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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
今週のCool Deck:潜在能力コンボ~あれから2年~(パイオニア)
新年一発目だ!Cool Deck!普段からバラエティ豊かなデッキをお届けすることを信条としている当コラムだが、このコーナーはさらに特別にある点に着目してデッキを選定し紹介させていただいている……それはデッキやカードの「クールさ」!デッキリストがカッコイイ、美学を感じさせる構築、奇想天外な発想に前人未到のカードチョイス……思わず自分もプレイしたくなる、一言でまとめるならクールなデッキを紹介していくシリーズだ。
2023年のクールなスタートを切るデッキとなると、ちょっとハードルが上がってしまうものだが……ここは変に気負わずに自分自身がクールだと感じたデッキを素直に選ばせていただいた。昨年12月、カナダにおいて開催された地域チャンピオンシップ。上位成績を残したプレイヤーがプロツアーに、さらにその先の世界選手権へと繋がる重要過ぎるトーナメントだ。日本でも11月に「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」という形で熱戦が繰り広げられたのは記憶に新しい。こちらもパイオニアというフォーマットの熱さを見せつけてくれたものだったが、カナダでも熱戦が繰り広げられたようだ。
これほどの競技レベルの大会となると、プレイヤーたちのデッキチョイスもおのずと「ガチ」になるというもの。環境における使用率が高いデッキを選択するプレイヤーが多数になるのは自然なことだ。
使用者数の多いデッキを選ぶメリットとは?まずは誰もが使っているということは強いということが証明されている、これは言わずもがな。そして使用者が多いと、自動的に世界中のプレイヤーが調整仲間になるようなもの。多色デッキの土地のバランス、サイドボードの対策カードのチョイス、そういった細かい部分の調整は自分自身で施すのはもちろん、世界中のトーナメントやリーグでの上位成績リストを参考にすることで自動的に調整が進んでいく。デッキを一人で調整するのとは話が違うのだ。クールなことだよな。
対して使用者が少ない、ともすればマイナーなデッキを選択し、調整し、トーナメントに臨む。これは孤独な戦いかもしれない。だが、レアなデッキやオンリーワンのデッキで戦うのはハンデを背負うというものでもない。研究されていない、対策や練習をされていない、そもそも何を狙ったデッキなのかがバレないというアドバンテージも大きい。そしてそういった珍しくクールなデッキというのは、我々のようなデッキマニアが応援したくなるというものだ。使用者は少なくとも、君は一人じゃない!そういうクールさを感じながら、自分の大好きなデッキで大勝負に挑んでほしいね。
4 《踏み鳴らされる地》 4 《岩山被りの小道》 4 《カープルーザンの森》 2 《落石の谷間》 2 《ハイドラの巣》 1 《バグベアの居住地》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 2 《山》 2 《森》 -土地(22)- 4 《ラノワールのエルフ》 4 《エルフの神秘家》 4 《砕骨の巨人》 4 《恋煩いの野獣》 2 《節くれだった教授》 2 《栄光をもたらすもの》 1 《怒れる腹音鳴らし》 1 《石とぐろの海蛇》 -クリーチャー(22)- |
4 《火の予言》 4 《鏡割りの寓話》 1 《巨竜戦争》 4 《吹き荒れる潜在能力》 1 《無限への突入》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(16)- |
1 《環境科学》 1 《封印突破法》 3 《引き裂く流弾》 2 《漁る軟泥》 1 《巨竜戦争》 1 《運命の神、クローティス》 1 《未認可霊柩車》 1 《目覚めた猛火、チャンドラ》 1 《真髄の針》 1 《減衰球》 1 《燃えがら蔦》 1 《不滅の太陽》 -サイドボード(15)- |
このクールなデッキは?
