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Making Magic -マジック開発秘話-
もっとマローマロー問答
2019年12月2日
首席デザイナーにして製品のスポークスマンを務める私は、多くの面談をしてきた。そして、しばしば同じ質問をされることに気づいたので、14年前に自分で自分自身と面談することにしたという記事(Twenty Questions:英語)を書き、答えたい質問をしたのだ。10年前、私は2回目の面談(その1、その2:英語)をした。10年経ったので、再び私自身を座らせて厳しい質問をぶつけるべき時期だろうと考えたのだ。これから見たらお分かりの通り、手加減はしないつもりだ。
まず、厳しい一発から入ろう。
常々、カラー・パイの重要性とマジックにおけるその重要性について語っていますね。カラー・パイの悪い面は何でしょうか?
マジックは流動のゲームなので、その長所の1つは成長し続けることである。プレイヤーがマジックをプレイし続ける理由(そして平均的なマジックのプレイヤーは今、平均して10年以上プレイを続けている)は、マジックが変わり続けるから飽きないからなのだ。加えて、マジックをプレイする方法には非常にさまざまなものがあり、それらの選択肢自身も変わり続けている。マジックが変わり続けていても、マジックがマジックらしいと感じられるだけの充分な要素が維持されていることは重要なので、カラー・パイはこれらすべてにおいて重要な役割を演じている。
もう1つ、フォーマットの中にはマジックの歴史全体のカードを用いるものがあるので、誰もがプレイする同じ多色のものへ進化していくということが起こらないように、すべてのデッキに最高のものを全部詰め込まない理由があることは重要なのだ。
カラー・パイはまとまりを保つ助けとしてさまざまな長所があるが、さまざまな矛盾も生み出している。マジックをプレイするさまざまな方法はそのさまざまな側面に依ることになり、それらはカラー・パイ的に必ず均衡が取れているわけではない。例えば、色はもともと各プレイヤーの初期ライフが20点の2人戦を前提に作られている。通常2人よりもずっと多い、多くのプレイヤーが40点のライフを持って始める統率者戦フォーマットが現れた。例えば白と赤の特徴の大部分は、低コストカードを使ったアグロ戦術が存在することを軸にしていた。短期戦に強いので、長期戦は少ないのが前提だったのだ。ここで、統率者戦では基本的に短期戦はほとんど存在せず、その結果カラー・パイは不均衡になった。
カラー・パイはいくらかの変動がある(時とともに少しずつ変わる)ように作られているが、早くあるいは劇的に変化するようにはデザインされていなかった。つまり、これはバランスの取れた統率者戦の障害になったのだ。これは、同じように新しい方向に向かった将来のフォーマットでも同じような問題を起こすだろう。端的に言えば、カラー・パイはマジックのさまざまな側面に適応できるものではなく、変化に対する障壁になってきたということである。
2番目に大きな問題は、フレイバーを強固な軸にしてデザインされているので、単一の色で表すのが非常に難しい概念やメカニズム的能力が存在するということである。マジックがデザインしやすいものを使い尽くしていくにつれ、普通でない空間を掘り下げる必要が出てきて、その中には単一の色にうまく収まらないものがあるのだ。確かに多色を使うことはできるが、すべてのセットが、特に低レアリティにおいて、簡単に多色を扱えるわけではない。物事が単一色で成立するようにすべきだという強い圧力が存在し、収まらないときがあり、そして我々が新奇なデザイン空間に進むほどにその比率は上がっていくのだ。
賛否両論あるが、3つ目の問題は、5色を必要とするようにマジックの世界を歪めているということである。その利点は、すべての世界をいかにもマジックの世界らしくするということであるが、欠点として、それによって描ける世界の幅を狭めてしまう。わかりやすい世界の概念を使い尽くしてしまえば、この問題はどんどん大きなものになっていくのだ。
そのため、たしかにカラー・パイはマジックの健全性や特徴の根幹にある重要なものではあるが、そこには問題もあるのだ。
あなたの仕事の一番困難な部分は何ですか?
