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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

『エルドレインの王権』展望デザインの提出物 その2

Mark Rosewater
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2019年11月18日


 

 先週、『エルドレインの王権』を展望デザイン・チームからセットデザイン・チームに引き渡したときに作った展望デザインの成果文書の話を始めた。このデザインのアーサー王伝説部分に関する前半部分を見てきた。今日は、おとぎ話部分について語っていこう。先週同様、実際の文書と、追加の文脈を伝える注釈を提示していく。まだ読んでいない諸君には、まず最初に先週の記事を読んでくることをお勧めしよう。

水晶の靴》 アート:Howard Lyon

おとぎ話

 おとぎ話部分は、このデザインの心臓です。おとぎ話の素材は、『イニストラード』以来不可能だったこと、つまりジャンルの知名度に基づく、強くてすぐに理解できるカードを作ることができるほど、私たちの社会に深く溶け込んでいます。(例えば、平均的なアメリカ人は人生の間に10種類のシンデレラの物語を目にします。)

 このセットのおとぎ話部分は、構造よりも部品性によって定義されています。トップダウン・デザインによって定義づけられ、物語のアーキタイプに従っています。おとぎ話部分のデザイン上の目標は、各部分がそれに関連する部分にメカニズム的に繋がる範囲で可能な限りフレイバーに富んでいるものであるようにすることです。プレイヤーが、彼らが知っている物語がカード上で起こることを見ることができるようにしたいのです。例えば、子牛を魔法の豆と交換したり、眠れる姫を真実の愛の口づけで目覚めさせたりできるのです。

 展望デザインの提出物の重要なところは、決定の助けとなる理念を強調することだ。セットデザインはほとんど自分たちでカードを作るが、デザインの展望を守った上でそうしてほしいのだ。これが、私がかなりの時間を費やしてこのセットにはまとまりが必要だと繰り返している理由なのである。

 私たちは重要な部分をプレイヤーが望むように組み合わせられるようにするために尽力しましたが、同時に、「マッドリブ」な組み合わせ感も可能にできるだけの自由度があるようにもしました。このための鍵は、部品がくっつくようなフレイバーに富んだテーマをセット全体に編み込むことでした。(おとぎ話部分とアーサー王伝説部分の両方に編み込まれている、積み上げテーマのような一部のテーマは、アーサー王伝説の節で列記されています。)


 

エンチャント・テーマ

 探索の除去などの様々な理由から、エンチャント・テーマはセットデザイン中に少し引き下げられた。興味深いことに、これは我々が展望デザイン中に「神秘的/mystical」という(アーティファクト、エンチャント、フェアリーをまとめた)語で実験した「アーティファクトとエンチャント関連」という白青の小テーマの一部になった。いつものとおり、展望デザインとセットデザインの間には重複があり、展望デザインがしたことをセットデザイン・チームは知っているのだ。今回の場合、最初のセットデザイン・リードであったマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebは展望デザイン・チームの一員だった。

 あらゆるおとぎ話テーマを掘り下げていく中で気づいたことの1つに、おとぎ話には解決策のある脅威が存在することが多いということがあります。もちろん、誰かを深い眠りに落とすことはできますが、真実の愛で目覚めさせることができます。誰かを塔に閉じ込めたり蛙に変えてしまったりすることができますが、それらは解消できます。救出することができたり、呪文を破ることができたりするのです。脅威のほとんどには解決策があるというアイデアは私たちの好むものです。それによって世界はいくらか優しくなります。(『Archery』と『Baseball』の違いについて後述します。)これを達成するため、このセットに存在する脅威の多くはオーラによるものになっています。

 おとぎ話には多くの魔法が存在しますので、エンチャントによって描写される魔法の効果も必要です。この2つのことから、このセットではオーラの強調や、それ以外でも探索などの全体エンチャントなどによってエンチャントは通常よりも重要な役割を果たすことになります。

