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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『団結のドミナリア』にあり その1

Mark Rosewater
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2022年8月18日

 

 『団結のドミナリア』プレビュー第1週にようこそ。このセットのデザインについての話を始めて、展望デザイン・チームの紹介をして、そしてクールなプレビュー・カード3枚をお見せする。言うべきことが大量にあるので、さっそく本題に入る。

『団結のドミナリア』の入り口

 デザインの話に入る前に、『団結のドミナリア』(DMU)展望デザイン・チームをご紹介しよう。セットデザイン・チームについては来週紹介させてもらう。いつもの通り、展望デザイン・チームのリード、今回の場合はイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerにチームと自身の紹介をしてもらおう。

クリックして展望デザイン・チームを表示

ドミナリアの物語

 ドミナリアの物語はマジックの始まりまでさかのぼる。多元宇宙というアイデアは、マジックの始まりから存在していた。最初は、多元宇宙には名前があった。それは「ドミニア」と呼ばれていた。ドミニアの中心は、ドミナリアという次元だった。多元宇宙とその中心の次元の名前が近すぎて人々が混乱したので、我々は最終的にドミニアという名前を捨て、単に「多元宇宙」と呼ぶようになったのだ。(これは、まだポップカルチャーで多元宇宙の考え方が出てくるより前のことである。)振り返ってみると、我々が多元宇宙をドミニアのままにして中心の次元に新しい名前をつけなかったのは驚きだが、これは私がウィザーズに入社するより前のことなのだ。

 ともあれ、『アルファ版』はその舞台となる場所についてあまり触れていなかったが、全体的な考え方としては(少なくともほとんどは)ドミナリアを舞台にしていた。物語はあまりなかったが、説明はされていなくともいくつもの固有名詞(ラノワールやベナリアといった地名、ウルザやミシュラといった人名)がセットに特別感を与えていた。

 最初の拡張セット『アラビアン・ナイト』は、どこか別の場所(セット内ではラバイアという名前は出ていない)に言っていたが、2つ目の拡張セット『アンティキティー』はドミナリアに戻ってきた。『アンティキティー』では、初めて、物語があり、固有名詞を使い始めた。ウルザはただのメガネ好きの親父ではなく、壮大な物語(まもなく発売『兄弟戦争』)の主人公だったのだ。

 その次のセットの『レジェンド』はどこかの次元1つを舞台とはしていなかったが、その次のセット『ザ・ダーク』には明確な舞台があった。再び、ドミナリアだけが舞台となったのだ。多元宇宙は存在していたが、マジックは長年にわたってドミナリア近辺にいたのだ。『 フォールン・エンパイア』と『アイスエイジ』はドミナリアを舞台にしていた。『ホームランド』は『アラビアン・ナイト』以来初めてとなる、別の次元(ウルグローサ)を舞台としたセットだったが、その次の『アライアンス』はドミナリアに戻っている。その次のマジックの1年、(『ミラージュ』『ビジョンズ』『ウェザーライト』)はドミナリアを舞台としていた。

 そしてついに、マイケル・ライアン/Michael Ryanと私が、壮大な物語を描くべきだと会社を説得したのだ。ウェザーライト・サーガである。その中で、我々は他の次元に行くべきだと主張し、最初の2年は別の次元、3年目はドミナリアに戻る3年間のアークを提案した。(3年目の舞台を未来にすることを提案していたが、そのバージョンの物語が採用されることはなかった。)

 『テンペスト』ブロック(『テンペスト』『ストロングホールド』『エクソダス』)は、ラースの次元を舞台としていた。ここでマイケルと私は物語から離れ、ストーリー・チームは次の年のブロック(『ウルザズ・サーガ』『ウルザズ・レガシー』『ウルザズ・デスティニー』)で(ほぼ)ドミナリアに戻ることにした。その次のブロックはマイケルと私が提案した2つ目の次元(ただしさまざまな変更が加えられた)を扱ったが、そこにいたのは1セットだけ(『メルカディアン・マスクス』)だった。『ネメシス』はラースに戻り、『プロフェシー』はドミナリアに戻った。

 その次のブロック(『インベイジョン』『プレーンシフト』『アポカリプス』)はドミナリアに戻っただけでなくラースがドミナリアに重なった。つまり、ドミナリア以外で複数のセットの舞台になった次元がドミナリアの一部になったということになる。

