべきことが多く、記事の数は限られているのだ。そしてもう1枚、最後のプレビュー・カードが残っている。
アストロリウムのオーナー、〈Myra the Magnificent〉をご紹介しよう。
これはマイラのショーなので、彼女はアトラクションと噛み合うようにしたいと考えた。クリスは統率者として可愛らしいアトラクション・デッキを作れるような楽しい基柱カードを作った。アトラクションは色を持たないので、これらのうちエターナル・カードを統率者戦で使うことができる。(プレイグループが認めるなら、どんぐりカードも。)
最後のプレビュー・カードは私がデザインしたものであり、このセットでのお気に入りのカードだ。デザインを始めるよりもまだ前から、必要だとわかっていたものである。『Unglued』で、ティミーのカードを作った。『Unhinged』で、ジョニーのカードを。『Unstable』で、スパイクのカードを。プレイヤーの心理分析3パターンは揃っているが、プレイヤーがこだわる美学が2種類ある。そのうち1つを入れずに4つめの銀枠セットを作るわけにはいかなかったので、早速、ヴォーソスを見てもらうことにしよう。
私はいつでもキャラクターを基柱にできる統率者を作りたいと思っていて、ヴォーソスはまさにふさわしいものである。ヴォーソスは意図的に5色の固有色を持つようになっており、すべての色を唱える助けとなるメカニズムを持っているので、デッキを中心にしたいキャラクターにぴったりのものにできるのだ。ヴォーソス諸君がこのヴォーソスで楽しんでくれれば幸いである。
宇宙、それは最後のフロンティア
6000語以上にわたるこの記事は最長級だが、語るべきことは多く、使える記事は少ないのだ。このセットへの私の情熱が、このデザインの話をする中で伝わっていれば幸いである。いつも以上に、諸君からの感想を聞かせてほしい。ステッカーについてどう思うだろうか。アトラクションは。プレビュー・カードは。『Unfinity』全体としては、どうだろうか。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、このセットのデザインについての話の続きをして、さらなるプレビュー・カードをお見せする日にお会いしよう。
その日まで、あなたがマジックのカジュアルの極限を楽しみますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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