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Making Magic -マジック開発秘話-
バルダーズ・ゲートに行こう その1
2022年5月23日
今回は、これまでにないことをしようと思う。セットのプレビューが行われている間に、カード個別のデザインの話を始めるのだ。ほとんどは公開されているカードで、唯一公開されていないのが今日のプレビュー・カードである。最終形がどうなったかを知る前にカードの進化を見ていくのは楽しいに違いない。それでは話をに入るとしよう。
《時を超えた英雄、ミンスクとブー》
まずは、ミンスクとブーの話から始めることにしよう。私の狂気への方法があることがわかるだろう。まず、このカードの最初のバージョンを見ていこう。
〈大胆な者ジャヘイラ〉(バージョン#1)
{1}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・エルフ・ドルイド
2/1
技量(あなたは「あなたのデッキから妙技1枚を加え、その色をこの統率者に、加える。」を選んでもよい。)
{6}:このクリーチャーは、呪禁を持つ4/4のビースト、警戒を持つ4/7のビースト、トランプルを持つ7/5のビーストのうちあなたの選んだ1つになる。
//妙技, {1}{G}//このクリーチャーの起動型能力を起動するためのコストは最大{X}小さくなる。Xはあなたがコントロールしているクリーチャーの数に等しい。
まず、このスロットが緑単色であり、プレインズウォーカーではなかったことがわかる。ミンスクは最初、多色カードでもプレインズウォーカーでもなかったのだ。実のところ、このスロットはそもそも最初はミンスクですらなかった。そして、ジャヘイラはこのセットに存在している。説明しよう。このバージョンのジャヘイラは、彼女の持つ動物への変身能力を扱っていた。この能力、あるいは少なくとも4/4という部分、は《エメラルドの大ドルイド、ハルシン》で使われている。
このカードの興味深い部分は、セットに採用されなかったメカニズム、技量/Skilledと妙技/Featである。妙技は、怪物化の紋章のようなもので、最初はすべての単色の伝説のクリーチャーが持っていた。そのコストを支払うことで、永続的に有効にして、自分の統率者にその能力を持たせ、戦場を離れて戻ったとしてもそのゲームの間はずっと残すのだ。加えて、その統率者が技量能力を持つなら、他のカードの妙技を選び、統率領域に置くことができる。その後、統率者が戦場にあれば、そのコストを支払って永続的に有効にできるのだ。妙技のついた統率者は、固有色にその色が加わる。技量クリーチャーは、それが持つ妙技を使うことができる。
これは、展望デザイン・チームが最終的に背景に落ち着く前に試したメカニズムの1つである。先週言ったとおり、統率者戦ドラフトのセットには、初期に単色の統率者をドラフトしたプレイヤーが色を増やす手段が必要なのだ。これから見ていくが、これは少しのあいだ残っていて、さまざまなバージョンが存在していた。
〈大胆な者ジャヘイラ〉(バージョン#2)
{1}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・エルフ・ドルイド
0/1
技量(この統率者はあなたのデッキ内の妙技1つがついた状態でゲームを始める。)
護法{2}
[カード名]は+X/+0の修整を受ける。Xはあなたがコントロールしているクリーチャーの中のパワーの最大値に等しい。
次のこのバージョンもジャヘイラだが、動物への変身の別の実装を試みている。ここでは、妙技は単色の伝説のクリーチャーから取り除かれ、開封比を高めるために、低レアリティで単色で伝説でないクリーチャーが持つものになっている。また、このカードはアンコモンからレアになっている。
〈大胆な者ジャヘイラ〉(バージョン#3)
{1}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・エルフ・ドルイド
0/1
護法{2}
[カード名]は+X/+0の修整を受ける。Xはあなたがコントロールしているクリーチャーの中のパワーの最大値に等しい。
この時点で、展望デザイン・チームは妙技を諦めた。
〈大胆な者ジャヘイラ〉(バージョン#4)
{1}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・エルフ・ドルイド
0/1
背景(ゲームを始めるに際し、あなたは背景1つとその色をこの統率者に加えてもよい。)
護法{2}
