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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

今週のCool Deck:ナンバー1と100パーセント、白いアグロと最強の数字(ヒストリック&スタンダード)

岩SHOW

 今週もやってきました、クールを語る金曜日。

 当コーナーの信条としては、最優先すべきデッキはクールであること。トーナメント成績や連勝記録といったものもデッキ選びには重要なファクターではある。

 でも同時に、趣味でやっているゲームなのだから自分の感情に働きかけてくるデッキを使いたい、と願うプレイヤーも多いはず。マジックのデッキの組み方は無限大。自分だけのものを目指してこそクールな気持ちになれるのではないか。そんな道を突き進んでいるデッキを取り上げることで、皆に刺激を与えられたら……という思いを込めて、紹介するデッキを選ばせていただいている。

 ただ、世の中にはあるんだよな……己の道を貫き、クールすぎることをやりながら同時に勝利を重ね、数字を勝ち取るデッキが。僕は野球が好きなのだが、今シーズンは日米双方でとんでもない記録を生み出したプレイヤーたちが毎日のように刺激を与えてくれた。特に誰もやっていないような独自のスタイルで記録を生み出す姿勢は、まさしく超刺激。クールとリアルの両立とでも言おうかね。

 しっかりと勝ち、数字も残す。見習いたいものだが、決してイージーではない……今回紹介するデッキも、自分のデッキを組み上げて勝利も重ねた、素晴らしくクールなリストだ。

 それじゃあもったいぶらずに、見てもらおうか!

AlthMTG - 「ボロス・ソプター」
MTGアリーナ ヒストリック・ランク戦 37勝5敗 / ヒストリック (2022年10月3日)[MO] [ARENA]
3 《平地
4 《聖なる鋳造所
4 《感動的な眺望所
4 《針縁の小道
2 《産業の塔
1 《皇国の地、永岩城
4 《ダークスティールの城塞

-土地(22)-

4 《羽ばたき飛行機械
4 《エスパーの歩哨
4 《模範的な造り手
4 《巧妙な鍛冶

-クリーチャー(16)-
4 《ポータブル・ホール
4 《改良式鋳造所
4 《逆刺の針
4 《魅知子の真理の支配
4 《ヨーティアの宣戦布告
2 《影槍

-呪文(22)-
1 《夢の巣のルールス

-相棒(1)-

4 《静寂をもたらすもの
2 《マナの税収
1 《真髄の針
4 《ガラスの棺
2 《未認可霊柩車
1 《勢団の銀行破り

-サイドボード(14)-
AlthMTG氏のTwitter より引用)

 

このクールなデッキは?

 MTGアリーナ、ヒストリックのランク戦でミシック1位に到達したリストだ。

 時期は10月初頭。ランク戦の順位がリセットされ、新たなシーズンが始まった直後だ。アリーナのランク戦について、ミシック帯の順位がどのように決定されているのかは正直よくわかっていない。ただひとつ言えることは、とにかく勝つこと。勝って、勝ち続けて、高い勝率を維持し続ける。君臨したければ勝て!

 シンプルな話で、だからこそランク上位はクールな名誉。ランクリセット直後は誰もいない地平線を皆揃って突き進むことになる。月末のランク戦は追い抜かねばならぬ存在が多数いるため、上位を狙うのは月初に近ければ近いほどハードルは下がる。でも、だからと言って1位になるのが簡単なわけじゃないのはクールな皆ならわかってくれるはず。誰よりも早くミシックに到達し、1位になってやる!と同じ思いを抱いているライバルは世界中にいるのだから。だからこそ、どんなタイミングであっても、ランク戦1位報告とはクールなものなのだ。

 ではデッキ内容はというと……これがどうして実に個性的。白赤2色でアーティファクト主体……というか、あるものが主役のアグロデッキだ。じゃあ詳細をまとめていくぜ。

どこがどうクールなのか?

クールポイントその1:ソプター大作戦

 このデッキは「ボロス・ソプター」と形容されている。ソプターとは「飛行機械」のことで、マジックではアーティファクト・クリーチャーが持つタイプのひとつだ。

 《羽ばたき飛行機械》やトークンにそのタイプを見ることができ、このリストにもそれらに関するカードが計16枚採用されている。

 なぜこのタイプにこだわっているかというと、ヒストリックには《改良式鋳造所》があるからだ。

 飛行機械を生け贄に捧げると4/4の構築物が手に入る。《羽ばたき飛行機械》との組み合わせなら、なんと1ターン目からマッチョなトークンを出せるのだ。

 飛行機械はこの鋳造所自身で生成しても良いし、《逆刺の針》からも供給される。

 そして新たなソプター系カードとして加わった《ヨーティアの宣戦布告》!

