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三田村リミテッド研究室

三田村リミテッド研究室:ミラディン包囲戦編

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三田村リミテッド研究室

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By 三田村 和弥

 「あなたはミラディン?それともファイレクシア?」

 こんな挨拶がそこらじゅうで飛び交うプレリリーストーナメントを体験してみてどうでしたか? 公式にはファイレクシア派とされている三田村です。こんにちは。

 同じ新セットに収録のカードを陣営別に二つに分け、それぞれを別々のブースターに封入。参加プレイヤーにどちらの陣営に付くかを選ばせる。とても面白いアイディアだったと思います。
 ファイレクシア派の自分としては、どうせ「ファイレクシア軍の侵攻が激しくなってきて~」というストーリーが展開されている以上、特製陣営ブースターもファイレクシア側が強く設定されているんだろうと予想しています。予想は当たっていたでしょうか?

 この原稿が掲載されるのはプレリリーストーナメントの翌週、発売記念パーティーの前を予定していることもあり、今回の三田村リミテッド研究室ではプレリリーストーナメント用の特製陣営ブースターではなく、発売記念パーティーでも使われる市販の通常ブースターを前提にして話を進めていきます。
 陣営ブースターを用いると、どうしてもファイレクシア側なら黒にカードが集中し、逆にミラディン側なら赤・白に集中するという傾向があるので、どの色をプレイすべきか頭を悩ますことが少なくなってしまいます。色が合わない強力カードをやむなくサイドボードに眠らせてしまう機会も格段に減っていて、デッキ構築に苦心するところこそがリミテッド、特にシールド戦の醍醐味であると個人的には思っているので、ちょっと物足りないだろうなと感じてしまいます。

 まあ、陣営ブースターに関する話はここら辺で置いておいて、今回の三田村リミテッド研究室の内容について説明します。今回もいつもどおり、新セット「ミラディン包囲戦」の発売に合わせて、「ミラディン包囲戦×3+ミラディンの傷跡×3」を使ったシールド戦の攻略法を解説していこうと思います。


継承と変化

 ミラディン包囲戦がリミテッド的にはどのような特徴を持ったセットでであるか、ということを確認するところから始めようと思います。

 何度も繰り返して言っているかも知れませんが、マジックにおいて自分が今からプレイするフォーマットの特徴を理解しておくというのは非常に重要です。例えば、あなたはレガシーでマーフォークデッキと対戦しているとしましょう。この時、対戦相手が土地を全部タップしていても、《目くらまし》に対する警戒は忘れないというのは常識ですが、これが常識であると分かるのはレガシーという環境ではどんなカードが使われているかという理解があってこそです。


 ミラディン包囲戦は、アーティファクトと友好関係にあるミラディン軍と、毒による侵攻を武器にするファイレクシア軍の戦いを描いたミラディンの傷跡の続編です。基本的にはミラディンの傷跡ブロックの2大テーマである「金属術」と「感染」が引き続きフィーチャーされています。
 ミラディンの傷跡ではミラディン軍は主に赤と白、ファイレクシア軍は黒と緑に分布していたこの勢力図も、ストーリーが進むにつれた変化が見られるようになっています。ミラディンの傷跡では黒にも金属術を持ったカードが収録されていましたが、ミラディン包囲戦では一枚も収録されておらず、黒は完全にファイレクシア軍に占められるようになりました。さらにファイレクシア軍の攻勢はすさまじく、ミラディン軍の砦の一角、白にすら2枚の感染持ちクリーチャーを送り出すに至っています。

 ミラディン包囲戦の収録カードをざっと眺めてみると、色の役割に変更があったこと以外基本的にはミラディンの傷跡とそれほど大きくは変わらないという印象です。
 ですからミラディンの傷跡で強かったカードは依然として強いでしょうし、ミラディン包囲戦のカードも同じようなさじ加減で評価すれば大きく間違ったりはしないと思います。シールド戦でも、今までのミラディンの傷跡×6の時のセオリーを微修整するだけでいけそうです。

 前回のリミテッド研究室では大型セット発売前だったというのは言い訳でしかないですが、やはり十分な考察ができていたという訳ではなかったので、ここでもう一度ミラディンの傷跡だけの時のセオリーとミラディン包囲戦が加わりどこを修正すればいいのかという観点で説明をしていくことにしようと思います。