 私たちは、青黒で親エンチャント・テーマに焦点を当てました。どの色にも通常よりも多くのオーラが存在しますが、その効果の性質から白青黒が最も多くなっています。


 

アーティファクト・テーマ

 開発部は、競技上の問題を起こさずにアーティファクト・テーマを使うことができるよう、意図的に有色アーティファクトに寄せるように変更しています。『Archery』はその過渡期のセットで、有色のアーティファクトを無色マナで唱えることができるように選択的コストを使用しています。

 これがこのセットにちょうどいい理由は、おとぎ話はもちろん、アーサー王伝説にも、魔法を帯びた物品が大量に存在するからです。それと選択的コストを組み合わせることで、単色テーマを2通りの方法で助けることができます。有色アーティファクトは適正な色で優先されますが、必要であれば色が違ってもピックして使うことができます。また、この方向での助けになるよう、アーティファクト・クリーチャーの割合を少しだけ引き上げました。

 アーティファクトの選択的コストが採用されなかった理由の1つが、そうしてもその色をプレイしているプレイヤーしかドラフトしないという確信だった。上述の通り、それはプレイテスト中のドラフト・プレイヤーが色違いのカードをプレイできるということを視認できるようにする視覚的道具が足りなかったという理由が大きいと考えている。にもかかわらず、選択的コストがボツになったときに、一部のアーティファクトを単に有色にするという決定がなされた。繰り返しになるが、これは白青の「アーティファクトとエンチャント関連」という小テーマに編み込まれたのだ。

 色違いのアーティファクトを使わない人々はドラフトにかなりの負担となるという危惧があることはわかっていますが、それはおそらく、ドラフト時に他の色のカード枠のアーティファクトをドラフトできるかどうかいつも確認しているわけではないという、カード枠の問題でしょう。有色アーティファクトのカード枠が助けになることでしょう。また、アーティファクトで選択的コストを使うことで、複数の部門に渡るセットを拡張する助けとなり、このセットの一体感を高めることができます。

 親アーティファクト色は、青と赤です。エンチャント・テーマと同じように、すべての色に有色アーティファクトは存在しますが、それを意識する色は2色に集中しています。これによって、様々なアーティファクト関連デッキが可能になります。


 

人間以外の部族

 このテーマはセットデザイン期間ずっと存在し、しかも展望デザインが入れた色のままだった。

 アーサー王伝説とおとぎ話の両方の必要性から、このセットには通常のセットよりも多くの人間が存在することになります。これを使って、魔法の創造物と生物を表すサブタイプを作ることができると気づきました。人間以外の部族です。否定的部族テーマは、それがあまりに多くのクリーチャーに当てはまるので使うことは多くありませんが、人間の比率が高いことからこのセットでは可能になります。新鮮に感じられる部族要素を作りながら、フレイバーを加えることができるでしょう。多くの人間は騎士で、上述の騎士部族テーマに含まれることになることにも注目してください。

 人間以外の部族テーマのカードは、赤と緑に存在します。これも、すべての色に人間でないクリーチャーは存在し、デッキ構築の柔軟性を認めています。


 
魔法の鏡》 アート:Anastasia Ovchinnikova

おとぎ話の素材

 展望デザイン中に手掛けるものの1つが、境界線をどこに引くかを決めようとすることである。(つまり、その世界で何が存在できて何が存在できないのか、だ。)この話題はセットデザイン中も続くが、おおよそ、ここで示す境界が最終的なものだ。ところで、《パイ包み》はおとぎ話と童謡の両方に存在するので、残している。

 これは『Archery』の屋台骨で、このセットの特徴になると信じている要素です。騎士や中世の生活をクールに取り上げていますが、それはマジックが何度も扱ってきたものです。古典的なヨーロッパ大陸のおとぎ話は、私たちがほとんど扱ってこなかったものです。