 これも実にシブいカードで、ソプター・除去・アーティファクトを4/4に、とデッキの他のカードともクールに噛み合っている。他にも大量の軽いアーティファクトとそれらと好相性のカードをかき集めてできたのが、この「ソプター・アグロ」というわけだ。

クールポイントその2:機械の行進

 この手のデッキを組むなら外せないのが《魅知子の真理の支配》。

回転

 0/2の無害な飛行機械だって、この英雄譚にかかればドラゴンやデーモンをも上回る航空戦力に早変わり。

 魅知子の打点向上のため、《ダークスティールの城塞》などとにかく軽いアーティファクトがズラリ。そのおかげで《模範的な造り手》は1マナでパワー3と先制攻撃と、鬼神の如き1マナ攻撃役に。

 《巧妙な鍛冶》もかなり高い確率でアドバンテージを得られ、この手の展開に全力投球なデッキの手札消費を緩和してくれる。

 そして軽いカードで固めたデッキ in ヒストリックとくれば、そりゃあもう《夢の巣のルールス》の出番よ。

 このデッキで久しぶりにヒストリックをプレイし、この究極の相棒を体感したが……刺激なんてもんじゃねぇ! パイオニアやモダンなどで使えない、ヒストリックだからこそのカードパワーがここにある。

 《ヨーティアの宣戦布告》を使いまわして除去したり、《至高の評決》でリセット後の盤面にルールス→《羽ばたき飛行機械》再キャスト→《改良式鋳造所》で構築物!と動けば一瞬で戦線再構築。この環境でしか味わえないソプターとルールスの共演、堪能したぜ……

 さすがはミシック1位、ビシビシに尖った構成で対戦相手を翻弄し、確かな打撃力でランクを一気に駆け上っていったんだなぁ。天晴れ!

Stephen Croke - 「白単アグロ」
MTGアリーナ スタンダード(BO1)・ランク戦 11勝0敗 / スタンダード (2022年10月5日)[MO] [ARENA]
20 《平地
1 《水晶の岩屋
1 《皇国の地、永岩城
1 《英雄の公有地

-土地(23)-

4 《有望な信徒
3 《有能な整備士
4 《新ベナリアの守護者
4 《スレイベンの守護者、サリア
3 《剛胆な敵対者
4 《選定された平和の番人
4 《粗暴な聖戦士
3 《輝かしい聖戦士、エーデリン
2 《セラの模範

-クリーチャー(31)-
2 《邪悪を打ち砕く
3 《放浪皇

-呪文(5)-
Stephen Croke氏のTwitter より引用)

 

クールなオマケ

 本日はクールなデッキをもう一本、ショート解説!

 このリストは有名ストリーマーCrokeyz氏が用いたスタンダードのBO1仕様のもの。強さと数字にこだわる今回のテーマに相応しい、11勝0敗・勝率100%の結果を弾き出しているッ!

 白単色のアグロでBO1というと、MTGアリーナがまだクローズドベータ(申請者のみがプレイできたテスト期間)だった最初期を思い出すなぁ。当時はランク戦がBO1しか存在せず、《ベナリアの軍司令》《ベナリア史》などを擁する白単で駆け抜けていくスタイルが王道だった。このデッキはあの頃を思い出させてくれるという点でもクールなものだ。

 《有望な信徒》《有能な整備士》と字面がよく似た1マナ圏からスタート、マナを使い切りながらクリーチャーを展開。

 《輝かしい聖戦士、エーデリン》《剛胆な敵対者》で打点を伸ばして一気に畳みかける。

 特徴的なのは《新ベナリアの守護者》の採用。

 後援能力でパワーを上げて攻撃しつつ占術でドローの質を高める。使い道のない土地を引くと一気に苦しくなる軽量アグロデッキにおいて、それを回避し得る占術という能力は非常にクールなもの。マナ不要で攻撃するだけで2枚も操作できるのはそうそうあるもんじゃない。

 タフネスが上がらないのは弱点に見えるが、2マナクリーチャーにあまりにも多きを求めるのもどうかというところ、自身より重いマナ域のクリーチャーと相討ちになってくれれば御の字の精神こそクールだ。

 最速でライフを削り切れなかった時の保険、リカバリー用に《セラの模範》が採用されている。

 これは単にクリーチャーを使いまわすだけの仕事に留まらず、土地も墓地からプレイ可能だ。この恩恵を活かすため単色のデッキであるにも関わらず《英雄の公有地》を搭載しているのがなんともクール!

 《スレイベンの守護者、サリア》とエーデリンという主軸を除去や戦闘から護って、さらにもう1回! 硬さはクールだ。

クールなまとめ

 ランク1位、勝率100%。クールを追い求めると、最強の数字に行きつくことも。頂を目指すこと、そのシンプルな情熱こそがクールなのだ。

 勝ちにこだわるとさまざまな苦しみも生まれるのが勝負事の常、楽しむためのゲームであればなおのことそれは避けたい。そんなシリアス・プロブレムと正面からぶつかって、己を貫き通す。強きプレイヤー、強きデッキに今一度畏敬の念を。

 それじゃあ今週はここまで。Stay cool! Win the numbers!

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