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Making Magic -マジック開発秘話-
今ここにある『契り』 その1
2021年11月15日
セットごとに、私は何枚かのカードを見て、そのデザインの話をすることにしている。今週と来週で、『イニストラード:真紅の契り』にについてのその話をしていこう。
《招待制》
このカードはそれほど何度も変更はされなかったが、その数少ない変更は興味深いものだった。
〈這い寄る死〉(バージョン1)
{3}{W}{W}
ソーサリー
多重キッカー{1}{W}(あなたはこの呪文を唱えるに際し、追加で{1}{W}を望む回数支払ってもよい。)[カード名]がキッカーされた1回につきそれぞれ、クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは破壊不能を持つ。すべてのクリーチャーを破壊する。
そう、最初、このカードは、多重キッカーを持つ呪文だった。エリック・ラウアー/Erik Lauer(アダム・プロサック/Adam Prosakに引き継ぐまでの最初の数か月、このセットのセットデザインのリードを務めていた)は、余ったマナを使うための方法として多重キッカーを入れていたのだ。後にアダムは、イニストラードにはふさわしくないと感じて多重キッカーを取り除き、切除に入れ替えた。このデザインの最初のバージョンは非常に可愛らしいものだった。マナがある限りいくらでもクリーチャーを救い、そしてそれ以外を破壊することができた。
〈這い寄る死〉(バージョン2)
{3}{B}{B}
ソーサリー
多重キッカー{1}{B}(あなたはこの呪文を唱えるに際し、追加で{1}{B}を望む回数支払ってもよい。)クリーチャーX体を対象とする。ターン終了時まで、それらは破壊不能を得る。Xはこの呪文がキッカーされた回数に等しい。すべてのクリーチャーを破壊する。
その後、これは白のクリーチャー全体除去呪文らしい均衡感が足りなかったので、黒の呪文になった。(白の効果はすべてのクリーチャーを平等に扱う傾向がある。)
〈生け贄はなされなければならない〉(バージョン3)
{3}{W}{W}
ソーサリー
数1つを選ぶ。各プレイヤーはそれぞれ、その選ばれた数のクリーチャーを生け贄に捧げる。
多重キッカーが『イニストラード:真紅の契り』から除かれたとき、セットデザイン・チームは全体除去カードを白に戻した。このデザインは、全員を平等に扱っているように見えて実は自分を利するようになっているという、白の除去呪文らしさを賢く表現している。これと最終バージョンの間の違いは、選べる数を0から13の間に限ったことだけである。セットデザイン・チームはセットに13を増やしたいと考えており、ここではカードの機能をほとんど変えない方法で13を増やしている。
このカードについての質問に一言で答えておこう。1つ目、「0以上13以下の数」という場合、0と13を含むどの数字でも選ぶことができる。2つ目、白は通常、生け贄を強制することはないが、このカードのテンプレートはこの曲げを認めたことでずっと簡明になっている。
《勝負服纏い、チャンドラ》
チャンドラのプレインズウォーカー・カードをデザインしようとする上での課題の1つは、チャンドラに関連した能力(プレインズウォーカーにはそれぞれ一連の能力が決まっており、我々はそれに合った効果を選ぶのだ)を使いながら、『イニストラード:真紅の契り』までに16枚ある過去のバージョンと明らかに違うものにすることである。
〈闇の中の炎、チャンドラ〉(バージョン1)
{2}{R}{R}
伝説のプレインズウォーカー ― チャンドラ
忠誠度 ― 4
+1:カード最大2枚を捨て、それと等しい枚数のカードを引く。
-2:クリーチャー1体を対象とする。[カード名]はそれに3点のダメージを与える。このターン、そのクリーチャーが死亡するなら、代わりにそれを追放する。
-7:{R}13点を加える。あなたのライブラリーの一番上にあるカード13枚を追放する。このターン、あなたはそれらをプレイしてもよい。
この最初のバージョンでは、チャンドラではマイナスの能力として使われることが多い、カードを捨てて引くという効果をプラスの忠誠度能力として使っている。マイナスの能力はチャンドラの定番効果の直接ダメージで、今回は殺したものが戻されたり墓地のリソースとして使われたりしないよう、開発部語で言う「《分解》能力」(『アルファ版』の《分解》で初登場した)を使っている。これはイニストラードのセットでは特に有用である。彼女の奥義は、超衝動的ドローで、しかもその呪文を唱えるためのマナまで提供してくれるものだった。
〈闇の中の炎、チャンドラ〉(バージョン2)
{2}{R}{R}
伝説のプレインズウォーカー ― チャンドラ
忠誠度 ― 4