 クリエイティブ・チームと協力して、私たちはこのセットに入れたくないもののガイドラインを作りました。

  1. 喋る動物はいません。おとぎ話でよく登場するので動物は必要ですが、服を着たり話したりという人間性はあるべきではありません。主体性を持つことは認められます。(アヒルが鍵を持ってきたり。)三匹のくまや三匹の子豚を元にすることはありますが、より普通の動物としてです。
  2. 童謡は扱いません。
  3. 寓話は扱いません。
  4. パブリックドメインでない物語を名指しにしません。

 

 よく知られている素材なので、アーサー王伝説のほうのリストよりも少し詳しく話していくことにしよう。

 以下に、おとぎ話の素材や物語を元にしたカードを列記します。

注記#1:以下のカードはすべて元とした素材を示す名前になっています。クリエイティブ・チームが、現代的セットを作るために性別その他を変更するでしょう。素材や物語そのままの名前にしているのは、その元にしたものを認識しやすくするためです。

注記#2:ファイルには妖精の素材よりも多くのフェアリーが存在します。すべて列記しましたが、その中にある一般的な妖精は必要であれば他のものに変えることができます。

注記#3:複数回当てはまったものが存在します。セットデザイン・チームがその中の気に入ったものを選択できます。

CW02 〈シロツメクサの妖精〉 ― 助けになる妖精です。

 歌う竪琴は、この次元のマジックのセットに存在するであろうものなので、ボツになって悲しいアイテムの1つだ。再訪したときには作らなければならないだろう。(これは何かを告知しているわけではなく、単に楽観的なことを言っているだけである。) もう1つの盗んだ品物である、金のガチョウは採用された。

CW04 〈歌う竪琴〉 ― ジャックが巨人から盗んだ品物の1つです。

CW05 〈友好的な妖精〉 ― 魔法で頭がいっぱいの妖精です。

CW10 〈美しい王女〉 ― これは、あらゆる動物など、ほとんど誰とでも仲良くできる王女という素材を元にしています。

CE10 〈真実の愛の口づけ〉 ― おとぎ話の頼りになる解決策です。

CW11 〈大きな羽根の妖精〉 ― 比較的大きな妖精です。


 

 真夜中の時計は何とか入れたが、舞踏会は実際扱っていない。

CW14 〈真夏の舞踏会〉 ― ダンスはおとぎ話ではよくある素材で、中でも最も有名なのはシンデレラでしょう。

CW17 〈高楼への閉じ込め〉 ― ラプンツェルが元です。


 

 おとぎ話に関しては少量の深堀りをデザインしたが、かなり手を加えているので、そのままカード化したものはない。

UW01 〈ブリキの兵隊〉 ― アンデルセンのおとぎ話です。彼は紙のバレリーナに恋をしました。(青で後述しています。)

UW04 〈願いの井戸〉 ― 王女が、彼女の夢の男性に会いたいと願う場所です。

UW05 〈魅力的な王子〉 ― 王子様です。

UW08 〈妖精の女魔術師〉 ― 他者に魔法や呪いをかけるフェアリーです。「眠れる森の美女」などの物語に登場します。


 

 《パイ包み》はセットデザインで、白の《拘引》型に変更された。

UW11 〈パイ包み〉 ― おとぎ話の不気味な罰です。

UW12 〈ガラスの棺〉 ― 毒りんごを食べて死んだと全員が思い込んで白雪姫を納めたものです。ガラスの棺はもともとそれ自体のおとぎ話の品でしたが、ディズニーが使ったことで白雪姫関連の品だと思うようになりました。

RW05 〈めでたしめでたし〉 ― おとぎ話のハッピーエンドです。


 

 この素材はもともとおとぎ話のものだが、ユーザーがそれをテーマにあったものだと思わないだろうということで取り除かれた。シェイクスピアのおかげだ。

RW07 〈薄幸の恋人たち〉 ― 恋に落ちたけれども一緒になれない陣営出身の若い恋人たちを描いたおとぎ話はいくつも存在します。ロミオとジュリエットが現在ではもっとも有名ですが、この物語のルーツはおとぎ話です。

