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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

ダブルで入手 その2

Mark Rosewater
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2022年6月27日

 

 先週、『ダブルマスターズ2022』で再録されたカードのカード個別のデザインの話を始めたが、語るべき話が多かったので、今日もその続きをしよう。

影武者
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 マジックのデザインの奇妙なところの1つが、ある色の要素を用いてその色とは言えないカードをデザインできることである。デザイナーはこれを面白がって、よくお互いへのジョークとしてこういったカードをデザインすることがある。《影武者》も最初、そういったジョーク・カードだった。私は、クローン効果を使って、青で実質的にクリーチャーをリアニメイトできることに気がついていた。そして『次元の混乱』が訪れた。セット全体の仕掛けとして、マジックの現在の時系列とは異なるカラー・パイを持つ時系列を舞台としていた。そのため、我々は各色が同じ理念を保ちながらゲームプレイが異なるようにメカニズムを再配置する方法を探していた。つまり、その類のジョーク・カードを使うのにまさにふさわしいセットだと言えたのだ。私は《影武者》の埃を払ってそのセットに加えた。見て分かる通り、私が最初にファイルに入れたカードは最終版と驚くほど近いものだった。

〈死のクローン〉
{4}{U}
クリーチャー ― クローン
~が場に出るに際し、あなたは墓地にあるクリーチャー・カード1枚を選んでもよい。そうしたなら、~はそのクリーチャー・カードのコピーとして場に出る。

 クリーチャー・タイプの変更(マジックの初期、クローンのクリーチャー・タイプはクローンだった)以外は、このカードはほぼ開発部語で言う「脳から印刷」だったのだ。このもとのカードのアート指示はこうだった。

アート指示
色:青
場所:自由
行動:この変身するクリーチャーは他のクリーチャーの姿を取っているが、そのクリーチャーは死んでいる。葉の茂ったツリーフォークと、その足元に影のように見える枯死して長い時間が経っているツリーフォークの姿を見せる。生きている方のツリーフォークがシェイプシフターだとわかる何かを足してもいい。
焦点:死んだツリーフォークの生きているコピー
雰囲気:クールな複製
注意:クールな見た目のツリーフォークをデザインすることに全力を尽くすこと。顔がついた樹であればいいというものではない。

 そして、『ダブルマスターズ2022』で使われたアート指示がこれである。

アート指示
特定の舞台やスタイルガイドは存在しない
色:青・クリーチャー
場所:閑散とした彫刻家の作業場
行動:人間の女性形のもの(シェイプシフター)が、多数のリアルなマスクが整然と吊るされた石壁の前に立っている。マスクは人間やヒューマノイド(適当に混ぜ合わせて)のものである。その女性は、顔にマスクを当てていて少し顔を屈めている。部屋は、おそらく天空からの月明かりに照らされている。
焦点:女性のシェイプシフター
雰囲気:私は私が取り繕った姿。

 振り返ってみると、私は《影武者》を、そして『次元の混乱』全体を、作ったことを後悔している。ブログを通じてわかったことだが、何かをするカードを印刷した上で「これはマジックが実際にすることではない」ということを伝えるのは難しいのだ。今日に到るまで、カラー・パイ上で可能なことの証明として『次元の混乱』のカードを使うプレイヤーを見かけている。つまり、おそらく二度と青の「リアニメイト」は作らないので、《影武者》を楽しんでくれたまえ。(開発部のポリシーとして、カラー・パイ破りを再録するのは、すでにそれが存在しているフォーマット以外に影響しない限り問題ないとなっている。)

運命の大立者
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 このカードは、ブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanの発明品だ。『イーブンタイド』のデザイン中に、ブライアンがこんなカードを提出した。

〈進化する戦士〉
{R/W}{R/W}
エンチャント
{R/W}:ターン終了時まで、[カード名]は2/2の戦士である。
{R/W}{R/W}{R/W}:[カード名]が戦士であるなら、ターン終了時まで、これはクリーチャー・タイプのスピリットを得、+2/+2の修整を受け、先制攻撃を得る。
{R/W}{R/W}{R/W}{R/W}{R/W}:[カード名]がスピリットであるなら、ターン終了時まで、これはクリーチャー・タイプのアバターを得、+4/+4の修整を受け、飛行を得る。