[カード名]は+X/+0の修整を受ける。Xはあなたがコントロールしているクリーチャーの中のパワーの最大値に等しい。
これは背景の最初の反復工程である。
〈話す熊、ウィルソン〉(バージョン#5)
{1}{G}
伝説のクリーチャー ― 熊・戦士
2/2
物語(ゲームを始めるに際し、あなたは背景1つとその色をこの統率者に加えてもよい。このゲームでそれを開放するために、そのコストを支払う。)
{T}:あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を見る。それが土地・カードであるなら、あなたは「それを公開し、あなたの手札に加える。」を選んでもよい。それが門・カードであるなら、代わりにそれを戦場に出す。あなたがマナを引き出す目的で門をタップするたび、好きな色1色のマナ1点を加える。
この時点で、チームはこのスロットをジャヘイラからウィルソンに変更することに決めた。ここで、デザインの手順的にいくらか奇妙なことが見受けられる。両方ともファイルに残ったが、ジャヘイラは別のスロットで掘り下げていたメカニズム的空間にふさわしかったので、そのスロットに移動したのだ。通常、私は1つのスロットでのカードの進化を見せるのだが、今回の記事では、キャラクターや物品や呪文のクリエイティブがよりよく実装できるカードがあると考えられたことによってカードがスロットを移動して変わりうるということをお見せしていこう。ジャヘイラについてはあとで見ていくことにする。
ウィルソンは喋る熊だ。彼は他の熊とそう変わらないが、回復の薬が大好きだ。おそらく、門を助けるカードとしてこのデザインを採用して、妥当なキャラクターを探していたのだろう。そして、空の状態といえるウィルソンを、最初に試したのだと思われる。
物語は背景選択の初期版だ。妙技同様、「ひとたび唱えれば、そのゲームの間、自分の統率者に適用される」という性質を持っていた。カードを見ていくにつれて、チーム、そして後にはエディターやルール・マネージャーがテンプレートを変更し、最適な表現を探そうとしていくのがわかるだろう。
〈喋る灰色熊、ウィルソン〉(バージョン#6)
{1}{G}
伝説のクリーチャー ― 熊・戦士
2/2
物語(ゲームを始めるに際し、あなたは背景1つとその色をこの統率者に加えてもよい。このゲームでそれを開放するために、そのコストを支払う。)
あなたは[カード名]の背景能力をゲーム内で1回だけではなく2回起動してもよい。
門は都市にあり、ウィルソンは森の住人なので、門のフレイバーはウィルソンにふさわしくないと感じられた。次のバージョンのウィルソンは、背景2つを持つ唯一の統率者にするというものだった。これは、単なる熊である彼に背景を組み合わせてクールなデッキを組めるようにするのが面白いと考えたからである。
〈ミンスク〉(バージョン#7)
{3}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・バーバリアン
3/3
物語(ゲームを始めるに際し、あなたは背景1つとその色をこの統率者に加えてもよい。このゲームでそれを開放するために、そのコストを支払う。)
[カード名]が攻撃するたび、あなたがハムスターをコントロールしていないなら、「ブー」という名前の1/1の赤のハムスター・クリーチャー・トークン1体をタップ状態かつ攻撃している状態で生成する。
あなたがすでにハムスターをコントロールしているなら、[カード名]の上に+1/+1カウンターX個を置く。Xはこれのパワーに等しい。
この時点で、ファイルにはウィルソンにできる別のスロットがあると判断したのだろう。これによって、入れたいと考えていたキャラクター、ミンスクのためのスロットが開くことになった。ミンスクは『フォーゴトン・レルム探訪』で登場していたが、バルダーズ・ゲートに関係した人気のキャラクターなので、チームは彼の新しいカードを作ることにしたのだ。
もちろん、ミンスクにはハムスターで相棒のブーが必要なので、最初のバージョンではブーのクリーチャー・トークンを精製し、後に強化する方法を持たせている。ブーは小さな巨大宇宙ハムスターなので、強化することはフレイバーの一部なのだ。
〈ミンスク〉(バージョン#8)
{2}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ミンスク
初期忠誠度 - [空欄]
物語
+1:ブーを作る
-2:何か
-8:何かクールなこと