RW08 〈ピノッキオ〉 ― 小さな木の少年について2種類の取り上げ方をしています。

 セットデザイン・チームは自分でデザインし、どちらも採用しなかった。

CU01 〈紙のバレリーナ〉 ― ブリキの兵隊が恋した相手です。

CU04 〈恋に落ちた人魚〉 ― 恋した男性についていくために海の魔女に人間にしてもらった若い人魚です。

CU04 〈好奇心の強い人形〉 ― ピノッキオの2種類目です。


 

 「ウサギとカメ」は寓話で禁止なので、このカードはボツになった。

CU07 〈遅い遅い陸亀〉 ― 「ウサギとカメ」が元です。寓話であっておとぎ話ではないので問題かもしれません。

CU09 〈妖精の工匠〉 ― 機械に心惹かれている妖精です。例えばティンカーベルはこの素材になります。

CU10 〈蛙の姿〉 ― クリーチャーが蛙の王子のような蛙に変身します。

CU11 〈縮む箱〉 ― クリーチャーを小さくしてしまう箱です。


 

 「裸の王様」がおとぎ話かどうかにはかなりの議論があった。最終的には、採用しなかった。

CU15 〈皇帝の新しい服〉 ― 「裸の王様」の、幻の服です。

CU15 〈お話の本〉 ― さまざまなおとぎ話に、魔法のお話の本が出てきます。

CU16 〈眠りの呪文〉 ― 眠れる森の美女を眠らせた呪文です。

UU01 〈賢い妖精〉 ― おとぎ話には、人々を引っかけようとする妖精がよく出てきます。

UU02 〈神秘的な妖精〉 ― 魔法で頭がいっぱいの妖精です。

UU06 〈悪名高い泥棒〉 ― おとぎ話の中には、泥棒が主役のものがいくつもあります。この類の物語の中東版として、アラジンがあります。

UU07 〈フェアリーの導母〉 ― シンデレラを期間限定の魔法で助けた妖精です。

RU01 〈願いを叶える妖精〉 ― 妖精を、マジックの願いメカニズムに関連づけます。

RU02 〈青の妖精〉 ― ピノッキオに命を与えた妖精です。


 

 ゴルディロックスは最初青で、その好奇心を描くものだった。家具を破壊する版は、もともとこのブロックの第2セットとして企画されていた『Baseball』に入ることになっていた。(え? 読み続けてくれたまえ。あとで説明する。)

RU03 〈ゴルディロックス〉 ― 三匹のくまで、非常に好き嫌いがはっきりした訪問者。

RU04 〈呪文盗みの妖精〉 ― 魔法を盗む妖精です。

RU05 〈悪戯な妖精〉 ― 他人にいたずらを仕掛ける妖精です。


 

 展望デザインの提出物では、ピノッキオからもう少し素材を引いている。

RU08 〈巨大な鯨〉 ― ピノッキオを飲み込んだ鯨です。


 

 アーサー王伝説とおとぎ話の重複は多くないが、アーサー王伝説に出てくる占いの池と魔法の鏡を入れ替えている。青の宮廷が魔法で何かを見るなら、おとぎ話の古典に踏み込むことになるだろう。

RU09 〈魔法の鏡〉 ― 邪悪な女王が、世界で一番美しい人を探すのに使った鏡です。(彼女ではありませんでした。)

RU10 〈魔法の変装〉 ― リンゴ売りのお婆さんに化けるために邪悪な女王が使った魔法です。

RU11 〈幻影の支配〉 ― いくつものおとぎ話で出てくる、精神支配です。


 

 このカードは『基本セット2019』の《変態変異》と同一で、あちらが先に作られたので、これはボツになった。

RU12 〈交代〉 ― 2人が役割を入れ替えるというものです。「王子と乞食」が最も有名な例でしょう。

CB01 〈魔女の猫〉 ― 魔女はおとぎ話の重要な存在です。そして、黒猫は魔女につきものです。


 