 その次の2ブロック(『オデッセイ』『トーメント』『ジャッジメント』『オンスロート』『レギオン』『スカージ』)はドミナリアではあったが、新しい大陸のオタリアを舞台にしていた。マジックが多元宇宙であり多くの新しい次元を登場させることができるという発想の受け入れが実際に始まったと言えるのは、次のブロック(『ミラディン』『ダークスティール』『フィフス・ドーン』)だったのだ。マジックは『時のらせん』ブロック(『時のらせん』『次元の混乱』『未来予知』)でドミナリアに戻るが、それ以降は12年の間ドミナリアに戻ることはなかった。

 初代『ドミナリア』をデザインしたとき、マジックにおける次元の扱いが大きく変わっていたが、ドミナリアは単一の次元にさまざまな世界が存在しているという難しさがあった。デザイン上の目標は、「さまざまなもののごった煮」より具体的な特徴を持たせることだった。最終的に、我々はこの次元の歴史、つまりゲーム内や宇宙論上でドミナリアでは多くのことが起こっていて、それらの歴史すべてがこの次元を形作ったという事実に焦点を当てた。我々が好んで言うように、「現在が過去によって形作られている次元」なのだ。『ドミナリア』は非常に愛されたセットとなり、我々はいつかは再訪したいと言ったのだ。

 「いつか」は4年後、我々が伝えたい大きな物語において、ドミナリアを舞台とした章がどうしても必要だと気づいたときになった。つまり、イーサン率いる展望デザイン・チームは、その再訪がどのようなものになるかを決めなければならなかった。我々は最初に、『ドミナリア』を振り返り、我々がしたことを調べた。この次元の概要には、3つの要素があった。

ハイファンタジー

 ドミナリアなどのもともとのマジックは、伝統的ハイファンタジーに焦点の多くがあった。マジック型現宇宙に旅立ち、さまざまな世界を探索していくと、我々はハイファンタジーを離れて他のさまざまなジャンルの探求に写った。そのため我々はドミナリアへの帰還をマジックの起点であったハイファンタジーらしさへの回帰にすべきだと考えたのだ。

豊かな歴史

 多くのことがドミナリアで起こっていて、それはドミナリアの歴史だけでなくマジックの歴史上のこともそうである。ドミナリア以上に多くのセットの舞台になっている次元はないので、我々は『ドミナリア』でその深い歴史に言及するようにした。

活気ある再生

 前回ドミナリアを舞台にしたのは、基本的にポスト・アポカリプス的な『時のらせん』ブロックだった。プレイヤーからの環境は、大好きな次元がひどく傷ついているのを見て悲しかった、というものだったので、我々は、ドミナリアが出てこなかった長い間に、この次元が立ち直り、絶望でなく希望の次元になった、とすることに決めたのだ。そう、本当にいろんなことがあったが、ドミナリアは生き残り、発展してきたのだ。

 最初から、ドミナリアをドミナリアたらしめているこの3つの要素すべてを採用する必要があることはわかっていた。我々は、『ドミナリア』がメカニズム的に何をしたのかを再検討することから始めた。

英雄譚

 『ドミナリア』は英雄譚を導入したセットであった。物語を通して歴史の役割を重視したいと考え、英雄譚はまさにそのために作られた新しいタイプのエンチャントだった。その登場以来、英雄譚は好評で落葉樹になっていたので、当然再登場させることになるのは明らかだった。

 しかし、それにさらにひとひねり加えられないかを検討した。いくつかのことを検討したが、中で最も興味深かったアイデアが「先読/read ahead」英雄譚だった。その元になったアイデアは、第1章から読まなくてもいい、というものだった。どんな物語でもそうであるように、途中から読み始めて読み進めることができるのだ。すべての効果は得られないが、後半の効果をすぐに得ることができるということである。これらの英雄譚はそうしたくなるように特別にデザインされている。(ただし、通常の英雄譚も次第に効果が強力になるようになっている。)展望デザインでは、すべての統率者をそうすべきかサイクル1つだけをそうすべきか決めていなかったが、セットデザインは『団結のドミナリア』のすべての英雄譚を先読英雄譚にするだけのデザインを見つけた。