この時点で、デザイン・チームはミンスクをプレインズウォーカーにすることにした。ミンスクは『フォーゴトン・レルム探訪』で伝説のクリーチャーであって、他のプレインズウォーカーのように魔法使いというわけではなかったので、これには少し賛否両論があったが、彼はバルダーズ・ゲートに関係する最も人気のあるキャラクターの1人なので、チームは正しい選択だと判断したのだ。このバージョンを示したのは、どういう形になるかはわからなくてもその方法を考え始めてほしいというときにファイルに入れておくことがあるということを示したかったからである。このバージョンは、単に、デザインで作りたいものの最低限の構造だけを示している。
〈勇敢な相棒、ミンスクとブー〉(バージョン#9)
{2}{G}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ブー
初期忠誠度 ― 4
物語(この統率者は、統率領域に背景1つを置いた状態で開始できる。それの固有色をこの統率者に加える。)
+1:トランプルと速攻を持ち「ブー」という名前である赤の1/1の伝説のハムスター・クリーチャー・トークン1体を生成する。あなたがすでに「ブー」という名前のクリーチャーをコントロールしているなら、代わりに、それの上に+1/+1カウンター2個を置く。
-2:クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。ブーはそれに自身のパワーに等しい点数のダメージを与える。
-8:「ああなたがコントロールしていて「ブー」という名前であるすべてのクリーチャーは基本のパワーとタフネスが20/20になる。」を持つ紋章を得る。
[カード名]は統率者として使用できる。
これはその前のバージョンで示された構造に基づいて能力を埋めた最初のバージョンである。このカードはブーを作らなければならないので、[+1]能力になった。[-2]能力は、ブーが他のクリーチャーにダメージを与える噛みつきになった。[-8]の奥義は[-2]能力とコンボするもので、ブーが本来の姿である巨大宇宙ハムスターになれるのだ。なお、物語、背景の原形はこのカードに残っている。ミンスクは単色で統率者として使える。そして単色の統率者は物語能力を持っていたのだ。最後に、私の中の言葉師は、この「derring-duo」という二つ名は「英雄的な勇気を見せる」という意味の古い言い回し「derring-do」をもじったものだと指摘したがっている。ミンスクでなくブーをプレインズウォーカーにしたのは、ブーのほうが強いからである。
〈勇敢な相棒、ミンスクとブー〉(バージョン#10)
{2}{G}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ブー
初期忠誠度 ― 4
物語(この統率者は、統率領域に背景1つを置いた状態で開始できる。それの固有色をこの統率者に加える。)
各アップキープの開始時に、あなたが「ブー」という名前のクリーチャーをコントロールしていない場合、トランプルと速攻を持ち「ブー」という名前の赤の1/1のハムスター1体を生成する。
0:ブーの上に+1/+1カウンター1個を置き、その後、[カード名]の上にブーのパワーに等しい数の忠誠カウンターを置く。
-X:ターン終了時まで、あなたがコントロールしているすべてのクリーチャーの基本のパワーとタフネスはX/Xになる。
[カード名]は統率者として使用できる。
誘発型能力で新しいブー・クリーチャー・トークンを生成し続けることができるようになった最初のバージョンである。[0]の忠誠度能力は実際はプラス能力で、ブーの大きさに比例する。また、忠誠度を得る速度を高めるためにもブーを強化することができる。誘発型能力と「統率者として使用できる」文章がそれぞれ場所を占め、プレインズウォーカー・カードには4つが最大なので、このカードの忠誠度能力は3つから2つに減っている。(これはカード枠の限界である。)
アート指示:
**** プレインズウォーカー ― 垂直アスペクト比 ***
環境:Pentagon
色:緑の伝説のプレインズウォーカー
場所:バルダーズ・ゲートの都市(p.63-67と添付資料参照)
行動:人間とハムスターの2人(ミンスクとブー)がいる。(添付資料参照)ミンスクが英雄的なポーズをとっていて、片腕を鷹匠のように掲げている。その腕に乗ったブーが後ろ足で立っていて、手前の方を注意深く見ている。ミンスクもブーも、悪に対する戦いに飛び込もうとしている! ブーに焦点を当てるため、ミンスクは普通のプレインズウォーカー・カードよりもいくらか見切れていてもよい。
焦点:ミンスクとブー
雰囲気:気のいいコンビ、ともに危険に臨もうとしている!
