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Making Magic -マジック開発秘話-
バルダーズ・ゲートに行こう その2
2022年5月30日
先週、『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』のカード個別のデザインの話を始めた。まだ語るべき内容があるので、今週もその続きとなる。
《殺戮の王、ベハル》
最初は《殺戮の王、ベハル》、「ダンジョンズ・アンド・ドラゴンズ」でベインとマークールとともに死せる三者として知られる3柱の神々のうち1柱である。バルダーズ・ゲートのゲームにおいては、最大の敵となっている。
〈血編み髪のクレシュ〉(バージョン#0)
{2}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・戦士
3/3
これでないクリーチャー1体が死亡するたび、あなたは血編み髪のクレシュの上に+1/+1カウンターX個を置いてもよい。Xはそのクリーチャーのパワーに等しい。
これは、『アラーラの断片』からの再録である。おそらく、このスロットにこれが入っているのは、プレイテストをするにあたってファイルの穴埋めとなるレアが必要だったからだろう。まだカードのデザインができていないとき、同じような役割を果たす再録で埋めておくのはよくある手法である。単に、レアの黒赤緑の伝説のクリーチャーとしてクレシュがちょうどよかったのだ。
〈ジャン・イトール〉(バージョン#1)
{1}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・戦士
4/4
速攻
{T}, クリーチャーX体を生け贄に捧げる:宝物・トークンX個を生成する。
あなたがクリーチャー・呪文を唱えるたび、それを唱えるために宝物からのマナが支払われていた場合、そのクリーチャーは追加で、その呪文を唱えるために支払われた宝物からのマナ1点につき1個の+1/+1カウンターが置かれた状態で戦場に出る。
既存のキャラクターが大量にいるセットの場合、カードをトップダウンでデザインする(そのキャラクターのフレイバーに合ったデザインを作る)ことが多いが、単に興味深いメカニズム的デザインを作り、それにふさわしいキャラクターを探すこともある。D&Dには宝物に関わるキャラクターが大量に存在するので、おそらく、このカードが最終的にうまくできたらキャラクターを見つけられると考えたのだろう。
〈殺戮の王、ベハル〉(バージョン#2)
{3}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 神
5/5
この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールしていて黒や赤や緑であるクリーチャー1体につき{1}少なくなる。
ベハルスポーンは使嗾されている。
各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーは速攻を持つ赤の2/2のベハルスポーン・クリーチャー・トークン1体を生成する。
ベハルスポーン1体が死亡するたび、それのコントローラーは2点のライフを失う。
彼らはかなり初期に、これをトップダウンのベハルのデザインにすると決めたようだ。このバージョンは、コスト低減能力と反復可能なクリーチャー・トークン生成を持っていた。伝統的なクリーチャー・トークン生成と異なり、このカードはすべてのプレイヤーにトークンを与えるが、それらのクリーチャーには欠点が伴っていた。全体として、かなり混沌としたカードになっていた。(そしてベハルはかなり混沌な存在だ。)
〈殺戮の王、ベハル〉(バージョン#3)
{2}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 神
6/3
あなたの戦闘ステップの開始時に、クリーチャー1体を対象とする。それを使嗾する。次のあなたのターンまで、それではブロックできない。
使嗾されているクリーチャー1体が死亡するたび、黒の3/1のベハルスポーン・クリーチャー・トークン1体を生成する。
次のこのバージョンは、前のバージョンの要素をいくらか残してはいるがほぼ新しいデザインである。混沌を作るという全体としてのベハルらしさは守られていた。反復工程ごとに見て取れる通り、マナ・コストやパワー/タフネスはずっと調整され続けていた。
