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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

アゾリウス・ミッドレンジ:ついに、私は完成化した(スタンダード)

岩SHOW

「ついに、私は完成化した。」

 《トレイリアの抹消者、ローナ》のフレイバーテキストである。ローナはドミナリア次元に住まう人間、もとい元人間の女性。彼女はもともとトレイリアという地のアカデミーにて魔術を学んでいたが、そこで学べるものに限界を感じ、ファイレクシアのテクノロジーへと興味を抱いた。その伝承を探求していくうちに自身の身体も改造するなど、人間から完璧な存在になるための研究を進めていたという。

 初登場時から「ギックスの信奉者」なんて呼ばれ、再登場したら今度はシェオルドレッドに心酔しているときたもんだから、ファイレクシアの法務官好きすぎかよ!と。そんなローナがまだファイレクシアンになっていないことが個人的には不思議ではあったのだが、いよいよ『機械兵団の進軍』にて人体改造のその先、ファイレクシアンと化すことに成功した。それだけにこの短いフレイバーにも文字通り得も言われぬ風味・味わいがある。

 《侵攻の伝令、ローナ》は2マナと軽く、カードを引いて捨てるルーターと呼ばれる手札入れ替え能力持ち。さらに伝説の呪文を唱えるとアンタップするので複数回ルーティングして手札の内容を望むものに近づけられる。そして{5}と黒のファイレクシア・マナを支払うと満を持して変身するのである。

 《トレイリアの抹消者、ローナ》は抹消者繋がりで《ファイレクシアの抹消者》を想起させるもの。5/5トランプルと攻めのスペック、さらにダメージを受けたら能力が誘発。抹消者はダメージ分のパーマネントを生け贄にすることを要求する恐怖の存在だったが、ローナも負けず劣らず。何点ダメージを受けようが1枚だけではあるが、発生源のコントローラーの手札を追放させる。それもなんと無作為に!ランダムに捨てさせられると、プランが大きく崩れてたまったもんじゃない。

 この追放したカードが土地だったら、それをこちらの戦場に出せる。それ以外の呪文なら、マナを支払わずに唱えられる。内容によっちゃとんでもないアドバンテージに繋がる、これまた恐怖の能力だ。こんな能力を持ったクリーチャーが立ち塞がれば、攻撃を躊躇するし、攻撃されてはブロックを躊躇うというもの。今回はこの厄介すぎるローナを用いたデッキ案を紹介しよう!

Azori - 「アゾリウス・ミッドレンジ」
スタンダード (2023年4月17日)[MO] [ARENA]
4 《金属海の沿岸
4 《さびれた浜
4 《アダーカー荒原
6 《平地
6 《
-土地(24)-

2 《離反ダニ、スクレルヴ
4 《侵攻の伝令、ローナ
4 《高波エンジン
2 《フェアリーの黒幕
4 《大変成家、アンクタス
4 《賢明な車掌、トルーズ
2 《救出専門家
4 《セラの模範
-クリーチャー(26)-
4 《骨化
4 《勢団の銀行破り
2 《永岩城の修繕
-呪文(10)-

-サイドボード(0)-
AetherHub より引用)

 

 スタンダードで《侵攻の伝令、ローナ》をフィーチャーした「アゾリウス(白青)ミッドレンジ(中速)」だ。こういう野心的なリストが出てくると「おっ新環境始まったんだなぁ」としみじみ心にくるもんだ。

 このリストの作成者がローナの相棒に選んだカードは大きく2種類。まずは同じファイレクシアンである《大変成家、アンクタス》。彼も元はミラディン出身のヴィダルケンだったが、ファイレクシアに捕らえられて完成化させられた身の上だ。ただその後はノリノリでファイレクシアの拡大に貢献しており、青の派閥の副法務官までのし上がっているのだとか。

 このアンクタスがいると、青のクリーチャーがタップした時にルーター能力が誘発する。つまりローナはWルーティングを行い、一気に手札を入れ替えることになる。不要なカードを捨ててより状況にマッチしたカードが手に入るので、とりあえず土地3枚とローナとアンクタスという手札が来れば、土地を引きすぎることも引かなさすぎることもないゲーム展開が期待できそうだ。

 ルーターと組み合わせたい能力が持ちがスタンダードにはいる。これぞ2種類目の相棒、《賢明な車掌、トルーズ》。捨てた手札をそのまま追放し、トルーズが死亡した際にこれらが手札に帰ってくる。パワー3と攻撃させてもブロック役で立たせても絶妙なプレッシャーをかける存在であり、ローナやアンクタスで手札を整え、ローナ変身へと繋げる間に良い感じに時間を稼いでくれそうな予感。アンクタスもトルーズも伝説タイプなので、ローナのアンタップを誘発するという点も噛み合った相棒と呼べそうだ。

回転

 ルーターと相性の良いトルーズが白という色を選んだ理由だろうが、他にも墓地を美味しく使えるカードが白には揃っているので相性は◎。軽いクリーチャーなどは《救出専門家》や《永岩城の修繕》といったカードでリアニメイトしよう。《セラの模範》も墓地再利用の象徴のような1枚であり、大きなアドバンテージをもたらしてくれる。まずそもそもローナ自身が2マナと軽く、これらのカードで再利用できるというのが非常に噛み合っている。何度でも墓地から這い出て、抹消者と化して襲い掛かる光景はまさしく悪夢だ。

 上記の白いカードは前スタンダード環境でも有力デッキの1つだった「白単ミッドレンジ」を構成するパーツとして実績がある。そんな安定感が保証されている土台に青を足すという形で新カード、新デッキを試すアプローチはスマートだね。そして青を足し、2マナ以下のクリーチャーの価値が高い構成になっているのであればと《高波エンジン》や《フェアリーの黒幕》など青い2マナ圏を積極的に採用しているのも気になるポイント。

 特にフェアリーがスタンダードでどれほどの活躍を見せるのか、これは目が離せないね。ミッドレンジ同型でゲームがもつれにもつれた長期戦になった際に、マナを支払ってドローできるのがゲームを強引に動かしてくれる……か?対戦相手もドローするというところがどれぐらい許容できるかにもよるよね。対戦相手が同一ターンで2枚カードを引くように仕向けることで、こちらの方が1枚分お得にドローできるので、これで差をつけたいところ。それらドローが土地や不要なものだった場合にルーターで入れ替えられるのは隙がないぜ。

 《トレイリアの抹消者、ローナ》に変身するととてつもないプレッシャーをかけ、変身前の《侵攻の伝令、ローナ》も手堅く仕事をする。この新戦力を盛り込んだデッキがどれぐらい新環境で見られるのか、非常に楽しみだ。念願のファイレクシアンと化したローナを皆の手で活躍させてやってほしいね!

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