この時点で、アートが発注されている。今日、取り上げるカードのアート発注を紹介するのはきっと面白いだろう。キャラクターにはそれぞれ特徴的外見があるので、アート・ディレクターはアーティストに多くの添付資料を送っている。「Pentagon」はこのセットのコードネームだ。
〈勇敢な相棒、ミンスクとブー〉(バージョン#11)
{3}{R}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ブー
初期忠誠度 ― 4
[カード名]が戦場に出たとき、および、あなたのアップキープの開始時に、あなたがハムスターをコントロールしていない場合、トランプルと速攻を持ち「ブー」という名前である赤の1/1の伝説のハムスター・クリーチャー・トークン1体を生成する。
+2:クリーチャー最大1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンター1個を置く。ターン終了時まで、それは二段攻撃を得る。
0:クリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。そうしたとき、クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち1つを対象とする。[カード名]はそれにX点のダメージを与える。Xはそのクリーチャーのパワーに等しい。
-N:あなたがコントロールしているクリーチャーの中の最大のパワーの値に等しい枚数のカードを引く。
[カード名]は統率者として使用できる。
背景はクリーチャーを参照しており、能力の多くはプレインズウォーカーでは意味を成さないので、背景をプレインズウォーカーに持たせるのは問題があるとわかった。チームはすべてのプレインズウォーカーを多色にすることでこの問題を解決したので、ミンスクには赤が加えられた。これによって、ミンスクがよくブーを敵に投げつける挙動(「目を狙え、ブー!」)にふさわしい、クリーチャーを「投げ飛ばし」(クリーチャー1体を生け贄に捧げてそのパワーに等しい点数のダメージを与える)する能力を作ることができるようになった。最後の能力は、ブーを充分大きくすることができたときに大きな影響を生み出す方法である。
〈勇敢な相棒、ミンスクとブー〉(バージョン#12)
{4}{R}{G}
伝説のプレインズウォーカー ― ブー
初期忠誠度 ― 5
[カード名]が戦場に出たとき、および、あなたのアップキープの開始時に、あなたがハムスターをコントロールしていない場合、トランプルと速攻を持ち「ブー」という名前である赤の1/1の伝説のハムスター・クリーチャー・トークン1体を生成する。
+1:クリーチャー最大1体を対象とする。それの上に私の忠誠度に等しい数の+1/+1カウンターを置く。
-3:クリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。そうしたとき、クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち1つを対象とする。[カード名]はそれにX点のダメージを与え、あなたはカードX枚を引く。Xはそのクリーチャーのパワーに等しい。
[カード名]は統率者として使用できる。
これは、印刷版の直前となるミンスクとブーの反復工程である。チームが必要とした能力(ブーを作る、ブーを強化する、ブーを投げる)にこだわっているのがわかるだろう。ひたすら、正しい実装を探しているのだ。このカードの最終版では、ブーの上に置くカウンターの数を固定し、投げ飛ばすコストを減らし、カードのマナ総量と初期忠誠度を変更している。最後に、ブーは明らかにこれの生成するクリーチャー・トークンなので、プレインズウォーカー・タイプをミンスクに戻している。
《森の友、ジャヘイラ》
さて、いよいよジャヘイラがどうなったかを見る時間だ。
〈貪欲な者、カゲイン〉(バージョン#1)
{4}{G}
伝説のクリーチャー ― ドワーフ・戦士
4/4
技量(この統率者は追加の妙技1つを持った状態でゲームを始める。妙技はソーサリーとして加える。)このクリーチャーが攻撃するたび、あなたがコントロールしているすべての土地をアンタップする。
//妙技, {3}{G}// あなたがマナを引き出すために土地1つをタップするたび、{G}を加える。
今日の話のテーマは、最初から最後の姿のものはない、だ。このカードは、印刷に至らなかったカゲインというキャラクターとして始まった。このカードも、初期の技量/妙技能力を使っている。この妙技とクリーチャー本体の能力がコンボになっていることに注目してほしい。