ボムと除去

 シールド戦の本質はミラディンの傷跡ブロックでもやはり変わりません。ボム(爆弾)と除去。これに尽きます。
 一枚でゲームに勝ててしまうような強力なカードのことを通称ボムと言います。ミラディンの傷跡ブロックには、というか最近のセットのレアには爆弾と言う他ないような強烈な効果を持つカードが多数収録されています。特に《太陽破の天使》、《蔵製錬のドラゴン》、《伝染病エンジン》の3種は何が何でもお目にかかりたいというほど。これの他にも《ワームとぐろエンジン》、《大霊堂の王、ゲス》、プレインズウォーカー各種など数えればまだまだ出てくるでしょう。

 ミラディン包囲戦でも《ファイレクシアの再誕》、《聖別されたスフィンクス》、《飛行機械の組立工》など使われたら吐きそうなカードが収録されています。このようなボムは普通のカード何枚分もの仕事を一枚でこなしてしまうことが多いので、ボムがデッキに多く入っていることこそがゲームを取るための近道であるのは自明の理であります。

 ボムがパックから出てくるかどうかは正に神のみぞ知ることでしかないので、我々プレイヤーにできる事は祈ることしかありません。かつての世界チャンピオン三原槙仁が「マジックは祈るゲームだ」と言っていたのを思い出します。
 しかし、ボムに対抗するためのカードももちろんあり、それが除去。ボムを破壊することができれば、少なくとも負けはしないので、リミテッドで除去が重要であるのはボムが強力であることの裏返しということになるでしょう。

 ミラディンの傷跡ブロックは普段のブロックよりも除去の枚数が多めになっています。アーティファクトをフィーチャーしたブロックである関係上、普段は見向きもされないようなアーティファクト破壊も除去として使えることがその理由です。
 ボムを破壊する除去がいつもより多いのならば、ボムなんか大したことがないんじゃないかという見方をすることができるかもしれませんが、ここでもアーティファクト・ブロックであるがゆえのからくりで、除去だけでなくボムに出会うこともいつもより多くなっています。

 そのからくりの正体は、アーティファクトのボムはパックから出てさえしまえばほぼ確実に使用されるというごく単純なもので、例えばアーティファクトのボムとして《鋼のヘルカイト》を挙げると、《鋼のヘルカイト》のレアリティは通常レア、これがパックから出る確率は2/121(大型セットで特定のレアは通常レア53種×2+神話レア15種の121枚から2枚の確率で出現します)なので、シールド戦でミラディンの傷跡を6パック開封するとすれば約9.5%、すなわち、約10人に1人がこのレアを使うことになるということです。先ほども述べたように、ボムは《鋼のヘルカイト》だけでなく多数あるわけで、大抵のプレイヤーがボムをしかも複数持っていることもざらという解釈で間違っていません。


 ボムと除去の重要性に関連して、ボムの中にもランクがあり、それが何によって決まっているかということについての話をすることにしましょう。
 試合を決めてくれると信じてプレイしたボムも相手の除去で簡単に処理されてしまったら非常に残念です。やはり処理する事が難しいボムほど信用性が高い、ランクが高いといえるかと思います。
 処理のし易さという見方をすると、アーティファクト破壊は大抵のプレイヤーが持っている事を考えるにアーティファクトのボム、《鋼のヘルカイト》や《飛行機械の組立工》など、さらに言えばアーティファクト・クリーチャーのボムは少し頼りないかなという感じになります。

 それに対し色付きのボム、《蔵製錬のドラゴン》、《大霊堂の王、ゲス》、《聖別されたスフィンクス》は処理できるカードが《拘引》、《病気の拡散》など非常に限られ、時には対戦相手のデッキにこれらが入っておらず、引いた=勝ち、となることさえあるでしょう。逆に言うと除去にもランクがあるということです。

 ここまでのことを考えると、ボムと除去、これらを多く使えるようなデッキ構築がシールドにおいて勝利への道であると言う結論になります。パックから出てきたボムと除去を最大限使える色の組み合わせを見つけ、ミラディンの傷跡にはマナマイアや2色ランド、ミラディン包囲戦には《太陽の宝球》などのまな調整用のカードがあるのでこれらを活用してランクの高いボムと除去に手を伸ばすというのが最優先事項になります。


戦略と構造

 それではこのボムと除去以外の部分はどうでも良いのかと言われればそんなことは決してないのは当然で、一般にボムは単体で決着をつけてしまうほどのカードパワーの者のことを言うので大抵は6マナ~の重めのコストになっています。そのような高マナ域に達するのはゲームの中盤以降なわけで、そこに辿り着くまでに生きていなければ話になりません。

 その脇を固める部分というのは、普通であればそのブロックのテーマとなっているメカニズムが担うことになる場合が多いです。今回のミラディンの傷跡ブロックでは、金属術や感染がそれに当たるわけです。ここからはシールド戦における各メカニズムについての解説を行っていきましょう。

