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Making Magic -マジック開発秘話-
ロード・オブ・ザ・シング/王の仲間
読み物
Making Magic
ロード・オブ・ザ・シング/王の仲間
Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru.
2012年3月19日
ロード特集にようこそ。今回は、特定の部族を助け強化するという古来から伝わるクリーチャーについて解き明かしていこう。これはデザインに関するコラムなので、マジックの歴史を紐解き、これまでの19年間にデザインされたロードたちの作られ方を見ていこうと思う。(そう、マジックはこの7月で19歳になるのだ)
さて、その前に、いくつかはっきりさせておきたいことがある。「ロード」というのは、1つあるいはそれ以上の特定のクリーチャー・タイプを持つクリーチャーすべてを(最近は自分のコントロールするものだけをというものも多い)強化するクリーチャーである。そういう効果を持つクリーチャー以外のカードや、特定のクリーチャー・タイプのクリーチャーの数によって自分を強化するクリーチャー・カードはロードに含まない。
最初に
今回のコラムを2部作3部作にしないために、今回取り上げるのはゴブリン、マーフォーク、ゾンビの3種類のクリーチャー・タイプだけに絞ることにした。ここで一つ問題、なぜこの3種類のクリーチャー・タイプを選んだか、諸君には分かるだろうか?
どんなゴブリン、マーフォーク、ゾンビがセットにいたかということを踏まえれば、最初の理由は非常に単純なものだった。
そう、ロードたちは、バニラ・クリーチャー(や飛行を持たせる起動型能力しか持たないクリーチャー)に価値を持たせるために作られたのだ(《食屍鬼》は作られてから何年も経ってからゾンビになっただけで、アルファ版の当時はゾンビではなかった)。リチャードは、セットに基本的なクリーチャーが必要であることを理解していて、一方でロードを作ることによってそれらのカードが状況によって有効になるようにしたのだ。
もう一つ、リチャードがロードを作ったことの理由として、ゴブリンやゾンビについてはそれらのクリーチャーが集団生活を営んでいるというフレイバー的要素を挙げた。プレイヤーがゴブリンらしいゴブリン・デッキ、ゾンビらしいゾンビ・デッキを作れるようにしたのだ。
リチャードがそれらの3種類のカードをデザインする際に行なった重要な決定について、もう一度確認しておこう。
・それらのカードは自分のコントロールしていないものも含んでそのクリーチャー・タイプのクリーチャーすべてに影響する。
これらのカードはフレイバーから起こったのだという。リチャードは、《ゴブリンの王》が戦場にいることによって、敵方のゴブリンまでも意気上がると考えたに違いない。時を経て、我々はロードが自分のクリーチャーだけを助けるようにするほうがいいという知見を得た。こうすることによって、開発部用語で言う「利点のみ」にすることができた。出すべきか出さざるべきか悩む必要がなくなったのである。たとえば《ゴブリンの王》は相手の方が多くのゴブリンを出している場合には良くない選択肢であった。
・クリーチャー・タイプは「ロード」で、強化されるクリーチャー・タイプを持たない。
アルファ版では、クリーチャーはクリーチャー・タイプを1つしか持たなかった。リチャードはロードの雰囲気を示すために、この3種にロードというクリーチャー・タイプを持たせたのだ。ロードを複数体出していた場合に、奇妙なことが起こった。《ゴブリンの王》や《アトランティスの王》はどう見てもそれぞれの種族である。これらのカードは後にその種族のクリーチャー・タイプを得たのだが、「他の」その種族にのみ影響を及ぼすようになった。アルファのロードが2体出れば、お互いが強化されるようになっているのだ。フレイバー的な理由からいくつかの例外はあるものの、ロードはその強化する種族のクリーチャー・タイプを持っている。自分を強化しないのは計算を簡単にするためである。そして、ロードというクリーチャー・タイプは消滅したので、ロードと呼ばれるクリーチャーはどれも現在ルール上はロードではない。
