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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

あのコンボは今?ディミーア・ブリーチ(スタンダード)

岩SHOW

「あのコンボは今?」

 マジックというものは、常に移り変わりゆくゲームだ。新しいセットが加わりカードが増える。デッキやカードの研究が進み、その真価が判明し戦術が確立される。そしてローテーションなどで使用可能なカードも変化し……いつまでも同じことを続けるわけではなく、だからこそ面白い。プレイヤーはいつだって新しいもの好きだ。新しいカードがもたらす新しいデッキ、特に新しいコンボは世界中の注目を浴びる。新たなゲーム体験を求めるプレイヤーらによって新コンボは数を増やすが……全てがそのまま定着するわけではない。流行りを経て、あれ?そういえばあのコンボって流行ってたよな……そんなことは毎度おなじみ。そうやって消えてしまうのか、あるいはマニアによって粘り強く使われ続けるのか?コンボの底力が問われる。コンボって対策されやすいからね。皆も好きなコンボデッキがあるけれども、なかなか勝てなくなって使わなくなったという経験、あるんじゃないかな。

 でも安心してほしい。流行から外れたデッキというものに対するガードは、当然下がってくる。プレイヤーも今現在の流行と戦ううちに、少し前のデッキとどうやって戦っていたか、セオリーを忘れてしまうことも。そう、ピークを過ぎたコンボというものは、むしろ再び花を咲かせるタイミングを伺っているだけなのである。不意を突いて決まるコンボの破壊力といったら、クセになる。今日はそんな、ちょっと前のコンボ、その現在形をご紹介。

Gurix - 「ディミーア・ブリーチ」
Construído do TorTo 優勝 / スタンダード (2023年10月2日)[MO] [ARENA]
4 《闇滑りの岸
4 《難破船の湿地
4 《地底の大河
2 《ミレックス
2 《天上都市、大田原
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼
3 《
5 《
-土地(25)-

3 《フェアリーの黒幕
3 《黙示録、シェオルドレッド
4 《碑出告と開璃
2 《ファイレクシアの肉体喰らい
-クリーチャー(12)-
3 《切り崩し
3 《喉首狙い
1 《一巻の終わり
2 《危難の道
2 《強迫
4 《かき消し
2 《眼識の収集
3 《多元宇宙の突破
3 《ヴェールのリリアナ
-呪文(23)-
2 《軽蔑的な一撃
2 《強迫
2 《ギックスの命令
4 《下水王、駆け抜け侯
2 《否認
2 《ファイレクシアの肉体喰らい
1 《一巻の終わり
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 《碑出告と開璃》……『機械兵団の進軍』がリリースされた直後は目にする機会が多かったんじゃないだろうか。戦場に出ると《渦まく知識》相当のドロー&ライブラリー操作。そして死亡時にそれぞれの神河の伝説クリーチャーらのエッセンスを合わせた能力が誘発。ライブラリーの一番上のカードを追放。対戦相手はそのカードのマナ総量分のライフを失う。そしてそのカードがインスタントorソーサリーなら、マナを支払わずに唱えられる……と。なかなかに豪快なマナ踏み倒し系能力だ。ライブラリーの一番上、ということは戦場に出た時の能力で仕込むことができる。これにより対戦相手は《碑出告と開璃》を破壊することを躊躇し、除去や攻撃への牽制として機能する。

 このタッグチームによるライブラリー操作で《爆発的特異性》を仕込む。そして《喉首狙い》などで自ら《碑出告と開璃》を死亡させる。《爆発的特異性》が公開され、対戦相手は10点のライフを失い、そして特異性自体で10点ダメージを与えて合計20点!ビジュアルもなかなかにカッコよく、決まれば最高に気持ち良い。この「シンギュラリティ(特異性)」コンボは2023年春には流行し、毎日MTGアリーナで対戦相手が繰り出してくる《碑出告と開璃》を目にしたものである。

 しかしながら……だんだんと日を重ねるにつれ遭遇頻度は下がり、ブームは去った。決まれば勝てる豪快さはあるのだけれども、色々と対策されやすいコンボではあるんだよね。そもそも手札に来るとお荷物になる特異性というパーツがなんとも……と。頑張って10マナ揃えたりクリーチャーを寝かせて唱えても、特異性だけだと10点しか入らず結局クリーチャーで攻撃したりしなければならず、ロマンは無茶苦茶あるし気持ち良さもあるけど難易度が高いんだよなぁ……。

 この《碑出告と開璃》コンボの最新リストでは、特異性を含む赤い要素をすべてカット。ディミーア(青黒)2色にまとめられている。《碑出告と開璃》で追放して気持ちよくなるカードは……《多元宇宙の突破》!7マナと重いので対戦相手のライフを十分に減らすことができる。そしてこの突破(通称ブリーチ)、対戦相手と自分のお互いのライブラリーを切削し、そして墓地からクリーチャーかプレインズウォーカーを戦場へ。カード1枚でパーマネント2枚分の働きを狙える、超強力ソーサリー!これも《碑出告と開璃》と同様にリリース当時は黒系デッキのフィニッシャーを務めていることが多かったが、最近は見かける機会が減少していた1枚だね。

 そんな2枚の組み合わせ、《碑出告と開璃》の死亡で突破を公開して唱え、そして対戦相手の墓地から有力なカードを拾いつつ、こちらは《碑出告と開璃》をリアニメイト……という動きができれば、戦場を強いものとして保ち続けられる。以前流行った形のように一気に20点ライフを失わせる!というような豪快さは和らいだが、堅実に対戦相手を追い詰めるコンボとして生き延びることに。また、7マナの突破は手札に来ても唱えられる範囲で、そこから《碑出告と開璃》を拾って対戦相手に強烈なプレッシャーをかける動きはそれだけで強い。コンボ、というよりは《碑出告と開璃》と《多元宇宙の突破》という2枚のシナジー(相互作用)を武器にしたスマートなデッキになった、というところかな。

 無理やりコンボを狙わなくなり、落ち着いたミッドレンジ(中速)デッキとなったことで、かなり扱いやすいデッキに仕上がっている「ディミーア・ブリーチ」。このデッキはキーカード2枚以外にも《フェアリーの黒幕》《眼識の収集》とアドバンテージを得る手段が用意されており、これらでリソース(戦うための資源)が切れないように物量勝負を挑めるミッドレンジにまとめられている。《かき消し》《強迫》や各種除去とコントロール要素で対戦相手の攻勢を捌き、《黙示録、シェオルドレッド》《ファイレクシアの肉体喰らい》で殴り勝つというミッドレンジの王道的な動きでも勝てる。だからこそ遊び心に溢れたブリーチ要素を搭載する余裕があるってことだね。

 すっかり見なくなった、数を減らしたコンボ。それらは絶滅したわけではなく、形を変えて生き延びている!もちろんシンギュラリティ型の《碑出告と開璃》コンボも、使って良いんだぜ。忘れられた頃に20点砲をぶっ放す快感もあるのだから。

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