〈貪欲な者、カゲイン〉(バージョン#2)
{2}{G}
伝説のクリーチャー ― ドワーフ・戦士
1/3
技量(この統率者は追加の妙技1つを持った状態でゲームを始める。妙技はソーサリーとして加える。)
土地1つがあなたのコントロール下で戦場に出るたび、宝物・トークン1つを生成する。
先のカードでも見た通り、妙技能力は伝説のクリーチャーからは取り除かれた。デザインは、土地が毎ターンではなく1度だけ1マナ追加で生み出す《春の鼓動》の亜種を試した。
〈貪欲な者、カゲイン〉(バージョン#3)
{2}{G}
伝説のクリーチャー ― ドワーフ・戦士
1/3
背景(ゲームを始めるに際し、あなたは背景1つとその色をこの統率者に加えてもよい。)
土地1つがあなたのコントロール下で戦場に出るたび、カード1枚を切削する。
あなたが土地・カード1枚を切削するたび、そのカードをあなたの手札に戻す。
次のこのバージョンでは、将来のマナを生み出すことで上陸の新しい形を試していた。おそらく、切削はテーマに基づいたものだろう。
〈ドルイドのハーパー、ジャヘイラ〉(バージョン#4)
{2}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・エルフ・ドルイド
3/3
物語(ゲームを始めるに際し、あなたは背景1つとその色をこの統率者に加えてもよい。このゲームでそれを開放するために、そのコストを支払う。)
あなたのアップキープの開始時に、カード1枚を切削する。
[カード名]が攻撃するたび、あなたの墓地にある土地・カード1枚を対象とする。それを戦場に戻す。
ここで、ジャヘイラはミンスクになったスロットから移動して印刷されることになるスロットにやってきた。動物への変身能力を扱うのをやめて、このバージョンではドルイドらしさを扱っている。このカードはカゲインがしていたことと同じようなメカニズムの穴を埋めている。(それが、彼女が元のスロットで変化するのではなくスロットを移動した主な理由である。)
アート指示:
環境:Pentagon
色:緑マナに関係する伝説のクリーチャー
場所:宿屋や酒場のサービス・カウンター
行動:強情なジャヘイラを描いてください。ジャヘイラは半黒/半白のハーフエルフのハーパー・ドルイドで、カウンターに座っていてカメラは肩越し、何の気なく触れたカウンターの木にピンクのアイリスの花を咲かせていて……。ハーパーについては添付資料を、ハーフエルフについてはZebraワールドガイドのpp.90を、ドルイドについてはpp.138-140を参照のこと。可能なら、彼女の服装には半月のモチーフ、ハーパーのシンボルには8角形のピン、ハーパーのケープには独特の装飾があって、ただしドルイドの資料に合ったハーパーの外見と色をしていて、独特の着こなしと装飾品で独特かつ伝説的な外見になっているように。
焦点:ジャヘイラ
雰囲気:強くて優しい英雄
注意:アート#425936のジャヘイラのもやと関連している。
完成品のアートは、このアート指示に非常に近いものになっている。ジャヘイラは2枚目のカードがあるので、それもアート指示で指摘されている。両方とも、描いたのはアーティストのミラ・ペシック/Mila Pesicである。
〈森の友、ジャヘイラ〉(バージョン#4)
{3}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・エルフ・ドルイド
3/5
あなたのアップキープの開始時に、あなたの墓地にある土地・カード1枚を対象とする。それを戦場に戻す。
背景選択(統率者のうち1枚がこの能力を持ちもう1枚が背景であるなら、あなたは統率者2枚を使ってもよい。)
ジャヘイラが土地とどう相互作用するかについて、デザイナーは調整を続けていた。印刷された最終版では、アンコモンからレアになり効果は少し大きくなっているが、基柱にしたいような良い統率者のデザインになっている。
《上品な灰色熊、ウィルソン》
次に、ウィルソンのデザインがどうなったかを見ていこう。
〈自然の爪、ファルドム〉(バージョン#1)
{2}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・ドルイド
4/4
防衛
技量(あなたは「あなたのデッキから妙技1枚を加え、その色をこの統率者に、加える。」を選んでもよい。)
