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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:魔神降臨、敗北するのは誰だ?(スタンダード)
クール、足りてるかい?クールなカード、クールなデッキ。全てにおいて優先するのはクール!という観点からお届けするのがデイリー・デッキの金曜日。Cool Deckのコーナーだ。
『ファイレクシア:完全なる統一』を取り入れたデッキ、楽しんでるかい?やっぱり新しいセットがバチバチに影響を与えてくれるのがクールというもの、リリースされた最初期こそマジックの醍醐味が味わえる至高の期間。さあ君だけのクールを求めて、デッキ構築あるのみだ。
どんなカードをクールに感じるかは人それぞれ。個人的な観点だと……単純に強力なものよりも、強烈なクセを持ったカードの方がクールに映るね。クセは個性、これは食べ物とか作品とかあらゆるジャンルに通ずることだな。マジックにおけるクセの強いカード、その最たるものは……やはり敗北条件カードだろう。
プレイヤーは勝利を目指してゲームをする。なのに幾万ものカードの中には、あなたをゲームに敗北させるという最悪の結果を招くものが存在する。黒や赤がこの役目を担っており、30年の歴史の中で数えきれないほどのプレイヤーに敗北をもたらしたことだろう。何故敗北するカードを使うのか……?答えは簡単、それだけ大きな恩恵が得られるのだよ。
敗北条件カードの中で最古のものは《Lich》である。ライフが0になってもゲームに敗北しないという不死の肉体を与え、ライフを得る場合はかわりにそれに等しい枚数のドローをもたらす。
オマケ感覚で書かれることの多いライフを得るという行為が、手札というマジックで最も重要なリソースに変換されるというのは滅茶苦茶強い!……のだが、ライフを失うとその枚数分のパーマネントを生け贄に捧げねばならず、そして《Lich》が戦場を離れるとゲームに敗北する……どうしようもないほどの代償、これぞクール!
《最後の賭け》もたった2マナで追加ターンを得られるという凄まじい恩恵をもたらすが、そのターンの終了を迎えるとそのまま敗北してしまう。
ハイリスクどころじゃない、超リスク!それに見合うリターンかどうかは……何とも言えないが、だからこそそそられるというもの。荒馬を乗りこなしたくなる感覚と同じだ。敗北をもたらすカード、これぞクールの一つの完成形だ。
そんな敗北条件ファミリーに今回新たなメンバーが加わった。《ドロスの魔神》だ。
4マナ6/6飛行という最高級のスペックに、対戦相手のクリーチャーが死亡するとそのコントローラーのライフを失わせるという弱り目に祟り目な攻めの能力!クールなまでに攻撃性を体現した魔神は、4つの油カウンターというリミットを持って戦場に出る。毎ターン一つずつ油は減っていき、0個になればゲームに敗北する……つまりはこれで攻撃できるのは普通に運用した場合は3回。4回目のターンを迎えることはなく、躊躇している時間はなくなる。全力で対戦相手を倒しに行かねばならない。
何故そんなリスクを背負ってまでこのカードを使うのか?疑問に思う方も少なくないだろう。だが同時に「こういうのでいいんだよ」と、ほくそ笑んでいるクールカード愛好家も同じ数だけ存在するはずだ。今回はこのクールな魔神を用いた環境最初期のデッキ案を紹介だ!
4 《ジアトラの試練場》 4 《死天狗茸の林間地》 4 《落石の谷間》 4 《黒割れの崖》 2 《硫黄泉》 1 《カープルーザンの森》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《沼》 1 《山》 1 《森》 -土地(25)- 4 《強請る大入道》 4 《ドロスの魔神》 3 《産業のタイタン》 4 《瞬足光線の大隊》 -クリーチャー(15)- |
4 《苦々しい再会》 1 《喉首狙い》 1 《胆液まみれ》 2 《削剥》 1 《兄弟仲の終焉》 4 《八百長試合》 2 《鏡割りの寓話》 2 《ギックスの残虐》 3 《免れ得ぬ破滅、ルーカ》 -呪文(20)- |
4 《強迫》 1 《タミヨウの保管》 1 《タイヴァーの抵抗》 2 《未認可霊柩車》 2 《兄弟仲の終焉》 2 《切り崩し》 1 《シェオルドレッドの勅令》 1 《溶鉄の大怪物》 1 《敵対するもの、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
スタンダードの「ジャンド(黒赤緑)魔神」!ジャンドと言えばマジックでも屈指の攻撃性全開3色であり、魔神のイメージにもピッタリだ。昨シーズンのスタンダードにおけるジャンドカラーのデッキは「ジャンド・リアニメイト」が印象深い。
世界選手権でも使用者がいたアーキタイプで、《ギックスの残虐》を主役に据えたクールなデッキだった。《鏡割りの寓話》などで手札を捨てて、大型クリーチャーを《ギックスの残虐》のⅢ章能力によって戦場に直接出すのが必殺ムーブ。コストを踏み倒して降臨する《産業のタイタン》は盤面の攻守をひっくり返し、勝負を決める一手として愛好するプレイヤーも少なくなかった。
このリストもそんなリアニメイトと共通するパーツを持ち、同じ勝ち方も狙える。強さが実証済みの土台に魔神を盛り込んだデッキのクールな構成を見ていこう。
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:魔神による八百長試合?
