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『新たなるファイレクシア』メカニズムレビュー:「ファイレクシア・マナ」
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新セット発売に合わせてお送りしている恒例のメカニズムレビュー。今回のメカニズムレビューは「ファイレクシア・マナ」に関してお送りしていきます。
ファイレクシア軍大勝利記念エキスパンション、新たなるファイレクシアで生まれた新しいメカニズムはファイレクシア・マナの一種類だけとなっています。
ファイレクシア・マナに関するストーリーラインやフレーバー的な話は他所でも語られているでしょうし、筆者が得意な分野という訳でもないのでざっくり省略してしまうことにして、さっそくファイレクシア・マナのルール的取り扱い方のおさらいをしてみることにします。
新カードの中で分かりづらいorめんどくさい効果に関しての注意点を示したFAQから、ファイレクシア・マナについての部分を抜粋して掲載しましょう。(編注:リンク先のページの冒頭に日本語文書へのリンクがあります。)
*** 新メカニズム:ファイレクシア・マナ・シンボル ***
ファイレクシア人の支配の下、魔法のあり方も変わってしまった。時には、血がマナと同様の働きを見せることもある。ファイレクシア・マナは、プレイヤーが呪文を唱えたり能力を起動したりする際に、支払うマナの点数を減らし、あるいは必要な色を無視することができるようになるものである。
《とどろくタナドン》
{4}{G/P}{G/P}
アーティファクト・クリーチャー ― ビースト
5/4
({G/P}は{G}でも2点のライフでも支払うことができる。)
トランプルファイレクシア・マナ・シンボルの見た目は、5つの色を背景とした丸にファイレクシアの紋章(縦線の入った丸)が入ったもので、それぞれの色は対応する5つのマナの色を意味している。各ファイレクシア・マナ・シンボルは、2通りの方法で支払うことのできるコストを表わしている。背景の色で指定された色のマナ1点で支払うか、2点のライフで支払うかである。例えば、{G/P}は{G}でも2点のライフでも支払うことができる。これは緑マナのシンボルである。
* ファイレクシア・マナ・シンボルは、カードの右上のマナ・コストや、起動型能力を起動するためのコスト等、コストにのみ使用される。
* ファイレクシア・マナ・シンボルを持つカードは、そのマナ・コストで示された色である。そのコストがどう支払われたかは関係が無い。例えば前述の《とどろくタナドン》は、それを唱えるためにプレイヤーが支払ったのが{R}{R}{R}{R}と4点のライフであっても緑である。
* ファイレクシア・マナ・シンボルを持つカードの点数で見たマナ・コストは、各ファイレクシア・マナ・シンボルを1として数える。
* ファイレクシア・マナ・シンボルをコストに持つ呪文を唱えたり能力を起動したりする場合、あなたは各ファイレクシア・マナ・シンボルについて、それぞれをどう支払うかを決める。これはあなたがモードを選んだりXの値を決めたりする時点と同時である。
* あなたのライフが1点以下の場合、2点のライフは支払えない。
* ファイレクシア・マナは新たな色ではない。プレイヤーはマナ・プールにファイレクシア・マナを生み出すことはない。
FAQを見ると、ルール的な解説をするための文書であるはずなのに意外なことに「時には、血がマナと同様の働きを見せる」というファンタジー要素についても書かれていたり、ファイレクシアの紋章が「φ」なのはファイレクシアのファイと掛けた駄洒落だったのかと気付かされたり(遅い!!)、ライフが1点の時は《白金の天使》がいても2点のライフは払えないのか、などと色々分かる訳です。とはいえ長々細々と書かれてはいますが、要は
({G/P}は{G}でも2点のライフでも支払うことができる。)
というカードそのものにズバリ!と注釈文で書かれていることさえ分かれば後の部分は直感的に考えて、そうだろうよという感じのことが書かれているだけなので特に引っかかりそうな箇所はないと思います。
ルール的な取り扱いについてはこれでよしとして、ファイレクシア・マナのカードにはどんなものがあり、どのように使うのが良いのでしょうか。さまざまな視点や角度からファイレクシア・マナの特徴、利点についていくつかの項目に分けて解説していくことにしましょう。
ファイレクシア・マナの特徴、その1:支払方法を選べる
FAQにも「ファイレクシア・マナは、プレイヤーが呪文を唱えたり能力を起動したりする際に、支払うマナの点数を減らし、あるいは必要な色を無視することができるようになるものである。」とあるように、支払方法が多様になるというメリットは、土地の枚数が足りていない時や色マナの供給がうまくいかなかったときの回避策となるので十分に価値のあることです。
