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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:あのデッキはターボランドかい?(モダン&過去のフォーマット)

岩SHOW

 クールなデッキ、デッキやカードに関するクールなエピソードを紹介する金曜日、おなじみCool Deckのお時間だ。マジックは各種30周年のお祝いを終え、31年目に突入。はい、もうクールすぎますわ。

 これだけの期間続いているコンテンツ、そしてそれを追いかけ続けているファンには、不思議な現象が発生する。新しく作られたものが、意識せずとも過去のものとリンクする。何が言いたいかって?最新作のはずなのに、何故か「懐かしい」と思ってしまうということだよ。最新のカードをふんだんに取り入れた、全く新しいデッキが誕生……なのに何故かどこが見たことがあるような気がする。記憶の中のデッキの幻影と、現在目の前にあるデッキとが重なる。これぞマジックのクールさ、歴史の生み出した産物だ。

Danny_Bambino - 「豆の木コントロール」
Magic Online Modern Preliminary 4-0 / モダン (2023年9月25日)[MO] [ARENA]
4 《溢れかえる岸辺
1 《沸騰する小湖
1 《ゼイゴスのトライオーム
3 《霧深い雨林
1 《ラウグリンのトライオーム
2 《神聖なる泉
1 《繁殖池
1 《ヴァントレス城
1 《蒸気孔
2 《平地
4 《
-土地(21)-

2 《緻密
4 《孤独
-クリーチャー(6)-
4 《対抗呪文
4 《火 // 氷
3 《終末
4 《力線の束縛
4 《豆の木をのぼれ
3 《ロリアンの発見
4 《時間のねじれ
3 《時間の熟達
2 《時を解す者、テフェリー
2 《精神を刻む者、ジェイス
-呪文(33)-
1 《孤児護り、カヒーラ》(相棒)
2 《高山の月
2 《虚空の杯
2 《ドビンの拒否権
2 《冥途灯りの行進
2 《エレヒの石
2 《石のような静寂
2 《緻密
-サイドボード(15)-
Magic Online より引用)

 

 これはモダンの最新テクニックを取り入れたデッキの一つ。すっかり当コラムでもお馴染みになった《豆の木をのぼれ》の登場によりつくられたものだ。『エルドレインの森』がもたらした最大のインパクト、スタンダード以外のフォーマットもひっくるめればこの豆の木かもしれない。2マナという軽さでとりあえず1ドロー付き、戦場に出せれば損はしない。5マナ以上の呪文を唱えれば1ドロー、1回でも誘発させればお得、2回目以降からはもうお祭りだ。

 この豆の木と最高に相性の良いものが《力線の束縛》。この版図呪文を低コストで唱えつつ豆の木で引くために、基本土地タイプを揃えるドメイン(版図)系デッキが量産されているが……モダンであれば《孤独》などのインカーネーションとの相性も抜群。緑と白を中心とした5色のコントロールデッキなのだが、最大の特徴は……

 奇跡呪文の採用!各ターンの最初に引いたカードが奇跡能力を持っていた場合、これを公開してその奇跡コストで唱えられる。《終末》も《時間の熟達》も、とても重い呪文でありながら奇跡であれば1、2マナで唱えられてしまう。こうなるとコストパフォーマンスはぶっ壊れ。1マナでクリーチャーを全て除去、クールだぜ。2マナで追加ターン、ちょっとクールすぎるだろ。これらに豆の木でドローを追加する。クールかどうか、尋ねるのは無粋なレベルだ。

 奇跡の条件を満たすため、最近モダンでは採用デッキが減っている《精神を刻む者、ジェイス》に再びスポットライトが当たっているのもグッとくる。彼の能力でライブラリートップに奇跡を仕込み、仕組まれたミラクルを起こすのだ。

 このリストをデッキリスト掲載サイトで目にした時、「ああ、○○か」という感想が沸き起こり……ちょっと間を置いてから「いや、別に○○ではないよな……でも○○っぽいよな……」と不思議な感情に。

「ああ、ターボランドか」

 「ターボランド」……このデッキを知ったのはまだ中学生の頃、今から20ウン年前のこと。そのデッキのDNAをこのリストから感じたのである。ランドと名がつくことからも土地が何かするデッキというのは伝わるだろう。そう、土地を並べて得するデッキなのだが……そもそも上記のリストは土地の枚数を21枚と絞っている。この時点で「ターボランド」でもなんでもないのだが、なんでかそう思ってしまったんだよな。