私が将来について話せないことだと思う人もいるだろう。(優秀な同僚とともに)私は、プレイヤーが称賛してくれると思われる本当にクールなものを作ることに尽力しており、私はそれについて本当に長い間話すことができないのだ。例えば、私が展望デザインのファイルを提出してから世に出るまでには2年間の隔たりがある。しかし、正直に言って、私はそれにはもう慣れているのだ。私は常に何かについて話しているので、その時点のことについて語ることができることを語ることをただ楽しんでいるのだ。そして私はブログやソーシャルメディアで、まだ話すことができないことについてとぼけるようになった。これが、私が常に何かについて話すことに心を躍らせている理由である。ただ、そのために長い時間待っているだけなのだ。
私がオンラインで拾っているさまざまな雑音だと思う人もいるだろう。私は、私には全く関係ないものであっても、マジックの現行のあらゆる問題についてのサンドバッグになることがよくある。しばしば、それは私が変更しようと果敢に戦い、そして敗れ去ったものだったりもする。これは特に面白い。しかし、私は長い間こうしてきたので、面の皮が非常に厚くなっているのだ。また、辛辣な言葉とその内容を切り分ける術を学んできたので、かつてほど感情的に傷つくことはなくなっている。
実際に最も困難なことは、言ってみれば「大崖に押し上げる」ことである。私の首席デザイナーとしての仕事は、新しい空間に押し入り、新しいことを試すことである。私は、常に仕事中の他の全員を説得して、これまでしたことのないことをしようとする人物なのだ。それがそう難しい話でないこともある。すぐに同意を固め、そして誰もが心躍らせるものへと膨れ上がっていくこともある。長く辛い仕事になることも、ある。
おとぎ話テーマを持つセットを作るのに10年かかったと簡単に言っているかもしれないが、それはつまり、それを実現させようという試みに(とぎれとぎれにせよ)10年かかったということなのである。提案して却下され、提案して却下され、提案して却下されたのだ。そして、ついに実行の承認を得られても、ただするだけでなくセットの焦点にするべきものであるとの同意を組み上げるためにかなりの労力を必要とした。これを私は「大岩を押し上げる」行為だと言ったのだ。長く労力のかかる工程であり、時折岩が転げ落ちて再び最初からやり直しになることもある。
さまざまな製品があり、我々は先の作業をしているので、この岩転がしはいくつも同時に起こっている。『Unstable』の発売が3回目の延期になったことを知った日にも、おとぎ話のアイデアが却下されたのを覚えている。岩転がしが心理的な負荷である日もあるのだ。
これは、私を止めようとする人々が間違っているという話ではない。私や他の展望デザイナーのアイデアにストレステストを行なうのは、開発部のほとんどの人の仕事なのだ。我々のアイデアは、工程の中で生まれる抵抗勢力に袋叩きにされることによって改善されるのだ。私は、このシステムによって良い製品ができると心から信じているが、他の上り坂で他の岩を押しているときにはそれは何の助けにもならない。これが、私の仕事の一番困難な部分である。
マジックの将来のデザインのために最大の可能性があるのはどこでしょうか?
マジックの内容を26年間作り続けてきたことの最大のインパクトは、我々がデザインのわかりやすい金脈の多くを掘り尽くしてきたということである。マジックのデザインの最も確固たる将来は2つの領域に広がっていると言える。1つは、まだ見たことのない場所を見ること、そして1つは、これまでにない方法で複数のものを組み合わせることだ。
まず1つ目の分類である、まだ見たことのない場所を見ることについて話そう。
フレイバー
トップダウン・デザインの最大の長所の1つが、まったく異なる視点からセットを見ることを強制するということである。それによって、それまで他の場所で作ったことのなかったカードを作ったり、組み合わせなかったであろう方法で要素を組み合わせたりすることができるようになる。私のお気に入りのデザインの中には、カード名が最初にあって、それに合うカードを作ったというものがあるのだ。そうして、その目標を目指して始めたのでなければ存在しなかったであろう素晴らしいものが出来上がることがしばしばあるのだ。新しく掘り下げるべきトップダウン空間を見つける中に、輝かしい未来があるだろう。