+1:{R}を加える。あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。このターン、あなたはそのカードをプレイしてもよい。
-2:クリーチャー1体を対象とする。[カード名]はそれに3点のダメージを与える。このターン、そのクリーチャーが死亡するなら、代わりにそれを追放する。
-8:{R}13点を加える。あなたのライブラリーの一番上にあるカード13枚を追放する。このターン、あなたはそれらのカードをプレイしてもよい。
次のこのバージョンでは、プラスの忠誠度能力を調整し、奥義の小型版にしている。
〈この日のためのドレス、チャンドラ〉(バージョン3)
{1}{R}{R}
伝説のプレインズウォーカー ― チャンドラ
忠誠度 ― 3
+1:{R}を加える。プレイヤーやプレインズウォーカーのうち1つを対象とする。[カード名]はそれに1点のダメージを与える。
+1:あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。それが赤であるなら、このターン、あなたはそれを唱えてもよい。
-7:あなたは「あなたが赤のカードを唱えるたび、プレイヤーやプレインズウォーカーのうち1つを対象とする。それにそのカードのコストに等しい点数のダメージを与える。」を持つ紋章を得て、その後、あなたのライブラリーの一番上にあるカード5枚を公開する。このターン、あなたはこれにより公開された望む数の赤の呪文を唱えてもよい。
次の工程で、セットデザイン・チームはこのカードにかなり手を加えた。1つ目に、小マイナスの能力を取り除いた。その後、もとのプラスの能力の2つの部分を広げて、それぞれ別のプラスの能力を作った。
1つ目のプラス能力にはマナ生成能力を残し、さらに小マイナス能力を取り除いたことでカードからなくなった直接ダメージを加えた。(紅蓮術師が直接ダメージを持たないということはありえないだろう。)
2つ目のプラス能力には衝動的ドローを残し、赤の制限を加えて構築環境でこのカードを使える範囲を狭くした。奥義は、よりチャンドラらしくなるように、そして2つ目の能力と関係するように、調整された。最終バージョンは、紋章はプレイヤーやプレインズウォーカーしか対象にできなかったのが、任意の対象を選べるようになるという調整がされただけの、これと近いものになっている。おそらくその変更はプレイデザインの手によるものだろう。
《悪魔の取り引き》
このカードにどんな変更がされたのかを振り返ってみて、私はその第1バージョンが印刷されたものと同じだったことに気づいて驚いた。しかし、セットデザイン・チームが《悪魔の取り引き》に落ち着くまでに、このスロットには興味深いデザインがあったので紹介しよう。
〈死を基に〉(バージョン1)
{B}{B}
エンチャント
瞬速
多重キッカー:2点のライフを支払う。
[カード名]が戦場に出た時、あなたのライブラリーの一番上にある、[カード名]がキッカーされている1回につき1枚のカードを追放する。あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を追放する。あなたのターンの間、あなたは[カード名]によって追放されているカード1枚を、それがあなたの手札にあるかのようにプレイしてもよい。あなたの終了ステップの開始時に、[カード名]によって追放されていたカードをこのターンにあなたがプレイしていなかった場合、あなたはこのゲームに敗北する。
このカードのスロットは 最初、多重キッカーを持つ「悪魔との取引」エンチャント(即時にボーナスを得られるが、後に非常に悪いことが起こる恐れがあるもの)だった。このカードには、ライフを支払ってカードを引くが深刻な不利益を伴う、《ネクロポーテンス》っぽさがいくらかある。
〈古きものの最蠢〉(バージョン2)
{1}{B}
エンチャント
[カード名]は、[カウンター名]カウンター1個が置かれた状態で戦場に出る。あなたの終了ステップの開始時に、あなたの墓地にあり点数で見たマナ・コストがこれの上にある[カウンター名]カウンターの個数に等しいクリーチャー・カード1枚を対象とする。それを戦場に戻す。そうしたなら、[カード名]の上に、[カウンター名]カウンター1個を置く。
その後、多重キッカーがセットから除かれたときに、このカードは変更された。新しいカードもエンチャントだが、リアニメイト・カードを基柱としたものである。うまくマナ総量をつなぐことができていれば、このカードはクリーチャーを毎ターンリアニメイトするという夢を見せてくれるのだ。
〈吸血鬼变化〉(バージョン3)
{3}{B}{B}{B}
エンチャント
[カード名]が戦場に出たとき、あなたのライフ総量に等しい数の血・トークンを生成する。あなたがコントロールしていないクリーチャー1体が死亡するたび、血・トークン1つを生成する。あなたがライフを失うなら、それに等しい数の血・トークンを生け贄に捧げる。そうできないなら、代わりにあなたはゲームに敗北する。