〈殺戮の王、ベハル〉(バージョン#4)
{4}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 神
6/3
あなたの墓地に黒のクリーチャー・カードと赤のクリーチャー・カードと緑のクリーチャー・カードがあるかぎり、[カード名]は破壊不能を持つ。
すべてのクリーチャーは警戒と二段攻撃を持ち、各ターン、可能なら攻撃しなければならない。
マジックは近年何柱もの神を作ってきていて、それらにもっとも共通している(ただしすべてではない)要素は破壊不能であることである。しかし、破壊不能を持つクリーチャーのバランスを取るのは難しいことがわかっているので、我々は条件付き破壊不能にすることが多い。場合によっては破壊不能になるのだ。このバージョンは、妥当な条件付き破壊不能性を探す第一歩である。2つ目の能力は、大量のクリーチャーを殺すことによって混沌を生み出す新しい手法である。
デザイン・チームはなおもベハルをどう再現するか試していたが、アート・ディレクターがアートを発注できるようにするため、これをベハルにすることを決めた。
アート指示:
背景:Pentagon
色:黒赤緑マナに関係する伝説のクリーチャー
場所:銀、緑、赤で彩られた高い窓のある堂々たる丸天井の謁見室の玉座の後ろ(玉座の背面が見えている)
行動:玉座の後ろでかがみ、今にも飛び出そうとしているような恐ろしい死体の神空中には彼の周りに2つのものの円が存在している。1)巨大な血液の雫が彼の頭の周りに縦の円になっていて参照画像のシンボルのような効果を生み出している。2)6本の骨の短剣が彼を水平に取り巻いている。彼の体は長い間死んでいるように見えて毛がなく、裂傷からは黒い胆液が染み出している(むごたらしくはないが不快である)。(顔も含む)肌からは血管が不規則に突き出ているが、それは硬い銀製である。どこかに、血のように赤いハンカチを持っている。浮遊しているものと同じような曲がった骨の短剣を持っていてもよい。すべての短剣はいつでも使えるようになっていること。
焦点:死体の神
雰囲気:憤慨していて、恐ろしく、残忍。ほぼ激怒している
通常のセットでは、キャラクターがどういう人物かを理解させる工程が必要となるが、ライセンス製品の場合、キャラクターはすでに存在しているのでそのキャラクターについての詳細の多くは合わせるだけでいい。
〈殺戮の王、ベハル〉(バージョン#5)
{2}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 神
5/3
あなたの墓地にあるカードの中に黒と赤と緑がないかぎり、[カード名]では攻撃もブロックもできない。
各戦闘で、すべてのクリーチャーは可能なら攻撃する。
クリーチャー1体がもっともライフの多いプレイヤー1人を攻撃するたび、ターン終了時まで、それのパワーを2倍にする。
デザイン・チームは、ベハルに破壊不能性が必要か疑問視し、他のことを試した。適切な色のクリーチャーが自分の墓地にあるとボーナスを得るのではなく、ない場合に欠点を持つようにした。このカードがクリーチャーに攻撃を強制するのは変わらないが、今回はライフが一番多いプレイヤーを攻撃することを推奨している。統率者戦のデザインでは、最弱のプレイヤーではなく最強のプレイヤーを攻撃することを推奨するという空間を扱うことを楽しんでいるのだ。
〈殺戮の王、ベハル〉(バージョン#6)
{3}{B}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 神
8/5
あなたのアンタップ・ステップに、殺戮の王、ベハルはアンタップしない。あなたのアップキープの開始時に、あなたはクリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、殺戮の王、ベハルをアンタップさせる。
あなたがコントロールしていてこれでないクリーチャー1体が死亡するたび、クリーチャー1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンター1個を置き、それを使嗾する。