大規模メカニズム
デザインの可能性を秘めているもう1つの領域が、我々が最初に作ったときに気づいていたよりもずっと頑強なメカニズムだ。この典型例を挙げるなら、両面カードである。最初は、『イニストラード』の狼男のフレイバーを表現するためにうまく働くことから作ったのだが、それを扱っているうちに、それの持つデザイン可能性の巨大さに気がついていったのだ。『マジック・オリジン』『異界月』『イクサラン』と、この資源の新しい使い方が次々と見つかっていった。両面カードのような大規模メカニズムは、新しい空間を掘り下げるための偉大な道具なのだ。
カード枠
もう1つ、扱いやすくなっているリソースがカード枠である。カード枠には、数個の重要な要素が含まれる。1つ目に、機能的な一面がある。デザイン要素を用いて、表すのにかなりの文字数が必要になるものを伝達することで通常はカードに収まらないことをしたり、通常のカードでは記憶の問題になるような情報を記録する助けにしたりできるのだ。2つ目に、大量のフレイバーを伝え、そのセットのテーマを売り込む助けになる。3つ目に、派手にできて、プレイヤーの目を惹くようにすることができる。これらすべてが、カード枠がこれまで作れなかったカードやメカニズムを作れるようにする重要な道具であることを示しているのだ。
外部リソース
この分類では、通常のマジックのカードに存在しない要素について語る。カードに掛ける限界を広げてくれた、文章が書かれている食物などのトークンがそれだ。『アモンケット』などのパンチアウト・カウンターでは、ブースターに入れられるプレイの補助具を作ることができた。『Unstable』のからくりのようなカードは、全く新しいデザインの鉱脈へと進む、別のデッキのカードを作った。通常のマジックのカード以外にブースターに入れられるものを見つけることは、あらゆる可能性を秘めているのだ。
印刷技術
もう1つ、心躍る新たな空間は、印刷機で可能になったことだ。例えば、『バトルボンド』ができたのは、2枚のカードを常に同じブースター・パックに入れるということが可能になったからであった。これは将来の印刷技術の氷山の一角に過ぎず、掘り下げていく新たなデザインの領域が開けることになるだろう。
もう1つの大きな分類は、これまでに組み合わせていなかったものを組み合わせることである。これにはさまざまな段階がある。
包括
歴史的は、新しいことを試した『ドミナリア』のメカニズムだった。以前からマジックの一部であった2つのもの(アーティファクトと伝説のカード)と新しい1つのもの(英雄譚)を取り上げ、それらを単一のものとして組み合わせる単語を作ったのだ。いつどのように組み合わせるかには注意が必要だが、これによって、マジックに既存のものの新しい組み合わせを意識させるという興味深いデザイン空間が開けたと思う。後方互換性を持つ新しいものを作る、賢明な解決策である。
テーマの組み合わせ
常々、独創的なメカニズム的テーマを探しているが、新しいものを見つけるのは時とともに困難になっていく。料理と同じく、既知のメカニズム的テーマを取り上げ、それらを新しい方法で組み合わせるという手法に寄っていくことになるのだ。
構造の再定義
もう1つ我々が頼っているリソースが、セットの構造である。例えば、『アラーラの断片』と『タルキール覇王譚』は同じように作られている。新しい空間を作っていく上で、裏側では基柱となる構造を持ちながら、表面(諸君が目にするすべて)では新鮮に感じられるものにできるよう、過去の構造を取り上げ、それを使う違う方法を探すという方法がある。
これが多く思えるなら、実際そうだが、それが綿足がマジックの将来のデザインの可能性を問われたときに楽観的な答えを返す理由なのである。
あなたが作ったさまざまなものの中で、あなたの一番のお気に入りは何ですか?
