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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

いつか再録様が

Mark Rosewater
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2020年6月22日


 

 プレビュー後に、私はカード個別のデザインの話をすることにしている。『基本セット2021』に私は関わっていないが、だからといって語るべき話がないということではない。このセットに含まれるカードの多くは、私が関わったセットからの再録だからだ。そこで今回は、私(たち)が遠い昔に作り、そして『基本セット2021』で帰ってくるカードの話をすることにしよう。

悪斬の天使》(『基本セット2010』)

 このカードは、『基本セット2010』で初めてデザインされた時、賛否両論を巻き起こした。確か、先制攻撃ではなく警戒を持っていたはずだ。そのセットにはアンコモンに《セラの天使》が入ることが決まっていて、《悪斬の天使》はあまりにもいろいろな面でそれより強く見えたのだ。コストが同じで、パワーとタフネスが1ずつ高く、能力も3つ増えていた。もちろん、それまでにも完全上位互換のカードは存在していたが、《セラの天使》が相手となると話が違うので、《悪斬の天使》のパワー・レベルを同等に保ったままで《セラの天使》の完全上位互換にはならないように、警戒を先制攻撃にしようと呼びかけたのだ。《停滞》が出ていたら、《セラの天使》が必要なままだ。

『タルキール覇王譚』の2色土地

 この話の始まりは『タルキール覇王譚』のデザインのときではなく、『インベイジョン』のデベロップ(現在のセットデザインとプレイデザインを足して2で割ったようなもの)のときだった。ランディ・ビューラー/Randy Buehlerは、デベロップを助けるためにプロプレイヤーを雇った中の1人として開発部に加わったばかりだった。『インベイジョン』は多色のセットで、ランディは2色土地が弱すぎると感じていたので、彼は以下の土地を提案した。

 他の開発部員はこれらを強すぎると感じたが、ランディはそうではないと主張した。パワーレベル問題の対策としてランディを雇ったので我々は彼の意見に耳を傾けた。驚くべきことに、これらは強すぎなかったのだ。タップイン土地は、マジックに当たり前の存在になった。

 そして数年後、初代『ゼンディカー』のデザインに到る。『ゼンディカー』のテーマは土地だったので、我々は興味深い土地がこの製品に多数存在するようにする必要があった。『インベイジョン』から数年経つ間に、我々は、タップイン土地は強すぎないというだけでなく、むしろいくらか弱い側に位置するという教訓を得ていた。もう少し強化する余地があったのだ。土地セットは、それをするのに最適な場所だと思われた。

 問題は、土地によって得られる利益はどんなものであるべきなのか、だった。我々はいくつか試したが、興味深いことに、正解は我々が最初に思いついたものであるライフ回復だった。大量にライフを得るわけではないが、1点のライフ回復が完璧だった。ゲーム中にこれらの土地を何枚もプレイしていくことで、わずかな増加が積み重なっていくのだ。我々はこれをアンコモンに入れ、隠れ家と呼ぶことにした。

 さて、そして『タルキール覇王譚』に到る。3色セットであり、プレイヤーに充分な色基盤を与える必要があった。隠れ家をコモンに入れるのはどうだろうか。何年もに渡ってプレイヤーが求めていた、敵対色の隠れ家も入れることができる。残念ながら隠れ家の名前としてゼンディカーの地名を使っていたので、タルキールではそのカード名を使うことはできない。そのため、新しく10枚の土地サイクルを作り、他の次元でも使えるような名前をつけることになったのだ。それが『基本セット2021』でも採用されている。

取り消し》(『時のらせん』)と《ショック》(『ストロングホールド』)

 当時、私が注目していたのは、定番の効果ではあるがコストが明らかに間違っているカードの、できれば将来に渡って使われるような新しいバージョンを作るということだった。私は、永遠に残るものを作ろうと、細心の注意を払ってそれらのカードをデザインし、命名した。私のデザインすべてが成功したわけではないが、この2枚については成功だった。

 《取り消し》は、言うまでもなく《対抗呪文》の作り直しだった。完璧で、明白で、典型的な効果だったが、ただ、{U}{U}は少し軽すぎたのだ。問題は、正しいコストはおそらく(1/2){U}{U}なのだが、『Unhinged』以外ではコストに分数を使うことはないので、可能な選択肢は{1}{U}{U}だけになるということだった。つまり、少しだけおまけを付けた変種を作ることはできるのだが、基本セットなどでは基本の効果だけを持つカードを作りたかったのだ。

 《ショック》は《稲妻》の改訂版である。コストを重くするのは、《稲妻》が1マナだけで唱えられるという重要な要素を失わせてしまい、問題の解決にはならないとわかっていた。解決策は、単にダメージを1点減らすことだったのだ。当時、弱すぎるのではないかという懸念はあったが、何年も掛けて、《ショック》が充分に効果的だということが証明されている。

信仰の足枷》(『ラヴニカ:ギルドの都』)

