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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ティムール・カワウソ:予想外の大躍進(スタンダード)

岩SHOW


 プロツアーなどの競技イベントでは、いつもプロプレイヤー達に驚かされる。的確なプレイングや細かいテクニックは勿論のこと……デッキチョイスという点でも我々の想像を超えてくる。第31回目の世界選手権においても、個人的に全く予想していなかったデッキが大躍進。では早速デッキリストを観ながら紹介しよう、「ティムール(緑青赤)カワウソ」!

アーネ・フーシェンベス - 「ティムール・カワウソ」
第31回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 / スタンダード(2025年12月5~7日)[MO] [ARENA]
4 《植物の聖域
1 《
2 《始まりの町
3 《踏み鳴らされる地
4 《繁殖池
1 《
2 《
2 《リバーパイアーの境界
1 《尖塔断の運河
-土地(20)-

4 《アナグマモグラの仔
4 《永劫の活力
2 《渓間の洪水呼び
-クリーチャー(10)-
3 《トーテンタンズの歌
4 《薮打ち
4 《嵐追いの才能
4 《塔の点火
4 《ブーメランの基礎
1 《花粉の分析
3 《咆哮する焼炉 // 蒸気サウナ
2 《脚当ての陣形
4 《食糧補充
1 《クルクの伝説
-呪文(30)-
1 《軽蔑的な一撃
2 《否認
1 《氷魔法の秘宝
1 《キヨシ島の大ウナギ
1 《脚当ての陣形
2 《無効
1 《魂標ランタン
2 《紅蓮地獄
1 《クルクの伝説
2 《本質の散乱
1 《炎魔法
-サイドボード(15)-
 

 カワウソとは今スタンダードで最もアツい1マナ域、《嵐追いの才能》が生成するトークンのこと。1マナのエンチャントで1/1果敢持ちのトークンを生成、この果敢はクリーチャーではない呪文を唱えると誘発して+1/+1修正を受ける能力で、このカワウソは1マナにして2/2、3/3はまでは簡単にパンプアップ。それ以上のサイズも夢ではなく、大ダメージを叩き込めるポテンシャルを誇っている。

 このカードの何が良いかって、クリーチャーを用意する手段でありながらこれ自身が非クリーチャー呪文であるため、果敢を誘発させられるところ。連打しているだけで盤面の頭数もダメージも増えるわけだ。これを《ブーメランの基礎》で戻して出し直せば、どんどんとカワウソが増殖して果敢が誘発、そして手札の枚数は減らない……現スタンダードでも最強ムーブの1つであり、すっかりお馴染みのものになっている。「ティムール・カワウソ」もこの動きが攻めの基本パターンだ。

 

 さて、カワウソデッキと名乗っている理由はこのクリーチャータイプを参照するカードも備えているからだ。《渓間の洪水呼び》、このカワウソはかなり非クリーチャー呪文を唱えると、すべてのカワウソをパンプアップさせる疑似的な果敢能力を持つ。そしてそれらのカワウソはアンタップ状態になる。また非クリーチャー呪文に瞬速を与えて、ソーサリーなどもいつでもプレイ可能になる。

 これを用いて《嵐追いの才能》で並べたカワウソらをまとめて強化するわけだが……ここにもう1つのエッセンスが加わることでこのカワウソは化ける。《永劫の活力》だ。このエンチャント・クリーチャーはすべてのクリーチャーにタップしてマナを加える能力を授ける。《渓間の洪水呼び》《永劫の活力》の2枚が並ぶと……カワウソをタップしてマナを加える→そのマナで非クリーチャー呪文を唱える→カワウソが全て強化されてアンタップに→カワウソをタップしてマナを加え……と、怒涛の展開力を生み出す。「ティムール・カワウソ」はこのコンボから大量にクリーチャーを展開したり、育てたカワウソで大ダメージを叩き込むことを狙っている。コンボ要素を備えつつもそれに依存はしていない、アドリブが利くデッキである。逆に言えばプレイヤーのアドリブ力も問われるデッキでもある。

 そんな「ティムール・カワウソ」は、第31回世界選手権のスタンダードラウンドにおいて、なんと使用率2位となった……これは多くのプレイヤーにとって予想外だっただろう。ジャパンスタンダードカップなど、世界選手権に先だって開催されたイベントで目立った活躍をしたわけではなかったので、頭からその存在が抜け落ちていた……少なくとも僕は。カワウソデッキは禁止カードの影響を受けたこともあって、パワーダウンしてそれ以来鳴りを潜めていた……一部のプレイヤーは続けて使用していたようだが、多くのプレイヤーは大きく様変わりした他のデッキに注目していたことだろう。そんなティムールが世界選手権にて多くのシェアを獲得し、さらにはトップ8に2名のプレイヤーを送り出した。このアーキタイプに注目し、完成させて年に一度の大舞台に持ち込んだプロプレイヤー達……マジですごすぎる、語彙力が亡くなってしまうレベルで。

 

 確かに禁止となった《この街は狭すぎる》の枠を《ブーメランの基礎》で補えたわけで、再びこのアーキタイプが浮上し大躍進したことは、デッキリストを見れば納得である。さらには《アナグマモグラの仔》!これが加わったことも大きな追い風だ。クリーチャーが加えるマナを増量させ、展開力をゴリゴリに上昇させる超強力クリーチャー……《永劫の活力》により全クリーチャーがマナを加えるようになるこのアーキタイプとの噛み合いはバッチリだ。これによりマナ供給量が倍増し、《トーテンタンズの歌》から大量のネズミを繰り出しフィニッシュに繋げやすくなった。トーテンタンズ、カワウソなどのクリーチャーらに速攻を与えてすぐさまマナを加えられるようにするカードでもあり、以前より重要パーツであったが、アナグマモグラの登場で唱えればむしろマナが増えるとかいうとんでもないことに。それらのネズミをタップしてマナを加えたらさらにトーテンタンズでネズミの大群を……こりゃアツいぜ。

 非常に強力なパーツを獲得して確かな底上げを受けた「ティムール・カワウソ」。結果を見てからなら納得だが、最初にこのデッキが使用率2位と見た時には驚かされた……調整機関でこの構成に辿り着いたプロのチームに最大限の賛辞を。そして我々はありがたくそのアイディアを元に自分のデッキを組み、楽しませてもらおうとしようじゃないか!こんな面白いデッキ、プレイしない手はないって!

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