次のこのバージョンは少し大きくなっているが、新しい欠点がある。デザイン・チームは混沌をもたらすベハルのフレイバーの新しい形を試しており、今回は印刷されたカードで使われる効果を見つけている。最初の能力は、死せる三者すべてが持つ破壊不能の変種に戻る。そして、マナ総量とパワー/タフネスはまた調整されている。かなりの掘り下げを経ているが、デザイン・チームは最終的にベハルらしくするための能力の正しい組みあわせを見つけたのだ。
《魔力の源泉》
次に、クールな新エンチャント、青の神話レアの《魔力の源泉》の話をしよう。《魔力の源泉》はD&Dのソーサラーに関わる能力だ。
《副陽のスフィンクス》(バージョン#0)
{6}{U}{U}
クリーチャー ― スフィンクス
飛行
あなたの戦闘後メイン・フェイズの開始時に、このフェイズの後に追加の開始フェイズを得る。(開始フェイズは、アンタップとアップキープとドローの各ステップからなる。)
ベハル同様、このスロットも初期プレイテストでは再録だった。ここからわかるのは、最初はここは伝説のクリーチャーのスロットになる予定だったということである。コモンのクリーチャーの比率は非常に厳密だが、神話レアやいくらかのレアは開封費に影響をあまり与えないのでクリーチャーの比率には柔軟性があるのだ。
〈大フィニッシュ〉(バージョン#1)
{1}{U}
インスタント
ターン終了時まで、あなたはソーサリー・呪文をそれらが瞬速を持つかのように唱えてもよい。このターン、あなたがソーサリー・呪文を唱えるたび、それをコピーする。あなたはそのコピーの新しい対象を選んでもよい。
このスロットの最初のデザインは、狭いけれども強い可能性のある呪文だった。神話レアのインスタントのデザインは非常に難しいので、私はこのカードが狙ったことを称えたい。
〈魔力の源泉〉(バージョン#2)
{1}{U}
エンチャント
[カード名]が戦場に出たとき、あなたは松明を得る。
あなたが松明を持っているかぎり、あなたは呪文をそれが瞬速を持つかのように唱えてもよい。あなたがインスタントやソーサリーである呪文を唱えるたび、あなたが松明を持っている場合、それをコピーしてもよい。あなたはそのコピーの新しい対象を選んでもよい。
次のこのバージョンでは、この呪文は本質はそのままで実装が変わっている。まず、インスタントからエンチャントに変わっている。これによって、効果が1ターンを超えて持続するようになった。また、効果の範囲が2つの意味で広がっている。1つ目に、瞬速をあらゆるカード・タイプに与えるようになり、2つ目に、ソーサリーだけでなくインスタントもコピーするようになった。これは、プレイテストで前のバージョンが狭すぎるとわかったことを示している。また、この反復工程で、この呪文が《魔力の源泉》になったということも指摘しておこう。前のバージョンではこの名前ではなかったので、デザイン・チームの誰かがこのカードでD&D要素を再現できる可能性があると見出したのだろう。
最大の変更は、松明=イニシアチブの初期名、が導入されたことである。デザイナーたちはこのカードにさらなるゲームプレイを持たせたかったが、同時にそれを使える頻度に制限をかけたかったので、イニシアチブと関連付けたのだ。あらゆる意味で、イニシアチブに新しい能力をつけたということである。この時点で、このカードがアーティストに発注された。
アート指示:
*** 通常のアスペクト比で、拡張アート・テンプレートの描画範囲 ***
背景:Pentagon
色:青マナに関係する呪文
場所:地下の地割れにかかった縄の橋の中央
行動:ポンクやライトブルーや白のエネルギーの奔流が、男性のような髪型のたくましいティーフリングの魔術師の女性(ティーフリングについては91-93p、魔術師については155-156p参照)の手から対称に2本吹き出ている美麗な魔法爆発。彼女は自分が生み出している魔法に驚き楽しんでいる。
焦点:魔法の噴出
雰囲気:畏敬と力
デザイン・チームはこのカードが何をするかを確定できていなかったが、再現すべきトップダウンのフレイバーはわかっていた。
〈魔力の源泉〉(バージョン#3)
{2}{U}
エンチャント
あなたがあなたの手札からインスタント・呪文を唱えるとき、あなたの墓地にあるソーサリー・カード1枚を対象とする。あなたはそれを唱えてもよい。そうしたなら、その呪文を解決するに際してそれを追放する。
あなたがあなたの手札からソーサリー・呪文を唱えるとき、あなたの墓地にあるインスタント・カード1枚を対象とする。あなたはそれを唱えてもよい。そうしたなら、その呪文を解決するに際してそれを追放する。
