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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:抹消者と抹殺者(スタンダード&過去のフォーマット)

岩SHOW


 マジックから感じられるクールさを追い求める人々に捧ぐコラム、今週のCool Deck。今回はのっけからデッキリストをご覧いただこう。

Javier Dominguez - 「Golgari Obliterator」
プロツアー『霊気走破』 / スタンダード(2025年2月21~23日)[MO] [ARENA]
4 《ウェイストウッドの境界
4 《ラノワールの荒原
4 《眠らずの小屋
7 《
4 《花盛りの湿地
-土地(23)-

1 《苦難の収穫者
1 《強情なベイロス
4 《ファイレクシアの抹消者
2 《分派の説教者
4 《名もなき都市の歩哨
4 《苔森の戦慄騎士
1 《腐食の荒馬
-クリーチャー(17)-
1 《ギックスの命令
3 《大渦の脈動
3 《強迫
4 《薮打ち
3 《喉首狙い
2 《苦痛ある選定
4 《切り崩し
-呪文(20)-
1 《強情なベイロス
2 《ドロスの魔神
1 《温厚な襞背
1 《ギックスの命令
1 《締めつける瘴気
1 《強迫
2 《羅利骨灰
2 《石の脳
4 《不浄な別室 // 祭儀室
-サイドボード(15)-
 

 このリストはプロツアー『霊気走破』であるプロプレイヤーが団結したチームのメンバーが共有し同一のものを持ち込んだものだ。《苔森の戦慄騎士》《大渦の脈動》などの優秀なクリーチャーとパーマネント除去で固めたゴルガリ(黒緑)カラーのミッドレンジ(中速デッキ)……よく見るリストだ、と断定するのはちょっと待った!

 採用されているクリーチャーをよくご覧いただきたい、燦然と輝く《ファイレクシアの抹消者》×4の表記!抹消者はダメージを与えられた時にその発生源のコントローラーにブチギレ、抹消者の名を体現するがごとくパーマネントの生け贄を要求する。その数は受けたダメージの数だけというのだから、この怪物をちょっとやそっとのことじゃブロックできない。ダメージ除去やクリーチャーでの相討ちを受けづらい5/5トランプルということでなかなか存在感のあるクリーチャー……ではあるが現スタンダード環境に参入して以来、トーナメントで成果を残すという姿を目にすることはほとんどなかった。そんな抹消者がプロツアーに殴り込み!?クール!と我々クールマニアは大はしゃぎ。

 このゴルガリでは《薮打ち》を用いることで抹消者のポテンシャルを花開かせる。これはクリーチャー2体を格闘させるソーサリーで、これで抹消者と対戦相手のクリーチャーにデスマッチを行わせることで対戦相手に甚大な被害を与えよう……というブルータルなコンボを狙う。このコンボ自体は広く知られてはいたが、協議の場に持ち込むプレイヤーは前述のように少なかった。マジックを突き詰めたプロたちがプロツアーという舞台にこのリストを持ち込んだということは、勝算があったということに他ならない。

 結果のみを見て言うと、このリストは大きな戦果に結びつかなかった。しかし我々が好みそうなファンデッキ的なものを、洗練されたデッキを使うプロプレイヤーも用いることがあるというのは、なんだか嬉しくクールなことではないかな?

 これで終わっても良いのだが、せっかく抹消者デッキという強烈にクールなものを目の当たりにしたのだから……そこから想起されるデッキの話も添えておこう。

 

 《ファイレクシアの抹消者》とくれば《ファイレクシアの抹殺者》。この2体をセットで思い浮かべるのは自然なこと。抹消者は対戦相手に生け贄を要求するが、その先祖に当たる抹殺者は……ダメージを受ければ生け贄を捧げなければならない、コントローラー自身が。何によってダメージを与えられようと、被害を受けるのは自分だ。

 何故そんなデメリット能力を持っているのかというと簡単なことで、抹消者と比べて抹殺者はコストが軽い。3マナでさらに要求される色マナは黒1つだけ。この軽いコストで5/5トランプルというスペックを得られるのは破格だ。このカードが作られたのは1999年、実に26年前。当時はクリーチャーが今に比べるとずっと、ずーっと弱かった。抹殺者と抹消者、これらの能力を見比べるとクリーチャーの強さが大きく向上したことを実感できて、実にクールだ。

Antoine Menard - 「ヘイトレッド」
世界選手権1999 15ポイント / スタンダード(当時) (1999年8月8日)[MO] [ARENA]
4 《裏切り者の都
16 《
-土地(20)-

4 《カーノファージ
4 《ダウスィーの怪物
4 《ダウスィーの殺害者
4 《ファイレクシアの抹殺者
1 《チクタク・ノーム
1 《マスティコア
-クリーチャー(18)-
4 《暗黒の儀式
3 《吸血の教示者
3 《呪われた巻物
1 《撲滅
4 《肉占い
3 《よじれた実験
4 《憎悪
-呪文(22)-
1 《次元の狭間
1 《腐肉クワガタ
1 《急速な衰微
1 《呪われた巻物
1 《マスティコア
1 《ファイレクシアの疫病王
3 《非業の死
1 《夜の戦慄
3 《仕組まれた疫病
2 《火薬樽
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 

 《ファイレクシアの抹殺者》はリスクの大きいクリーチャーだが、対戦相手がブロック役のクリーチャーを出してくるよりも先に叩きつければ十分すぎる働きを見せてくれるものでもある。そこで当時のスタンダードには存在していた《暗黒の儀式》を用いる。これで1ターン目に抹殺者というクールな強襲を仕掛けられる!その他に1・2マナのクリーチャーを中心とした今で言うアグロデッキで、その名は「ヘイトレッド」。

 キーカードは《憎悪》、ライフを支払いその値分クリーチャーのパワーを上昇させる、ハイリスクハイリターンなインスタントをフル投入。《暗黒の儀式》や《裏切り者の都》などの加速からパワー20のワンパンチを速やかに叩き込む、最速2ターン目!瞬殺劇も狙えるし、《マスティコア》《呪われた巻物》などの長期戦に強いカードも備えているのが、何とも当時のデッキっぽくてクールだ。これらを《吸血の教示者》でサーチし、状況に合わせて瞬殺を狙うか、ちょっとギア緩めでいくかをその都度調節する……いやぁ、最高にカッコよくクールなデッキの一つだ。

 《ファイレクシアの抹殺者》から《ファイレクシアの抹消者》というライン、ただ単にカードの進化が見えるだけでなく、それぞれのデッキも思い浮かび様々な感情になれる……今後もこのような過去と現在、そして未来を繋ぐカードやデッキと出会っていきたいものだ。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Fight forever!!

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