//妙技, {4}{G}// クリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、あなたがコントロールしている土地最大1つを対象とする。それの上に+1/+1カウンター4個を置く。それは速攻と警戒と「このクリーチャーが死亡したとき、これをオーナーの手札に戻す。」を持つ0/0のクリーチャーになる。
ウィルソンのスロットも、最初は別のキャラクターで、これも技量/妙技を持っていた。アンコモンのクリーチャーだったので、基本の能力は持っていなかった。(厳密に言えば防衛を持っていたが、これは欠点である。)ただし、唱えることができればこの妙技は強力である。このデザインはかなりの部分で発動者(重い起動コストを持つ軽いクリーチャーのことを指すスラング)的に働いた。
〈自然の爪、ファルドム〉(バージョン#2)
{4}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・ドルイド
4/4
あなたのターンの戦闘の開始時に、あなたがコントロールしている土地最大1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンター4個を置く。それは速攻と「このクリーチャーが死亡したとき、これをタップ状態で戦場に戻す。」を持つ0/0のクリーチャーになる。
技量(あなたは「あなたのデッキから妙技1枚を加え、その色をこの統率者に加える。」を選んでもよい。)
//妙技, {2}{G}// あなたがコントロールしていて+1/+1カウンターが置かれているすべてのクリーチャーは警戒とトランプルを持つ。
このカードは神話レアになり、最初の妙技の効果はクリーチャー本体に移って新しい妙技を得ている。また、防衛がなくなった。神話レアになったことで、このカードのリミテッドへの影響が大きく減ることになり、少しばかり強化することができた。
〈自然の爪、ファルドム〉(バージョン#3)
{2}{G}
クリーチャー - 人間・ドルイド
2/2
[カード名]が攻撃するたび、あなたのライブラリーから基本土地・カード1枚を探し、タップ状態で戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
技量(あなたは「あなたのデッキから妙技1枚を加え、その色をこの統率者に、加える。」を選んでもよい。)
//妙技, {3}{G}// このクリーチャーのパワーとタフネスはそれぞれあなたがコントロールしている土地の数に等しい。
次のこのバージョンはドルイドらしさを保ちながら基本の能力も妙技の効果も変更になっている。
〈自然の爪、ファルドム〉(バージョン#4)
{2}{G}
クリーチャー - 人間・ドルイド
3/3
二倍技量(この統率者は追加の妙技2つを持った状態でゲームを始める。妙技はソーサリーとして加える。)
[カード名]が攻撃するたび、あなたがコントロールしている土地の数がこれのパワーよりも大きい場合、これの上に+1/+1カウンター1個を置く。これのパワーがあなたがコントロールしている土地の数よりも大きいなら、あなたのライブラリーから基本土地・カード1枚を探し、タップ状態で戦場に出し、その後、ライブラリーを切り直す。
この時点で、伝説のクリーチャーから妙技が取り除かれた。これは、先に見た、背景2つを持つことができるカードの元になっている。
〈喋る灰色熊、ウィルソン〉(バージョン#5)
{3}{G}
伝説のクリーチャー ― 熊・戦士
4/4
物語(ゲームを始めるに際し、あなたは背景1つとその色をこの統率者に加えてもよい。このゲームでそれを開放するために、そのコストを支払う。)
あなたはクリーチャーやエンチャントである呪文を、それが瞬速を持つかのように唱えてもよい。
[カード名]や、あなたが唱えてクリーチャーやエンチャントでありこれでない呪文は打ち消されない。
このカードは神話レアからレアになり、ミンスクのスロットを離れたウィルソンがやってきたところである。なぜウィルソンがクリーチャーやエンチャントを唱える前段になっているのかはわからない。おそらく、キャラクターとしてのウィルソンを登場させたくて、相応しいデザインを探していたのだろう。
〈喋る灰色熊、ウィルソン〉(バージョン#6)
{1}{G}
伝説のクリーチャー ― 熊・戦士
2/2
物語(この統率者は、統率領域に背景1つを置いた状態で開始できる。それの固有色をこの統率者に加える。)
[カード名]は2体以上のクリーチャーにはブロックされない。