このように結論付け、ここまでにしてしまっても良いのですが、それでは詰まらないので支払方法という観点から見たファイレクシア・マナに関する話を例を挙げながらこねくり回して遊んでみることにします。少々お付き合いください。
ファイレクシア・マナのカードはそのほとんどがこれまでのカードのマイナーチェンジ版です。支払うべきコストが通常のマナコストかライフのどちらかを選べるように緩和された分、効果が下方修正されていたりコストがちょっと割高に設定されたものになっているのは当然のことです。
そういったよくある効果を持ったカードのファイレクシア・マナ版の例として《脊柱の飛行機械》を見てみましょう。
《脊柱の飛行機械》のファイレクシア・マナの部分をライフでなく青マナで支払うものと見た場合、そのコストは《風のドレイク》と同じになります。
ファイレクシア・マナのパーマネントは色マナを払わなくてもプレイが可能であるという特性を持っていることから全てアーティファクトに設定されているのですが(後述)、そのことを除けば、《風のドレイク》は《脊柱の飛行機械》よりもタフネスが1大きくなっているだけのカードです。青マナの部分の支払方法に柔軟性を持たせた代償がタフネスの下方修正という形で反映されているのです。
逆に2点のライフを支払い、2マナでプレイすることにした場合は《突風掬い》と比較することになるでしょう。《突風掬い》は《脊柱の飛行機械》とサイズは同じながら飛行を得るのに青マナが必要なカードです。《脊柱の飛行機械》を2マナでプレイした場合の追加の2ライフは、{U}を注がずとも常に飛行が付いた状態になるという部分に割り当てられていることになります。この例では、マナだけしか掛からないカードに比べて、強化されたものを得ることができています。
上の二つの例からいって、ファイレクシア・マナの支払いにマナを充てると損・ライフを充てれば(少なくともマナコストに関しては)得ということになるのは必然で、常にマナで支払うつもりで使うならば《脊柱の飛行機械》をデッキに入れる必要は無く、ファイレクシア・マナはライフで払われることがなければその存在価値が無いのです。
そういうことならばファイレクシア・マナを積極的にライフで払った場合にどれだけの損得が発生するのか勘定することにしましょう。
手札の上限は無視することにします。
プレイヤーAは《風のドレイク》×∞+《島》×∞を持っています。
この場合、プレイヤーAは《風のドレイク》を4ターン目までに2体戦場に送ることができます。
一方、プレイヤーBは《脊柱の飛行機械》×∞+《島》×∞を持っています。
こちらの場合には、2ターン目に2ライフと2マナで、3ターン目に3マナで、4ターン目に4ライフと4マナで計4体の《脊柱の飛行機械》を戦場に出せるのです。
この例でプレイヤーAとBが直接対戦していたならば、6ライフをファイレクシア・マナに払うことで2体多くクリーチャーを召喚できたBが、相討ちから逃れたクリーチャーで攻撃を続け最終的に勝利を得ることになるでしょう。払ったライフについても相手のクリーチャーを止めることができるので守ることができるので心配要りません。マナという視点で見たとき、Bは2ターン目と4ターン目に2ライフを1マナに変換しています。このようにライフというリソースをマナというリソースに変換することで、大きく展開が異なってくるのです。これはファイレクシア・マナの恩恵を大いに受けた例といえます。
しかし、この例は極端な近似をした場合にしか成り立たないのは自明です。実際には手札は有限だし、手札の内容も一定ではありません。より大きなクリーチャーを出されて攻撃できないかもしれませんし、複数体まとめてクリーチャーを倒されるかもしれません。
《殺し》や《血の復讐》のように古来からテンポアドバンテージの代償にライフを差出す類のカードは存在していました。そのような場合に、ライフを払ってまでプレイすべきか、デッキに投入すべきかどうかという判断をするのはプレイヤーの腕の見せ所となるのでしょう。
ファイレクシア・マナの特徴、その2:無色呪文である
その1では机上の空論となりかねないような話を展開することになりましたが、ここからはもう少し実践的な話題に持って行きましょう。
ファイレクシア・マナは色マナが事故ったとかそういうこととは関係なく、そもそも対応する色マナが出ないデッキで使ってもかまわないのです。
ファイレクシア・マナの部分は100%ライフで払うという決断の下で、いわゆる無色呪文としての使い方が可能で、そのような使い方を最もすることになりそうなカードの筆頭は《四肢切断》なのではないかと思います。
本来その色のデッキができない、例えば除去を使える色以外のデッキがどうしても除去したいクリーチャーがいる時に無色の除去呪文があったら便利でしょう。それに正に当てはまるのが《四肢切断》です。
