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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:今も生き続ける「MoMa」の精神(レガシー)
金曜日。週末に繋がるある意味で一番クールな曜日に、当コラムデイリー・デッキがお届けするのは「今週のCool Deck」。クール第一主義、クールじゃなくっちゃ始まらない!こんな思いでデッキを追い求め、出会った珠玉のリストを紹介するこのコーナー。さて、今回のデッキはどんなクールな逸品なのか……。
その前に。もう秋は過ぎてしまったけども、最近筆者岩SHOWの中ではクールなアートを求める気持ちが高まっている。前衛芸術というものに関しての知識がまったくなかったのだが、それに関してわかりやすく解説してくれる文庫本を読んで「なるほどな」とわかった気になっている。芸術というやつはその昔は、偉大な人物や重要な出来事を描いてナンボであったという。そういった形式を打ち破るため、生活のごく当たり前なワンシーン、身近過ぎる風景などを描く芸術が誕生した。もともとの芸術とは偉大な何かを描くのではなく、そういった生活に根付いたものだったではないか、と。洞窟の壁画に狩りをしているシーンが描かれているような、人の営みにより近く、単純に描くのが楽しい芸術を目指す!という運動だったという。クールな話じゃないか。
美術館などに赴いて、技法とかはわからないけども自分の心にグッときた作品をずっと眺めていたい、そんなテンション真っただ中である。ニューヨーク近代美術館とか、いつか行ってみたいな。絵画だけでなく、ポスターや写真、映画のフィルム、はては家電やビデオゲームなども展示されているという。有意義でクールな時間を過ごせそうだよね。このニューヨーク近代美術館はその英名Museum of Modern Artを縮めて「MoMA(モマ)」と親しみを込めた愛称で呼ばれている。そしてこの略称はマジックのデッキ名にもなった。
《精神力》。日本語名で書けばわからないが、このカードはモマである。英名は《Mind Over Matter》で、なるほどこちらも略せば「MoMa」ということになる。《精神力》は手札を捨てることでパーマネントをタップ、あるいはアンタップできる。イラストに描かれているのはウルザであり、その後の多元宇宙の運命を決める重要なワンシーンなのもクールなカードだ。重いコストが設定されているだけあって、機能しだすとメチャ強。起動にマナが要らないという点が本当に強烈だ。手札というコストは、ドローで簡単に補えるというもの。
同時期のスタンダードには《トレイリアのアカデミー》という、それはそれは簡単に大量のマナを供給する土地があった。これで《天才のひらめき》にマナを注いで大量ドロー、その手札を捨てて《精神力》を起動してアカデミーをアンタップ……クールすぎて凍えるムーブだ。このエンジンを搭載したコンボデッキをMoMaと呼んだわけである。25年前の12月に開催されたThe Finalsというトーナメントではトップ8中6名がMoMaを持ち込み、その他のトーナメント結果からも「MoMaの冬」と呼ばれる期間となった。当時のプレイヤーには色々と大変だったろうが、今となってはクールな事件、歴史である。
1 《溢れかえる岸辺》 1 《吹きさらしの荒野》 2 《霧深い雨林》 3 《虹色の眺望》 1 《Tundra》 1 《Savannah》 1 《Tropical Island》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《平地》 4 《島》 2 《森》 -土地(18)- 3 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 1 《忍耐》 2 《孤独》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(7)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 2 《ロリアンの発見》 4 《豆の木をのぼれ》 4 《剣を鍬に》 2 《終末》 3 《虹色の終焉》 4 《意志の力》 1 《否定の力》 2 《一つの指輪》 1 《精神力》 2 《時を解す者、テフェリー》 2 《覆いを割く者、ナーセット》 -呪文(35)- |
2 《忍耐》 1 《魂標ランタン》 1 《夢を引き裂く者、アショク》 2 《花の絨毯》 2 《夏の帳》 1 《狼狽の嵐》 1 《水流破》 2 《激しい叱責》 2 《耳の痛い静寂》 1 《封じ込める僧侶》 -サイドボード(15)- |
というわけで今回紹介するのもMoMaを搭載した最新のリストだ。といってもかつてのMoMaを完全に再現することは、現在のマジックの正規の構築フォーマットではかなわぬ夢。しかしながらマジックは日々進歩、進化を続けている。2023年、今の時代にしか組めないMoMaだってある。
このレガシーのデッキは基本的にはコントロール。青いドローと打ち消し、白のクリーチャー除去。そこに緑から《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《豆の木をのぼれ》と軽くてパワフルなエンジンを取り入れた構成だ。特に豆の木は《意志の力》《終末》のように本来のコストは重くとも代わりのコストで唱えられる、そんなレガシーならではのカードらとの相性が抜群。本来マナを払う代わりに手札を失うという無視できない損失が発生する《意志の力》が実質的にノーリスクに。なんだったら豆の木2枚以上が並んでいればモリッと手札が増えてとんでもないことに。
レガシー環境ではこの豆の木と《力線の束縛》とを併用するコントロールデッキが大増殖中!先のアジアチャンピオンシップで優勝していた……のだが、同大会で使用されていたこのリストはノー力線スタイルである。力線のためにあれもこれもと基本でない土地を取り入れると《血染めの月》で止まったり《不毛の大地》でバキバキに割られて、肝心の《精神力》を唱えることが出来なくなってしまう。基本土地を多数備えて、そういった事態を回避しつつより安全に立ち回るコントロールを目指しているのだろう。
さて、対戦相手の攻めをコントロールとして捌いたら、いよいよ《精神力》でフィニッシュだ。組み合わせるのは……《一つの指輪》!指輪をタップしてカードを1枚引く→手札を1枚捨てて指輪をアンタップ→指輪をタップして重荷カウンターを増やしてその個数分カードを引いて、また手札を捨ててアンタップして……どんどんと引く枚数が増えていくので、MoMaで手札を捨てても減るどころか増え続ける一方だ。
この望んだ枚数だけカードを引くことが可能なコンボ。最後には膨れ上がった手札を捨てて土地を起こしてはタップしてを繰り返し、15マナ加えて《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱える!唱えたことで追加ターンが得られて、そのまま攻撃してパーマネントを6つ生け贄に捧げさせつつ15点ダメージ!シンプルにしてクールすぎる絶対的フィニッシャーを正々堂々と手札から唱えるのだ。こりゃ参った、天晴れ。エムラクールを引くために重荷が凄いことになってダメージが……という心配も《時を解す者、テフェリー》で指輪を手札に戻したりして何もなかったことにすれば問題ない。これが《精神力》の力だ。このエンチャント、クールすぎて背筋が凍ってしまうぜ……。
かつてのデンジャラスすぎるデッキ、MoMa。その精神は今も生きている。マジックのデッキ、これもまた前衛芸術なのである。伝統と概念の破壊、これらが混ざり合うレガシーは心底クールなフォーマットだなと。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Sharpen your mind‼
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