 私はブライアンに、《運命の大立者》の元になったのは何か聞くことができた。その答えがこれである。

「物語を伝えるカード、そしてプレイヤーがその物語に参加できるようなカードを考えていたんです。このキャラクターは英雄ですが、それはプレイヤーがその旅を助けたからなんです! また、能力のアンカーとして追加の複数のクリーチャー・タイプを使うというアイデアも気に入っていました。初めてのことだとは思いませんでした。あまりにも厄介なほどの文章量を懸念していましたが、プレイテスターはコンセプトをすぐに把握して、これはチームのお気に入りになりました。」

 このカードは突飛なものだったが、すぐに愛されるようになった。当時、マジックには、スレッショルドなどで1回強化されるクリーチャーはいたが、(単に+1/+1カウンターを得る以外では)複数回強化されるものはいなかった。ブライアンは、3回変身するクリーチャーを考えたのだ。基本的なメカニズムは、最初からあった。ブライアンが言ったとおり、このカードはクリーチャー・タイプを得て、次の起動の影響を受けることができるようになるのだ。

 ブライアンはこのカードをエンチャントとして提出したが、私はすぐにクリーチャーに変更して、サイズが1/1から2/2、4/4、8/8と毎回倍になるようにした。このクリーチャーは印刷同様、最終的には先制攻撃と飛行を持つ8/8のスピリット・戦士・アバターになるが、起動コストやテンプレート、そして能力を得るタイミングはデザイン中に変化している。これも、最初のバージョンと最終的なバージョンが近い一例である。

 このカードに関してもっと興味深い話として、最終的にカードには残りもしなかったものとの対立を解消しなければならなかったことがあげられる。ブライアンは、カードのどこにも示されない永続的な変更を作ることにしたのだ。通常、クリーチャーのサイズを永続的に変更する場合、+1/+1カウンターを使う。当時のルール・マネージャーだったマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebはこのカードをカウンターを使ってマジックのテンプレート通りにテンプレート化すべきだと主張した。(ここで、似たカードと同じようなテンプレートを使ってカードをテンプレート化しようとすることがルール・マネージャーの仕事であり、マークはすべきことをしたのだと強調しておきたい。)しかし、ブライアンはどうしても+1/+1カウンターを使いたくはなかった。最終的に、ブライアンの主張が通ったが、それは+1/+1カウンターを使うとルール文が収まらなかったからにすぎないと思う。

 《運命の大立者》の人気を受けて、ブライアンは数年後の『エルドラージ覚醒』でLvアップ・メカニズムを作ることになる。

 このもとのカードのアート指示はこうだった。

アート指示
色:赤白・クリーチャー
場所:なし
行動:その魂が死後に素晴らしいことをすることになるキスキンを描写した抽象的な絵。普通の男性のキスキンを描く。すぐ上、彼の背後に、彼自身の霊体が腕を少し広げている。そのすぐ上には、戦士・スピリットの彼が、強くて高貴で、「人間」性が薄れて――顔が識別しにくくなって――いて、剣を振りかざしている。そのさらに上にあるのがアバターの彼自身で、他の姿よりも壮大でエーテル的/抽象的で、巨大な亡霊剣を振りかざしている。
焦点:このクリーチャーは最初は普通のキスキンなので、それが一番見やすい姿であるべきである。
雰囲気:霊的で偉大な存在への進化。
注意:4つの姿が重なっていて、単純な生スキンから偉大な亡霊アバターまでの「偉大さ」の幅がある。

壊死のウーズ
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 《壊死のウーズ》の話は、『ディセンション』のデザイン中に始まった。シミックをデザインしていて、実験になるような伝説のクリーチャーが必要だった。シミックは実験が大好きなので、その実験の1つを人気のものにするのはクールだと思ったのだ。

 シミックには「+1/+1カウンター関連」のテーマがあったので、+1/+1カウンターが置かれている自軍のクリーチャーすべてのキーワード能力を得るのはクールだろうと考えた。どんぐりカード以外では「キーワード能力」とだけ書くことはできず、列記する必要があるので、このカードの最初のバージョンは次のようなものになった。