 一つ目は分かりやすいところ、感染についてから始めます。感染のメリットについてはもう分かりきっていることでしょうから簡潔にいうと、ライフで20点削ることよりも毒カウンターを10個与える方が半分で済む分楽、感染持ちクリーチャーはサイズの大きいクリーチャーと戦闘しても-1/-1カウンターの形で傷跡を残すことができる、ということが挙げられます。さらには毒はライフと違い回復不可能、また増殖という絡め手でその侵食を進めることができるなどのメリットもあり非常に魅力的な戦略です。

 反対にデメリットは、感染を持たない通常クリーチャーとの親和性が悪く、ライフと毒の2箇所を攻めることになると対戦相手に仮想的なライフをプレゼントしているのと同等になってしまうという点になります。
 このデメリットはデッキに入っているクリーチャーを感染持ちにすれば万事解決、とはいえシールド戦ではパックからその感染持ちクリーチャーが出なければ話にならないわけです。
 全部のクリーチャーが感染もちというのは実際に不可能とは言わないものの現実的ではないわけで、どれくらいの数のクリーチャーが感染を持っていればこの戦略が成り立つかというと、経験上の話でしかなくて申し訳ありませんが、大体11~12体というのがその目安になるかと思います。ミラディンの傷跡×6のシールドの場合、この11~12体というのも実は難しく、というのもミラディンの傷跡にはファイレクシアのマークの印刷されたカードは全体の20%しかないからです。感染ベースのデッキになるのは20回に1回、グランプリの初日を1敗で乗り切れてしまうほどの強力なデッキとなると50回に1回あるかどうかという割合でしかないと思います。

 ただ、これからのミラディン包囲戦の入ったシールド戦ではこの構図も変わることになるはずで、黒のカードのほぼ全てがファイレクシア側でさらに今までの黒・緑・青に加えて白にも勢力を伸ばしたことにより、この11~12体という基準も満たしやすくなるでしょう。いままでで言えば感染は黒緑と相場が決まっていましたが、これからは他の色の組み合わせでも可能になります。とはいえ、黒+Xという感染になるのは変わらないですが。

 次は感染の対になる金属術に関して、ミラディン軍のテーマである金属術のメリットはアーティファクトを3つコントロールしているという条件下において、金属術を持つカードは本来のコストよりも強力な効果を持つようになるということです。
 このように肯定的に書けば聞こえがいいですが、逆に否定的な見方をするとアーティファクトを3つコントロールしていない場合、通常のコストよりも悪いパフォーマンスしか得られないと書いてあるのと同等となります。これを考えると無理をして金属術を満たすために大した効果のないアーティファクト、例えば《虚無の呪文爆弾》や《恐慌の呪文爆弾》ですらカードが引けるからといってもメインデッキに入れるには不十分な強さであると考えたほうが良いでしょう。1対1の交換を繰り返すことが多いシールド戦において、金属術を満たすための置物としてしか使わないようなカードはそれだけでカードを失っているのに近いからです。
 呪文爆弾を別のカードにサイクリングする目的でデッキに投入するにしても、デッキ全体で見たの土地の総量は変わらないわけで、その場合対戦相手よりも中身の薄いデッキになってしまいがちになります。このことは呪文爆弾や、他のブロックで言えばサイクリングを使う時に気をつける点として覚えておいた方がいいことだと思います。

 また、シールド戦において金属術は非常に妨害されやすい戦略であると心得ておくべきです。前述のようにシールド戦では除去呪文は可能な限り使うべきで、それは対戦相手も使ってくるということ。また、ドラフトならば一人当たり3パック分の除去しか割り当てられていないのに対し、シールド戦は6パック分です。シールドでは除去は食らうものと考えて金属術を運用していかなければなりません。

 感染のときと同様にどれくらいのアーティファクト数を目安に金属術を使えばいいのかというと、最低で12枚というところでしょう。
 金属術のカード自身がアーティファクトならば12という数字でも可能ですが、万全を期すならば15枚以上といいたいところです。《粗石の魔道士》や《主の呼び声》などアーティファクトではないがアーティファクトになるようなものも1枚と換算するのを忘れないように。15枚もアーティファクトを入れた場合、除去などもデッキに入ることを考えるに金属術のカードは3~4枚しか入らない計算になりますが実際にはそんなものです。そもそも金属術の条件を達成できなければ基本的には水準以下のカードになる以上は過信してはいけません。