Zvi Mowshowitz - 「ターボランド」
グランプリ・ニューオーリンズ2003 優勝 / エクステンデッド (2003年1月4日)[MO] [ARENA]
4 《ヤヴィマヤの沿岸
1 《樹上の村
14 《
5 《
-土地(24)-

1 《戦場のたかり屋
-クリーチャー(1)-
4 《蓄積した知識
2 《噴出
2 《直観
2 《巻物棚
4 《対抗呪文
3 《一瞬の平和
1 《転覆
2 《クローサ流再利用
3 《時間のねじれ
4 《踏査
4 《どん欲の角笛
4 《ドルイドの誓い
-呪文(35)-
1 《黄塵地帯
1 《転覆
1 《帰化
2 《火薬樽
1 《反論
1 《妨害
1 《誤った指図
3 《綿密な分析
1 《直観
3 《貪欲なるベイロス
-サイドボード(15)-
MTGTop8 より引用)

 

 こちらがその「ターボランド」の中でも、僕が特にハートを掴まれたリスト。この時は18歳、高校3年生だったか。地元の某球団が18年ぶりに優勝してお祭り騒ぎになっており、クラスの皆とも青春していた、忘れられない2003年……その年にアメリカのニューオーリンズで開催されたグランプリで優勝したズヴィ・モーショヴィッツ/Zvi Mowshowitzの使用した「ターボランド」。

 憧れのプレイヤーであるズヴィが、当時のモダンのような存在だったフォーマット、エクステンデッドで組み上げたこのリスト。最初に雑誌で目にした時には、一体何をするデッキなのか意味が分からなかった。ターボランドのお約束として《踏査》と《どん欲の角笛》が採用されている。土地を手札から出せる枚数を増やし、それによってドローする。当時はこのようなカードを引きまくったりマナを伸ばしたりするデッキを「ターボ○○」と呼ぶ風潮があった。このターボランドのエンジンの部分は初見で理解できたのだが、どうやって勝つのかを理解するのに時間を要した。

 ターボランドはエクステンデッドの王者的デッキ、「オース」の一バリエーションである。オースこと《ドルイドの誓い》、2マナで置けるこのエンチャントでクリーチャーのコストを踏み倒して戦場へ出す。除去耐性に飛行とパワーが最大5になることから、オースからの《変異種》というのが定番。あるいはオースによりライブラリーにしこたまカードが落ちることを加味して《認識を食うもの》を展開して殴り勝つタイプも見られた。

 そんな中でターボランドを使い続けたズヴィが選んだのが《戦場のたかり屋》!初見の時は「もっと強いクリーチャーいるんじゃないのか?」と思ったものだが……そのクールさを理解して、後からシビレがやってきたよ。このたかり屋は墓地が7枚以上ある時に能力を起動すると+3/+3の修正を受ける。その起動のためのコストが、墓地のカード3枚をライブラリーの底に臨む順番に置く、というかなり特殊なもの。結論を言うとこのターボランドは、オースの誘発からたかり屋が公開されるまでに大量に公開されて墓地に落ちたカードを、たかり屋の能力でライブラリーに戻して再利用することを狙っているのだ。

 オースによる削れと、角笛による大量ドローでライブラリーをほぼ空っぽにして、毎ターンのたかり屋の能力でライブラリーを補充。そうすることで毎ターン同じ呪文を連打できるようになる。そのゴールが《時間のねじれ》!

 最終的にはターボにより並んだ土地からたっぷりのマナを得て、毎ターン《転覆》を唱えて対戦相手の戦場を無にして、たかり屋を6/6にし、ねじれで無限ターンに突入して何もさせずに殴り勝つ!気持ち良すぎて最高にクールなマジック体験を迎えることになるのだ。このために一見何も出来なさそうなたかり屋をフィニッシャーとしてチョイスしている。そのカラクリが分かった時には感動すら覚えたものだよ。

 この《時間のねじれ》を、パーマネントによるドロー連発から繰り出すデッキ……というのが、20年前の「ターボランド」と最新のモダンデッキを結びつけたってことだね。まったくランドをターボしないデッキでありながら、豆の木コントロールはどこからどう見てもターボランドの血を引いているのだよ……頑固おやじと言われても、これは譲れないぜ。同じ時代を生きて共感してくれる人がいたら、それだけでもうクールな気持ちになれるよ。若い世代にはかつてのクールデッキを伝えられたということで、自分としてはもう満足。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Turbo and Warp!!

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