〈実験体#247C〉
{2}{G}{G}{U}{U}
伝説のクリーチャー ― ミュータント・ウーズ
4/6
{T}:クリーチャー1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンター1個を置く。+1/+1カウンターが置かれていてこれでないクリーチャーが飛行を持つかぎり、[カード名]は飛行を持つ。畏怖、先制攻撃、二段攻撃、土地渡り、プロテクション、トランプル、警戒についても同じである。[カード名]は+1/+1カウンターが置かれているクリーチャーのすべての起動型能力を持つ。(それらの能力がそのクリーチャーの名前を使っているなら、代わりにこのクリーチャーの名前を使う。)

 まず、そう、これは『ディセンション』当時の常盤木能力である。このバージョンは結局少しばかり文章量が多かったので、文章量が少なくて済むようにキーワード能力ではなく起動型能力をコピーするようにした。上述のテンプレートを使ったカードを作ることはあるが、シミックのカードには起動型能力をコピーするだけで充分だと感じられるだけの起動型能力があったと思う。

 何にせよ、《クラージ実験体》は世に出て、大成功を収めた。私はこのカードがプレイされる様を楽しんだので、将来調整したいカードとして記憶にしまい込んだのだ。良いマジックのデザイナーは、成功したことを意識しておき、それらのカードを元にした新しいカードを、別のカードだと感じさせるような変更を加えてデザインする方法を探すものである。プレイヤーはしばしば私に、人気のカードをコピーすることは元のカードの特別さを失わせるものだと抗議してくるが、われわらは常に新しいデザインを作り続けるゲームを作っている。クールなデザイン要素をカード1枚だけで使い潰してしまうような贅沢はできないのだ。

 例えば、もし《霧衣の究極体》をコピーしなかったとしたら、多相メカニズムは存在しなかった。(『ローウィン』の発売時にプレイヤーが苦情を言ったことである。)しかしながら、我々はそれぞれのデザインが特別なものだと感じられるようにしようとしている。

 ここで話は『ミラディンの傷跡』のデザインに飛ぶ。このセットには墓地テーマがあったので、私は《クラージ実験体》を元に、+1/+1カウンターが置かれているクリーチャーでなく墓地を参照するようにすると面白いかもしれないと思いついた。最初のデザインはこうだった。

〈ゾンビクラージ〉
{1}{B}{B}
クリーチャー ― ウーズ
2/2
[カード名]はあなたの墓地にある各パーマネント・カードのすべての起動型能力を持つ。

 カード名を見て、このカードの元になったものを隠していないことがわかるだろう。これをウーズにしたのは、私がウーズ好きで、フレイバー的にウーズになりうるカードだったからである。名前とクリーチャー・タイプが一致していないが、この名前はこの新クリーチャーがどうなるかを示唆するものではなかったのだ。デベロップ中に、アーロンはこれを{1}{B}{B}2/2から{2}{B}{B}4/3にしたが、それ以外はそのままだった。このもとのカードのアート指示はこうだった。

アート指示
色:黒・クリーチャー
場所:メフィドロス
行動:半透明で黒で粘着性の、生きたウーズが屍の原に広がっている。ウーズは通り過ぎた死体の性質を獲得している。ウーズは身体のさまざまな部分を複製している。顎、曲がった刃、曲がった手など。半金属の骨が突き出ているのも見える。
焦点:ウーズ
雰囲気:身の毛もよだつ死体の複製。

しもべサイクル
///
//
///
//

 これらの10枚のカードのデザインの話は、初代『ラヴニカ:ギルドの都』のデザインにさかのぼる。私は多色のデザインをどう革新するかを実験しており、混成マナというアイデアにたどり着いていた。伝統的な多色カードはその色の「論理積」だったが、それを「論理和」にするというアイデアに興味があったのだ。そのカードをプレイするために、2色のうちどちらか一方だけが必要だとしたらどうだろうか。

 そうすれば、そのカードはどちらかの色の単色デッキでも2色デッキでも使えて、どちらか1色だけが使える多色デッキでは単色カードのように振る舞うことになる。私はこのコンセプトに惚れ込んだが、開発部の他の面々は私ほどは気に入ってくれなかった。私はこれを素晴らしいデザインの道具だと思ったが、最初は単なる仕掛けだと捉えられた。私は混成マナを含むデザインを提出したが、デベロップ・チーム(当時はまだ展望デザイン、セットデザイン、プレイデザインにはなっていない)は不採用にした。