このバージョンはこれまでのバージョンと大きくかけ離れている。インスタントやソーサリーを扱うエンチャントではあるが、結果がまったく異なっている。また、このバージョンではインスタントとソーサリーを同数プレイすることが強く勧められている。これはこれまであまりやってこなかったデッキ構築の制限である。
最終の印刷版でもまた大きく変化していて、チームがこのスロットに手を焼いたことがわかる。これは、デザインがもっとも満足できる効果を探して反復工程を続けた好例といえる。印刷版でもインスタントやソーサリーを扱っているが、コスト低減を中心にしており、統率者製品でしかしないような統率者戦フォーマットに寄せたものになっている。将来のデザイン空間を探し続けている人間として、私はこのセットでしか作りえないデザインを称賛する。
《稲妻》
《稲妻》はマジックの最初から存在している。リチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldは、マナ総量が1で3という数字に関連した5色それぞれのコモンのサイクルを作ろうと考え、それを「加護」と呼んだ。
青は他に比べてかなり強く、セットの発売前にレアに格上げになった。年を経て、5枚中4枚は本流のセットから消えていった。《Ancestral Recall》《暗黒の儀式》《稲妻》は強すぎ、《治癒の軟膏》は弱すぎることが明らかになったのだ。唯一、最初の「加護」のうちスタンダード環境において適正な強さだった《巨大化》だけは生き残っていた。
《稲妻》は『基本セット2010』で本流のセットに戻ってきたことがあるが、やはり環境を歪めることが示された。(ライフが多く対戦相手も多いなどの)統率者戦の性質から、統率者セットが《稲妻》を入れるのにふさわしいと思われた。《稲妻》はD&Dの象徴的な呪文でもあり(だからこそそもそも『アルファ版』に入ったのだと思われる)、このセットに入るのはまさにふさわしいと考えられる。興味深いことに、このスロットは最初《稲妻》ではなかった。
〈火の拳〉(バージョン#1)
{2}{R}
ソーサリー
クリーチャー2体を対象とする。カード1枚を引く。ターン終了時まで、それらのクリーチャーはそれぞれ、あなたがこのターンに引いたカード1枚につき+1/+0の修整を受ける。
このコモンの赤のスロットは最初、戦闘強化だった。(コンバット・トリックと言わないのは、これがソーサリーであり戦闘中の奇襲効果がないからである。)これはD&Dの特技、燃える火の拳のフレイバーを再現しようとしたものだろう。
〈炎の拳〉(バージョン#2)
{1}{R}
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。カード1枚を引く。ターン終了時まで、そのクリーチャーはトランプルを得、あなたがこのターンに引いたカード1枚につき+1/+0の修整を受ける。
次のこのバージョンでは、インスタントになり、コンバット・トリックになった。これが赤に関連する大きなテーマによるものかどうかはわからない。通常と違ってキャントリップが前についているのは、このカードの他の効果とうまく相互作用するようにするためである。
〈ぶどう弾丸〉(バージョン#3)
{R}
インスタント
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそれにX点のダメージを与える。Xはこのターンにあなたが唱えた呪文の数に等しい。
次のこのバージョンでは、コンバット・トリックから直接ダメージ呪文になっている。これは狭い(強力な可能性はあるが、特定のゲームプレイでだけに限られる)デザインなので、コモンになっていることには驚いた。おそらく、これは赤を含むドラフト・アーキタイプと関連していたのだろう。
〈呪文猛火〉(バージョン#4)
{1}{R}
インスタント
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそれにX点のダメージを与える。Xはインスタント・カードやソーサリー・カードや出来事能力を持つカードのうちあなたの墓地にある枚数に等しい。