 金属術に関してもミラディン包囲戦でどう変わるかというと、ファイレクシアの侵攻がテーマであることもあってか大した金属術のカードは登場しませんでした。あっても《尖塔の海蛇》や《らせんの決闘者》のような「だから何なの?」というレベルのものばかり。金属術的な収穫はミラディン軍のカードではなく、むしろファイレクシアのマークの付いた装備品、生体武器シリーズだったのです。

 クリーチャーでないアーティファクトはクリーチャーでないがゆえに除去を食らいにくいことから場に残ることが多く、装備品は金属術のお供としては優秀なカードタイプでした。
 しかし、装備品にもデメリットはあり、あまり多くの装備品を引きすぎると装備する先のクリーチャーが不足して戦線を支えられなくなってしまうというものです。この点、生体武器はクリーチャーでもあるのでいったんクリーチャーとしての活躍をしながら、金属術の貢献もしてくれる実はミラディン軍にとって最高の援軍を得たといえるでしょう。


 それでは金属術と感染どちらをやればいのかと言われれば、できてしまうのならば大したデメリットもない感染がお勧めなのは間違いありません。しかし、できなかった場合は金属術なのかと問われれば、それは否です。単に強そうなカードから使っていく、これが正解になるでしょう。別に感染とか金属術とかを考えずとも、強いカードならば余計な制限もかからない分、デッキ構築に自由度が出てデッキの期待値も上昇するはずです。そのようなデッキ構築をする場合、感染クリーチャーはその特性上、というか感染という能力を持っているんだから当然ですが、同コストの非感染クリーチャーと比べてサイズが小さいためデッキに入る候補から自然と外れていきます。

 ただし、新顔の《肉食いインプ》や《ファイレクシアの巨大戦車》などは《荒廃のドラゴン、スキジリクス》と同様、単体で毒殺するポテンシャルがあるので、これらがいる場合、ハイブリッド戦略を採用する可能性がでてくると思います。

 非感染の通常クリーチャーがベースで金属術は特に気にしない、感染クリーチャーを使うなら一体で相手を仕留められるもの、という構築が現実的にはベストな選択になってくるのではないでしょうか。


土地とマイア

 シールド戦でその他に言及しておくべき点としては、マナベースに関して。これこそがミラディン包囲戦が入ることにより大きく変わったことで、何がそんなに変わったのかというとマナマイアの有無です。

 これまでミラディンの傷跡×6だった時ならばパックからマイアが出ないというのはまれで、大抵の場合、土地16枚にマナマイア2~3枚というのがセオリーでした。今後はそのマナマイアも出現数が半分になるわけでこれまでのように、「色があってないから使いたくないや。」という贅沢もしにくくなります。適度なマナ加速は重要ですからね。

 これからはマナマイアが出現しなかった場合なども起こりうるでしょうし、セオリーとしては土地17枚+マナマイア0~1というのが基準になるのかなと思います。きちんとマナマイアが出ればこれまでどおりですが。


後手をとれ!

 最後に、これまでも何度か言ってきましたが、まだあまり浸透しきっていないようなので口をすっぱくして言おうと思うことがあります。

 シールド戦は後手が有利です。

 サイコロに勝ったら後手を選んでください。統計を取ったわけではないのではっきりとしたことはいえませんが、おそらく6割くらいの勝率が後手にはあると思います。昨年度は世界各地を周り、グランプリを転戦してきましたが、対戦相手はみな後手を選択していました。世界的には常識となっていることが日本ではそうでないのはこういった場で、述べられる機会が少なかったということなのでしょう。

 後手のほうが優れている点というのは、単純に先手より先に一枚多くカードを引けるという点です。序盤に一枚カードが多いと、取れる選択肢が増えるため対応力が高くなるということや、単純に土地が手札になくてプレイすることができないというリスクも減るでしょう。
 また、先手の利点は相手より先に戦闘フェイズを使えることにありますが、先ほども述べたように、シールド戦では除去の枚数が多いことに起因して、クリーチャーが殺されやすい、除去ばかりを持っていて攻撃するクリーチャーがそもそもいない、という事態になりやすいので戦闘フェイズを先に使うメリットが薄いことが理由になります。
 序盤のクリーチャーは同じマナ域のクリーチャーでブロックして相打ちにすればいいので、結局先に攻撃を仕掛ける必要がないのです。個人的には、自分が感染デッキだったとしても対戦相手が後手を望んでいるならば、後手を奪った方がいいと思っているくらいです。


 少し説教じみてしまいましたが、今回の三田村リミテッド研究室はこの辺にしておこうと思います。シールド戦は強いパックに恵まれた時は簡単なもの。そうでない時にここで身に付けたテクニックを駆使して打開してもらいたいところです。

 次回のリミテッド研究室開講はまた3ヶ月後かな。それではまた。


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