 こうしてできたのが、この1枚目のプレビュー・カードである。先読であることに加えて、このセットのすべての英雄譚はドミナリアの歴史上重要なことについての物語を語っている。この次元には多くの物語があり、前回の一連の英雄譚で残した物語は、10個の物語をさらに語るのに充分あった。実例として、世界呪文の物語を見ようではないか。

クリックして「世界呪文」を表示
伝説のクリーチャー

 もう1つの『ドミナリア』の大きなテーマは、その次元の有名人物をすべて登場させることだった。他のどの次元に比べても、ドミナリアにはユーザーが知っている過去のセットの登場人物が多いのだ。一部は、知っていた通りの人物。また一部は、子孫だったりその役割や任務を引き継いだ人物だったりした。このテーマはこのセットで重要だったので、『ドミナリア』のブースターには必ず伝説のクリーチャーが入っていた。

 さて、成功していることを変える必要はないので、『団結のドミナリア』でも伝説のクリーチャー・テーマとブースターに必ず伝説のクリーチャーが1枚入っているという分配を継続している。ここから生まれたのが2枚目のプレビュー・カードである。ドミナリアの過去からの登場人物、ブレイズをご紹介しよう。

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伝説関連

 伝説のクリーチャーが多数存在することと関連したテーマとして、メカニズム的にそれらに言及したカードも存在する。『ドミナリア』で小さなテーマだったこれが、『団結のドミナリア』で再登場する。

多色

 伝説のクリーチャー・テーマを表す中に、多色の伝説のクリーチャーを作って統率者戦で使われやすくするというものがあった。このテーマは『ドミナリア』で好評で、これが伝説のクリーチャー・テーマを広げるものだと考えたのでこれも『団結のドミナリア』で再登場することになった。

過去への回帰

 この次元の豊かな歴史を表すためにはクリエイティブ的な振り返りが必要だが、メカニズム的振り返りも同様に重要である。人物はマジックの歴史の一部だが、カードもまたそうなのだ。『ドミナリア』は、ドミナリアのセットの古いカードをメカニズム的出典にしたものが多い。『団結のドミナリア』もこのテーマを継続している。こうしてできたのが3枚目、最後のプレビュー・カードである。

クリックして最新のマローを表示
歴史的

 『ドミナリア』の最大の課題の1つが、歴史テーマを表すことだった。我々は、複数のものをまとめた新単語を作る、包括と呼ぶ手法を使ってこれを達成した。歴史的は、過去からの人物を伝える伝説のパーマネント(や呪文)と、過去のものを表すことができるアーティファクトと、過去の物語である英雄譚の3つを取り上げ、それをカードで参照できる1つのものにまとめたものである。

 最初の計画では、『団結のドミナリア』で歴史的を再登場させることになっていた。次のセットである『兄弟戦争』には(この話が初登場したセットの『アンティキティー』同様)アーティファクト・テーマがあることになるので、セット間のシナジーを準備しようと考えたのだ。残念ながら、シナジーが強すぎることがわかり、『団結のドミナリア』の歴史的カードのせいで『兄弟戦争』を作る時のセットデザインやプレイデザインに問題が生じることが危惧されたので、歴史的はセットデザインで取り除かれることになった。

キッカー

 このメカニズムは、歴史的の逆だった。展望デザインは初代『ドミナリア』から充分なものを再登場させたと考え、新しいもののための空間を作りたかったので、意図して展望デザインからキッカーを除いたのだ。歴史的を取り除いたとき、彼らは『ドミナリア』との充分なメカニズム的繋がりを維持するため、キッカーを加えたのである。キッカーについてはまた来週。

伝説の呪文

 『ドミナリア』のメカニズムの中で、もっとも不評だったのが伝説の呪文である。伝説のクリーチャーをコントロールしていなければ唱えられない呪文であった。このセットではすでに『ドミナリア』からいくつも再登場させていて、伝説の呪文が必要だとは思わなかったので、採用しなかった。伝説の呪文の新しい使い方があるかどうかについても議論したが、最終的に、他のことに労力を集中することにしたのだ。

我が家へ

 これで展望デザインは終わりになる。いつもの通り、この記事や私が話題にした『団結のドミナリア』の要素についての諸君の反響を聞かせてほしい。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『団結のドミナリア』のセットデザインについて取り上げるデザインの話を続ける日にお会いしよう。

 その日まで、あなたが再び我が家へ帰れますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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