 おとぎ話側の一般的な素材では、このセットのアーサー王伝説側でやっているこのようなことはあまりしなかった。

CB02 〈前兆の魔女〉 ― 未来に起こる、大抵は悪い、出来事を見る魔女です。

CB03 〈田畑の見張り〉 ― 大きのおとぎ話で農作業が重要なので、カカシも時々登場します。

CB04 〈黒棘の妖精〉 ― 眠れる森の美女のような物語のとおり、よい妖精と悪い妖精が存在します。

CB07 〈未亡人〉 ― 親の死は、物語ではよくあることです。

CB12 〈鳥に目を突かれる〉 ― おとぎ話で悪人がよく受ける罰です。

CB13 〈略奪の呪詛〉 ― 問題を、個人的で大きな代償と引き換えに、解決する魔法です。

CB14 〈汚れた祝福〉 ― 影響を受ける人が代償を必要とする、良い目的の魔法です。

CB16 〈忘却の水薬〉 ― おとぎ話で水薬はよく登場します。記憶を失わせるのは、よくある魔法の効果です。


 

 最終的に、毒りんごを元にした「変装した邪悪な女王」のカードを作ったが、デザイン中は、毒りんごは独立したカードになっていた。

CB17 〈毒りんご〉 ― 邪悪な女王が白雪姫を騙して毒りんごを食べさせ、殺そうとします。


 

 青ひげも、採用しないことにしたおとぎ話だ。

UB01 〈青ひげ〉 ― 妻を殺す習慣を持った、裕福で暴力的な男性についてのおとぎ話です。

UB02 〈呪詛唱えの魔女〉 -  眠れる森の美女に、糸車が原因で16歳の誕生日に死ぬという呪いをかけた邪悪な魔女が、この好例です。

UB06 〈橋のトロール〉 ― 「三びきのやぎのがらがらどん」に登場する、山羊に橋を渡らせないトロールです。

UB07 〈死すべき定め〉 ― 眠れる森の美女の呪いです。

UB08 〈恐ろしい魔女〉 ― 典型的な、怖い外見をした魔女です。

RB03 〈ハーメルンの笛吹き〉 ― ネズミを街から連れて行った音楽家の物語です。

RB06 〈魔女の大釜〉 ― 魔女関係の素材の1つです。

RB07 〈闇の好奇心〉 ― 好奇心は、おとぎ話の登場人物を騒動に巻き込むよくあるものです。


 

 〈真夜中の時刻〉は、元は時計が真夜中を指す瞬間を表す呪文だった。セットデザインは、それではなく時計そのものを作った。

RB09 〈真夜中の時刻〉 ― シンデレラで、フェアリーの導母の魔法の終わりを告げるものです。

RB10 〈禁断の部屋〉 ― 「美女と野獣」で、野獣は美女にある部屋に近づかないように言っていました。

RB12 〈死神との取引〉 ― 死神や自分を殺せる相手と取引をするおとぎ話がいろいろとあります。


 

 ああ、取引される子牛。変更されたのが一番悲しい個別のデザインの1つだ。

CR01 〈取引される子牛〉 ― 「ジャックと豆の木」で、ジャックは子牛を魔法の豆と交換してしまいます。

CR02 〈ジンジャーブレッド・ゴーレム〉 ― 誰も捕まえられないジンジャーブレッド男が元です。


 

 ティック・トックはノームに変更されているが、セットに採用されたちょっとした深堀りだ。

CR04 〈ティック・トック〉 ― だいたい人間の形をした、機械じかけの存在です。この類で一番知られているのは、「オズの魔法使い」のティック・トックです。


 

 すでに《ドワーフ鉱夫》が存在したことを忘れていた。(こんなに素晴らしいフレイバーテキストなのに、なぜ忘れていたのだろう。)