デザイン・チームは直接ダメージ・カードにすると決めたが、セット内の他の要素にもう少し関わるように変更している。通常、この種のカードはインスタントとソーサリーだけを数えるが、このセットには出来事が含まれているのでそれも数えることにしたのだ。これも、このセット以外では不可能なデザインの例である。
〈呪文猛火〉(バージョン#5)
{2}{R}
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれに3点のダメージを与える。あなたの墓地に2枚以上のクリーチャーでも土地でもないカードがあるなら、代わりに、[カード名]は5点のダメージを与える。
次のこのバージョンは前のバージョンの本質を引き継ぎながら少し簡略化し、効果を2種類に絞った。この新バージョンでは、クリーチャーでないアーティファクトやエンチャントを数に入れ、出来事を除いた。『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』ではクリーチャーでないアーティファクトの出来事が導入されており、それらは考慮されることになる。
最後に、デザイン・チームは、3点のダメージを与える直接ダメージ呪文をコモンに作るなら、それをD&Dとマジックの伝統ある呪文、《稲妻》にしない理由はないと考えた。上述の通り、《稲妻》は統率者戦ではそれほど問題を起こさないので、《稲妻》を再録する最高の機会だと考えたのだ。アート・ディレクターからアーティストへの指示はこうだ。
アート指示:
背景:Pentagon
色:赤マナに関係する呪文
場所:竜渡り地区、城塞のある門外地域の橋(資料参照)
行動:城塞に向かう橋の上30メートルの、超強力な黄白色の一筋の稲妻。その稲妻は長く伸ばされた若い人間の魔術師の手から出ている。その魔術師が何者かは描写されないが、海岸から城塞に攻撃を仕掛けようとしている。魔術師について、必要なら『Zebra』ワールドガイドの155-156p参照。
焦点:稲妻
雰囲気:バシーッ!
注意:このカードは再録です。カード名は決定事項です。
《ワンド・オヴ・ワンダー》
今日の最後になる話は、D&Dで人気のアイテム、ワンド・オヴ・ワンダーについてのものである。22種類の効果を持つワンドだ。使ったとき、その中の無作為に選んだ1つの効果が発生する。非常に混沌としていてそれでいて楽しい武器であり、私自身も含む多くのD&Dプレイヤーが使って楽しんだのだ。(2007年、私は、マジックのクリーチャーで最高のデザイン10種とダンジョンズ・アンド・ドラゴンズを混ぜて、トピカル・ジュースの記事(英語)を書いている。その中で、D&Dをプレイしていた時代のことを取り上げていて、その1つはワンド・オヴ・ワンダーの話をしている。)長年の間に、ワンド・オヴ・ワンダーはいくつものデザインの元になっていた。ワンド・オヴ・ワンダーをもとにしたトップダウンのデザインとして、特に『ウルザズ・サーガ』の《束の間の開口》と『基本セット2019』の《混沌のワンド》の2枚が挙げられる。
それでは、《ワンド・オヴ・ワンダー》がどのように作られたか見ていこう。
〈戦嵐の統合〉(バージョン#1)
{4}{R}
エンチャント
クリーチャー・タイプちょうど2つを持つクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち1つを対象とする。そのクリーチャーはそれにX点のダメージを与える。Xはあなたのメガパーティーに参加しているクリーチャーの数に等しい。(あなたのメガパーティーとは、あなたがコントロールしていていてクリーチャー・タイプの組み合わせが重複しない望む数のクリーチャーのことである。)
このカードは最初、ワンド・オヴ・ワンダーでもなければアーティファクトですらなかった。最初は、何度も直接ダメージを与えるエンチャントだったのだ。先週の《契約武器》同様、このスロットも最初はメガパーティー・カードだった。このバージョンでは、メガパーティーは他のクリーチャーと組み合わせが重複しない、ちょうど2つのクリーチャー・タイプを持つクリーチャーの数を数えていた。複数いるなら、メガパーティーで数えるのはそのうち1体になる。
〈熱い接触〉(バージョン#2)
{3}{R}
エンチャント
[カード名]が戦場に出たとき、あなたは松明を得る。職業を持つクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち1つを対象とする。そのクリーチャーはそれにX点のダメージを与える。Xはあなたがコントロールしていて職業が重複しないクリーチャーの数に等しい。