・これらのカードはすべて2つずつの全体効果を持つ。
アルファ版では、他のクリーチャーを強化する場合、それらに2つの能力を持たせることによって処理していた。それぞれについて、1つはその対応する色の土地渡りであった。2つめの能力は、2種類については+1/+1の修整、他の1種類は再生能力であった。+1/+1修整は後々までのロードの強化の基本になった。
・これらのクリーチャーは対応する色の2マナが必要である。
アルファ版にロードが存在するクリーチャー・タイプ3種類には、一つの共通点がある。それは、どれも完全に単色であるということだ。そのため、各ロードはマナ・コストにその色のマナ2点を含んでおり、作りたいデッキは完全に単色になるという、当時非常にやっかいな制限がなった。今、部族ブロックを組む場合、各クリーチャー・タイプは2色以上に存在するようにしている。
・クリーチャーはどれもほぼ同じサイズ(2/2または2/3)で、点数で見たマナコストもほぼ等しい(2か3)。
リチャードがしたもう一つの決定は、ロードを小さく軽いものにするというものだった。この理由は、デッキをこの戦略に基づいて組む場合、ロードが速く出せるようになるからである。様々なサイズやコストのロードを試してみたが、リチャードが最初に下した決定が今でも標準になっている。
さて、一番最初の姿について確認が取れたところで、いよいよロードの進化を追いかけていくことにしよう。まずはゴブリンからだ。
王になるのはいいことだ
《ゴブリンの将軍》
今回語っているロードのほとんどは、基本セットか部族をテーマとしたブロックで作られたものだ。このカードだけはその例外である。《ゴブリンの将軍》はポータル・セカンドエイジで作られたものだ。ポータル(ポータル、ポータル・セカンドエイジ、ポータル三国志)について知らない諸君のために説明しておくと、ポータルはより単純な入門向けの商品で、マジックを教えるためのものとしてデザインされていた。このカードの強化が誘発型になっているのは、ポータルには常在型能力が存在しなかったからである。カード・タイプは、土地、クリーチャー、ソーサリーだけだったのだ。
ゴブリンのロードをポータル・セカンドエイジに作ったことの興味深い副次効果として、ゴブリンは非常に攻撃的になった。強化を得るためには攻撃しなければならないので、このデッキを使うプレイヤーは攻撃的になるのだ。また、これは自分のクリーチャーだけを強化する史上初のロードでもあった。
ゴブリンのロードに関する次の大変革は、初めて部族テーマを強く打ち出したブロックであるオンスロート・ブロックの間に訪れた。このロードはそれまでのものとはいくつもの意味で大きく違っていた。まず、有利になる能力を与えるものではあるが、同時に不利になる能力も与えるのだ。次に、カードの能力はそれまでのロードと違い、1ターンだけに限られている。オンスロートにおいては、ロードの能力は自分のものだけでなく、相手のものにも影響を及ぼしていたことに注意が必要である。
このカードはクリーチャーを強化するのではなく、クリーチャー全体で呪文を唱える能力を与えるという、いわばグレーゾーンのカードだが、ここに入れることにした。このサイクル(同じようなカードが他に4枚あり、そのうち1枚は後で触れることになる)を作ったのは、他の形のロードを作る方法を探していたからである。私を導いたフレイバーは、真の指導者は仲間達と協力して、個人ではできないことをする。クリーチャーを同じクリーチャー・タイプで作ったのは、それを数に入れられるようにするためである。
より少数のクリーチャーでより弱い効果を作ることにも挑戦してみたが、多数のクリーチャーで大きな効果を持つもののほうが巧く働くということがプレイテストで証明された。見た目もよく、使っても楽しかったのだ。自身の効果で破壊されることがないよう、当然、プロテクション(赤)を持たせることになった。