このデッキのエンジンとも言える1枚は《八百長試合》!2022年初出時から数々の巨大呪文のコストを踏み倒させてきた、ファンも多いクールなエンチャントだ。
毎ターン戦闘開始時にクリーチャーをサイズアップさせるという能力だけで見ても強いカードだが、その後パワー7以上のクリーチャーをコントロールしているのなら秘匿で仕込んだカードをマナを支払わずにプレイ可能。この能力でガッツリアドバンテージを獲得するために、マナ総量に見合わぬ高パワーを持ったクリーチャーが珍重されてきた。そう、つまり《ドロスの魔神》もそんな八百長に手を染める役としてうってつけなのである!
3ターン目八百長→4ターン目魔神の流れは美しく隙が無いクールさだ。《強請る大入道》と共にマナに見合わぬパワー6を売りに、八百長を仕掛けまくって圧倒的な戦場を作り上げよう!
八百長からコストを無視して飛び出すカードとして、もちろんお馴染みの《産業のタイタン》はその有力候補である。だが魔神の時間制限もある中、ライフ回復などやや防御的なお側面も強いタイタンよりもさらにおあつらえ向きな1枚が《瞬足光線の大隊》だ!
マナは払っちゃいないがきちんと唱えているので、戦場に出れば能力が誘発!自身のコピーを引き連れて4/4速攻トランプルが計3体!さっさと殴ってクールにゲームを終わらせよう。魔神の敗北条件も、結局のところそれが誘発するまでにゲームを終わらせてしまえばデメリットでもなんでもないのだ。
クールポイントその2:ヤツの名はルーカ(だったもの)
このデッキで魔神と併せて使いたいのは八百長だけでない。《免れ得ぬ破滅、ルーカ》も強烈なシナジーを期待できる1枚だ。
何といってもクリーチャーの最大パワー分のダメージを与える[-4]能力!しかもこれのすごいところはダメージを割り振って与えられるという点。残念ながらプレイヤー本体には飛ばすことはできないが、クリーチャーやプレインズウォーカーを好きなだけ対象に取ってダメージを割り振れるので、1回の起動で複数枚のパーマネントを除去することも可能だ。
プレイヤー本体にダメージを与えられないと書いたが、よく考えれば魔神はクリーチャーが死亡すれば対戦相手のライフを失わせるじゃないか。目を覆うばかりの大損害をもたらす、まさしく魔神の名に相応しいコンボと言えよう。6点以上のダメージをばら撒いてクールな瞬間を味わおう。
ルーカはクリーチャー用のマナ加速としての能力も持っているので、これで《産業のタイタン》《瞬足光線の大隊》を素出しするための助けにもなるのが偉い。完成化でより軽く唱えて、早いターンにこれらのクリーチャーで奇襲を仕掛けるのも一興だ。ルーカ1枚だけの状況になってもクールなビジュアルのビーストを繰り出してくれるので、《告別》などからのリカバリーも容易。
今後赤緑を含む中速系デッキにとって、あれば安心できる用心棒的存在となりそうだな。
クールテクニック!
魔神の油切れによる敗北を逃れるための工夫として、速攻を与えて攻撃回数を増やすというのはシンプルにして効果的な一手。このリストが選択している速攻付与カードは《苦々しい再会》。手札の入れ替えを行うメインとも言える能力も、《鏡割りの寓話》のようにリアニメイト用のカードを墓地に送れて無駄にならない。
再会のもたらす速攻で1ターンを稼ぐ以外には、《胆液まみれ》も敗北を1ターン先延ばししてくれる裏技として機能する。
強烈なクリーチャー除去でありながら、増殖で油カウンターを増やすことで幻の魔神降臨後4ターン目を敗北せずして迎えられる!ルーカの忠誠度や英雄譚の伝承、《産業のタイタン》の盾などなど実はカウンターも色々使うデッキである。もちろん《八百長試合》でばらまいた+1/+1カウンターも増やせるので、増殖により勝利へと一歩近づこう。もっと枚数を増やして「ジャンド増殖」と呼べるようなデッキを目指してもクールだろうな。
クールなまとめ
敗北するかもしれないスリルと隣り合わせ。マジックを最もギリギリのところで楽しめる、敗北条件カードは最高にクールなものだ。どんな展開であれ、最終的にはこのゲームはどちらかが勝ち、どちらかが負けるゲームである。敗北することを恐れずに、リスクを抱えたカードを使うことにチャレンジしてみよう。その先にクールなデッキはきっと見つかる。それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Don’t be afraid!
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