CR05 〈ドワーフの坑夫〉 ― 白雪姫の物語に登場する、七人の小人。

CR07 〈恐ろしいカカシ〉 ― カカシです。

CR09 〈長身の巨人〉 ― おとぎ話には様々な巨人がいますが、最も有名なのは「ジャックと豆の木」の巨人でしょう。

CR15 〈力の魅惑〉 ― おとぎ話でよく見かけられる誘惑です。

UR01 〈初子〉 ― 悪い登場人物が狙う、価値あるものです。最も有名なのはルンペルシュティルツヒェンです。

UR04 〈レッドキャップ〉 ― おとぎ話の悪役です。


 

 同じ概念で2つのデザインを作っているのがいくつかあることに気づいていることだろう。両方が気に入っていれば、そのどちらを選ぶか(あるいは両方ボツにするか)をセットデザインが決められるように残すのだ。

UR06 〈ひとりでに鳴る竪琴〉 ― ひとりでに鳴る楽器は「ジャックと豆の木」など、おとぎ話によくあります。

UR08 〈踏みつける巨人〉 ― 人々を踏み潰すのが好きな巨人という素材を扱っています。

RR00 〈取引するインプ〉 ― ルンペルシュティルツヒェンを元にしています。

RR03 〈巨人落とし〉 ― 「ジャックと豆の木」の続きの「ジャック・ザ・ジャイアント・キラー」が元です。

RR11 〈糸車禁止令〉 ― 「眠れる森の美女」で、国王が城内のすべての糸車を壊して呪いの実現を防ごうとしました。

CG01 〈深い森の野伏〉 ― 赤ずきんちゃんを助けた善人です。


 

 ガラクはこの時点でこのセットに入っていたと思う(しかしまだカードは作っていないだろう)が、残るかどうかはわからなかったのでクリーチャーとしてこれを入れている。

CG03 〈狩人〉 ― 邪悪な女王が白雪姫を殺すよう命じた人物です。彼は最終的にそうできず、白雪姫を逃しました。


 

 山羊はトロールのカードに組み込まれた。

CG09 〈がらがらどん〉 ― 「三びきのやぎのがらがらどん」の山羊が元です。


 

 豚・クリーチャー・トークンを3体生成するようにしなかったのは、熊・クリーチャー・トークンを3体生成していたからだろう。セットデザインは、その両方を作った。

CG11 〈最も賢い豚〉 ― 「三びきのこぶた」が元です。

CG12 〈食物の籠〉 ― 赤ずきんちゃんがおばあちゃんの元へ持っていく籠が元です。


 

 「赤ずきんちゃん」を元にしたものの多くは作られなかった。大きな悪い狼は作られ、ローアンとガラクが視覚的にはこの物語を連想させている。

CG17 〈おばあちゃん訪問〉 ― これも「赤ずきんちゃん」をもとにしています。

UG01 〈野獣の呪い〉 ― 「美女と野獣」の野獣の変身がもとです。

UG02 〈金のゴーレム〉 ― 「ジャックと豆の木」で巨人からジャックが盗んだ品物の1つです。

UG03 〈魔法の豆〉 ― 「ジャックと豆の木」で、ジャックは子牛を魔法の豆と交換し、それは豆の木になります。その結果、巨人がジャックを追いかけます。

UG10 〈三匹の熊〉 ― 「ゴルディロックスと三匹のくま」が元です。

UG11 〈眠れる巨人の覚醒〉 ― 「ジャックと豆の木」が元です。


 

 靴屋も、ボツになったのが残念なデザインだ。

RG01 〈靴屋〉 ― 「小人と靴屋」が元です。

RG05 〈大きくて悪い狼〉 ― 「赤ずきんちゃん」と「三びきのこぶた」がもとですが、おばあさんを食べたが最後に腹を開いたときに生きていたことから、前者のほうが近いです。