《ゴブリンの監視人》
《ゴブリンの将軍》と同様、このロードもすべてのゴブリンに影響を及ぼす一時的な効果を持つ。このカードとの最大の違いは、そのクリーチャー・タイプのクリーチャーをコストとして使うということである。ゴブリンすべてを強化するためには、(本人の意志に関係なく)ゴブリン1体を生け贄に捧げなければならないのだ。もう一つこのカードについて言うなら、フレイバー・テキストに含まれるゴブリンの名前「ファート」を見て笑ってしまったということだろうか。
《ゴブリンの戦長》
これはまた別のサイクルの一部である。このサイクルの新しいところは、戦場にまだ出ていないクリーチャーを助けるということだろう。《ゴブリンの戦長》は他の戦長サイクルのカードと同じように、手札にあるそのクリーチャー・タイプのカードをよりよいものにする。デザイナーとしては、このカードの速攻を与えるという部分がすばらしいメカニズム的なシナジーを作るのみならず、仲間を加速させるというフレイバーにもそぐうのでお気に入りである。
《狂い婆》
次にゴブリンのロードに訪れた転機が、次の部族ブロックであるローウィン・ブロックの間だったことは驚くべきことではない。ローウィン・ブロックから、ロードは自分のクリーチャーだけに影響を及ぼすようになった。もう一つ大きな変化として、少なくともローウィン・ブロックの世界では、いくつかの部族が1色だけでなく複数の色に存在するようになったということが挙げられる。そしてこれが空前絶後の黒単色ゴブリン・ロードである。もう一つここで加えられた変更に、《狂い婆》は古典的なロード(すべてのゴブリンに修整を与える)が、ゴブリンを対象とする能力を持ったということがある。
ローウィンの突飛なカードを紹介しよう。このデザインは複数種のロードと呼ばれるものだ。これらのカードの背景となった考え方は、2種類のクリーチャー・タイプのロードであるが、両方に2つずつの能力を与えるのではなく、それぞれに1つずつの能力を与えるというものである。このカードが作られたのはフレイバー的な理由ではなく、ローウィン・ブロックのドラフトで複数の種族をピックするように差し向けるためだった。この種のカードを序盤にピックしていたら、部族1種ではなく2種について考えることになる。一般論では、この種のカードは我々が望んだほどの影響をもたらさなかったが。
《ボガートの汁婆》
このカードもロードに分類していいかどうか悩むところだが、まあ、ロードと言えなくはないのでここに入れておこう。《ボガートの汁婆》の面白いところは、墓地にあるゴブリンに影響を及ぼす効果があるということだ。《ボガートの汁婆》が戦場にあるなら、ゴブリンが死亡するということの意味を根本から再評価しなければならない。自分のゴブリンが戻ってくると分かっていれば、より攻撃的になるか、あるいは相打ちを厭わなくなることだろう。《ボガートの汁婆》が赤黒で作られたのは、赤黒ゴブリン・デッキを作って欲しかったからであった。
《蛙投げの旗騎士》
旗騎士サイクルが、スカージの戦長サイクルの延長上にいるのは言うまでもない。大きな違いとしては、サイクルを種族と職業の2つのクリーチャー・タイプにまたがらせたということがある。種族と職業の組み合わせは自然なものを選んだので、両方のクリーチャー・タイプを意識するのは非常に容易になった。そして種族と職業の両方に関連するために、このカードには戦長の2つめの強化能力は入らなくなり、ロード自身にだけキーワードを持たせるだけになった。
《ゴブリンの酋長》
