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Making Magic -マジック開発秘話-
『狩り』は楽し その2
2021年9月6日
先週、『イニストラード:真夜中の狩り』が狼男らしさをメカニズム的に再現した方法について語った。今回は、このセットのそれ以外のあらゆるメカニズム的側面について語り、展望デザイン・チームとセットデザイン・チームを紹介しよう。さらに、この記事の終わりまでに、ゾンビ・ファンの諸君のためのクールで新しいプレビュー・カードも準備してある。
怪物軍団
私は、デザイン・チームの紹介をチーム・リードにしてもらっている。まずは、イーサン・フライシャー/Ethan Fleischerによる『イニストラード:真夜中の狩り』の展望デザイン・チームの紹介だ。
クリックで展望デザイン・チームを表示
次はイアン・デューク/Ian Dukeによるセットデザイン・チームの紹介だ。
クリックでセットデザイン・チームを表示
怪物を作る
人狼がこのセットの焦点ではあるが、このセットはイニストラードなので、他の4種類の重要なクリーチャー・タイプも大切にしなければならない。
ゾンビ
イニストラードのゾンビをデザインする上での課題の1つが、ポップカルチャーのゾンビらしさを再現することである。映画やドラマでは、ゾンビは単体ではそう恐ろしいものではない。そう素早くもなく、そう賢くもない。事前に準備していて殺し方を知っていれば、ゾンビ単体に対処するのは難しくないのだ。ゾンビが恐ろしいのは、単体ではないからである。出会った1体目の後ろには必ずゾンビの群れがおり、戦える以上の数で圧倒してくるのだ。イニストラードのセットで、我々は常々この雰囲気、致命的になる軍団を再現しようとしている。
『イニストラード:真紅の契り』の展望デザイン中に、我々はこの雰囲気を再現するために使えるそれ以外のリソースを探すことにした。常に2/2の黒のゾンビであるゾンビ・クリーチャー・トークンに目をつけ、これの新しい使い方がないか考えたのだ。初代『イニストラード』で私が好きなゾンビ・カードは、対戦相手を圧倒する大量のゾンビ・クリーチャー・トークンを入手できるようにするものだが、それは低いレアリティで簡単にできるようなものではない。ソンビの軍団を、コモンやアンコモンで作る方法はないだろうか。これは解決すべき問題だった。
我々はまず、低レアリティにゾンビ・クリーチャー・トークン生成カードを単純に増やすことができるかどうか考えた。おまけとしてゾンビを生成する呪文、つまり、ゾンビ・クリーチャー・トークンと一緒に出てくるクリーチャーや、効果に加えてゾンビを生成するインスタントやソーサリーはどうだろうか。問題は、(初代『イニストラード』よりずっと前から)ゾンビを2/2のクリーチャー・トークンに決めていることで、これをつけるなら呪文のマナ・コストを大きく上げる必要があったのだ。このとき、新奇なアイデアがひらめいたのだ。ゾンビ・トークンに何か欠点をつけて、呪文のおまけにできるようにするのはどうだろうか。
トークン生成の最大の問題は、盤面の動きを悪くし、対戦相手のクリーチャーが攻撃できなくすることである。それなら「~ではブロックできない」をつけよう。試してみたが、まだ強すぎた。次に、どのようなプレイパターンが望ましいか自問したところ、ゆっくりとゾンビの軍団が膨れ上がり、その軍団で攻撃することでゲームに勝つのが望ましいと考えられた。それこそが再現したいフレイバーだった。そこから、「これが攻撃したとき、戦闘終了時に、これを生け贄に捧げる。」という欠点が生まれた。ゾンビ・トークンは基本的にそれぞれ1回しか攻撃できないのだ。使うべき時期が来るまで、温存する必要がある。プレイテストの結果、軍団になることもあるが通せる機会を探すこともあるということがわかった。こうなると、体繊維あてはソンビ・クリーチャー・トークンを潜在的な脅威として使う必要がある。
開発中に、この能力は腐乱というキーワードになった。不利益になるメカニズムは歴史的に不人気なものだとわかっているので、言うのは簡単な、通常より大きく弱体化したクリーチャー・トークンに私がこれほど興奮しているのはなぜか。それは、ずっと軽いコストで提供できて、非常に興味深い新しいプレイパターンを生み出すことができるからである。チームの大半は最初懐疑的だったが、プレイしてみると、その芳醇さと一見しただけではわかりにくいインパクトに誰もが惚れ込んだのだ。最終的に開発部では好評になり、実際、『イニストラード:真夜中の狩り』のセットデザイン・チームはこのメカニズムを推し進めることにしたのだった。(将来のデザイン・チームには新しいメカニズムを探す時間があるので、セットデザイン・チームは将来のメカニズムを必要に応じて使うことができるのだ。)このセットのゾンビ・クリーチャー・トークンはどれも腐乱を持っている。このメカニズムは一見したときには懐疑心を引き起こすかもしれないが、プレイしてみるといい。
