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Making Magic -マジック開発秘話-
『モダンホライゾン』にて その1
2021年6月7日
今回は『モダンホライゾン2』のカード個別のデザインの話2部作のその1だ。『モダンホライゾン』セットはほとんどのセットよりも濃く郷愁を含んでいるので、語るべきことも多くなる。早速はじめよう。
《前駆軟泥、エーヴ》
昨年、コピーの挙動についてのルールを変更した。パーマネントをコピーしたなら、そのパーマネントのコピーであるトークンを生成することになる。この変更によってそれまで作れなかったカードを作ることができるようになり、これはそのようなカードの一例である。
『スカージ』当時、ブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanは1ターン内に大量の呪文をプレイすることを推奨するメカニズムを作りたいと考えた。そうすることの見返りとして得られるのは、そのターン中にそれまでに唱えた呪文の数だけその呪文をコピーするということだった。このメカニズムはストームと呼ばれ、そして、マジック史を知る諸君はご存知の通り、非常に強力だと証明された。(あまりにも強力だったので、スタンダードへの再録がどれほど難しいかを示す指標として私はその名前を使っている。)
アーロン/Aaron率いるセットデザイン・チームは、ストームというメカニズムを主軸にしてアーキタイプ(赤緑)を作ることに決め、そのためそれまでマジックではやってこなかったことが可能になった。ストームを持つクリーチャーである。(『未来予知』の《嵐の精体》はそうしようという気高い試みだったと言えるだろう。)
そのためには、「a) 持つのは伝説のクリーチャーにする」「b) そのクリーチャーを、複数に分裂することで知られるウーズにする」、の2つが必要だと考えられた。この2つの条件を満たした上で妥当な方法は、主軸にしてデッキを組めるような、ウーズを強化するカードにすることだけだろう。これらすべてを成立させるための鍵は、コピーそのものは伝説ではありえないということに気づくことだった。
《ゴイフの祭壇》
突然だがここで、諸君の多くがはじめてこのカードを見たときに思ったであろう質問に答えよう。「部族・クリーチャー・タイプは復活したのか?」 理論上は、そうだ。だが、現実的には、そうではない。たしかにこのカードは部族を持っているので、そういう意味では復活した。しかしこれは特例であり、これを定期的に使うようになるということを示しているわけではない。『モダンホライゾン2』は、複雑さが高く郷愁に富んだセットなのだ。止めた内容に軽く触れられるような場所があるとすれば、それはここである。
《ゴイフの祭壇》が部族・クリーチャー・タイプを持っている理由は、昂揚アーキタイプがあり、アンコモンの部族・カードを作ることがその助けになるからである。このカードはまた、フレイバー的に非常に《ルアゴイフ》なので、「部族 ― ルアゴイフ」を持たせることはフレイバー的に意味をなすのだ。また、これをクリーチャー化したら、これはこれ自身にトランプルを与えるという面白い仕掛けもある。
ここで強調しておきたいのは、それを受け入れる妥当なユーザーがいる妥当なセットでは非常に限られた状況では部族を使うことがあるけれども、これは部族というカード・タイプが大規模な復活を遂げる兆しなどではないということである。
《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》と《地獄料理書》
『アルファ版』にはこんなカードがあった。
メカニズム的には、このカードはそれほど注意を惹くものではなかった。リミテッドが重要でなかった当時に、リミテッドならいいといえるようなクリーチャーである。しかしながら、このフレイバーはかなりの注目を集めた。
シェフがエキゾチックでファンタジーなクリーチャーを調理する手順を書いた料理書という発想は、素敵なコンセプトだったが、もっとも目を引いていたのはその料理人の名前の長さだろうと考えた。とにかく長かったのだ。皮肉なことに、このキャラクターに関してプレイヤーたちが気に入っていたそのことが、長い間カード化を阻んでいた。見てのとおり、この名前とマナ・コストはタイトル行に入らないのだ。
アスモラノマルディカダイスティナカルダカールをカード化しようというアイデアは何度も出ていた。『時のらせん』のファイルに入っていたこともあったと記憶している。フレイバー的に愛されているキャラクターであり、マジックは郷愁を誘うような昔の伝説のクリーチャーを作るのが好きなのだ。常にあった問題は、その名前だった。我々はいくつかの回避方法を発明してきた。カード名を「地獄の料理人」にする、あるいは(残りの部分は文章欄に書いて)「アスモラノ~」にする。これは正しい実装ではないように思われた。