私が通常の面談で常々受けている質問の1つが、「マジックで一番好きな色は何ですか?」である。私の答えは、1つだけ好きな色というのは存在しない、だ。すべての色とこれだけ長い間働いているので、私はそれぞれのそのままの姿を理解していて、お互いに競うものだとは思っていないのだ。(親が子どもたちのことを見るようなものだ。)私はあらゆる自分のプロジェクトに同じような心構えで挑んでいる。それぞれお互いに異なるあり方を受け入れているのだ。
「Making Magic -マジック開発秘話-」(私の週刊記事)
これは私の最古の仕事だ。2020年には、1000本目の記事を書くことになるとは信じられない。週刊記事について私が評価していることは3つある。
1つ目、私が時間をかけてある話題について考え、いろいろと考えながらそれに取り組む場所ということ。ある問題についてもっとも時間をかけて調査し、見解を強固なものにするのだ。2つ目、必要に応じて画像を使うことができる唯一のものであること。そのため、他のメディアでは難しい、(必要に応じて古いカードを見せるなど)視覚的な手法を用いることができるのだ。3つ目、私の作った中で、最も再読が簡単であること。過去の記事へのリンクを大量に入れているのは、私が描いたことを何年も後で再発見してもらうのが楽しいからである。また、誰かが私の作品にリンクを張っているのを見た時、この記事へのリンクが一番多い傾向にあるのだ。
「Drive to Work」(私の週刊ポッドキャスト:英語)
これは私が人と会うときに一番話題にあがるものだ。また、私が最も愛想がいいメディアでもある。ただ私が喋るだけで、技術的な工程もなく(単に録音を開始して終了するだけで、編集しない)、私のしているあらゆることについての私の考え方が一番良くわかるものだろうと思う。また、30分ちょっとの時間があるので、物語を紡いだりある話題を非常に深く掘り下げたりするのにもっともふさわしいメディアでもある。作りたい内容が大量にあるので、一番実験することが多いメディアだ。ポッドキャストでなければ取り上げないだろう話題もある。また、これのおかげで出勤の運転がかなり早くなっているのだ。
「Blogatog」(私のブログ:英語)
これは私がファンとやりとりするメディアだ。他のほとんどでは、私が諸君に向けて話すだけである。Blogatogは、私と諸君が話す場所なのだ。私の仕事の中の重要な部分としてゲーム外で諸君が望むことを理解するというものがあるので、直接聞くという反則をしているわけだ。私はこのブログを中心にしたコミュニティができていることを楽しんでいるし、それによって記事よりも早く気軽に問題解決ができる手段を手に入れたのだ。また、これは他のメディアに比べて私が少しばかり馬鹿げたことをするメディアでもある。
「Tales from the Pit」(Twitter、ブログ、Instagramで投稿している、日刊のマンガ:英語)
これは私が自分を毎日創造的にするメディアだ。また、私のコメディ書き脳を鍛える場所でもある。私は朝準備ができたときにこれを書くことが多いので、質が一定でないことは解っているが、私がゲーム中に面白おかしいことを見つけたときに書く唯一のものなのだ。また、私は何年も前に離れた道を思い出すように、ときどき日常コメディを書いてもいる。
Head-to-Head(Twitterで行なう毎日の投票:英語)
これを始めたのは、マジックのウェブサイトで遠い昔にやろうとして失敗したものだからである。Twitterにこれが簡単にできるリソースが作られた時、私はTwitterのフォロワーに何かをしてもらう方法としてこれを始めたのだ。興味深いことに、これは最終的に情報収集のための素晴らしいリソースとなり、仕事での楽しい活動(開発部では、諸君がどう答えるかを予想するゲームが行なわれる)を生み出したのだ。
私はしばしば、なぜこれほど多様なメディアを扱うのかという質問を受けるが、その答えは、それらが私が私であるための基礎だから、である。私にはものを作りたいという欲求があり、そうすることで大いに安堵するのだ。また、エネルギーを創造的な形に集約するための方法を知ったので、諸君も私の創造意欲から利益を得ているのだ。最終的に、私はこれのおかげで諸君とやり取りができ、物事についての考え方をまとめる助けとなり、他の人にも分かる形で意思疎通をしているので、これによって仕事が上達していると考えている。
私はあらゆるメディアにそれぞれ独自のやりかたで接しており、それぞれによって他の人ができないことを扱っていることを楽しんでいるので、これからも作り続けていくつもりなのだ。何らかの理由で、これらの中に知らないものがある諸君は、ここまでにリンクが張ってあるので、行ってチェックしてみてくれたまえ。
質問は以上
今日の記事はここまでだが、この面談を来週も続けようと思う。いつもの通り、今日語ったことについての諸君の意見を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、私から私へのインタビューを続ける日にお会いしよう。
その日まで、あなたがあなた自身に厳しい質問を投げかけますように。
(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)
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