1ターン目の《ラノワールのエルフ》は絶対にプレイしたいから《森》は減らしたくないが除去も使いたいという緑単エルフデッキでも、最近流行のダークブレードはマナ基盤が脆弱になるから青白2色のままのカウブレードで除去が使いたいという希望でも、そのどちらもファイレクシア・マナの《四肢切断》ならならかなえることができます。
特にカウブレードで使う場合にはネックとなるはずのライフの損失({B/P}{B/P}なので4点。痛い。)を、2種類の新装備品《殴打頭蓋》と《戦争と平和の剣》で補えてしまうという都合の良さもあり、ひょっとしたら定番の戦略になるかもしれません。
このように無色呪文であるということと、その1で話したライフとマナの変換装置であるということの延長していった先にファイレクシア・マナ呪文の「ピッチスペル」としての側面を見ることができます。
ライフで払うとマナを全く払うことの無い1マナの呪文は、特にピッチスペル感を感じることができるカードになると思います。後手でも先行1ターン目の呪文に干渉できる《精神的つまづき》とドレッジのようなとてつもなく速い墓地利用デッキに対する《外科的摘出》の2種はファイレクシア・マナで生まれてきて良カードになったいい例でしょう。このような場合1マナを払うより2ライフの方が安く付く場合がほとんどですから。
ファイレクシア・マナの特徴、その3:アーティファクトである
前述の通り、ファイレクシア・マナを支払いに要求するパーマネントは全てアーティファクトになっています。このことはファイレクシアの名を冠する能力でありながらミラディン軍の能力である金属術の手助けをすることができることを意味しますし、《鍛えられた鋼》での修整を受けることができます。
ミラディン臭がぷんぷんと漂う《磁器の軍団兵》を中心に《脊柱の飛行機械》と《大霊堂のスカージ》で固めたエスパーカラーの軍勢が《オパールのモックス》の金属術のサポートをし、《鍛えられた鋼》の強化を受ける。まあ良くてブロック構築レベルな気もしますが、可能性は無限大です。
アーティファクトであることの利点がある一方、欠点もあるわけです。ファイレクシア・マナのパーマネントは本来ミラディン軍対策であるはずのアーティファクト破壊の餌食になってしまうということでもあります。
《磁器の軍団兵》のように軽く、除去を打たれても「まあいいか」で済むような小物なら大したことはないでしょうが、《溶鉄鋼のドラゴン》や《とどろくタナドン》などの大物にとっては馬鹿にできない、特に4ライフ払った場合には、大きな欠点となります。
通常のクリーチャー除去呪文に加えアーティファクト除去にまで引っかかってしまうような環境で使えるかどうかの判断は、特にリミテッドにおいて難しいところになります。
ファイレクシア・マナの特徴、その4:代替コストがライフである
その3の特徴に続き、その4もファイレクシア軍に逆風になる特徴です。
もう敢えて言及するまでもないようなことかもしれません。そう感染デッキ相手にはライフというリソースはほぼ無料ということです。たったの10個の毒カウンターでOK、しかも回復不可能という利点を持つ良いことずくめだったはずの感染能力が、逆手に取られてしまう時代が訪れてしまったのです。
ドラフトで見事な感染デッキを組み上げられてしまい、圧倒的なスピードで毒殺されてしまったという経験はリミテッドをプレイする方ならしばしば遭遇することだと思います。
ファイレクシア・マナのカードはそういった対応不能のブン周りを何とかできる可能性を広げてくれるツールになるでしょう。感染される側もほぼ無料のリソースであるライフを遠慮なくつぎ込むことができるのですから。
《四肢切断》で感染デッキのエース達、《ファイレクシアの十字軍》《ファイレクシアの槽母》を返り討ちにする。これからの構築戦でも頻繁に起こるシチュエーションなんじゃないかと思います。
考えてみれば、《四肢切断》は赤いデッキや白いデッキが《ファイレクシアの十字軍》のプロテクションをよけるのにも役立ちますね。
ファイレクシア・マナは確かに新たなるファイレクシアで登場したばかりの新能力ではあります。
しかし、このように特徴を挙げていって考察してみれば、特に新しい考え方を必要としたものではなかったのです。デッキに投入する時にライフの価値を見積もる、またプレイする際にもライフの価値を見積もる。それだけのことです。
最後にファイレクシア・マナのコラムを閉めるのにぴったりの言葉を思いついてしまったので、その言葉を記して終わりにしようと思います。ファイレクシア・マナを使うには
「いのちをだいじに」。
これを忘れないように。それでは。
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