こんばんは、マドモアゼル。ムッシュ。ようこそおこしくださいました、私が本日のデッキソムリエで御座います。今宵はどんな品をお探しで？……なるほど、夏も始まったし爽快なものを、と。夏バテ防止も兼ねて、気分爽快でかつこってりとコクがあってスタミナもつけば最高……なるほど。いえ、決して無茶な要望ではないですよ、ご安心ください。マジックには膨大なデッキがありますから、必ずやあなた方のお気持ちに応えられる逸品が……ふむ、こちらなどお気に召されるかもしれませんね。テイスティングしてみますか？

　カラーリングはジャンド（黒赤緑）。野性味溢れる色合いはまさしく重厚。ボトル（デッキケース）から取り出す前から、嗚呼、これはたまらない。言葉に出来ない芳醇な香りが漂ってきます。では注がせていただきます……。

　リストをご覧になって、いかがでしょうか？意外とシンプル？ごもっとも。それは雑味がないという証拠でもあります。まとまったクリアなリストこそ、デッキの本質を純粋に味わうのにはベストなのです。

　実際に味わっていただく前にあえて種明かしをすると、このデッキにはゴールが設定されています。それは《原初の征服者、エターリ》。プレイすると様々な風味を経てその向こう側から、最後にこの原初の恐竜王がもたらす香りがフワッと、いやブワッと拡がることでしょう。エターリ、戦場に出すことができれば多大なるアドバンテージをもたらす、最強クラスのクリーチャー。7マナと言えばスタンダードでもパワーカード激戦区ではありますが、個人的にはこのエターリこそ至高の逸品だと信じております。初夏の湿気を吹き飛ばす突き抜ける南国のフルーツのような快感がこの恐竜にはあります。このデッキはそんなエターリに至る道、コンボ要素を備えております。

　このコンボこそ、お求めの「爽快」かつ「濃厚」なもの。マナコスト踏み倒し系エンチャントの一つ《八百長試合》。クリーチャーにカウンターを乗せて継続的に強化するものであり、パワー7以上のクリーチャーをコントロールしていると、これの秘匿能力で追放しているカードのマナを支払わずに唱えられます。エターリの重いコストを《八百長試合》で無視する、いかがでしょうこの大胆な試みは。

　そしてこの《八百長試合》と組み合わせてスムーズに秘匿条件を達成するためのパワー6のクリーチャー。これらのための黒というカラーチョイスでございます。《強請る大入道》と《ドロスの魔神》、マナ総量は3に4と扱いやすいもので、3ターン目八百長→4ターン目パワー6からの秘匿エターリという理想の動きを後押しします。どちらも多少デメリットは付与されていますが、マナ総量から見たパワー及び威迫や飛行と回避能力も持ち、コンボ抜きにしてもこれらのどっしりとしたクリーチャーで攻撃して勝利するというデッキの勝ち筋に二重で貢献してくれます。この濃厚さはまさしくダークチョコレート。八百長という柑橘類と合わせることで、コクがありながら爽やかなデッキを実現させているのです。

　エターリが手札に来てしまう、ということも多々あるでしょう。しっかり唱えられるように、マナを増やせるクリーチャーを採用しているのがこのリストの仕事の丁寧なところ。最近スタンダードでの目撃機会が増えてきた《土建組一家の調達者》が採用されており、トレンドも抑えているところが抜かり有りませんね。基本的にはパワー3を活かして対戦相手のクリーチャーと相討ち、奇襲を活かしてプレインズウォーカーを狙いに行くのもよろしいですね。死亡時に残した宝物を使ってエターリへと繋げましょう。《ガイアの眼、グウェナ》はエターリやパワーの6クリーチャー達を唱えればサイズアップしてアンタップ、2マナ加えられる効率の良さと戦闘面での活躍も見込める点も素晴らしい。

　《ヴォリンクレックス》はパワー6で八百長の条件を満たしつつ、手札に《森》2枚を加えられることでエターリの7マナまでに必要な土地を伸ばしてくれる、このデッキには非常に噛み合った1枚です。変身させて《偉大なる進化》にしてエターリを強引に探しに行ってもいいでしょう。もちろんこれもトランプルを活かして単純な戦力として扱っても強く、無駄がない作りになっておりますよ。

　いかがでしょう？こちらのジャンド、お口にあいましたら光栄です。それでは、コンボの爽快感とパワーで薙ぎ倒す濃厚さでスタミナを補充し、蒸し暑い夜も心地よいひと時となりますことを願っております。では、またの機会にお会いいたしましょう。素敵なデッキを用意してお待ちしておりますよ。