次に進む前に、今日のプレビュー・カードは腐乱を使ったものである。クリックして、《穢れた敵対者》をご覧あれ。
《穢れた敵対者》はクリーチャーの神話レア・サイクルの一部で、それらはそれぞれキーワード1つと、マナを支払って自身に+1/+1カウンターを置き、色に合った他の効果を発揮する入場誘発を持つ。
スピリット
2週前、私は初代『イニストラード』のデザイン提出文書を公開し、その記事の中で、スピリットにはもっとメカニズム的独自性があるべきだと感じたと書いていた。『イニストラード:真夜中の狩り』は、この問題に苦しんでいない。実際、スピリットには新しいメカニズムが与えられている。それがどのように作られたのか、説明しよう。
変身する両面カード(TDFC)の最高の使い方を探していて、変身を表す使い方の別の側面を掘り下げていた。この掘り下げの中で、5つの主要なクリーチャー・タイプそれぞれについて、フレイバー的にもっともふさわしい変身の種類を考えていた。スピリットについては、最初はスピリットではない、というものが秀逸だった。ある時点では生きていて、死亡したらスピリットになるのだ。これはクールな変身だ。最初のバージョンでは、変身した状態で戦場に戻ってくる死亡誘発を持つクリーチャーだった。その後、クリーチャーが死亡して他のクリーチャーになるのは強いとわかったので、最終的に一見非常に弱いカードを作ることになった。このとき、我々は『アモンケット』ブロックの、1枚のカードをまず手札から呪文として、その後自分の墓地から別の呪文として唱える、余波メカニズムを思い出したのだ。余波とフラッシュバックを組み合わせて、手札からクリーチャーとして、また墓地からスピリットである別のクリーチャーとして唱えられるカードにしたらどうだろうか。
ここから生まれたのが、墓地から唱えて変身した状態で戦場に出すという降霊メカニズムである。これは上述の変身を再現しようとしたスピリットのメカニズムなので、第1面は必ず生きたクリーチャーで、通常は人間である。そして第2面は必ずスピリットである。こうして、何かが死んでスピリットとして戻ってくるというフレイバーが得られるのだ。このフレイバーは素晴らしく、こうしてTDFCの新しい使い方が生まれた。ここであと2つのことについて触れておきたい。1つ目、このセットのすべてのスピリットが降霊を持つわけではない。2つ目、展望デザイン・チームはスピリットのために別のメカニズムを作ったが、『イニストラード:真夜中の狩り』が腐乱ゾンビ・クリーチャー・トークンを『イニストラード:真紅の契り』から採用したことでそのスピリットのメカニズムを代わりに渡したのだ。(それぞれ、もう一方のセットでのほうがメカニズム的にふさわしかったので。)そのスピリットのメカニズムについては、『イニストラード:真紅の契り』のプレビュー記事で紹介することになるだろう。
人間
ほとんどの場合、イニストラードの人間にとって状況がうまくいくことはない。奇妙なことに、怪物に囲まれているというのはもっとも安全とは言えないのだ。人間の中には怪物(今回の物語で言えば人狼)から身を守るために怪しげな術に手を染めるものもいて、我々はそのフレイバーを再現するメカニズムを探す必要があった。怪しげな術のために、人間は収穫祭と呼ばれるイベントに集まっていた。
初代『イニストラード』以来、人間の最大の長所は、協力する意志と適応能力の2つである。我々は怪しげな術のメカニズムがこれら両方を使えるものにしたいと考えていた。我々が試した最初のバージョンは、呪文を強化するためにクリーチャー3体をタップできるというキッカー型のメカニズムだった。結局、クリーチャーをタップするのはコストとして重すぎたので、我々はこの問題に他の角度から取り組むことにした。ただ単に、クリーチャー3体が必要という、『ミラディンの傷跡』の金属術(アーティファクト3つを必要とするしきい値メカニズム)のクリーチャー版にするのはどうだろうか。今度はあまりにも簡単すぎた。何か共通のものを持つクリーチャー3体が必要とするのはどうだろうか。
同じクリーチャー・タイプを持つというのはどうか。すでに人間のメカニズムなので、それでは不十分だ。