セットに必要なカードを新しくデザインすることが認められるようになったということは、基本セット2010の大きな特徴である。《ゴブリンの酋長》は《ゴブリンの王》の現代版である。マナ・コストやパワー/タフネスは《ゴブリンの王》と同じままに保たれているということにお気づきのことだろう。このカードも同様にゴブリンに+1/+1の修整を与えるものだ。ただし、このカードが作られたのはローウィン・ブロックの間なので、この効果は自分のゴブリンにだけ影響を及ぼすようになっている。もう一つの変更は、山渡りを与えるのではなく、速攻を与えるようになったということだ。これによってこのカードはより多くのゲームで実用的になり、また多少強くなった。ロードが速攻を持つ理由は、自身を強化しないのと同じ理由である。ロード自身の能力が常に自身に影響を及ぼすのなら、それは別枠で書いておくことで計算の手間が減り、プレイヤーにわかりやすくなるのだ。自身に能力を与えるのであれば、それを最初から持たせておけばいい。
マーフォークほどのフォークはいない
さて、次はマーフォークのロードを見ていこう。
《メロウの騎兵》
《アトランティスの王》の次にマーフォークのロードが登場したのは、遠く時を挟んだローウィンであることにお気づきのことと思う。この理由は、マーフォークがマジック世界から姿を消しかけていたからである。クリエイティブ・チームは、水棲生物が地上の戦いを描いたゲームであるマジックにはふさわしくないと考えており、マーフォークを排除できないかと考えたのだ。インベイジョンはマーフォーク最後の楽園となり、オデッセイ・ブロックには伝説のマーフォークが唯一残るだけの予定だった。
しかし。マーフォークに関しては面白い話(リンク先は英語)があるのだが、一言で言うなら、プレイヤーがそれを許さなかったということになる。そこで、部族をテーマとした2つめのブロックであるローウィンでは、マーフォークは凱旋を果たしたのだ。このためか、ローウィンには大量のマーフォークのロードが存在している。
《メロウの騎兵》は+1/+1を与えるロードだが、別の使われ方をしていた。戦場にいるマーフォークを強化するだけでなく、2つめの能力によってマーフォークを唱えることのメリットが増えていたのだ。タップしたりアンタップしたりする能力は、マーフォークにコントロール的な性質をもたらした。すべての部族がビートに走りがちなので、我々はそこに一石を投じることにしたのだ。
マーフォークはまず青、次に白の部族なので、強いコントロール性を持ることになった。素早く数を揃えてなぎ倒すのではなく、ゲームを支配するような効果を持つほうがふさわしい。そして、支配してしまえば、マーフォークにはいくつかの勝ち筋があるのだ。
このカードはオンスロートの《スカークの炎の司令官》と同じサイクルに位置づけられるカードである。《秘密を溺れさせる者》はクリーチャーを強化するのではなく、クリーチャーを小型の削り機に変えるものだ。(「削る/milling」とは、通常ライブラリー切れを起こさせる目的で、プレイヤーのライブラリーにあるカードをそのプレイヤーの墓地に置くことを意味するスラングである。)
《水流を読む者》
ローウィンのマーフォークの特徴に、マーフォークをタップすることで能力を起動するロードがいる一方で、マーフォークがタップ状態になることで誘発する能力を持つロードもいるということが挙げられる。たとえば、《秘密を溺れさせる者》と《水流を読む者》が戦場にある場合、マーフォークを1体タップすることでカードを1枚削りながら1点のライフを得ることができるのだ。
ローウィンのマーフォークについて気に入っているのは、ロードは+1/+1を与えるだけでなく無尽のデザイン空間を持つと言うことを示してくれたことだ。他の「タップされると誘発する」能力を持ったクリーチャー(《休賢者》《呪文書の盗人》《石ころ川の群れ長》《高潮測り》《深みの古参兵》)は、それ自身がタップされたときにのみ誘発する。《水流を読む者》はロードとして働き、その能力をすべてのマーフォークに与えるわけだ。
《石ころ川の旗騎士》
モーニングタイドの旗騎士サイクルからもう1枚。他の旗騎士と同様、これもその色が主である種族と職業をそれぞれ助けるものである。青は、マーフォークとウィザードが該当する。
《川床の水大工》