カード化しようというアイデアは初代『モダンホライゾン』のときにもあったと思うが、カードをどうデザインすればいいかわかっていなかったのだ。そして、『モダンホライゾン2』では解決策が見つかった。マナ・コストを入れなければいいのだ。マジックにはすでに唱えられないカードが存在しているのだから(このセットには唱えられないカードのサイクルまである)、その技術をここで使わない手はない。このアイデアを実行するための方法は、何度もの反復工程を経た。このカードの最初のバージョンはこうだった。
〈アスモラノマルディカダイスティナカルダカール〉
(マナ・コストなし)
伝説のクリーチャー ― 人間・ウィザード
{1}, クリーチャー1体を生け贄に捧げる:食物・トークン1つを生成する。あなたはこの能力を、戦場やあなたの墓地から起動できる。
あなたの手札や統率領域にある[カード名]をあなたの墓地に置く:青の1/1のビーブル・クリーチャー・トークン1体を生成する。
0/2
このバージョンは、直接戦場に出す手段がなかった(他のカードに頼っていた)。しかし、墓地に送る手段があり、墓地にあるときに1つ目の能力を起動することができるようになっていた。もちろん、料理人なので、このカードは食物・トークンを生成する。2つ目の能力は、青の1/1のビーブルを作るものである。ビーブル・トークンが選ばれたのは、『Unhinged』のカード《Saute》がルール文中でアスモラノマルディカダイスティナカルダカールを参照している3枚のうち1枚であり、このカードではビーブルのソテーを作っていたからだろう。
ルール文は次のバージョンでこうなった。
{B}{R}, [カード名]を捨てる:プレイヤーやプレインズウォーカーやプレイヤーの中から1つを対象とする。これはそれに2点のダメージを与え、あなたは2点のライフを失う。カード1枚を引く。
{1}, クリーチャー1体を生け贄に捧げる:食物・トークン1つを生成する。あなたはこの能力を、[カード名]が戦場にあるかあなたの墓地にあるときに起動してもよい。(食物・トークンは、「{2}, {T}, このアーティファクトを生け贄に捧げる:あなたは3点のライフを得る。」を持つアーティファクトである。)
この能力は、効果としてこのカードを捨てる方法を与えるが、今回は起動コストにマナを必要とし、1/1のビーブルを生成するのではなく2点吸収するようになっている。(訳注:テキストでは自分も2点失うことになっています。)生け贄能力は維持されているが、墓地から使えるということよりもこのカードを墓地に送る方法が先に書かれるようにするため、書かれる順番は2番目になっている。
その次。
マッドネス {B}{R}(あなたがこのカードを捨てるなら、あなたはこれを墓地に置く代わりにマッドネス・コストで唱えてもよい。
他のクリーチャー1体を生け贄に捧げる:食物・トークン1つを生成する。
{B/R}, カード1枚を捨てる:あなたの墓地にあるこのカードをからあなたの手札に戻す。
このバージョンではマッドネスが追加され、直接戦場に出す手段が与えられることになった。クリーチャー1体を生け贄に捧げて食物・トークンを出す能力は残っているが、起動コストのマナは必要なくなった。
最後の能力は新しいもので、このカードを墓地から手札に戻す方法である。おそらくこの能力は、黒赤のマッドネス・デッキ用にデザインされたもので、これがあなたの墓地にあるときにマッドネスの前段カードとして使えるようにするためのものだろう。また、このバージョンで、サイズが0/2から3/3に変わっている。
そして次の変更ではこうなった。
マッドネス{B/R}(あなたがこのカードを捨てるなら、これを追放領域に捨てる。そうしたとき、マッドネス・コストでこれを唱えるか、これをあなたの墓地に置く。)
{B}, カード1枚を捨てる:食物・トークン1つを生成する。
{R}, カード1枚を捨てる:あなたの墓地か統率領域にあるこのカードをあなたの手札に戻す。
このバージョンでは、黒と赤の両方のマナが必要だったマッドネス・コストが、混成マナを使ってそのどちらか一方があればいいようになった。デザイン・チームはその後、2つ目の2つの能力を調整し、それぞれが2色のうち1色に関係したものになっている。
クリーチャー1体を生け贄に捧げて食物・トークンを生成するのは、起動コストに黒マナを支払うのではなくカードを捨てることをコストとして持つようになった。これによって、地獄の料理人は戦場にいるときにマッドネスの前段として働くようになったのだ。追加された赤の起動コストは、この能力が統率領域でも働くように2つ目の能力を拡張するものである。『統率者』製品以外ではめったに統率領域を参照することはないが、このカードは明らかに統率者戦用にデザインされているので例外にしたのだろう。