次に、セットデザイン・チームは「○○变化」を作ろうと試みた。
最初の「○○变化」は『スカージ』の《ドラゴン変化》だった。この呪文は、プレイヤー自身がドラゴンに変身することを描いていた。これが大人気だったので、我々は『Unhinged』でパロディとして《Form of the Squirrel》を作り、後に『イクサランの相克』では《恐竜変化》を作ったのだ。『イニストラード:真紅の契り』は吸血鬼のセットだったので、当然、「吸血鬼变化」になる。最初のバージョンは、実質的に、ライフ総量を血の総量に変えるというものだった。クリーチャーを殺せば血を増やせるが、ダメージを受けると血を失うのだ。
〈吸血鬼变化〉(バージョン4)
{2}{B}{B}{B}
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、血・トークン1つを生け贄に捧げる。そうできないなら、あなたはゲームに敗北する。
あなたの終了ステップの開始時に、クリーチャーやプレインズウォーカーやプレイヤーのうち1つを対象とする。[カード名]はそれに3点のダメージを与え、あなたは3点のライフを得る。
プレイテストを経て、彼らは新しいバージョンを試すことに決めた。このバージョンは、もとの《ドラゴン変化》にかなり似せられていて、対象を「エサ」にして3点のライフを得る。このバージョンでも、残すために血・トークンを必要とするという形で血とのつながりは保たれていた。最初のバージョンと違い、このカードは血・トークンを生成することはできないので、これをデッキに入れるには血・トークンを生成できるカードと組み合わせなければならない。
〈吸血鬼变化〉(バージョン5)
{1}{B}{B}{B}
エンチャント
あなたの終了ステップの開始時に、あなたは血1つを生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、あなたがコントロールしている各吸血鬼の上にそれぞれ+1/+1カウンター1個を置き、あなたはカード1枚を引く。そうしないなら、[カード名]を変身させる。
プレイテストを重ねて、さらなる変化に繋がった。このバージョンは、さらに吸血鬼部族に寄せたものになっている。血・カウンターを使って自軍のすべての吸血鬼を強化できるのだ。このカードの第2面が何だったのかは見つけられなかった。このカードは血を与え続けなければならないようなので、第2面は何か悪いものなのだろう。最終的に、セットデザイン・チームはこれらの〈吸血鬼变化〉のどれにも満足せず、結局《悪魔の取り引き》に置き換えたのだった。
《魅せられた花婿、エドガー》//《エドガー・マルコフの棺》
次は、このセットの花婿、ソリンの祖父にしてイニストラード最初の吸血鬼であるエドガー・マルコフの出番だ。
彼が前回カード化されたときは白黒赤だったが、『イニストラード:真紅の契り』には2色の金色カードしか存在しない。そこで、彼の花嫁のオリヴィアが黒赤なことから、エドガーを白黒にすることにした。(このセットにはもう1人の伝説の吸血鬼がいて、赤白の《血に呪われた者、オドリック》である。)
〈エドガー・マルコフ〉(バージョン1)
{3}{W}{B}
伝説のクリーチャー ― 吸血鬼
4/4
あなたがコントロールしていてこれでないすべてのクリーチャーは、+2/+2の修整を受け絆魂を持つ。[カード名]が死亡したとき、これを変身した状態で戦場に戻す。
>〈マルコフの棺〉
///
〈マルコフの棺〉
伝説のアーティファクト
あなたがコントロールしているクリーチャー3体をタップする:[カード名]の上に[リアニメイトした]カウンター1個を置く。
[カード名]の上から[リアニメイトした]カウンター3個を取り除く:[カード名]を変身させる。
>〈エドガー・マルコフ〉
このデザインは、印刷までそのまま残った基本コンセプトから始まっている。エドガーは第1面が自軍のクリーチャーを助ける伝説のクリーチャーで、死亡したらとき変身して、エドガーとして復活する手段を持つ第2面の棺になるのだ。
最初のバージョンはもう少し重く、自軍のすべてのクリーチャーを強化してキーワードである絆魂を与えるというものだった。この第1バージョンでは、第2面はエドガーを復活させる以外の用途はなかった。必要とするリソースはクリーチャーをタップすることなので、このカードは主にトークンを使う並べる戦略向けになっていた。
〈吸血鬼、エドガー・マルコフ〉(バージョン1)
{3}{W}{B}
伝説のクリーチャー ― 吸血鬼
3/3
[カード名]が戦場に出たか攻撃したとき、あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは絆魂と接死を得る。[カード名]が死亡したとき、これを変身した状態で戦場に戻す。
