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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
黒単コントロール:鏡よ鏡、今必要なカードは……(スタンダード)
「鏡よ鏡。この国で一番美しいのは誰?」
童話、白雪姫の誰もが知る名シーン。国王が新たに迎えた王妃が、魔法の鏡に誰が最も美しいかを質問する、一連のやり取りだ。鏡は王妃が美しいと答えるが、ある日その答えは白雪姫に変わってしまう。そこで王妃はあの手この手で白雪姫の命を……というのは皆さんご存知の通り。ただこの鏡に問いかけるシーン、白雪姫を描いた作品によってはニュアンスが異なって描かれる。鏡に自分が最たるものだと答えて欲しい、悲しい人というような……そう捉えると一概に極悪な存在と言えないのかもしれない。いやそんなことないか。この有名な童話がモチーフになっているであろう1枚が……
その名も《鏡に願いを》。ただ問うのではなく願うという行動になっており、より祈りの要素が強く感じられる。そしてマジックにおける魔法の鏡は親切だ。その願いをかなえてくれる。このソーサリーは黒における伝統、万能サーチの系譜に名を連ねる最新作だ。《悪魔の教示者》に始まる、持ってくるもののカードタイプなどの縛りなくライブラリーからカードを探し、手札に加えるサーチ呪文。《鏡に願いを》が4マナで何でも持ってこられる、性能としては平均的なもの。《魔性の教示者》に比べると色拘束がキツイなと。
と、これは鏡に対価を差し出さなかった時の話。鏡との協約を結び、特定のタイプやトークンなどのパーマネントを生け贄に捧げれば、このソーサリーはただのサーチに留まらない。生け贄という追加コスト付きで唱えたなら、裏向きに追放したカードを手札に加えるのではなく、それが4マナ以下であればそのまま唱えられる。もちろんマナの支払いは不要だ。言うなれば4マナでライブラリーから4マナ以下の呪文を直に唱えられるカード、というところだね。生け贄を求めるし黒マナの数も必要と、クセは強め。ただ使いこなせれば色んな局面に対応可能な、万能過ぎる呪文である。今回はこのカードを使ったデッキの一例を紹介しよう。では、鏡よ鏡。このソーサリーを使いこなしているデッキはどれ?
1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《ミレックス》 1 《ミシュラの鋳造所》 1 《解体爆破場》 20 《沼》 -土地(25)- 1 《墓地の侵入者》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 -クリーチャー(2)- |
3 《切り崩し》 2 《喉首狙い》 2 《シェオルドレッドの勅令》 1 《危難の道》 4 《ランクルのいたずら》 1 《一巻の終わり》 1 《ギックスの命令》 4 《鏡に願いを》 1 《アイレンクラッグ》 1 《セレスタス》 4 《望み無き悪夢》 1 《魔女の虚栄》 1 《ファイレクシアの闘技場》 1 《執念の徳目》 3 《ヴェールのリリアナ》 1 《不笑のソリン》 1 《忌まわしき干渉者、アショク》 1 《裏切りの棘、ヴラスカ》 -呪文(33)- |
-サイドボード(0)- |
スタンダード、オンライン上のトーナメントにて優勝していたリストだ。使用者名はBlackmanamtg、もうこの時点で黒単愛が伝わってくる。
デッキリストを見れば一目瞭然なクリーチャーの少なさ!たった2枚と最低限の数字に留めてある。つまりは自分から展開して攻めるのではなく、相手のクリーチャーを有り余る除去で潰し続け……アグロやミッドレンジという概念から遥か遠い、こってりとしたコントロールであるという証明だ。対戦相手をがんじがらめの長期戦に引きずり込みたい、相手打線を完封する投手戦・関節技の蟻地獄など、ねちっこい戦いでロングゲームをまったり楽しみたい人にはもってこいのリストだな。
この黒単のコントロールに《鏡に願いを》4枚取り入れた野心的なリスト……見るからに楽しそうだ。鏡の肝心なポイント、協約。黒はこの能力のための生け贄を用意することに長けた色なので安心だ。コントロールデッキでは定番、長期戦のフィニッシャーとなる《ミレックス》はもちろんのこと、無色のマナ加速である《アイレンクラッグ》もコントロールの手数負けという問題を解消しつつ、不要になったら協約の餌にすればOK。