そして、最終稿直前ののデザインはこうだ。
このターンにあなたがカードを捨てていたなら、あなたは{B/R}を支払うことでこの呪文を唱えてもよい。
地獄料理書との共闘(このクリーチャーが戦場に出たとき、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは「自分のライブラリーから地獄料理書を自分の手札に加え、ライブラリーを切り直す。」を選んでもよい。)
食物2つを生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。それを破壊する。
このバージョンでは複数の変更があった。まず、マッドネスからもっと一般的な能力に変えて、このカードが捨てられたときだけでなく、いずれかのカードが捨てられていたら唱えられるようにした。
2つ目に、デザイン・チームは地獄料理書そのものをカード化することに決めたので、メカニズム的な関連性を持たせた。そして、カードを捨てて食物を作るのは《地獄料理書》に移した。これによって、食物を作ることは《地獄料理書》ができるので、このカードで食物を作らなくてもよくなった。《地獄料理書》は、クリーチャー・カードを墓地から戻す方法も持っていた。
3つ目に、このカードから有色の起動コストが取り除かれた。代わりに、3つ目の能力が追加され、食物をクリーチャー除去に使えるようになった。最終版のカードはこのバージョンに近い。実際には共闘メカニズムは使わず、似たようなことができるようになっている。クリーチャー除去効果はおそらくフレイバーを追加するために修正された。クリーチャーに、死に到るものを食べさせるのだ。
この多くの工程を経て、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》が印刷に到ったのだった。
《リスの将軍、サワギバ》
私が《リスの将軍、サワギバ》をデザインしたわけではないが、このカードをデザインした。
私はリスの統率者をデザインするのが難しいとわかっているので、主な課題について解説していこう。
課題#1:統率者戦デッキを作るには、リスの数が足りない。
『モダンホライゾン』以前には、リスであるクリーチャーは10種類しかいなかった。(緑6、黒2、白1、アーティファクト1)他に、リス・トークンを生成する、それ自身はリスではないカードは15種類あった。(緑14、アーティファクト1)これでは、100枚デッキを作るには足りない。『モダンホライゾン2』では、新しいリスを3種類(緑2、黒緑1)と、リス・トークンを作るカードを9種類(緑5、黒2、黒緑1、青1)追加したが、それらすべてを入れたとしてもまだ全く足りず、どのリス・カードを入れるかというデッキ構築上の選択も充分にできるものではない。
課題#2:リスは主として1/1のクリーチャー・トークンを基本とした部族である。
リスの面白みは、何かが可愛らしい小動物の軍団に押し倒されるのを見るのが面白いことだろう。つまり、ほとんどの場合に、リスデッキは戦場に大量の1/1クリーチャー・トークンを並べることが主となるということである。統率者は、主なリソースで勝つことを助けるものでなければならない。
課題#3:このデッキにはクリーチャー対策が大量には存在しない。
小型クリーチャーを出すことに焦点をおいた戦略を取る場合の問題の1つは、大型クリーチャーに対する対策が充分には存在しないということである。統率者がすべきことの1つが、リスデッキが、特に攻撃してこないクリーチャーに大して、対処する方法があるようにすることである。
1つ目の懸念を解決する方法はいくつもある。《〈おしゃれな泥棒、アコーネリ〉》があれば、文章だけでなくアートでリスに関連しているカードを入れることも可能になる。ただし、黒枠のカードではカードのアートを参照することはできないので、これは銀枠の解決策である。《〈リス伯爵〉》では、自分のトークンすべてをリスにするので、他のトークン生成カードをプレイすることもできるようになる。《リスの将軍、サワギバ》は、《〈リス伯爵〉》の方法を取った。あなたがトークンを生成するたび、同時にリス・トークンも生成するので、トークン生成カードでリス・カードを助けることができるのだ。
トークン生成は、2つ目の課題の解決策にもなる。1/1のクリーチャー・トークンで勝利するための鍵は、対戦相手を圧倒できるように大量に生成することである。《リスの将軍、サワギバ》の2つ目の能力は、トークン生成カードがさらに多くのトークンを生成するようにするだけのものなので、リス生成カードでそうする助けにもなる。
