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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
墓地を使いそうでそうでもない、謎のスゥルタイ:設計思想を感じ取る(スタンダード)
最近は他人のデッキ案を簡単に見ることができる。僕が学生の頃は月に一度雑誌で情報収集。さらに季刊の海外誌の翻訳版で一歩踏み込んだ情報に触れる……それらをベースに自身のデッキ構築を行っていたものだ。学校のパソコンルームが使える時には、有志は立ち上げたホームページで国内外の様々なデッキリストを見て、静かに興奮していたなぁ……今は誰でもPCやスマホから、世界中の誰かが共有してくれるデッキリストを簡単に検索することができる。当コラムもそういった情報源としての役目を微力ながらに担えていたら、この上なく光栄なことだ。
誰でも瞬時にデッキリストをコピーし、MTGアリーナなどでインポートしたデッキをそのままプレイすることが可能な時代。だからこそ、大事なことがある。そのデッキが一体何をしたいのか、しっかりと理解するということだ。目の前を流れていくデッキリストを何も考えずにコピーして、1回プレイしてよくわからんので即解体……そんな風に情報を消費していないだろうか?これではせっかく様々なデッキを体験できるという時代の利点を活かしきれない。一目見て何をするのかわかるデッキもあれば、見れば見るほどよくわからなくなってくるデッキもある。もし興味を持ったデッキが、何故そんな構築なのか?何故このカードが採用されているのか?わからないことが浮かび上がってきたら……大事なのは他の人がそのデッキをプレイしている光景を見ること。昔はこれも難しいことだったが、インターネットが発達した現代ならこれも楽勝。そして対戦回数を重ねること、これも家に居ながらアリーナなどでどんな時間帯でもネット対戦が可能なので、かつてほどハードルが高くない。デッキの目指しているところを知ること、これが第一歩。長期戦を狙っているリストを理解できずに短期決戦を仕掛けていては勝てないよね。
というわけで今回紹介するデッキも、一目見て設計思想があまりわからないものをピックアップ。有名ストリーマーが使用していたものということなのだが……はっきり言って、リストを見ただけではこのデッキが目指しているところが全くわからなかった。なので実際にプレイしたところ……その辺は後ほど。ではリストチェック!
4 《闇滑りの岸》 1 《死天狗茸の林間地》 4 《夢根の滝》 2 《地底の大河》 2 《ラノワールの荒原》 4 《眠らずの小屋》 2 《眠らずの蔓茎》 1 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 3 《ミレックス》 1 《森》 -土地(26)- 4 《苔森の戦慄騎士》 3 《温厚な襞背》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《復活したアーテイ》 1 《荒々しい三つ子》 -クリーチャー(12)- |
3 《かき消し》 4 《切り崩し》 4 《喉首狙い》 3 《ギックスの命令》 4 《麒麟の教え》 4 《アモンケットへの侵攻》 -呪文(22)- |
1 《機能不全ダニ》 2 《強情なベイロス》 2 《墓地の侵入者》 1 《グリッサ・サンスレイヤー》 3 《軽蔑的な一撃》 2 《強迫》 1 《アガサの魂の大釜》 1 《危難の道》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《レンと次元壊し》 -サイドボード(15)- |
このリスト……《苔森の戦慄騎士》に《黙示録、シェオルドレッド》、黒の除去たっぷり……はいはい、『エルドレインの森』リリースと同時に一気に数を増やした黒緑の中速デッキね……あ、青も足されている。《かき消し》も備えて序盤の妨害能力を高めた3色型だね。それならそう珍しいものでもないよな……戦慄騎士らクリーチャーと《眠らずの小屋》で攻めるのを、《喉首狙い》《かき消し》《ヴェールのリリアナ》などで後押ししていく……そういうデッキだろう?
って違うッ!その手のデッキでは採用されていないカードらの姿が。《麒麟の教え》はまだメインカラーの緑と色もあっているのでわかる。《アモンケットへの侵攻》4枚というのはかなりガッツの入った採用だ。つまりこれを使いたくて青を足しているということだもんな。《アモンケットへの侵攻》は対戦相手の手札を1枚捨てさせてこちらが1枚ドロー、これだけでも手札の枚数差を作れてGOOD。そこからさらにお互いのライブラリーを3枚切削して墓地を肥やし、これの守備値を0にして変身させれば、墓地のクリーチャーのコピーになる。『機械兵団の進軍』リリース当初は目にする機会が多く、僕もこれを多用していたが……最近めっきり見なくなっていたので、今年リリースのカードだけども早くも懐かしさすら覚える。決してこれ自体が弱くなったなどではなく、その変則的なリアニメイトの強さはまだまだ健在だ。
ここで気付いたのだが、そういえばこのデッキを使用していたストリーマー、《アモンケットへの侵攻》も《麒麟の教え》も何かとよく使っていた人だったなぁと。おそらくは彼の好きな2種類の墓地関係のパーマネントを共演させたデッキ、といったところなのかなと推測。《麒麟の教え》も良いカードだ、これ1枚から3体以上のクリーチャーを得ることが見込めて、対戦相手の墓地対策にもなり得る。
教えも侵攻も、どちらも切削を行って墓地を肥やすカードなので……僕だったら思わず《ギックスの残虐》で侵攻とあわせてリアニメイト呪文の数を増やしたり、あるいは《開花の亀》で墓地から土地を拾ってマナ加速……そういったデッキを組んでしまいそうになる。のだが、このリストではそういったカードは不採用。教えと侵攻、これらのカードは墓地を絡めたシナジー(カードとカードの相互作用)を想定して用いると強くて楽しいものだが、これ単体で用いても十分な強さを持っている。
この墓地シナジーを意識したデッキを組むと《墓地の侵入者》《下水王、駆け抜け侯》などの墓地対策カードに対して苦しむことになる。このデッキをプレイしているとそういったシナジー抜きに機能するカードを用いるこちらに対して、対戦相手はサイド後に各種墓地対策を水増ししてくる。《苔森の戦慄騎士》なんかはそれに引っかかったりもするが、とくに墓地対策を気にせずにストレスのないゲームができて、対戦相手は今一つ働かないカードを引いている分、損をしているように感じる展開を体験した。もしかしたらそういった狙いで作られたデッキなのかもしれないな……対策されやすいカードを排除する、引き算から組まれたデッキということかな。僕は足し算掛け算のデッキ構築ばかりしているので、このデッキに新鮮な体験をもたらされ、勉強になった。
打ち消しや除去を行う《復活したアーテイ》、低パワーのクリーチャーを薙ぎ倒しつつ様々なことができる《ギックスの命令》、侵攻でコピーするのにうってつけの《荒々しい三つ子》……各種パワーカードのチョイスも光る。これらのカードで通常の黒緑系のデッキと差をつけて、カードパワーでの勝負も可能。そこに至るまでの積み重ねは《麒麟の教え》《アモンケットへの侵攻》や《苔森の戦慄騎士》でコツコツと自分が有利な状況へと持っていく。プラント引きが上手く噛み合えば強いデッキではあるが、難しい部類に感じたね。3色デッキなので土地も無理をしている側面があるので、そのあたりは実際にプレイしてみて自分と合うものかどうか、実体験で学ぶのが良いだろう。
というわけでリストを見ただけではわからない、プレイしたり動いているところを見ることで設計思想がわかってくるデッキの一例を紹介させていただいた。こんなデッキに遭遇して、どんなデッキなのかわからない!そんな事態に陥ったら、質問ウェルカム!答えが出るかはわからないが……僕なりの感想を書かせてもらうよ。それじゃ!
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