 このカードがサイクルの一部であったということをご存知だろうか。

 このサイクルは初代『ラヴニカ』のデザインに関わったリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldの手によるものである。オーラは常に(対戦相手の除去呪文によって実質的にはクリーチャーとそれについているオーラが破壊されるという)枚数的な不利の可能性をはらんでいるので、開発部はかなりの時間を掛けてこの不利を補う方法を探している。これは、リチャードによる試みの1つだった。オーラに加えて呪文効果を与えることで、オーラが失われたとしても呪文効果を得られるのでカード1枚分までは損をしないようにするという考えだった。

 このサイクルは、セットのテーマに特に関わりを持っていたわけではなかった。多色でもなければギルドとも関係していなかったが、確実なデザインであり、すべてのものがテーマに直接関わらなければならないというわけでもなかったので、私はそれらをセットに入れた。

 このサイクルはデベロップ上の変更(マナ・コストやルール文上の数字の変更)を除いて、ほとんどリチャードがデザインしたまま採用された。リチャードは《信仰の足枷》を《平和な心》(攻撃もブロックもできない)で提出して、我々がそれを《拘引》(攻撃もブロックもできず、起動型能力も使えない)にして、それからライフ総量を増やしたと思う。このカードは、競技級のカードにしようと作られたのだ。そして、もちろん、我々は成功したのだった。

クウィリーオンのドライアド》(『プレーンシフト』)

 『プレーンシフト』は、『インベイジョン』ブロックの第2セットだった。『インベイジョン』ブロックはテーマがある初のブロックで、そのテーマとは多色だった。そのため、それらのセットには多くの多色カードと、それによく噛み合うテーマが入っていた。テーマの1つが「色関連」だった。つまり、他のパーマネントや呪文の色を何らかの形で参照するカードを何枚も作ったのだ。

 緑にはいつも他の色と最も相性のいいテーマがある。他の色を生み出せる土地を出せる土地を探してくるカードがあり、タップして好きな色のマナを出せるクリーチャーがいる。これを考慮して、私は『プレーンシフト』用のカードをデザインし始めた。

 緑は成長に最も長けているので、緑でない呪文を唱えるたびに大きくなるクリーチャーを作ることにした。それらの色すべてを参照するようにしたのは、緑の他と協力する意志を反映しようと考えたからである。クリーチャーを成長させる方法として、+1/+1カウンターを使った。成長の余地があるように、1/1にした。私が作ったのは、印刷されたカードそのままだったはずだ。緑でないすべての呪文を参照するように変更しようという議論があったと記憶しているが、そうなると無色のカードでも+1/+1カウンターを得ることになり、それは必要な形の機能変化ではなかったのだ。私は強力なクリーチャーを作ったと思っていなかったが、これは最終的に多くの競技プレイで見かけられるようになったのだ。これが再録さられ得ることに私は興奮している。

巻き直し》(『ウルザズ・サーガ』)

 我々が常々やっていることの1つが、例えば多色のカードを作るなどの特定のことを数セットの間止め、再開した時にユーザーが興奮するようにすることである。その例の1つが、キャントリップ(「カードを1枚引く。」というおまけがついているカード)である。私はこの手法が好きではない。私は、キャントリップはあらゆるセットで使えるべき単なる道具だと考えていたが、私が決めることではなく、『ウルザズ・サーガ』はキャントリップ禁止のセットに位置づけられたのだった。

 そのため、私はキャントリップの代わりになるものを探さなければならなかった。キャントリップとは一体何だろうか。カード1枚を消費しない呪文だ。それをもう少し考えてみよう。カードは使うが、マナを使わない呪文というのはどうだろうか。それはどういうことか。単にマナを支払わない呪文を作るというのは不可能だ。それなら、マナを支払う必要はあるが、それを払い戻すというのはどうだろうか。こうすれば、そのコストを支払えるときにしか呪文を唱えることはできない。ここから次の疑問が浮かんだ。マナを払い戻すというのは一体どうすればいいのか。私が思いついたのは、その呪文の点数で見たマナ・コストに等しい数の土地をアンタップするというものだった。その呪文を唱えるために4マナ必要なら、土地4つをアンタップすることができ、つまり4マナを取り戻すことができるのだ。(完全な後知恵だが、単にそのマナ・コスト分のマナをマナ・プールに加えるようにするべきだった。)私はこの新しいメカニズムを「フリースペル」と名付けた。

 マジックの歴史を知らない諸君のために説明すると、「フリースペル」は最悪の結果になった。見ての通り、我々はこれを以下のような土地があるセットに採用した。

 つまり、土地4つをアンタップすると、得られるマナは4点どころではなかったのだ。プレイデザインの観点からは、「フリースペル」は非常に問題のある性質のものだとわかった。通常、呪文が強すぎればマナ・コストを増やすものだが、「フリースペル」に関しては、マナ・コストを増やすことでさらに強力になってしまうことがあるのだ。なんにせよ、我々は「フリースペル」を悪い実験結果だったとまとめ、二度としないと誓ったのだった。