 『ラヴニカ:ギルドの都』には多くのものが入っていたので、不採用になったことは理解できた。マジックのデザインの大部分は、入り切らないものを不採用にして後のデザインでそれを入れる場所を探すことなのだ。

 私の次の計画は、混成マナを『時のらせん』に入れることだった。(混成マナの居場所をこんなに早く見つけられたことに私が興奮していることがわかるだろう。)時間の流れが乱れていたので、私は混成マナを魔法の性質が乱れている印として使えると考えた。

 『ラヴニカ:ギルドの都』のリード・デベロッパーだったブライアン・シュナイダーが私に伝えてきたとき、『時のらせん』のデザインに入って数か月経っていた。彼らはそのセットに派手さが足りないと考えており、混成マナを戻すことができるかと聞いてきたのだ。混成マナは『時のらせん』を組み上げる上で必須ではなかったので、私は快く応じた。興味深いことに、『時のらせん』に混成マナを入れていた数か月の間に、私は、『ラヴニカのギルド』で最初に計画していたよりも混成マナの量を少し増やすことを考え始めていた。私は、大量の混成マナが入ったセットをいつか作ったらクールだろうという考えに至っていたのだ。

 そして1年過ぎ、開発部は『ラヴニカ:ギルドの都』の年の「4つ目のセット」をするべきかという問題に直面していた。我々はすべきではないと考えたので、何も計画しなかった。その後、ある日、ブランド・チームから、晩夏のスロットでセットが必要だと判断したと伝えられ、至急まとめなければならなくなった。こうして生まれたのが『コールドスナップ』である。

 これは非常に素早くデザインされた。確か1か月しかなかったので、マジックのデザイン的には狂気的に短いものである。そのセットは完全な、正常な開発のサイクルを経た。『コールドスナップ』を終わらせた後、私はビル・ローズ/Bill Rose(当時の開発担当副社長、今はテーブルトップ・マジック担当副社長)に、次にマジックの「1年」に4セット作るときは、知らせてくれれば、ただかき集めるのではなく、企画して、もっとまとまりがある、単一のものだと感じられるようなものを作ると言ったのだ。『ローウィン』のデザインに入る直前に、ビルは私の元を訪れて言った。「そうだ。1年に4セット欲しいんだ。」

 私は、それぞれにメカニズム的特徴があるセット2つずつからなる小型ブロック2つで、それぞれのセットがお互いにシナジーを持つ、というものを考えていた。クリエイティブ・チームと協力して、大変化を経る次元を考え出した。『ローウィン』はすでにクリーチャー・タイプ中心のセットにすることが決まっていたので、『シャドウムーア』のメカニズム的テーマを見つけ出すことだった。特定のクリーチャー・タイプを『シャドウムーア』に簡単に含むことができるのと同様に、『ローウィン』に自然に含まれている何かを扱う必要があった。その時、私は、色が使えると気づいたのだ。「色関連」セットは『シャドウムーア』特有で、そして『ローウィン』でも意味をもたせることができる。そして私は色関連セットに最適な道具、混成マナを持っている。混成マナがあれば、マナを増やすことなくデッキ内の他の色のカードをプレイできる。完璧だ。

 私は『シャドウムーア』に、セットに入れられる限りの開封比の混成マナを入れるというアイデアで取り組んだ。当時、私は、開封比7(ブースター・パックの基本土地を除いた半分)と結論付けていた。完全な後知恵で言えば少しばかり高すぎたが、私は限界を広げようとしていたのだ。

 何にせよ、混成中心のセットを作るとなれば、混成マナができるクールなことを見せつけるサイクルが必要である。しもべサイクルの最初のバージョンでは、特定職のクリーチャーを使った効果を生成していた。各色ごとに異なる能力を与え、両方の色のクリーチャーには両方の能力を与えることができた。これが《シスルダウンのしもべ》の最初のバージョンである。

〈キスキンのまとめ役〉(バージョン#1)
{3}{W/U}
クリーチャー ― キスキン・ウィザード
2/4
あなたがコントロールしている白のクリーチャー1体がタップ状態になるたび、あなたは1点のライフを得る。
あなたがコントロールしている青のクリーチャー1体が呪文や能力の対象になるたび、クリーチャー1体を対象とする。それをタップまたはアンタップする。

