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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:緑単ランプ、エムラクールのいる世界(パイオニア)
先のプロツアー中、毎度恒例となっている今後のセットの情報がちらりと先出しされた。プレビューよりも一足早くお披露目されたカードの中でも、頭一つ抜けてクールな衝撃だったのは……『モダンホライゾン3』の《再誕世界、エムラクール》だったんじゃないかな。
イニストラードの月に封印されたエムラクールが、おそらくその月と思われる青白い光をバックに再登場。やつがまた解き放たれたるというのか……ボーラス、新ファイレクシアと多元宇宙全体に影響のある悪役が退場して、しばらくは穏やかなセットが続くようにも感じられたが……はたしてこのエムラクールは過去・現在・未来とどの時間軸の姿なのだろうか?クールな妄想が膨らむというものだ。唱えた時に対戦相手のクリーチャーをすべて奪うというとんでもない能力を持ち、さらに自身が12/12の飛行と除去耐性持ち。唱えることに成功したら勝ったも同然な気分が味わえる、クールなカードの続報が待たれるね。
というわけで今週もクールにフォーカスしてカードやデッキを紹介する金曜日がやってきた。エムラクールといえば過去のカードもそれはそれはクールで、我々の心をガッチリと掴んでくれたものだ。初代となる《引き裂かれし永劫、エムラクール》は15マナという超ヘビー級なコストで15/15飛行、攻撃するとパーマネントを6つ生け贄に捧げさせる滅殺、色を持つ呪文に対するプロテクション、そして唱えることが出来たらその時点で追加ターン……盛りすぎな能力が、この多元宇宙で一番強いヤツが出てきたように感じさせてくれて……痺れたね。
初代はレガシーで今でもコンボパーツとして現役、モダンでもこれを採用するリストが一時期は多く見られた。対してパイオニアでは2代目のカードとなる《約束された終末、エムラクール》の姿を目にすることが。このカードもロマンに溢れている。
13マナ13/13飛行トランプル&インスタントへのプロテクション、これのコストは墓地にあるカードタイプにつき軽減されるので、意外にも唱えることがそこまで難解でもない。そして唱えることに成功したならば、対戦相手のコントロールが得られる。これはどういうことなのか?初見では一体何を意味するのかわからないかもしれない。これは読んで字のごとくそのままで…次の意対戦相手のターン、そのプレイヤーに代わってあなたがそのプレイヤーの行動を決めるのである。自分で唱えた呪文を打ち消す、自分のクリーチャーに除去を撃つ、エムラクールが待ち構えているところに攻撃する……土地を全てタップしてマナを出し切り、払えるライフや生け贄はどんどんと無駄に消費。そうやって1ターンの間で対戦相手を完全に無力化させてターンエンド宣言。精神の支配から解放された対戦相手の前には、ボロボロの戦場が……というのが理想的だ。コンボデッキなどはこれでコントロールを奪って勝ち手段を相手自身にぶつけて勝つ、ということもできたりと、エムラクールの名に相応しいクールすぎるフィニッシャーである。
マナ軽減能力があるとはいえ、どのデッキでも《約束された終末、エムラクール》を唱えられるわけではない。これを叩きつけたいのであればやっぱりマナ加速を備えた……緑がベストフレンドになるだろう。今回は新カードにも期待が高まるエムラクールを用いたデッキを紹介しよう。
4《ギャレンブリグ城》 2《ニクスの祭殿、ニクソス》 4《沈んだ城塞》 2《ハイドラの巣》 2《ウギンの聖域》 2《見捨てられた神々の神殿》 2《オラーズカの拱門》 8《森》 -土地(26)- 4《森の女人像》 3《エルフの再生者》 2《茨の騎兵》 3《荒々しい三つ子》 4《産業のタイタン》 2《街並みの地ならし屋》 1《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 1《約束された終末、エムラクール》 -クリーチャー(20)- |