RG06 〈道中での迷子〉 ― 「赤ずきんちゃん」をもとにしています。

RG07 〈空腹に引かれて〉 ― 「ヘンゼルとグレーテル」がもとです。

RG08 〈むかしむかし〉 ― おとぎ話のはじめ方です。


 

 《森での迷子》は、『闇の隆盛』からの再録だったはずである。

RG10 〈森での迷子〉 ― おとぎ話によくあることで、最も有名な例は「ヘンゼルとグレーテル」です。

MG01 〈大舞踏会〉 ― 「シンデレラ」の夢見るダンスです。

CZ01 〈三人の妖精〉 ― 「眠れる森の美女」の3人の妖精が元です。


 

 突然の来訪者も、ボツになって残念だ。

CZ02 〈突然の来訪者〉 ― おとぎ話によくあるもので、最も有名なのは「美女と野獣」の出だしでしょうか。

CZ04 〈荒れ地の巨人〉 ― おとぎ話にはさまざまな巨人がいます。

CZ06 〈一時的な消失〉 ― 登場人物、特に子供がいなくなるのは、おとぎ話によくあることです。


 

 おとぎ話が多すぎて、全て扱うことはできなかった。

CZ08 〈呪いの靴〉 ― 履いている人を踊り続けさせる呪われた靴を描いた「赤い靴」が元です。

CZ10 〈邪悪の除去〉 ― おとぎ話では、人々を呪う邪悪な魔法を取り除く方法がいろいろと存在します。

RZ01 〈妖精の媒介者〉 ― 妖精の女王はよく登場します。

RZ02 〈呪詛の魔女〉 ― 他者に呪いをかける魔女は、おとぎ話のそこかしこに登場します。「蛙の王子様」が有名です。

CA02 〈ねじ巻き自動機械〉 ― ねじ巻きで動く機械じかけの人形はおとぎ話によくあります。


 

 金の鍵も、採用されなかった深堀りである。

CA03 〈金の鍵〉 ― グリムの「金の鍵」が元です。

CA04 〈魔法の花〉 ― 魔女関係の素材の1つです。

UA01 〈魔法の馬車〉 ― 「シンデレラ」が元です。


 

 爪で一杯の樽は少しばかり陰惨すぎた。(そして知名度も低い。)グリム版の「シンデレラ」は、現在ほとんどの人が知っているものほど良くはないのだ。

UA03 〈爪で一杯の樽〉 ― グリムの原作「シンデレラ」が元です。

UA09 〈糸車〉 ― 「眠れる森の美女」と「ルンペルシュティルツヒェン」の両方を元にしています。

RL02 〈魔法の泉〉 ― 魔法の水はおとぎ話ではよくあります。

RL02 〈魔女の帽子〉 ― 魔女関係の素材の1つです。

RL04 〈おかしの家〉 ― 「ヘンゼルとグレーテル」がもとです。

RL05 〈森の小道〉 ― 「ヘンゼルとグレーテル」がもとです。


 

ドラフト・テーマ

 通常、展望デザインはドラフト・アーキタイプに挑戦するが、これはセットデザインが完全にやり直す。最もうまくいくのは、各陣営のメカニズム的特徴がセットに焼き込まれている陣営セットである。

 ドラフトするプレイヤーのために組み込んだ10個のデッキは以下の通りです。

  • 白単色 ― これは白の宮廷に関わるもので、「忠誠」の広く並べる戦略を強調しています。
  • 青単色 ― これは青の宮廷に関わるもので、「知識」のコントロール戦略を強調しています。
  • 黒単色 ― これは黒の宮廷に関わるもので、「持続」によってクリーチャーを戻すミッドレンジ・デッキを扱っています。
  • 赤単色 ― これは赤の宮廷に関わるもので、「勇気」を使ったアグロデッキを扱っています。
  • 緑単色 ― これは緑の宮廷に関わるもので、「強さ」のランプ戦略を扱っています。
  • 白黒 ― 攻撃的な騎士部族デッキです。
  • 青黒 ― エンチャントを扱う、遅いデッキです。
  • 青赤 ― アーティファクトを扱う、テンポ・デッキです。
  • 赤緑 ― 人間以外を扱う、ミッドレンジ・デッキです。
  • 緑白 ― 成長を中心にしたクリーチャー中心のデッキです。

