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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
白青コントロールの新提案:《切望の隼》って何するの?(スタンダード)
マジックにはカードの所有者を示す概念が2種類ある。コントローラーとオーナーと呼ばれるもので、カードのテキストでよく目にするフレーズである。コントローラーとは文字通り、オブジェクトをコントロールしているプレイヤーである。パーマネントであるカードはもちろんのこと、唱えた呪文、誘発したり起動させた能力、ターンそのもの……それらをコントロールしているプレイヤーを○○のコントローラーとする。これは直感的に理解できるだろう。このコントローラーを変更する呪文や能力も多数存在しており、特に対戦相手のパーマネントを奪うカードはワルの皆の愛するところだろう。
これに対してオーナー。これはコントローラーとは別の独立した概念で、オブジェクトを所有しているプレイヤーのことである。ゲーム開始時にカードをデッキに入れていたり、サイドボードや統率領域に持っていたプレイヤー。トークンを生成したプレイヤー、呪文をコピーしたプレイヤーもオーナーになる。コントローラーは変更する術があるが、オーナーは変更されることがない。たとえば《送還》のようなパーマネントや呪文を手札やライブラリーに戻すものは、それをオーナーの手札やライブラリーに戻すように指定している。これにより、プレイヤーたちのカードが混ざってしまって混乱が生じることを防いでいるわけだ。
なぜこのようなマジックのルールの説明を始めたのか、その答えは新カード《切望の隼》にある。このカードのテキスト、初心者にはなかなかわかりにくいものじゃないかなと。「あなたがオーナーであるがコントロールしていないパーマネント」ってなんのこっちゃと。つまりこれは「自身のパーマネントだったが、対戦相手にコントロールが移ったもの」のことだ。隼は攻撃時に、それに該当するパーマネントのコントロールを得ることができる。コントロール奪取系カードへの対策手段……というのは少々ニッチ過ぎる。
隼はオーナーであるカードのコントロールを得る能力だけでなく、裏向きでプレイできる変装クリーチャーでもある。変装コストを支払って表向きになった際に、パーマネントを好きなだけ対戦相手へと譲ることができる。コントローラーが対戦相手に変更になり、この方法でプレゼントしたパーマネント1つにつき1ドローというかなり特殊な能力を所持している。つまり自身で譲渡したカードを返せ!と言わんばかりにコントロールを取り戻していくのが《切望の隼》というカードの全容である。うまくいけばカードを引きつつパーマネントを全部取り戻して、フリードロー獲得!と。
しかしこの隼、そうも上手く機能するだろうか?ただ単に土地やクリーチャーを対戦相手にあげていては、ハッキリ言って大損だ。ドローがそれを上回れば良いが、リスクをケアして運用するなら表向きにして1枚コントロールを変更、そのターンに即攻撃して取り返せればノーリスクとなるが……せっかくなら1枚だけと言わず複数枚ドローしたい。人間とは貪欲なものだ。
この欲をかなえるには、対戦相手にコントロールを譲ってもリスクの少ないパーマネントを提供することを狙えば良い。例えばトークン。《下水王、駆け抜け侯》のネズミや、《スクレルヴの巣》のダニのように、ブロックに参加できない戦力としては弱めのトークンであれば、もし隼で取り返せなくても諦めはつくレベル。隼を表向きにしつつトークンを渡してドローする。トークンより強いカードが引ければ儲けものだ。
また、誰がコントローラーであっても関係ないカードというものもある。全プレイヤーに効果を及ぼしたり、役目を終えたエンチャントやアーティファクトといったところだな。たとえば《ガラスの棺》。戦場に出て相手のクリーチャーを追放すれば、あとはコントロールが相手に移ろうが何も関係ない。パーマネントを生け贄に捧げる手段などを備えている相手であれば話は別だが……そこまで考えすぎなくてもね。むしろコントロールを移すことで《暗殺者の戦利品》のような「対戦相手がコントロールしている」と書かれているタイプの除去を受けなくなるという展開すらもあるかもしれない。