3つ目の課題は、《リスの将軍、サワギバ》の最後の能力で解決されている。この能力はリスをクリーチャー除去のためのリソースに変えられるようにするものである。(あるいはとどめとして自軍の攻撃クリーチャーを強化して課題#2を解決する助けにするものである。)3つ目の能力は黒の起動コストを持っており、これによってこのカードは黒緑の固有色を持つようになり、『モダンホライゾン2』でリスを緑黒のアーキタイプであるということを強化する助けになっている。
最後に触れておくべきことが、先程飛ばした1つ目の能力である。部族・クリーチャー・タイプについて語った通り、『モダンホライゾン2』では、もう使っていない能力に軽く触れるようにしている。森渡りは使われていないが、リスのリーダーに森渡りがないわけがないのだ。
《影の処刑者、ダッコン》
《黒き剣のダッコン》は、『レジェンド』(マジックの3つ目の拡張セット)で伝説のクリーチャーとして初登場した。『レジェンド』は伝説のパーマネントという概念を導入したセットで、リード・デザイナーのスティーブ・コンラッド/Steve Conrad率いるデザイン・チームのメンバーがプレイしていたさまざまなロールプレイングゲームのキャラクターを元にした大量の伝説のクリーチャーが入っていた。《黒き剣のダッコン》のカードは、セット内の伝説のクリーチャーの中で最も人気が高かったものの1枚である。(ただし、当時、これらのクリーチャーは「伝説の」の特殊タイプを持つのではなく、「レジェンド」というクリーチャー・タイプを持っていた。)
ダッコンはコミックでスターになり、小説(「The Book of Geyadrone Dihada」)にも登場した。その中で、彼はプレインズウォーカーになったが、当時プレインズウォーカーというカード・タイプは存在しなかったので、物語のその部分を反映したカードにすることはできなかったのだ。
時は流れて『モダンホライゾン2』のデザインのとき。このセットの展望デザイン・リードを務めたイーサン・フライシャー/Ethan Fleischerは、過去からフレイバーに富んだプレインズウォーカーがいないか探していた。(『モダンホライゾン』にはプレインズウォーカーのセラがいた。)そして、黒き剣のダッコンをカード化するという思いつきに心を躍らせたのだった。
最初の試作はこうだった。
〈影なきダッコン〉
{W}{U}{G}
+1: あなたのライブラリーの上にあるカードX枚を見る。Xはあなたがコントロールしている土地の数に等しい。そのうち1枚をあなたの手札に、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
-3: クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは-X/-Xの修整を受ける。Xはあなたがコントロールしている土地の数に等しい。
-8: 白の1/1の兵士・クリーチャー・トークンX体を生成し、その後、あなたのライブラリーから装備品・カード最大X枚を探し、それらを生成したトークンのうちそれぞれ異なる1体につけた状態で戦場に出す。Xはあなたがコントロールしている土地の数に等しい。その後、ライブラリーを切り直す。
忠誠度 ― 4
ダッコンは『レジェンド』の伝説のクリーチャー・カードのときに白青黒であり、物語上で性格はそう変わっていないので、今回も白青黒でなければならない。最初のバージョンでは、すべて自分のコントロールしている土地の数によって拡大する3つの異なる能力を持っていた。これは、『レジェンド』のカードでパワーやタフネスが自分の土地の数によって拡大することを元にしている。(土地によって拡大するのは白青黒らしいものとは言えないが、フレイバーに合わせて多少の曲げを許容した。)
各能力がそれぞれ、彼の3色のうち1色ずつを1種色にしていることがわかるだろう。1つ目はライブラリーから探すものであり、青である。2つ目は-X/-Xするものであり、黒である。3つ目は1/1のクリーチャー・トークンを生成するものであり、白である。
これを踏まえてできたのが次のバージョンである。
[カード名]は、あなたがコントロールしている土地の数に等しい個数の忠誠カウンターが置かれた状態で戦場に出る。
0:あなたのライブラリーの一番上にあるカード3枚を見る。そのうち1枚をあなたの手札に、残りをあなたの墓地に置く。
-2:あなたは、あなたの手札やあなたの墓地にあるアーティファクト・カード1枚を戦場に出してもよい。
-5:クリーチャー1体を対象とする。それを追放する。