グレーゾーンと言わざるを得ないカードがもう1枚。これはすべてのマーフォークに能力を与えるわけではないが、任意のマーフォークに能力を与えることができる。このカードのデザインにおいて突飛なのは、2枚出しておきたくなることだ。2つのタップ能力はシナジーを有しているが、1枚では両方を使うことはできない(まあ、《ぐるぐる》ででも起こさない限りは)。
《川の案内者、シグ》
《川の案内者、シグ》は《川床の水大工》と同様のグレーゾーンに位置する。《川の案内者、シグ》が持つ長所には、プロテクションを与える能力は様々な面においてプロテクションを持っているのと同じことであり、対戦相手の行動を妨害することができうるということがある。
基本セット2010以降の基本セットでは、必要な中心カードを過去のカードから探すのではなく作ることができる。《アトランティスの王》にはいくつかの問題があったが、それを《マーフォークの君主》は解消している。まず、2マナは青においては攻撃的すぎるという問題があった(歴史上、イベントにおいてマーフォークが存在するかどうかは、《アトランティスの王》の存在にかかっていた)。そして、ロードの能力の2つめで与えられた島渡りがあまりに対戦相手によって有効無効の差が激しかったので、ブロックされないというものになった。どちらも「ブロックされない」能力だが、全体強化ではなくタップを要する起動型能力に変わったことにも注目してほしい。
《珊瑚兜の司令官》
このカードは最初はマーフォーク・ロードではなく、ただのアンコモンの青のLvアップ・クリーチャーだった、と思う。しかしデベロップの際に(エルドラージ覚醒では私はデザイン・チームではなくデベロップ・チームのメンバーだったのだ)枚数調節のためこれをレアにすることになった。このときにレアらしく、また刺激的にするためにロード能力が加えられたのだ。
のーみそー
《アンデッドの王》
ここで挙げてきたロードのほとんどは、基本セットか部族をテーマとしたブロックで作られたものだ。では、なぜこのカードはプレーンシフトで作られたのか? それは、基本セット2010の存在によって失われたあることに起因している。当時は、基本セットに必要なカードがあれば、どこかの拡張セットでそのカードを作ってそれを再録するという形をとらなければならなかったのだ。
《アンデッドの王》は、《ゾンビ使い》に不満を感じていたために作られたカードである。クリーチャーを強化しないロードであり、マナが必要な再生を自分の仲間たちに与えるのはイカした能力とはいえなかった。《アンデッドの王》はそれらの問題を解決している。+1/+1を与えるようになり、またゾンビらしい形で墓地から蘇らせる能力がついたのだ。
このカードがプレーンシフトに入ったのは、次の基本セット(第8版)に入れるために使えるセットだったからに過ぎない。
《墓地生まれの君主》
《スカークの炎の司令官》サイクルからもう1枚。このサイクルの一番面白いところは、ゾンビのロードがもっともゾンビらしいメカニズム――墓地からの復活――と関連づけることができているということだろう。このカードは、時とともにゆっくりとゾンビを増やしていくという点では《終わり無き死者の列》の先祖とも言える。
《有毒グール》
このロードには2つの面白い性質がある。まず、「戦場に出たとき」の誘発型能力をすべてのゾンビに与えるということ。次に、ゾンビを強化するのではなくゾンビ以外のすべてのパワーやタフネスを減らすということだ。そしてイカしたフレイバーを持つこのカードは、ゾンビのロードの中でも私のお気に入りの一品である。
《アンデッドの戦長》
このクリーチャーはスカージの戦長サイクルの1枚だ。このサイクルのクリーチャーは対応する部族のコストを{1}減らし、他の能力を与える。《アンデッドの戦長》の与える能力は+2/+1を与えるものであり、このサイクルの白のカード《ダールの戦長》は+1/+2を与えるものである。この比較を見て懐かしく思う諸君はいるだろうか? そう、これは《邪悪なる力》と《聖なる力》の末裔なのだ。