 そして『第8版基本セット』のデザインに到る。私はそのチームに所属していた。チームのリードはランディ・ビューラーだった。彼はそのセットに入れる打ち消し呪文を探していて、選択肢を求めて過去のセットを見ていた。当時、基本セットは再録カードだけだったので、彼は既存のカードから探さなければならなかったのを思い出してもらいたい。彼は私のところにやってきて、「《巻き直し》はどうだろう?」と言ってきた。

 最初は、冗談だと思った。私は何年もの間、開発部内で「フリースペル」を作ることを冗談で言ってきていた。ランディは、「『フリースペル』の問題は、積極的に動ける時に起こる。唱えたい時にいつでも唱えられるからだ。だが、《巻き直し》は受動的だ。唱えたいからと言って唱えられるわけではない。これなら問題はないと思うんだが。」と言ったのだ。

 我々は、実際にセットに入れたら心躍るものになるだろうと考え、それを採用した。誰も想像していなかった。我々の多くは懐疑的だったが、プレイテストの結果はランディの仮説が正しかったと示していた。《巻き直し》はプレイアブルで、そして壊れてはいなかったので、このセットで印刷されることになったのだ。以降いくつもの基本セットで再録され、そのどこでも問題は起こらなかった。

 つまり、私の「キャントリップの代わり」を探す実験は、完全に大惨事を招いただけではなかったのだ。

真面目な身代わり》(『ミラディン』)

 2001年マジック・インビテーショナルの後、私は組織化プレイの中枢オフィスに呼び出され、そして翌年のインビテーショナルの予算は0ドルに削減されると告げられた。彼らは私が運営することに異論はなかった。単に、私にまったく予算が与えられないだけだった。つまり、私は知恵を絞らなければならないということである。まず、私はいくらかの予算を確保できるパートナーを探す必要があった。そのパートナーは、最終的に、「Magic Online」になった。当時、比較的新しいものであり、彼らは多くの人に認知してもらいたかったのだ。マジック・インビテーショナルは注目を集めるイベントであり、観客に人気の高いイベントだったのだ。まさに相応しい。次に、我々はプレイする場所を探さなければならなかった。予算があまりないので、結局、ワシントン州レントンのウィザーズ本社オフィスを使うことになった。

 そのイベントで優勝したのはイェンス・ソーレン/Jens Thorenというプレイヤーだった。インビテーショナルに優勝したので、イェンスは自分がアートに登場するマジックのカードをデザインする権利を手にした。優勝者と協力してそのカードをセットに入れられるように調整するのが私の仕事だった。目的は、それがセット内で自然だと感じられ、同時にインビテーショナルの優勝者が満足できるものにすることだった。イェンスが提出したカードはこうだった。

〈森人/Forestfolk〉
{2}{G}{U}
クリーチャー ― エルフ・ウィザード
森人が戦場に出たとき、あなたは「あなたのライブラリーから基本土地・カード1枚を探し、タップ状態で戦場に出す。」を選んでもよい。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
森人が戦場を離れたとき、カード1枚を引く。
2/2

 開発部はこのカードを非常に気に入った。過去のインビテーショナルの優勝者たちの多くは、調整するのがはるかに難しいカードを提出してきていた。実際に問題になったのは、予定されていたセットが初代『ミラディン』であり、多色セットではなかったということである。アーティファクト・セットだったのだ。私は次のプロツアーでイェンスに会い、そして「あのカードをアーティファクト・クリーチャーにするとしたらどう思う?」と聞いた。彼は、コストを重くする必要があるのかと聞いてきた。私は彼に、パワー・バランスを担当する開発部員はそうは言っていないと答えた。彼は微笑み、そして「わかりました」と答えたのだ。そしてできたのが《真面目な身代わり》である。イェンスが描かれているオリジナル版はこうだった。

骸骨射手》(『基本セット2019』)

 これは私が関わったデザインの話ではないが、クールな話なのでここでお伝えしよう。長年に渡り、我々は骸骨をデザインするにあたってもっともよく使っていた特徴が、破壊された時に自ら再構築できるというものだった。何度も戻ってくるので恐ろしい敵になるというアイデアだったのだ。この話は、『アルファ版』までさかのぼる。

 ある日、奈落/Pitで喋っていて、イーサン/Ethanが、我々が使い続けている骸骨の特徴は、我々が若いころの映画が元になっていて時代遅れだ、と言ってきたのだ。今の子供たちは骸骨といってもそんな想像はしないと。ビデオゲームでは、骸骨を破壊したら死んだままになることが多い。若いプレイヤーの想像にあった骸骨をデザインし始めるべきなんじゃないか、と提案したのだ。

 これが、《骸骨射手》のデザインを生み出すきっかけになった。近年のビデオゲームで、骸骨は何をするのか。弓矢を持って撃ってくることが多いのではないか。ということで、イーサンはそうデザインしたのだった。

かつて再録と呼ばれたもの

 ご清聴に心から感謝しよう。これらの過去の話を楽しんでもらえたなら幸いである。いつもの通り、今日の記事や回答、そして『基本セット2021』についての反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagramTikTok)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、『基本セット2021』の一問一答記事でお会いしよう。

 その日まで、あなたがマジックの過去の素晴らしいものを楽しくプレイできますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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