マジックのクールさをみんなに知ってもらうために、クールなカードやデッキを語る今週のCool Deck。さて今回のお題は……マジックにおける“前評判”について。マジックは新セットがリリースされる前に、プレビューという形式で収録されるカードが段階的に公開されていく。徐々に明らかになっていく全体像にワクワクするのもクールな時間だが、そんな新カードの情を得て「このカード強そう！」「このカードほしい！」とそれぞれにお目当てのカードを見つけていくものだろう。やっぱり神話レア、主役となるクリーチャー？それともいぶし銀なアーティファクトやエンチャント？ネットで著名人が期待のカードをピックアップしたり、一般のプレイヤー同志で大会の合間などにあれ絶対強いなぁと語り合ったり……こうしてカードの前評判は高まっていく。

　しかしながら、前評判通りに大活躍……することがないカードが過去あったのもまた事実だ。皆がイメージしてるよりも機能しなかった、同セットにもっと高い実力の持ち主がいた、対策カードを乗り越えられなかった、そのカードを扱い切れるデッキがなかった……などなど。まあ予想が外れるのは当然というか、だからこそ面白いというか。期待度MAXなカードがそのまま大活躍、それもクールなら他のカードの方が主役になったというエピソードもまたクールに感じるよ。先日リリースされた『マジック：ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』で前評判が高かったカードと言えば……

　《アナグマモグラの仔》！この緑の神話レアはかなりの注目と期待を集めていたことだろう。2マナと軽いコストで2/2と標準スペックで扱いやすい。このアナグマモグラ、戦場に出ると土の技2を行う。土の技は土地をクリーチャー化させる能力で、設定された数の＋1/＋1カウンターを乗せて速攻も持たせる。この手の土地をクリーチャー化させるカードというジャンル、過去様々なカードが世に送り出されてきた中で皆がどうしても気になってきたことが……「クリーチャーになるということは土地が除去されやすくなるということ」、これである。マナを加えるのが土地の役目だが、こればかりが並ぶと使い道がなく無駄なリソースと化してしまう。それがクリーチャーとなって戦闘に参加してくれるのは有難いが、しかしクリーチャー除去のインスタントやソーサリーなどで破壊や追放されてしまうリスクが大幅に上昇。土地クリーチャーが除去されると、土地がダダ余りしているならまだしもそうでないのであれば、普通のクリーチャーを失うよりもダメージが大きくなるものだ。

　だがご安心を、土の技によってクリーチャーとなった土地は、死亡したり追放されたりするとタップ状態で土地として戦場に戻ってくる。コイツぁ弱点をカバーしていて最高にクール！なので《アナグマモグラの仔》も序盤の大事な土地を失うというリスクを恐れることなく、土地のクリーチャー化を行える。しかも、しかもだ。このアナグマモグラは、クリーチャーのマナ能力を起動するためにタップすると、緑マナを追加で加えるという能力も持っている。これ、つまり自身でクリーチャー化させた土地から加えるマナを増量するということである。この能力のクールなところは、土地クリーチャー限定ではなく、全く関係のない《ラノワールのエルフ》《極楽鳥》のようなクリーチャーと組み合わせてもマナが増える！これは強い！というわけで、《アナグマモグラの仔》の前評判はとても高いものになっていた。

　さて、実際のところどうだろう？答えを出すにはまだもう少し時間を要するが……環境最初期、このクリーチャーを採用したデッキは様々なバリエーションが作られている。しかも各種フォーマットで、レガシーでも！

　というわけで『マジック：ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』リリース直後にレガシーで用いられたリストをご紹介。ベースとなっているのはマニアが好む既存のアーキタイプで「マーベリック」などと呼ばれるもの。《緑の太陽の頂点》でクリーチャーをサーチして使い分ける、様々なゲームプランを狙えるアドリブ力の高いデッキである。このデッキはマナクリーチャーを重要視しており、《下賤の教主》《極楽鳥》そして《緑の太陽の頂点》X＝０から繰り出す《ドライアドの東屋》と、これらのマナクリーチャーで対戦相手よりも手数で上回るのが基本戦術。つまりはアナグマモグラでこれらのマナエンジンを一段階高められるということだ。

　また、土の技を受けた土地が死亡すると戦場に戻ってくることを利用して、生け贄に捧げる起動コストを持つ土地を使いまわす、というレガシーらしいクールなアプローチも。《新緑の地下墓地》《霧深い雨林》など生け贄に捧げて別の土地を引っ張ってくるフェッチランドに土の技をかければ、1枚のフェッチからトータル2枚の土地を得られる。《エルフの開墾者》を損失ゼロで運用するのも良いね、クリーチャー化した《ボジューカの沼》をこれで使いまわして墓地対策連打、とかもクールなムーブだ。しかしやっぱりレガシー、これでしょう、《不毛の大地》！対戦相手の基本でない土地を破壊しつつ、自分は土地が減らずに次のターンまた投げつける……まさに外道と言いたくなる、これまでになかったようなクールさが「マーベリック」に添えられたわけだ。

　「マーベリック」で《緑の太陽の頂点》と双璧を成す重要カードが《聖遺のワイト》。クリーチャーを生け贄に捧げて土地をサーチする能力を持ち、これもまた土の技と相性◎。墓地のクリーチャーの数だけサイズアップするため、ゲーム終盤では殴りに行く役も兼ねるクールなゾンビだ。このワイトで何を生け贄に捧げて何の土地を持ってくるか、悩みがちではあるがテクニックの見せ場であり、このカードを使いこなすことが勝利への近道だ。

　ワイトと組み合わせて火を噴くのが《大鎌猫の仔》。「マーベリック」の主役の座を射止めた、非常にマニアックなパックに収録されている1枚だ。これは土地が戦場に出ることで能力が誘発する、上陸能力持ちのクリーチャー。上陸で＋1/＋1カウンターを任意のクリーチャーに乗せられる能力であり、また同一ターンの2回目の上陸であれば、代わりにカウンターの数を2倍にするというパワフルな猫だ。これとフェッチランドやワイトを組み合わせて、序盤から巨大クリーチャーを用意してガンガン殴っていくのが理想の展開。《アナグマモグラの仔》の土の技は、この《大鎌猫の仔》をさらに強くクールな者へと昇華する。フィクション世界の動物の子どもが一緒になることで強くなる、そんなコラボセットの醍醐味を感じさせるビジュアル面もクールでたまらないよ。

　さて、前評判通りに活躍するカードがあるか、それとも低かった前評判を覆して天下を手にするカードもあるか？新セットが出るたびに味わえるデッキマニアにとってのちょっとしたイベントだ。『マジック：ザ・ギャザリング | アバター 伝説の少年アン』はどのようなカードが皆に愛され、躍動することになるだろうか。皆で見届けようじゃないか。それじゃ今週はここまで。Stay cool! Master the earthbend!!