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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

『久遠の終端』環境の赤単アグロを考える!(スタンダード)

岩SHOW


 『久遠の終端』が間もなく公式発売日を迎える。プレリリース期間にカードは手に入っただろうか?ばっちり先行で揃えた人も、これからという人も、宇宙を舞台にした全く新しい雰囲気のこのセットのカードを手に入れて、いつもよりもSFチックな世界観を持つカード達でのゲームを楽しんでほしいところだね。

 さてこの新セットが参入するに先立って、スタンダード・フォーマットでは使用可能セットの入れ替わり、ローテーションが決行された。『団結のドミナリア』『ファイレクシア:完全なる統一』『兄弟戦争』『機械兵団の行進』『機械兵団の行進:決戦の後に』の5セットがスタンダードを去り、『久遠の終端』が参入したという形だ。

 これらの5セットが抜けることで、スタンダード環境で当たり前のように存在していたカードがいなくなる。3年制度が施行されて2回目のローテになり、長いものでほぼ3年、短いものでも2年以上使えたカードが退場した……この事実はやはり寂しいものではある。しかし変化のないスタンダードなどない、変化こそがこのフォーマットの魅力。失ったカードを振り返りつつ、新カードを確認することで、新環境のデッキを構想する。最高に楽しいスタンダードの醍醐味を堪能できる時間がやってきたのだ!

 

 今回は直近のプロツアーでの優勝デッキ「赤単アグロ」の新環境バージョンについて考えてみよう。まずは失うものから……意外と多くのカードが残る形にはなるが、1マナ圏の顔とも言える存在だった《僧院の速槍》がスタンダードから退場。長きにわたり、このアーキタイプの1ターン目から終盤まで、あらゆる局面を支えてきた理想のアタッカーが役目を終える。1マナ1/2速攻・果敢。シンプルにして信頼できる高打点クリーチャー、これを繰り出しつつ非クリーチャー呪文を唱えて相手のクリーチャーを除去したり自分のクリーチャーを強化しながら果敢を誘発させる……このカードが抜けることでアーキタイプが成立しなくなる、なんてことはないがリストは大きな変化を迎えることになる。前までは自動的に速槍4からリストを組んだりしていたもんなぁ。

 

 では速槍が居なくなることを確認したら、今度は新戦力のチェック!『久遠の終端』の赤単色のカードの中から、アグロデッキに向いているものを吟味してみよう。

 まずは速槍がいなくなることで他の選択肢が求められる1マナのクリーチャーより、《カヴァーロンの侵略機》!1マナでパワー2とコスパに優れた打点の持ち主で、1ターン目から繰り出せばダメージに大きく貢献してくれるだろう。2マナの一般的なクリーチャーらと相討ちが取れるので恐れずに攻撃を仕掛けられるのも良い。そしてこれで攻撃した際に{2}を支払うと、2/2のロボットも呼び出せる。これはターン終了時に生け贄になってしまうが、攻撃している状態で出てくるのがポイント。1マナクリーチャーでありながら、相手の盤面がクリアで{2}が払えるなら4点分のダメージを発生させることが可能だ。派手さはないが、こういうシブいやつで殴るのがアグロならではの楽しさでもある。攻撃クリーチャーが増えるため《魔女跡追いの激情》との相性も良く、ゲームが長引くと活躍してくれる良いカードに見えるね。

 

 侵略機やその他の低コストクリーチャーらは、以前の赤単のそれよりも死亡しやすいことだろう。低タフネスであり《巨怪の怒り》も禁止になっているため、ブロックされても生存というケースは、前環境の赤単よりも減ることになるはずだ。なので重要なのは対戦相手のクリーチャーを除去する呪文。赤であればダメージを与えるインスタントやソーサリーがその役目を担うわけだが、そういったものの中でも対戦相手本体も対象に取れるものであればトドメのダメージを叩きこめてベリーグッド。

 そんなダメージ呪文の新顔が《プラズマボルト》!名前がイカすこのソーサリーは1マナで2点ダメージを飛ばす。これだけでは《ショック》よりも使いにくいカードになるが、《プラズマボルト》はある条件を満たすことでそのダメージが3点に上昇する。土地でないパーマネントが戦場を離れるか、あるいは呪文がワープで唱えられているか──ヴォイドと呼ばれる新能力はこの条件が達成されているターンであればボーナスをもたらす。《プラズマボルト》はヴォイドで3点、1マナで3点ダメージを飛ばせれば文句なしの効率だ。

 ヴォイドを満たすためには対戦相手のクリーチャーを除去したり、あるいは自分のクリーチャーが死亡してもOK。先述のように赤単のクリーチャーは前よりもブロックで討ち取られやすくなることが予測される。その中で攻撃クリーチャーがやられることをプラスに計算できるこの手のカードが加わるのは嬉しいことだ。相手の高タフネスクリーチャーに向かって、こちらの小粒を全軍突撃!抜けた面々が本体にダメージを与え、ブロックされたものが死亡することで《プラズマボルト》の火力アップ!これは今後のスタンダードでよく目にするシチュエーションになるかも?

 

 そしてヴォイドの説明で出てきたワープ。この新能力は代替コストで唱えられるというもので、これで唱えて戦場に出たクリーチャーは、ターン終了時に追放される。しかし使い捨てというわけではなく、後のターンにその追放領域から唱えて再利用することが可能だ。戦場に出た時に誘発する能力を持っていたりするワープ持ちの中でも、赤は速攻クリーチャーがこの能力を持っており、低コストでスパッと殴ってシュッと去っていく。

 注目は《新星のヘルカイト》!4/5飛行がワープであれば3マナで飛び出し、速攻でダメージを叩き込む!後に5マナで唱えて素出ししても決してコスパが悪いわけではなく、最後の仕上げには十分なアクションだ。そしてこのヘルカイトは対戦相手のクリーチャーに1点のダメージを与えるため、低タフネスの飛行持ちを潰してブロックを阻止したり、あるいはヴォイドを満たした《プラズマボルト》と絡めてタフネス4のクリーチャーを焼いたりと……たかが1点とは侮れないぞ。

岩SHOW - 「赤単アグロ」
スタンダード (2025年7月24日)[MO] [ARENA]
18 《
2 《岩面村
2 《魂石の聖域
-土地(22)-

4 《カヴァーロンの侵略機
4 《雇われ爪
4 《ギトゥの溶岩走り
2 《闘技場の花形
4 《焦がし切りのゴブリン
2 《記念軍のチームリーダー
4 《新星のヘルカイト
-クリーチャー(24)-
4 《噴出の稲妻
4 《プラズマボルト
2 《魔女跡追いの激情
2 《急抗直下
2 《オペラ劇場のラブソング
-呪文(14)-

 

 

 新カードを積極的に取り入れた「赤単アグロ」のサンプルリストを組んでみた。《カヴァーロンの侵略機》や《焦がし切りのゴブリン》など横並びを意識して、それらのクリ-チャーをまとめて強化する《記念軍のチームリーダー》も採用。2マナワープで全体強化か、4マナでクリーチャーとして出す。臨機応変に使い分けてダメージの最大効率を目指そう。ワープ持ちと相性抜群な《急抗直下》は次の時代の《巨怪の怒り》枠を担えるか?チームリーダーに速攻とトランプルを持たせて大ダメージを叩き込みたいところだ。ワープやヴォイド以外にも、今回のセットの赤はアーティファクトやカヴーなどのテーマが与えられている。それらを主軸に新時代の赤単を組むのも味わい深い試みとなるはずだ。新たな境地を求める宇宙の旅へ、いざ出発!

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