《復讐に燃えた死者》
スカージからのゾンビのロードは、闇の隆盛で出た最新のロード《戦墓の隊長》の先駆者とも言える。このゾンビのロードはすべてのゾンビに死亡時の誘発型能力を与える。ゾンビで死亡時の誘発型能力が巧く働く理由は、ひとえに大量に出るからである。死亡時の誘発型能力があるおかげで、ブロックされたとしても対戦相手のライフ総量を減らすことができるのだ。
《死の男爵》
ゾンビのロードは他のロードに比べて部族をテーマとしていないセットで作られることが多いということにお気づきの諸君もいるだろう。その理由は、おそらくだが、ゾンビはフレイバー的な理由から先導者を必要とするからではなかろうか。ゾンビは群れで存在し、そのほとんどは思考能力を持たないのでゾンビのロードという存在がしっくりくるのだ。
《死の男爵》は、ゾンビのロードというよりもアンデッドのロードを再現しようとして作られたカードである。そのため、ゾンビだけでなくスケルトンも恩恵を受けるようになっている。また、接死を与えるのはアンデッドが疫病を帯びているということを再現しているのだ。
《墓地を刈り取るもの》は基本セット2010にあわせて《アンデッドの王》に微調整を加えたものである。まず、強化が自分のクリーチャーにだけ及ぶようにした。そして、墓地から蘇らせる能力を雰囲気を保ったまま弱体化させた。私が気にしているのは、細かなことだが、《墓地を刈り取るもの》が生成するゾンビは基本的に3/3になるのだが、ここで計算が必要になっているということだ。能力的にこうせざるを得なかったのは確かで、特に問題は起こっていないのだが、こういった細かいことに気を配り、何とかしてよりよくすることはできないかと考えるのは私の仕事なのだ。
《戦墓の隊長》
つらつらとゾンビのロードを見てきたが、《戦墓の隊長》は過去のロードを組み合わせたものにすぎないのは面白いことだ(古い屍体をつなぎ合わせた――まさにゾンビそのものだな)。このカードを作った時、ゾンビ・デッキのクリーチャーに必要なメカニズムを探していた。この考えは何年か前にも当然行なったもので、その時に考えたのも大抵は私で、従って同じ思考パターンになるのは当然のことだ(やあ、去年のマロー!)
このカードが闇の隆盛で作られたのは、怪物の脅威を高めるため、そしてリミテッドにも影響を及ぼすようにアンコモンに新しいロードを加えることでこのテーマを推し進めるためだった。また、イニストラードに部族要素は必要だったが、それだけでセットを埋めてしまうことは臨んでいなかったので枚数を少なく抑える必要があった。闇の隆盛でその制限を取っ払ったのは、影響を受けるリミテッド環境は3ヶ月限りだと分かっていたからである。ゾンビのいちファンとして、私は《戦墓の隊長》の出来にとても満足している。
このカードのイカしたところと言えば、今までもゾンビのロードで使ったことがあるメカニズムに全く違うフレイバーを持たせたということだ。このカードについてよく受けた質問は、なぜ作られるゾンビは青でなく黒なのかというものだった。フランケンシュタインの怪物のようなゾンビなのになぜ黒なのかというのだ。答えは非常に当たり前のことで、イニストラード・ブロックの2/2ゾンビ・トークンは黒だからだ。1種類しかいない。ゾンビ・トークンを出すカードは、必ず同じゾンビ・トークンを出すしかないのだ。諸君の中にはトークンの種類(我々はトークンの種類を減らすため、可能な限りトークンを再利用することにしている)が多くなろうと気にしない者もいるだろうが、開発部は意識しているというわけだ。
ダンスの王
見てきたとおり、ロードはアルファ時代から長い長い道のりを歩んできた。この道のりを諸君が楽しんでくれたなら幸いである。
それではまた次回、視点を示すときにお会いしよう。
その日まで、あなたのクリーチャーが必要な導きとともにありますように。
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