このデザインの大きな変更は、コントロールしている土地の数を使ってダッコンの能力を定義するのではなく、それを使って忠誠度を定義するようになったことである。今回も、能力は3色それぞれを代表する、一般的に有用な効果として選ばれている。1つ目の能力はライブラリーから探すものであり、青である。2つ目の能力はリアニメイトであり、黒である。3つ目の能力はクリーチャー追放であり、白である。(2つ目と3つ目の能力はどちらも白黒がやることである。)これらの効果は、長期戦で大量の忠誠度でダッコンが出たときにも壊れないように選ぶ必要があった。ここで、2つ目の能力はダッコンが工匠である(彼は黒き剣を鍛えたのだ)ことを強調しているということにも言及しておこう。
最終バージョンは、これにいくつかの調整を加えたものである。1つ目の能力は公式に諜報と命名された。これは『モダンホライゾン2』であり、常磐木でない能力を1枚だけで使うこともできるセットなのだ。2つ目と3つ目の能力は入れ替わり、忠誠度コストも入れ替わった。
《翡翠の復讐者》
音楽の世界で、曲を表現するそのアーティストの本当のファンたちだけが知るような曲のことを表す語として「ディープカット」という言い方が使われ始めた。マジックのデザインでは、我々は「ディープカット」という語を、ユーザーの大半が気づかないが、気づいたユーザーは大好きになるだろうもののことを指す語として使っている。《翡翠の復讐者》はディープカットの一例だ。このカードが最初から好きだというわけではない諸君のために、ここで見落としているであろうことを説明しよう。
この話の始まりは1995年、『アイスエイジ』で初登場した《チャブ・トード》というカードに遡る。
昔、開発部で長年働いていたショーン・カーンズ/Shawn Carnesという男がいた。(ショーンは死んだりしたわけではない。彼はもう長い間ウィザーズで働いていないというだけである。)開発部に異動する前、ショーンはカスタマーサービス部門を運営していた。その頃、ショーンは「悪感触/Bad Touch」という言い回しをよく使うことで知られていた。つまり、誰かが何か、言うべきでなかったと思われることを言っていた、という意味である。『アイスエイジ』ができたとき、デザイン・チームはショーンを意識したカードを入れていた。《チャブ・トード》の英語名「Chub Toad」は、「Bad Touch」のアナグラムであり、アートには巨大なヒキカエルに食べられている人物(おそらくショーン)が描かれていた。クリーチャーが膨れて大きくなることを示すため、デザイン・チームは戦闘時に+2/+2されるようにした。時折、我々は戦闘中にスタッツを強化する能力を使うことがあった。我々はその能力を、最初にその能力を使ったカードにちなんで《チャブ・トード》と呼んだ。
やがて、ブライアン・ティンスマン/Brian Tinsmanは《チャブ・トード》能力からメカニズムを作ることにした。ブライアンは侍用の単純な戦闘能力を探していて、《チャブ・トード》能力が完璧なものだと判断したのだ。それは「戦士の道」を意味する武士道と命名された。『神河物語』は我々の最初のトップダウン・ブロックだったので、我々はフレイバーを強めるため、キーワードにその世界の中の名前をつけることにしたのだった。
通常、我々が過去の能力を取り上げて公式にキーワード化する場合、過去に遡ってその能力を持つ古いカードをそのキーワードを持つようにしている。問題は、《チャブ・トード》は巨大な蛙であり、武士道を持つのはフレイバー的に筋が通らないということだった。我々はそれでも単に武士道を持たせることについて検討した。こいつは実は蛙侍だったんじゃないか、なとど冗談を言った。最終的に、我々はエラッタを出さず、《チャブ・トード》を武士道でないままに残すことにしたのだった。
《翡翠の復讐者》は、その問題を解消している。《チャブ・トード》が戻ってきたが、今回はカエル・侍であり、長年求めた武士道を正しく持つことができるのだ。フレイバー・テキストは、元のカードと同じように、わらべ歌になっている。そして、これが《翡翠の復讐者》という「ディープカット」なのだ。
物語は終わりへ
本日はここまで。今回の話を楽しんでくれていれば幸いである。また、この記事について、話題にしたカードについて、『モダンホライゾン2』そのものについて、諸君からのあらゆる反響を聞かせてほしい。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram、TikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、『モダンホライゾン2』のさらなるカード個別のデザインの話をする日にお会いしよう。
その日まで、あなたがこのセットをプレイしてさらなる思い出につながるものを見つけられますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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