[カード名]が攻撃するたび、クリーチャー1体を対象とする。「このターン、可能ならそれはこれをブロックする。」を選んでもよい。
次のこのバージョンは少しばかり熊らしくなり、能力は戦闘関連のものになっている。また、熊なのでマジック伝統の熊のパワー/タフネスである2/2であるべきだ、となった。
アート指示:
*** 通常のアスペクト比で、拡張アート・テンプレートの描画範囲 ***
環境:Pentagon
色:緑マナに関係する伝説のクリーチャー
場所:森の木立
行動:非常に有効的で知的で「おしゃべり」な灰色熊のウィルソンが小瓶に入った緑色の液体をファンシーな紅茶のカップのように口に近づけていて、一筋のピンクが広がっている。ウィルソンは見た限りごく普通の熊(擬人化したものではない)だが、非常に洗練された雰囲気。服は着ていない。
焦点:ウィルソン
雰囲気:「やあこんにちは! お茶はいかがですか?」
この時点で、ウィルソンが描かれている。アーティストはどう印刷するかに基づいて描く必要があるので、必ず比率が伝えられている。
〈喋る灰色熊、ウィルソン〉(バージョン#7)
{1}{G}
伝説のクリーチャー ― 熊・戦士
2/2
物語(この統率者は、統率領域に背景1つを置いた状態で開始できる。それの固有色をこの統率者に加える。)
この呪文は打ち消されない。
トランプル、警戒、到達、呪禁、速攻
ついに、このカードはレアからアンコモンになり、少しばかり単純化された。ほぼ単にいくつものクリーチャー能力を持たせただけである。印刷された版では呪禁と速攻がなくなり、護法{2}がついている。
本日のプレビュー・カード
いよいよ、本日のプレビュー・カードについての話をするときがやってきた。
〈注視の教示〉(バージョン#1)
{1}{B}
ソーサリー
あなたのライブラリーからマナ総量がX以下であるカード1枚を探し、公開し、あなたの手札に加える。その後、あなたのライブラリーを切り直す。Xはあなたのメガパーティーに参加しているクリーチャーの数に等しい。(あなたのメガパーティーとは、あなたがコントロールしていていてクリーチャー・タイプの組み合わせが重複しない望む数のクリーチャーのことである。)
このスロットは、黒のカードのスロットだった。最初はレアの教示者だったのだ。ここで、セットに入らなかったもう1つのメカニズム、メガパーティーがあるのがわかる。メガパーティーは、『ゼンディカーの夜明け』のパーティーを繰り返したものだが、D&Dではクラスは4つではなく12個あるので、能力を、種族と職業のクリーチャー・タイプの重複しない組み合わせを見るように調整した。つまり、このカードのメガパーティーは重複しないクリーチャー・タイプ2つ以上を持つすべてのクリーチャーを数えることになる。例えば、マーフォーク・ウィザード1体、ゴブリン・戦士2体、ゴブリン・シャーマン1体、海蛇1体がいる場合、メガパーティーの構成員数は3になる。(海蛇と2体目のゴブリン・戦士以外のすべてを数える。)
〈注視の教示〉(バージョン#2)
{B}
ソーサリー
あなたのライブラリーからマナ総量がX以下であるカード1枚を探し、公開し、あなたの手札に加える。その後、あなたのライブラリーを切り直す。Xはあなたがコントロールしていて重複しない職業を持つクリーチャーの数に等しい。
ここでこのカードは黒のレアから黒の神話レアになり、そのスロットは印刷に至るまで変わらなかった。メガパーティーは取り除かれ、そのかわりにデザイン・チームは自分が何種類のクリーチャー・タイプを持っているかを参照する効果を試した。先ほどと同じ、マーフォーク・ウィザード1体、ゴブリン・戦士2体、ゴブリン・シャーマン1体、海蛇1体の場合、クリーチャー・タイプは6種類になる。(ゴブリン、マーフォーク、海蛇、シャーマン、戦士、ウィザード)
〈邪術師の契約〉(バージョン#3)
{1}{B}{B}
エンチャント
[カード名]が戦場に出たとき、あなたはあなたのライフの端数を切り上げた半分を失う。[カード名]の上に、その点数に等しい数の血液カウンターを置く。
ここからファイルはセットデザインに移っていると思う。チームは黒の教示者を望まなかったので、別のデザインを実験し始めたのだ。諸君もこれが完成していないことに気づくだろう。このカードに、血液カウンターを得る方法はあるが、使う方法がないのだ。ここでこれを見せたのは、チームがそのスロットでやりたいことを示すためにデザイン中のものをファイルに入れることがあると見せたかったからである。このカードは、フレイバー的に邪術師の契約である何かでスロットを埋めたいと考えていたことを示しており、それは印刷に至るまで変わらなかった。