 見ての通り、マナ・コストで必要な混成マナは1点だけで、クリーチャーを強化するのではなく呪文のような効果を生成するものだった。このサイクルの裏にある考えは、そのコントローラーがマナを出せない色であっても興味深いコンボが可能になるので、「色関連」空間をもっと扱うというものであった。

〈キスキンのまとめ役〉(バージョン#2)
{3}{W/U}
クリーチャー ― キスキン・ウィザード
1/4
あなたがコントロールしている白のクリーチャー1体がアンタップ状態になるたび、ターン終了時まで、それは+1/+1の修整を受ける。
あなたがコントロールしている青のクリーチャー1体がタップ状態になるたび、ターン終了時まで、それは被覆を得る。

 次のこのバージョンは、クリーチャーに能力を与えるほうに向かっている。このバージョンでデザインを提出したと思う。

 アーロン・フォーサイス/Aaron Forsythe率いる『シャドウムーア』デベロップ・チームは、これをずっと単純なものにすることにした。初代『ラヴニカ:ギルドの都』の《トルシミール・ウルフブラッド》をもとに、このサイクルは単純な形に変更された。各クリーチャーはその色の各クリーチャーに+1/+1を与える2つの能力を持つようになり、両方の色であるクリーチャーには+2/+2が与えられるようになった。その後、各クリーチャーに能力を持たせた。3体はキーワード能力(白青は瞬速、青黒は飛行、赤緑はトランプル)、2体は書き下された能力を持った。黒赤はのちの護法、緑白は手札破壊対策のおまけだった。なぜ警戒でなかったのかはわからない。すでにその1年前、『未来予知』で緑に警戒を加えていた。おそらく、スタンダードに強力な手札破壊があり、開発部は対策を入れたかったのだろう。

 『シャドウムーア』のクリーチャーはどれも1HHH(Hは「どれかの混成マナ」を表すのに使っている記号である)だったが、パワーやタフネスはその色のクリーチャーの攻撃性やクリーチャー以外の強化能力に基づいて異なっていた。どれも騎士というフレイバーづけがなされ、その2色の組み合わせの中心になるクリーチャー・タイプを反映していた。(白青―キスキン、青黒―フェアリー、黒赤―エレメンタル、赤緑―ゴブリン、緑白―エルフ)

 マナ・コストに多くの混成マナが入っている理由は、それ以外の色のデッキに散らし入れることが簡単すぎないようにしていたからである。このセットでは、どれだけのマナ・シンボルを入れられるかを見る多くの実験が行われていたのだ。『イーブンタイド』には、後に信心となる彩色メカニズムがあったので、大量のマナ・シンボルを入れることはスタンダードで意味があったのだ。

 『イーブンタイド』を作ったとき、我々は混成カードを増やせるようにそのセットを敵対色中心にすることにした。(友好色混成のデザイン空間はほとんど使い切っていたのだ。)敵対色のしもべのサイクルを作る必要があるかどうかを議論したが、作らなければプレイヤーが不満に思うだろうと判断した。

 すぐにいくつもの問題に突き当たった。1つ目に、1HHHでさらに5枚作るとなると、先の5枚と似たものに感じられるようなものになってしまう。そこで、1HHHから3HHHまでの幅を持たせることにした。2つ目に、敵対色の組み合わせでは友好色ほどのクリーチャー・タイプが存在しない。そこで、すべてホラーにすることにした。これによって、友好色版の何かに騎乗している騎士とは外見も差をつけることができた。敵対色版では、少しばかり複雑な追加の能力を持たせられることにした。すべてに共通するメカニズム的特徴は、何らかのかたちでその2色を扱うということだけだった。2枚は特定色の呪文を唱えることを参照し(白黒と赤白)、2枚は特定色のものに影響を与え(青赤と緑青)、1枚は両方の色のクリーチャー・トークンを生成する(黒緑)。

 『ダブルマスターズ2022』に10枚サイクル全体が入っているのは、しもべだけのはずである。

『ダブル』の展望

 そろそろ今日の文字数制限にかかるようだ。『ダブルマスターズ2022』の何枚かのカードの背後にあるデザインの話を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、この記事や今回取り上げたカード、あるいは『ダブルマスターズ2022』そのものについて、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、年月の間に学んだ人生の教訓を話す日にお会いしよう。

 その日まで、これらのカードが作ったのと同じぐらい楽しくプレイできますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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