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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

研磨し、脱出する。テクニック満載コンボデッキ!(モダン)

岩SHOW


 2月上旬、日韓におけるプロツアー予選となるチャンピオンズカップファイナルが開催された。次期プロツアーへの参加権利をかけて、各地の予選を勝ち抜いてきたプレイヤーが集結し火花を散らした。今回のフォーマットはモダン。『霊気走破』プレリリース期間ということで今の構築ルールでは最新のカードが使えるタイミング……なのだが、事前にデッキリストを提出するタイミングがその期間外ということで、最新のカードは不採用のデッキでの対戦となった。元々モダンのデッキは完成度が高く、競技イベントの中でもとりわけガチ度の高い舞台であるため、新カードの実力をぶっつけ本番で試すようなリストはごく少数になったことだろう。

 そんなわけでこの大会に持ち込まれたデッキは練度の高い、完成しきったリストが勢揃いという形に。中でも一際存在感を放っていたのはティムール(緑青赤)カラーのこのコンボ!

ナムチャイシリ チャールズ - 「脱出基地」
チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド2 トップ8 / モダン(2025年2月8日)[MO] [ARENA]
4 《沸騰する小湖
3 《霧深い雨林
1 《蒸気孔
1 《踏み鳴らされる地
1 《繁殖池
1 《迷路庭園
1 《天上都市、大田原
2 《変容する森林
4 《ウルザの物語
1 《
-土地(19)-

4 《知りたがりの学徒、タミヨウ
1 《機能不全ダニ
1 《タッサの神託者
4 《湖に潜む者、エムリー
-クリーチャー(10)-
2 《定業
4 《邪悪鳴らし
1 《稲妻
1 《邪悪な熱気
1 《アノールの焔
1 《朦朧への没入
1 《呪文嵌め
4 《ミシュラのガラクタ
3 《モックス・アンバー
4 《オパールのモックス
1 《魂標ランタン
1 《上天の呪文爆弾
3 《研磨基地
4 《死の国からの脱出
-呪文(31)-
4 《記憶への放逐
1 《紅蓮地獄
1 《炎渦竜巻
2 《アノールの焔
2 《自然の要求
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《真髄の針
1 《呪文貫き
1 《白鳥の歌
1 《神秘を操る者、ジェイス
-サイドボード(15)-
 

 「グラインディング・ブリーチ」「研磨基地コンボ」「脱出基地」など呼び方は様々。モダンだからこそ使える《死の国からの脱出》を用いたコンボデッキだ。このエンチャントはターン終了時に生け贄となるため、出したターンのみ機能する消費期限の短いもの。しかしだからこそ許される、強烈にして唯一無二の常在型能力を持っている。墓地のカードが全て脱出を得るというものだ。脱出を持ったカードは墓地にあっても唱えることが可能だ。指定されたコストを支払うわけだが、マナの他に脱出コストとして指定された枚数分、墓地の他のカードを追放する必要がある。この《死の国からの脱出》はすべてのカードに脱出3をもたらす。

 そしてこれと組み合わせるのが《研磨基地》とマナ・コストが{0}のアーティファクトだ。{0}のカードを唱えて、それを《研磨基地》で生け贄に捧げる。そうやって能力を起動し、自身を対象に切削3を行う。ライブラリーが3枚墓地に落ちて、これをコストに墓地の{0}カードを唱え、それが戦場に出ることにより《研磨基地》がアンタップ。もう一度生け贄に捧げて3枚切削、その3枚をコストに{0}を唱えて……とループを形成できる。この動きにはマナが不要であり、そしてループさせるアーティファクトを《オパールのモックス》にすることでむしろマナが増えていく。そうやってループを繋いでいって、自身のライブラリーを空にして《タッサの神託者》《神秘を操る者、ジェイス》らの勝利条件を満たしたり、《ぶどう弾》のストームで致死ダメージを叩き込んで勝つ。これが《死の国からの脱出》を用いたデッキの中でも最大のトレンドであり、同トーナメントでも多数の使用者及び上位入賞者を生み出した。2024年12月の《オパールのモックス》解禁により一気にモダンのスターダムを駆け上ったデッキである。

 

 《研磨基地》で切削したカードをそのまま墓地に置いておき、後から《死の国からの脱出》で唱えて勝つのがこのコンボの通常ルート。しかしながらそれは周知の事実であり、そのためチャンピオンズカップファイナルでは《外科的摘出》をメインから搭載するリストが多く見られ、《根絶》の姿も目にしたものだ。これらで《タッサの神託者》をぶっこ抜き、どうだ勝ち手段を失っただろう!という算段である。

 もちろんこれは効果的なアプローチではあるが、そこのところはブリーチサイドも理解した上でトーナメントにこのデッキを持ち込んでいる。このトーナメントにスタッフとして携わっている時、参加者が教えてくれたテクニックだがそういったことを狙ってくる相手をケアして、切削で《タッサの神託者》が落ちた場合、これを先に戦場に出してしまうという戦術がある。ライブラリーがまだまだ残っている状態で神託者を出しても勝利条件は満たせず、一見すると「?」となるアクションではある。この動きの狙いは神託者を先に出しておいて、ライブラリーを掘り進めてから《上天の呪文爆弾》で手札に戻し、それを唱えなおして勝つというルートである。基地による切削を解決したら、優先権はそのターンを行っている自分にある。自分が優先権を持っている限り、相手は脱出で呪文を唱える前に《外科的摘出》などで引っこ抜くタイミングが存在しない。そういったカードを先出し神託者でケアすることで勝ちを拾うと、なるほど聞いてみれば当然かもしれない動きだが、これは目から鱗のプレイだった。

 今大会はリスト公開制であるため、そういったカードを確認した場合はしっかりとケアすることで勝ちを積み重ねられるとのこと。他にもいろいろなテクを語ってもらったが、ここには書ききれないしそもそも覚えきれなかった。モダン及びコンボデッキをやり込んでるプレイヤー、すごいな!

 

 コンボ以外にも《ウルザの物語》からの構築物・トークン量産により勝つルートもあるため、このデッキはなかなか対策しきることができない。トーナメントにおいても台風の目として暴れ回っていた。コンボの常で、自衛手段をコントロール程とれるわけではないため、アグレッシブなデッキに押し切られている光景は度々目にした。アグロ側が《イーオスのレインジャー長》などのコンボ妨害手段を備えていればなお厳しくなることだろう。

 いずれにせよモダンの競技イベントを久しぶりに観戦させてもらったが、このフォーマットは本当にすごいことができてしまう、ドリーミーなフィールドだ。次の競技イベントでどんなデッキが躍動するのかも楽しみにしつつ、動向を伺っていきたいね。

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