〈魔剣〉(バージョン#4)
{4}{B}{B}
アーティファクト ― 装備品
あなたはライフが0点以下であることではゲームに敗北しない。あなたがライフを得るなら、代わりに、その点数に等しい枚数のカードを引き、装備しているクリーチャーの上にその数の+1/+1カウンターを置く。装備しているクリーチャーは速攻と絆魂と「あなたの終了ステップの開始時に、このターンにこのクリーチャーが攻撃していないかぎり、あなたはゲームに敗北する。」を持つ。
装備― 4点のライフを支払う。
この魔剣は人気の邪術師の契約なので、チームは代償を伴う力をもたらすリッチ系装備品を作るというアイデアを採用した。そこから、チームは「死を生き残る」方法を与えてライフが0点になったときに死なないようにする1つ目の能力を盛り込んだ。このカードは負けるように、特定の行動(装備しているクリーチャーで毎ターン攻撃する)か死ぬかを強要するように作られている。
アート指示:
*** 拡張アートのテンプレート ***
環境:Pentagon
色:黒のアーティファクト
場所:指定なし
意図:邪術師の契約の刃で、その悪魔的支援者が邪術師に与えた武器。
行動:曲刀の形状をした邪術師の契約武器。独特で残虐なデザインで。邪術師の手の中で実体化して、闇の煙の渦が形を取った、一瞬の間に虚空から取り出せるものでもありうる。邪悪な紫の魔法の印章が、曲刀の刃で光っている。
焦点:契約武器
雰囲気:悪魔的支援者から与えられた無慈悲な贈り物
注意:このアートは2種類のアスペクト比で印刷されます。(1)標準のアスペクト比 (2)拡張マージン(添付のテンプレート参照)標準のアスペクト比で切り取れるように絵を組み立て、拡張マージンを、拡張アスペクト比で印刷されたカードで見えるイースターエッグとして追加の面白い詳細で埋めてください。
この時点で、カードにアートがついた。複数のアート指示を見て、どのように組み立てるかの構造(環境、色、意図、行動、焦点、雰囲気、注意)があることに気づくだろう。
〈魔剣〉(バージョン#5)
{4}{B}{B}
アーティファクト ― 装備品
[カード名]がクリーチャーについているかぎり、あなたはライフが0点以下であることではゲームに敗北しない。
あなたがライフを得るなら、代わりに、装備しているクリーチャーの上にその点数に等しい数の+1/+1カウンターを置く。装備しているクリーチャーが死亡するたび、あなたはカードX枚を引きX点のライフを失う。Xはそれのパワーに等しい。
装備― 4点のライフを支払う。
ライフが0点でもいいので残ることは、装備しているクリーチャーに関係している。チームは装備しているクリーチャーを成長するように、そしてプレイヤがライフと引き換えにカードを引けるようにしたいと考えた。ライフは通常以上にリソースになるという考えである。この最終直前のバージョンは理念的には最終版に近かったが、効果にはいくつかの調整が加えられている。
クリックして「契約武器」を表示
この最終版でも、ライフが0点で生き残る条件はそのままだが、後半は変わっている。このカードの能力は、カードを引いてそのマナ総量に等しい点数のライフを失う《闇の腹心》のものを採用している。また、そのマナ総量を用いて、そのターンそのクリーチャーがどれだけ大きくなるのかも決めている。装備しているクリーチャーを危険にさらさせたいので、《闇の腹心》と違い、これは攻撃誘発になっている。最後に、ライフの支払いだった装備コストは、カードを捨てることに変わっている。これによって、カードを得るために攻撃する必要性が高まるのだ。私はこのカードの最終形が気に入っている。
「物語の時間は終わり」
本日はここまで。いつもの通り、この記事や話題にしたカード、あるいは『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』について、諸君からの感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』のさらなるカード個別のデザインの話をする日にお会いしよう。
その日まで、あなたが強力な武器と闇の約定を結びますように。もちろん、そうしたいなら、だ。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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