また《窯焼きの煉瓦》なども作成コストを支払えない相手であれば、もらっても何の使い道もないプレゼントに最適な一品。こちらは《平地》を手札に加えて2点回復し、煉瓦の置物を対戦相手の玄関先に押し付け、一方的にカードを引かせていただこう。墓地の落ちた隼をコストに作成能力を起動できるのもシブいかなと。
2《行き届いた書庫》 4《さびれた浜》 2《不穏な投錨地》 2《ミレックス》 1《皇国の地、永岩城》 1《天上都市、大田原》 7《平地》 6《島》 -土地(25)- 2《不撓の門番》 4《切望の隼》 1《オレリアの立証者》 1《探偵社社長、エズリム》 -クリーチャー(8)- |
2《失せろ》 2《精霊界との接触》 2《ガラスの棺》 1《集団失踪》 2《不安定な象形橋》 4《喝破》 2《困惑の謎掛け》 3《窯焼きの煉瓦》 1《主の案内壁画》 1《宝物の地図》 1《思考への侵入》 2《君主今田の凋落》 1《日没を遅らせる者、テフェリー》 2《放浪皇》 1《永遠の放浪者》 -呪文(27)- |
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というわけでこちらが白青2色(アゾリウス)の隼コントロールの叩き台だ。《精霊界との接触》や《不安定な象形橋》など対戦相手にプレゼントしてもかまわないパーマネントで除去を行い、これらを隼の変装解除からドローに変換し、対戦相手との手札差をつけてゲームを有利に戦うことを狙っている。《窯焼きの煉瓦》など、何かを行うカードは使い捨てのインスタントやソーサリーではなく、なるべく何もしない状態で戦場に残るパーマネントを採用することを意識した。《主の案内壁画》なども書いてあることはめちゃ強いと前から感じていたものなので、こういうデッキでこそ試してみようと思い切って投入!《喝破》や《思考への侵入》などの新カードもコントロール向きであり、《放浪皇》など従来のガチ度の高いカードと組み合わせることで、こういった遊びの要素を許容できるデッキが組めるのかなと。
色々と紹介したいものもあるが、最後に見慣れない人も多いだろう1枚について解説。《君主今田の凋落》!これは大昔の神河で、大きな問題をやらかして神河に大混乱をもたらした今田が裁かれるシーン、その伝承が描かれた英雄譚だ。《奪われし御物》が今田から解放されたことを表現しているⅡ章能力に注目してほしい。「各プレイヤーは自分がオーナーであるすべてのパーマネントのコントロールを得る。」と、普通のゲームではほとんど機能しないような処理を行う。せいぜい、対戦相手にコントロールを奪われた物を1つ取り返せたら御の字というところだが……隼!隼の能力とマッチしているぞ!このⅡ章能力が誘発したタイミングで隼を表向きにして能力を誘発させ、パーマネントのコントロールを対戦相手に譲ってドロー→今田で即回収!この動き、やってみたいな……絵面が面白くて、インパクト満点。対戦相手も「え?」と何が起きたか戸惑ったあとに「凄い!」と良いリアクションしてくれること間違いなしだ。
対戦相手が《ティシャーナの潮縛り》のような能力を打ち消すカードを持っている場合、パーマネントを大量提供した後に今田を打ち消されて即投了という悲惨な負けっぷりをさらすことになるかもしれない(笑)。それはそれでちょっとした武勇伝だし、多くのデッキではそのようなことはしてこないので、単純に気持ち良くなれるコンボとして……決まれば良いなと採用した次第だ。《黙示録、シェオルドレッド》などを追放できるのも悪くない。
初心者には、テキストに書いてあることも、その使い方も、少しわかりにくいカードかもしれない《切望の隼》。しかしその挙動と狙いを理解できれば、デッキ構築の挑みがいのあるカードということがわかってもらえるはず。あげちゃってもいいさの精神で、対戦相手にパーマネントのコントロールを譲り、そして取り返す。なかなか他のデッキで味わえない要素だと思うので、このリストを皆が感じたようにいじってより素晴らしいものを作り上げてくれたら……ない知恵絞ってあれこれ考えた時間が報われるよ。全く新しいデッキ、組んでみようぜ。
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