>〈マルコフの棺〉
///
〈マルコフの棺〉
伝説のアーティファクト
あなたがコントロールしているクリーチャー3体をタップする:[カード名]の上に覚醒カウンター1個を置く。
[カード名]の上から覚醒カウンター3個を取り除く:[カード名]を変身させる。
>〈吸血鬼、エドガー・マルコフ〉
この第2バージョンは軽くなり、少し小さくなり、自軍のクリーチャーを強化する能力はなくなったが能力2つを与えるようになった。このバージョンではエドガーが攻撃する必要があるが、これはおそらく死亡する回数を増やし、第2面を使う必要性を高めるためだろう。第2面は同じままだが、カウンターに異なる名前がついた。
〈花婿、エドガー・マルコフ〉(バージョン3)
{2}{W}{B}
4/4
あなたがコントロールしていてこれでない各クリーチャーはそれぞれ+1/+0の修整を受ける。それが吸血鬼であるなら、代わりに+2/+0の修整を受ける。
花婿、エドガー・マルコフが死亡するたび、これをオーナーのコントロール下で変身した状態で戦場に戻す。
>〈マルコフの棺〉
///
〈マルコフの棺〉
伝説のアーティファクト
あなたがコントロールしているアンタップ状態のクリーチャー2体をタップする:[カード名]の上に覚醒カウンター1個を置く。
[カード名]の上からすべての覚醒カウンターを取り除く:[カード名]を変身させる。[カード名]の上に2個以上の覚醒カウンターがなければ起動できない。
>〈花婿、エドガー・マルコフ〉
次のこのバージョンは、吸血鬼を助けるカードとしてデザインされている。結局のところ、エドガーは吸血の王の類であり、彼の最新のカードは吸血鬼部族を扱っていた。つまり、エドガーのカードにプレイヤーが望んでいるであろうものを提供すべきだと考えた。このカードは、自軍のすべてのクリーチャーも強化するが、吸血鬼はもっと強化するのだ。第2面は、クリーチャー3体をタップしていたのが、クリーチャー2体をタップしてカウンターを置くようになり、戻す能力の起動コストが増えている。
〈花婿、エドガー・マルコフ〉(バージョン4)
{2}{W}{B}
4/4
あなたがコントロールしていてこれでないすべてのクリーチャーは+0/+1の修整を受ける。あなたがコントロールしていてこれでないすべての吸血鬼は+1/+0の修整を受ける。
花婿、エドガー・マルコフが死亡したとき、これをオーナーのコントロール下で変身した状態で戦場に戻す。
>〈マルコフの棺〉
///
〈マルコフの棺〉
伝説のアーティファクト
あなたのアップキープの開始時に、絆魂を持つ黒白の1/1の吸血鬼・クリーチャー・トークン1体を生成する。その後、あなたがコントロールしている吸血鬼3体を生け贄に捧げてもよい。そうしたなら、[カード名]を変身させる。
>〈花婿、エドガー・マルコフ〉
すべての吸血鬼に+2/+0はやりすぎだったということで、基本の能力が+1/+0から+0/+1になった。セットデザイン・チームは、このカードの第2面にただエドガーを復活させるだけでなく何か用途を持たせようと考え、絆魂を持つ1/1の吸血鬼・トークンを生成するようにした。変身コストとして、吸血鬼を3体生け贄に捧げることが必要だった。これは、過去のバージョンの「エドガーを復活させるのに3ターン必要」と一致している。
最終バージョンはこのバージョンとそう離れていないが、2か所重要な変更があった。1つ目に、第1面は自軍のすべてのクリーチャーを強化するのをやめ、自軍の吸血鬼に+1/+1するだけに簡略化された。2つ目に、第2面は吸血鬼を生け贄に捧げさせるのをやめ、毎ターン、トークンを生成するときに血統カウンター1個を得るようにした。これによって、第2面もさらに有益に感じられるようになったのだ。
《雑食するもの、グロルナク》
ところで、『イニストラード:真紅の契り』には伝説のカエルがいる。なぜそんなことになったのか。これから見ていこう。
〈ジュビ〉(バージョン1)
{2}{G}{U}
伝説のクリーチャー ― 人間・ウィザード
2/4
{T}:{G}{U}を加える。
あなたがクリーチャーでない呪文を唱えるたび、カード2枚を引く。その呪文のキッカー・コストを支払わないかぎり、あなたはクリーチャーでない呪文を唱えることはできない。
一番最初から、ここは緑青の伝説のクリーチャーのスロットだった。最初のバージョンは多重キッカー・テーマに関したものだった。可能な限り多くの多重キッカー呪文(広いフォーマットではキッカー呪文も)をプレイすることを推奨する、基柱レアだったのだ。
〈千年蛙〉(バージョン2)
{2}{G}{U}
伝説のクリーチャー ― カエル
3/3
瞬速
[カード名]が戦場に出たとき、あなたの墓地にあるカード1枚を対象とする。あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。