『Archery』と『Baseball』の違い

 私が展望デザインを提出した時点では、エルドレインを舞台にして、1セットは宮廷内での明るい版、1セットはローアンとウィルが父親を助けに森の中に踏み込む暗い版という2セットを作る予定だった。セットデザインのかなり初期に、これを1つのセットにまとめることを決めた。この決定は、さまざまな理由から下されたものである。

  1. 森の中を舞台にしたおとぎ話は多いが、森の外を舞台にしたものほどのリストにはならない。
  2. 部品的デザインを成立させている理由の一部は、可能な限り多くの物語から引用することであり、より良いセットにするためにはすべての物語を一度に使えるようにすることである。
  3. ローウィンは光と闇の対比で特徴づけられていたので、セットの雰囲気がさらに『ローウィン』に近づいてしまう。この2つの次元には明確な違いを置きたい。
  4. おとぎ話を扱うことを不安視する人々がいて、最初の訪問で大成功を収められるようにしたい。このセットが成功すれば、再訪することができて、後で追加のセットを作ることができるだろう。

 

 おとぎ話の歴史を追ってみると、これは興味深い進化を遂げています。おとぎ話は最初、倫理物語として始まり、最初の版は非常に厳しく生々しいものでした。その後、家族向けのものへと変化していき、雰囲気も明るいものに変わっていきます。ポップカルチャーで描かれる現代の家族向けのものは、この段階のものをもとにしています。さらにおとぎ話は脱構築主義の段階に入り、暗く大人向けのものになっていきました。

 『Archery』は、この明るく楽天的な段階の、悪いものが脅威ではあっても最終的には正義が勝つという、おとぎ話を再現しようとしています。『Baseball』は、初期のグリム兄弟や後の脱構築主義時代のおとぎ話の組み合わせで、少し暗くなります。正義が勝つとは限りません。

 これによって、クールな全面変化が可能になるだけでなく、同じ素材を違う視点から再利用することができるのです。『Archery』では、ゴルディロックスは詮索好きな子供になりましたが、『Baseball』では望まれざる侵入者になるかもしれません。

 『Archery』の先行デザインでは誘惑というテーマが提案されましたが、プレイテストを通してそのデザインは暗い雰囲気を持つということがわかり、そのテーマを『Baseball』に温存しました。


 
めでたしめでたし》 アート:Matt Stewart

総括

 上述の通り、この文書は展望デザイン・チームとセットデザイン・チームの意思疎通の手段の1つに過ぎない。私はこの文書を作るときに、考えていなかったかもしれないことに対処したいので、私は常に質問を探しているのだ。

 『Archery』は複雑なデザインで、私はその本質をこの文書にまとめるべく尽力しましたが、7000語を超えていてもすべてを表せたかは疑わしいものです。誰か疑問がある人がいれば、遠慮せずに聞いてください。私は喜んで、複数の要素がお互いにどう編み込まれているのかを説明します。

 読んでいただきありがとうございました。

――マーク・ローズウォーター


 

 これで終わり。これが、7000語以上に及んだレインの王権』の展望デザインの提出文書だ。楽しんでもらえたなら幸いである。先週言ったとおり、このようなものをもう一度読みたいと思うなら(あるいは二度と見たくないと思うなら)メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrInstagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、デザイン中に最も恐ろしいものに出会った話をする日にお会いしよう。

 その日まで、私は『エルドレインの王権』の作成を楽しんだのと同様、あなたがそれをプレイすることを楽しみますように。

(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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