3《ニッサの誓い》 3《豆の木をのぼれ》 4《中心核の瞥見》 4《大ドルイドの魔除け》 -呪文(14)- |
4《石の脳》 2《墓掘りの檻》 1《減衰球》 1《豆の木をのぼれ》 1《歪める嘆き》 4《ポルクラノスの再誕》 1《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 1《約束された終末、エムラクール》 -サイドボード(15)- |
パイオニアで緑と言えば「緑単信心」は一時期環境を代表するデッキとして君臨していた。一部のカードの禁止を受けて元の形を保てなくなり、それ以降は目にする機会が減少。緑のクリーチャーを並べて《ニクスの祭殿、ニクソス》からマナを得るという戦い方は以前よりも大きな収穫を得にくくなっている。そこで今回のデッキは、以前のニクソスを使った信心デッキから方針を転換。別の方法でマナを増やす新生の緑単色ランプデッキなのだ。
このデッキのメインエンジンは《ギャレンブリグ城》。4マナ払ってタップすれば緑マナを6つ得られる、計算上土地を5枚タップして1マナ得するカードだ。このマナはクリーチャーを唱えるかそれの能力のためにしか支払えないという制限付きだが、それほどクセもなく使いやすいマナ加速である。この城と組み合わせるのが《沈んだ城塞》。土地の能力を起動するためだけに支払える2マナを加えるので、ギャレンブリグの起動を1ターン早められる。これらが複数枚並ぶことで、エムラクールを唱えられるほどの大量のマナが捻出される……というロマンあふれるランプデッキだ。
ランプというのは戦場に並ぶ土地を増やし、対戦相手とマナの差をつけて勝利を目指すアーキタイプのことだ。このデッキでそのランプ要素を担っているのは《エルフの再生者》と《茨の騎兵》。ライブラリーから土地を出せるが、100%マナが増える補償はない。その分、基本土地以外のギャレンブリグやニクソスも手に入るかもしれないというリターンが大きく、これらのクリーチャーを展開して効率よくマナを増やせればそれだけ後続のより大きなクリーチャーが出現するのが現実的になってくる。《森》に絞られるがライブラリーから探して確実に戦場に出せる《中心核の瞥見》も2ターン目を埋めるいい仕事をしてくれる。さらに《大ドルイドの魔除け》もどんな土地でも戦場に出せるので、その時最もマナが増えるものをサーチしてこよう。マナがある時にはクリーチャーを手札に加えたり、相手のパーマネント除去としても機能したり……ランプの得意なことと苦手なことをカバーする、器用過ぎるクールなインスタントだ。
これらのマナ加速を優先し、《ラノワールのエルフ》のような信心などのお約束なクリーチャーは不採用。対戦相手の《致命的な一押し》など軽量クリーチャーを狙う除去を腐らせる作戦を敢行している。地味ながら効果的でクールなアプローチだね。
マナが伸びた後は、もう極論なんだって良い。個人の好みでデカいカードを叩きつけて、カードパワーで圧殺だ。《荒々しい三つ子》で戦場を覆い尽くしたり、《産業のタイタン》で柔軟にことに対処したり。《街並みの地ならし屋》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》でパーマネントを吹き飛ばし始めたらもう勝利は目前。これらの無色のクリーチャーを唱えるためには《見捨てられた神々の神殿》が役に立つ。シブいチョイス、クールすぎるぜ。マナを加える目的としては最低レベルの土地である《ウギンの聖域》も、エルドラージや地ならし屋を文字通り連打する動きを後押し。この土地も随分久しぶりに見たなぁ……なんだか同窓会のような土地構成には気分もクールそのものになるよ。
さあ、エムラクールを唱えよう。それは最高にクールなゲーム体験への最短ルートだ。マナを増やすという工程を経て、その先に待つ快楽……3代目となる新カードも今から待ち遠しいものだ。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Believe Emrakul!!
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