同じマナ総量を持つというのはどうか。マナ総量を参照するのは奇妙で、特にフレイバーに富んでいるとも言えない。
同じパワーを持つというのはどうか。これは多少面白そうだったが、1/1クリーチャー・トークンで簡単に達成できてしまう。
このとき、デザイン・チームは条件を逆にすることを決断した。同じパワーを持つのではなく、異なるパワーを持つクリーチャー3体が必要というのはどうだろうか。これは少しばかり複雑な条件であり、簡単すぎることもないが達成できないと言うほど難しいものではない。こうしてこの能力は集会と呼ばれることになった。これを持つのはほとんどがクリーチャーだが、他のカード・タイプでも持つことができる。(クリーチャーであれば必要な3体のうち1体になりうるので、クリーチャーでない呪文のほうが強化は少し大きくなる。)
吸血鬼
『イニストラード:真紅の契り』が吸血鬼のセットであり『イニストラード:真夜中の狩り』は人狼のセットなので、このセット内の部族の中で、一番配慮しなかった部族が吸血鬼である。次のセットには吸血鬼ファンのためのいいものが大量に入ることになる。『イニストラード:真夜中の狩り』でも、吸血鬼はドラフトのアーキタイプや構築デッキのテーマになっているので、名前のあるメカニズムではないが、メカニズム的特徴は存在させる必要があった。そうして選んだのがテーマである。吸血鬼の多くは、あなたのターン中に対戦相手がライフを失っていたことを参照して誘発する能力を持っている。黒や赤が得意なようにクリーチャーや呪文でダメージを与えることでも誘発するので、他のセットの吸血鬼ともうまく噛み合う。
デビル
『イニストラード』は、複数のデビルが入っていた初めてのセットだった。『イニストラード:真夜中の狩り』にはデビル・カードが2枚、デビル・トークンを生成するカードが1枚ある。(もちろん、死亡したときに任意の対象に1点のダメージを与える1/1クリーチャーだ。)
それ以外
世界を3回目に訪れる場合、期待されるものが存在していて、デザイン・チームはその期待に可能な限り答えるために尽力することになる。『イニストラード:真夜中の狩り』で再登場したものをいくつか紹介しよう。
フラッシュバック
初登場は『オデッセイ』だったが、フラッシュバックは初代『イニストラード』の成功の大きな部分を占めていた。前回の再訪ではフラッシュバックを採用しなかったが、今回はすべきだと判断したのだ。(そのため、『ストリクスヘイヴン』には採用されなかった。)新しいフラッシュバックのカードがたくさん存在している。
呪い
『イニストラード』で、プレイヤーをエンチャントして不利な能力を与える、呪いが初登場した。『イニストラード:真夜中の狩り』には4枚の新しい呪いが登場している。
変身
変身する両面カードは、イニストラードのセットの必需品(ああ、『アヴァシンの帰還』は除く)だ。そのため、もちろん『イニストラード:真夜中の狩り』にも多数存在している。実際、『イニストラード:真夜中の狩り』のブースターのうち必ず2枚はTDFCである。そして、そのほとんどは日暮/夜明や降霊を持っているが、他の形で変身するカードも十分存在している。
墓地
ゴシックホラーの次元で、墓地を使わないなどということがあり得るだろうか。イニストラードへの過去の訪問でも必需品であったし、今回も例外ではない。(墓地で働くメカニズムである)フラッシュバックと降霊に加えて、他にも墓地をいろいろな形で参照する個別のカードが多数存在している。
調査
調査(と手掛かり)は『イニストラードを覆う影』で初登場した人気のメカニズムなので、新カード5枚を入れた。
13
13は、不吉だと信じられている数なので、イニストラードのセットではルール文中の数字として好んで使われている。13という数字を参照しているカードは3枚ある。
『狩り』は今始まったばかり
以上が、『イニストラード:真夜中の狩り』の、人狼に関連しないすべてである。いつもの通り、今日の記事やこのセット全体に関する諸君の感想を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『イニストラード:真夜中の狩り』のカード個別のデザインの話をする日にお会いしよう。
その日まで、あなたが一番楽しめるイニストラードの要素が見つけられますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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