セットがアダムに引き継がれてすぐに、彼は2つ大胆な決定をした。1つ目が、多重キッカー呪文を排除すること。そして2つ目が、このスロットを伝説のカエルにすることである。最初のカエルのバージョンは、(両方の色である)瞬速と、「入場」効果としてカード1枚を《新たな芽吹き》する効果を持っていた。このバージョンは少しばかり単純で、緑単色でもできるようなものだったので、セットデザイン・チームは新しいバージョンを作った。
〈潟湖を呑み込むもの〉(バージョン3)
{2}{G}{U}
伝説のクリーチャー ― カエル
3/3
[カード名]がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、その点数に等しい枚数のカードを切削する。
あなたのライブラリーからパーマネント・カード1枚があなたの墓地に置かれるたび、それを追放する。
あなたは[カード名]によって追放されているカードをプレイしてよい。
この時、チームは、楽しく基柱となる統率者として作用するカードを作ろうとしていた。そしてこれに、後で唱えられるようにするために自分のライブラリーからカードを取り除く方法を与えたのだ。印刷されたバージョンはほとんどこの最終バージョンのままだが、2つ大きな変更点がある。
1つ目が、切削を(戦闘ダメージを参照する)サボタージュ能力から攻撃誘発に変え、カエルを参照することでカエル部族のために使えるようにしたことである。グロルナクもカエルなので、デッキに《雑食するもの、グロルナク》しかカエルがいなくても作用する。
2つ目が、《雑食するもの、グロルナク》が追放したカードがどれかわかるように、初登場の蛙声カウンターを置くようにしたことである。
《結ばれた者、ハラナとアレイナ》
ハラナとアレイナは、初代『イニストラード』ブロックのフレイバー・テキストで初登場していた。フレイバー・テキストの作業時期的に、フレイバー・テキスト工程で彼らが創造されるより前にデザインは終わっていたので、彼らはそのセットではカード化されなかったのだ。後に、『統率者レジェンズ』で、この2人を共闘を持つ別々のクリーチャー・カードとして作った。
再びイニストラードを訪れるので、この2人を1枚に入れた初のカードを作るのはクールだと考えたのだ。
〈ハル&アレイナ〉(バージョン1)
{2}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間
3/4
これでないクリーチャー1体があなたのコントロール下で戦場に出るたび、それのパワーに等しい点数の{C}を加える。この能力は各ターン1回しか誘発しない。
{X},{T}:クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1体を対象とする。[カード名]はそれにX点のダメージを与える。
この最初のバージョンはマナを生み出し、クリーチャーやプレインズウォーカーにダメージを与えるものだった。最終的にマナ能力はやりすぎで、戦闘意欲で知られる彼らのキャラクターにもふさわしく感じられなかった。複数回使用可能な直接ダメージも、少しばかりやりすぎだと思われた。
〈ケッシグの斥候、ハル&アレイナ〉(バージョン2)
{2}{R}{G}
伝説のクリーチャー ― 人間・スカウト
2/2
到達
あなたのターンの戦闘の開始時に、あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とする。それの上に+1/+1カウンターX個を置く。Xは[カード名]のパワーに等しい。ターン終了時まで、そのクリーチャーは速攻を得る。
次のこのバージョンは、到達と、クリーチャーを永続的に強化する手段を持っていた。もともとは自身を強化することができたが、プレイテストの結果、このカードですることがすべてそれだったので、セットデザインはこれでないクリーチャーを強化するように変更したのだ。その後、このカードは1マナ軽くなり、先制攻撃がつき、キャラクター性に合わせて戦闘で有利になるようにタフネスが1点上がった。
「血を見るに違いない」
今日の『イニストラード:真紅の契り』の話は以上となる。いつもの通り、この記事全体、取り上げた各カード、そして『イニストラード:真紅の契り』そのものについて、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、さらなる『イニストラード:真紅の契り』のカード個別のデザインの話をする日にお会いしよう。
その日まで、あなたのすべてのマジックのゲームにプラスワンが訪れますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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