次のこのバージョンではメガパーティーが取り除かれ、松明(イニシアチブの初期名)が導入された。クリーチャー・タイプの部分集合として職業を定義しようとしていた時期にこのバージョンはつくられていた。多様性を参照しているのは同じだが、今回は職業だけを参照しているのだ。
〈熱い接触〉(バージョン#3)
{3}{R}
エンチャント
[カード名]が戦場に出たとき、あなたはイニシアチブを得る。対戦相手がイニシアチブを得るたび、そのプレイヤーは「あなたはカード2枚を引く。」を選んでもよい。そうしないなら、[カード名]はそのプレイヤーに4点のダメージを与える。
このバージョンではクリーチャー・タイプを参照しなくなり、イニシアチブを得ることに寄せている。このバージョンは基本的に懲罰者効果(ある効果かダメージを受けるかを選ぶ)を与えている。対戦相手が選ぶので、その効果は赤のカラー・パイを外れていてもよく、今回の場合はカードを引くことになっている。懲罰者効果は混沌であり、赤のフレイバーである、という考え方なのだ。
〈ロッド・オヴ・ワンダー〉(バージョン#4)
{1}{R}
アーティファクト
{4}, {T}:1個のd20を振る。起動はソーサリーとしてのみ行う。
1–9|インスタントやソーサリーであるカード1枚が公開されるまで、あなたのライブラリーの一番上から1枚ずつ追放していく。可能なら、あなたはそれをマナ・コストを支払うことなく唱える。
10-19|各プレイヤーのライブラリーについてそれぞれ、同じことを行う。
20|代わりに、各プレイヤーのライブラリーの一番上からそれぞれ、インスタントやソーサリーであるカード3枚が公開されるまで1枚ずつ追放していく。
ここで、このカードがワンド・オヴ・ワンダーになっている。(なぜロッド・オヴ・ワンダーになっているのかはわからない。)トップダウンのフレイバーから予想できる通り、効果はランダムである。文章をあまり長くせずに大量の効果が出せるようにするため、無作為の元、効果の元としてライブラリーの一番上のカードを用いている。このバージョンは印刷版からそう遠くはなく、カードを成立させるためのもっともエレガントな方法を探す途中のものである。
このバージョンを成立させる上で最大の障害は、インスタントやソーサリーであるカードを探して唱えるというのは非常に文章量が多くなるということである。解決策は、1つ大きな能力を作り、出目に応じてそれが起こる回数だけを変えるというものであった。この呪文は最終的にもう少しコストが増えている。最後に、アート・ディレクターからアーティストへの指示をご紹介しよう。
アート指示:
*** 通常のアスペクト比で、拡張アート・テンプレートの描画範囲 ***
背景:Pentagon
色:赤マナに関係するアーティファクト
場所:ファンタジックな赤い蝶の巨大な群れの中
行動:色とりどりの輝く玉がいくつもついた金と金属の魔法のワンド、ワンド・オヴ・ワンダーから、蝶の間を魔法的に流れる色とりどりの放射光が放たれている。ワンドの末端付近には、激しく回転して魔法の光を放つ小さなスポークがあるかもしれない。蝶もワンドから出た魔法に見えるかもしれない。
焦点:ワンド
雰囲気:心躍る驚きの魔法のアーティファクト!
大量の蝶がアートに描かれているのは、効果の中に巨大な蝶の巨大な群れ(第5版では600匹)を生み出すというものがあるからであり、それがワンド・オヴ・ワンダーの象徴的な効果なのだ。
「そして皆は幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
本日はここまで。楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、この記事や今回取り上げたカード、あるいはこのセットそのものについて、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』の展望デザイン提出文書を検証する日にお会いしよう。
その日まで、カードがさらに多くの物語を紡ぎますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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