そして黒ならではの《魔女の虚栄》などのエンチャント……特に注目すべきは《望み無き悪夢》だ。手札を捨てさせる、その内容こそ選べないものの確実に対戦相手のリソース(ゲームに勝つための資源)を1つ失わせることができる。更にライフ2点を失わせるオマケ付き……これは長期戦狙いのデッキにはそれほど重要ではないが、最終盤にはこの2点が効いてくる場面もあるやも。そしてこのエンチャントは墓地に置かれると占術2を行えるオマケ付き。まあ鏡がそのまま通るのであれば、占術した後にライブラリーをシャッフルすることになるのでこの並べ替えは意味がなくなるが……もし鏡が打ち消されれば、この微妙なドロー操作が決して微差でなくなるので無意味ではないな。まあ生け贄にして損しない、そういうエンチャントは何でもウェルカムな中で《望み無き悪夢》は1マナと軽く、5マナあって対戦相手の手札が1枚という状況であればこれで手札を落として安全な状況下で鏡からフィニッシュ、というプランが取れえるのは偉いなと。
あとエンチャントでいえば《ファイレクシアの闘技場》との組み合わせも失念してはいけない。毎ターン1点のライフと引き換えに1ドローを提供してくれる闘技場。アドバンテージの観点で考えれば、ライフが手札になることは喜ばしいことで可能であればどんどん進んでやるべきことだ。
ただこの闘技場は強制的にカードを提供してくるので、こちらのライフが一桁の危険域であろうがお構いなし。《黙示録、シェオルドレッド》を出せていればむしろライフが増えて有難いのだが、いつでもこの2枚が揃うという保証もない。なので《鏡に願いを》の協約は危機を感じた時に敗北を回避するための手段としても機能してくれるというわけだ。3枚ほどカードを引けていればマナとライフとターンに見合うだけの対価である。こだわりがなければサクッと生け贄にして、美味しいとこだけ味わって闘技場をポイッ。この戦い方、大推奨。
さて願いが叶ってサーチしてきて、協約によりそのまま唱えるカード達の姿を確認しておこう。先ほどもとりあげた《黙示録、シェオルドレッド》。これは文句なし。消耗戦の末にポンと出てきたらあっという間に勝ちをもたらす。ピンチであっても毎ターンのドローで2点回復、除去されないように祈り続けて、気が付けば逆転していることも。
そして《不笑のソリン》。ライフに余裕があればカードを手札に加え、戦場を固めたいなら吸血鬼を展開。13点ダメージも決してネタではなく、案外決まると良いところを沢山持ったプレインズウォーカーだが、デッキに複数枚搭載するのは色々とリスクがある。1枚だけ忍ばせて、これが欲しいという場面だけ願って手に入れる。理想の使い方がついに出来そうだ。
除去の枠には……単体であれば《一巻の終わり》。クリーチャーやプレインズウォーカーを追放だ。うっかり手札に来てしまっても大丈夫、インスタントなので扱いやすく、ライフが少なければ{2}もコスト軽減。そして今スタンダードで最も注目されている除去はコレだ。
そしてクリーチャー2体だったり破壊不能や呪禁を持つものだったりを対処可能な《ランクルのいたずら》!4枚搭載されているこれはデッキの看板と言える。モードを最大3つ選べるソーサリーであり、このデッキでは基本的にはクリーチャー2体生け贄のみを選ぶ。これで確実に1:2交換を重ねて、対戦相手とのリソース差を拡げる。4マナで2体生け贄は効率◎。自身の手札に不要なカードが余っていたり、また逆に手札が空だったりするならば各プレイヤーがカードを2枚捨てるモードも選んでさらにリソースを削り取る。ライフを減らすモードを選ぶのは、対戦相手が抵抗の意思を見せないくらいにボロボロになってからだな。
除去で盤面を空にして《望み無き悪夢》で手札も攻め、それを生け贄に《鏡に願いを》を協約で唱えて勝負を決める。スタンダードの黒単コントロール、シブすぎる……使っていて昂るデッキが欲しいなら、黒に願いを。きっとなんらかのアンサーをくれるはずだ。もちろん対価に何かを持っていかれるだろうがね……。
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