というわけで、今回のデッキはカナダの競技イベントで使用されたパイオニアにおける「潜在能力」!デッキ名にもなっている《吹き荒れる潜在能力》がキーカードだ。赤にはお馴染みの通常のマジックを捻じ曲げ、平常運転からかけ離れたゲーム展開をもたらすカオスなカードの1つである。
これが戦場に出ていると、プレイヤーが呪文を唱えた時そのままその呪文が解決されることはなくなる。その呪文は追放され、代わりにライブラリーの上からカードをめくっていって、公開された同じカード・タイプの呪文が唱えられることになる。たとえば《灰色熊》を唱えたら、それがドロンと入れ替わって《シヴ山のドラゴン》になって出てくるという具合。わけのわからないマジックを求めるのであればこれ、というエンチャントであるが……実はうまく使いこなせば狙った呪文を唱えるための手段にもなる。このデッキはそれを狙った、クールなコンボデッキである!
どこがどうクールなのか?
クールポイントその1:2年前から潜在していたって!
実はパイオニアの「潜在能力」は当コラムでも紹介したことがある。2019年の12月、パイオニアにおけるまさに黎明期のデッキだ。
2年以上の時が経過して、このリストよりもさらに洗練されたデッキになった最新モデルを紹介しよう。まずは潜在能力コンボの基本から。デッキにはある1枚を除いて、ソーサリーを採用しない。その上でソーサリーとして唱えられるもののライブラリー内ではソーサリーとして扱われない、出来事を持つカードたちを用いる。
例えば《恋煩いの野獣》。《吹き荒れる潜在能力》を設置している状況でこのカードを《切なる想い》で唱えて、潜在能力からたった1枚のソーサリーにアクセスしてコストを踏み倒して唱える。そのカードとは……《無限への突入》!ライブラリーを全部引いて1枚を戻すというハチャメチャすぎるドロー呪文。これを真面目に唱えるのは12マナと無謀なまでのマナを要するので、このようなクールな裏技を使おうというわけだ。
さあ、ライブラリーは引き切って膨大な手札を抱える今、何をライブラリーに戻そうか?答えは……《怒れる腹音鳴らし》。こうして仕込んでおいて、《石とぐろの海蛇》を0マナで唱えて再び潜在能力誘発→腹音鳴らし降臨!
あとは手札に溢れる土地カードをこの伝説のサイクロプスの能力で対戦相手に投げつくまくってWIN!まさに豪快そのものなコンボは、決まれば気持ち良いどころじゃないクールさだって!
クールポイントその2:2年後目覚めたその能力
以上は2年前のデッキリストでも共通の動きである。今でもこのコンボ、決まれば勝てるクールなものだが……この2年でブラッシュアップされた部分を紹介しよう。まずは当時のコラムでも触れている弱点が改善されたこと。《無限への突入》を引いてしまうとコンボが不成立となるのだが、これを解決するのが《火の予言》。手札のカードをライブラリーに戻せるので、お荷物になるコンボパーツをおとなしくしててねとクールに退場させよう。
それからソーサリーとしての役目を担うカードが《恋煩いの野獣》のみというのも物足りないポイントであった。4枚しかないのであれば引けるかはわからない。かといってソーサリーではあってもクリーチャーとして力不足な出来事持ちカードを入れて……というのもな。このデッキはコンボを狙えない、もしくは狙わない時にクリーチャーで殴って勝つルートを持っているのも強みである。その中でパワー不足が目立ってしまうクリーチャーを入れるのは何とも言えないところ。
このジレンマを解決するのは……この2年の間に出来事に続く形で現れたクリーチャーでありソーサリーをもたらすカード、《節くれだった教授》!
4マナ5/5トランプルと破壊力のあるボディに、履修という能力でサイドボードから講義カードを手札に加えられる。講義カードはすべてソーサリーだ。これでメインデッキにはソーサリーを入れていないのに《無限への突入》に繋げるルートはバッチリ!クールに進化してるじゃないか……感動したよ。
クールなまとめ
大舞台でこの「潜在能力」デッキを選ぶというのは、論理的な試行からすると得策ではないのかもしれない。もっと安定したコンボや、純粋に強いビートダウンがあるかもしれない。でも、そんなことは些細なことだ。使いたいデッキを持ち込み、自分が遊びたいデッキを使い尽くす。2023年もそんなプレイヤーが世界中にいっぱいいることを願っている。各々が信念をもって持ち込んだデッキで戦う、だからこそトーナメントはクール、マジックのデッキはクールなのだ!
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